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霜石コンフィデンシャル72   高瀬 霜石

「どうにも止まらない」

僕の生業〈自動車部品販売業〉の関係で、ホンダ技研の本拠地、三重県・鈴鹿市へ行って来た。
 1日目は、自動車の組み立て工場「鈴鹿製作所」の見学。とにかく広い。敷地は27万坪だとさ。働いている人は9千人だとさ。だけど、工場内に人はまばら。
 鉄板のプレスとか、溶接とか、塗装とかは全部ロボットがする。大方できあがったクルマの中へ、座席を据え付ける―重い座席をひょいと持ち上げ、ドアの部分(ドアは最後の最後に付ける)から、90度くらいひねって中に上手に押し込みセットする―のもロボットの仕事。人間さまは、ネジを締めるだけ。
 重いタイヤを取り付けるのもロボット。同じように、ネジ締めてOK。クルマはロボットが作っていると言っても過言ではない。
 その夜の懇親会。美人の司会者が、乾杯の音頭は本日のスペシャル・ゲストがとりますと言うので、誰が出てくるのかと期待したら、舞台の袖から登場したのは、なんとホンダのロボット《アシモ君》であった。
 懇親会と言っても、次の日は朝早くから「試乗体感ツアー」があるから、酒はほどほどにする。
 2日目。4人一組で車に乗り込み、交替で運転し、いろんなカリキュラムを体験するのだが、まずは、雨の道路(常に路面がジャブジャブ状態)を時速40km で走り、思いっきり急ブレーキをかける。はたして何m走って止まるだろうか、の実験だ。
 我々中高年は、ブレーキをドンと踏めない。そう教わって、ずーっとそうしてきたから、身体に拒否反応がある。今の車には、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が付いているので、ドンと踏んでも、車がケツを振ったり一回転したりはしないので大丈夫だと、頭では判っているが、とても怖い。
「親の仇だと思って」、今ならさしずめ「社会保険庁だと思って」思いっきり強くブレーキを踏む。
 4〜5mでどうにか止まる。次は、時速60kmで突っ込み、急ブレーキ。制動距離は12mまで延びる。
 いよいよ雪道(これも常に路面がシャーベット状態)
である。時速40kmで走り、急ブレーキ。ABSがググッと反応するが、車はアレー止まらない。滑るは、滑るは、なんと30m。身体がギュッと縮こまる。
 冬は特に安全運転。自分のためにも他人のためにも。
[42] (2009/02/29(Sat) 14:50:10)



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