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霜石コンフィデンシャル80   高瀬 霜石

「クレイマー宣言」

オラの生業は、自動車部品商。自動車は生活に必要不可欠のモノであると同時に、環境にはとてもやっかいなシロモノである。
ことの発端は、去年の秋、商工会議所の創立百周年で市民会館へ行った時のこと。青森からおエライさんを乗せてきたであろう一台の黒塗り高級車。ずーっとエンジンかけっぱなしで待機している。役所ってこれだものなあと思い、窓をノックした。
「あんた。このイベントが終わるまで、ずーっとそうやっているんだが?」と聞いた。弘前公園のさわやかな秋空の下にもかかわらず、暑いからなどと言い訳をする運転手のネームプレートを見て驚いた。役所の車ではなく、青森の某タクシーだったのだ。
数日後、青森へ行った。偶然乗ったのがタクシーだったので、このことを問うた。「お客さん。それは会社に抗議しても無駄。なぜなら、その運転手はうちの幹部で、そんなオイシイ仕事は自分で取っちゃう人で、苦情は全てこの人の所に集まるわけ。自分で握り潰してオシマイ」とのたまう。
気になりだすと止まらない。大型店、デパート、ホテル、駅、夜の鍛冶町などで客待ちしているタクシーの長い列。100%エンジンかけっぱなし。側を通るとオエッとなる。
弘前のタクシー会社何軒かに、どうにかならないものか聞いた。答はおおむね一緒。「燃料高騰の折。エンジンはなるたけ切るように運転手にお願いしているが、正直、そこまでの管理はとても無理」とのこと。「お宅の経営のことはどうでもいいのです。こっちは排気ガスのことをいっているのですが」と喉まで出かかったが、あきらめた。
 こういうのを《暖簾に腕押し》とか《糠に釘》とかいうのか。いや、この場合は《馬の耳に念仏》というべきか。はたまた《馬耳東風》というべきか。どっちにしろ、自覚がまるでなく、すべて他人事だから始末が悪い。
北欧では、信号待ちでさえもエンジンを切らないと罰金だそうだ。
 タクシー会社に自浄力はない。運転手にも罪悪感なんてない。ただ、惰性のなせる業である。
 ここはやはり、商工会議所とか、法人会が音頭をとって(いい意味での圧力団体になって)大型店やデパートやホテルや駅のトップ人たちに決断(惰性の打破)を促すのがてっとり早いと思うが、読者諸兄は如何?
 思っているが、訴えるのはいかにも臆病とかいう人が大多数だろう。でも、一人よりは二人。二人よりは三人なのである。一人ぼっちで言い続けるのは、とてもくたびれる(コエグなる)のだ。援軍がほしいなあ。
 《排気ガスみんなで喋ればコエグない》と、オラは切実に思う。
 アッ、これは川柳ではないです。「標語」です。

[53] (2009/10/07(Tue) 13:51:23)



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