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「つまみ三兄弟」



高瀬 霜石


 枝豆に目がない。ほとんど三百六十五日食べている。もちろん、ビールの友としてだから、当然のこと休肝日はない。休肝日は、そりゃあ肝臓にとってはいいの
でしょう。しかし、肝臓の所有者であるオラの健康(心の安らぎ)にはとてもよくないので、やっぱり仕事が終わったら、日が暮れたら、ビールなのである。
 冬には「ひたし豆」というのを食べる。カラカラに乾いた大豆状態で保存し、一晩水に浸してから食べる。そりゃあ旬の枝豆にはとてもかなわないが、冷凍の枝豆なんかは足元にも及ばないほど美味い優れものだ。
 夏真っ盛りのビアガーデン。枝豆は冷凍ものだ。
「せっかくの旬なのに、どうして枝豆は冷凍なのさ」
「手間がかかって大変なら、通常の冷凍ものは三百円だけど、湯上げたての枝豆は五百円と二本立てにすれば?きっと売れるって。少なくともオラは買うよ」
 友人のホテル支配人に、毎年のようにこんな提案をするが、願いは届くことはない。
 だから、どこのビアガーデンに行っても、やむなく一皿はとる。でも、それは誰かにあげて、オラは持参した枝豆をこっそりこっそり食べるのである。
 五月から六月にかけてが、一年で一番好きな季節だ。
 まず、待ちに待った早生の枝豆クンが顔を出す。小ぶりで青々とした姿が目に眩しい。
 美味い枝豆は、だだ茶豆をはじめ沢山種類がある。津軽では、枝豆といえば毛豆が王様である。確かに味は最高だ。でも、オラはやっぱりこの青々とした早生に軍配を上げてしまう。
 食べて本当に美味いのは秋の戻り鰹なのに、江戸っ子は春の初鰹をことのほか珍重したという。早生の枝豆に出会うたびに、江戸っ子のその気持ちがオラにはよーくわかるのだ。
 ふわふわのベッドに寝転がって、まるで王子様のような雰囲気を持つ空豆クンも、この時期現れる。
 そして、エメラルド色に輝くグリーンピースくんの登場で、役者の揃い踏みとなる。
 枝豆、空豆、グリーンピースを我が家では「三種の神器」と呼び、大いに旬を愛でる。愛用のブナコの皿にそれぞれを盛ると、食卓に初夏の風が吹き込む。
 オラは加山雄三のように「シアワセだなあ」とつぶやくのである。

[14] (2006/07/08(Fri) 19:24:03)



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