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霜石コンフィデンシャル69   高瀬 霜石

「 耳 学 門 」

 オリンピック陸上男子のリレーは、銅メダル。でもあれは、速い奴がバトンを落としたせいのタナボタ。
 ちょっと前まで獣を追いかけていたジャマイカやケニアやエチオピアの人たちに、われわれ農耕民族が束になっても、ハケジョッコは勝てるわけがない。
 この人たちとわれわれとでは、足の長さも、バネの強さもまったく違うけれども、なんと、耳垢もタイプが違うんだってこと、知ってましたか?
 耳垢には、ドライとウエットの二つがあると、動物行動学研究者の竹内久美子が書いていた。
 ドライとウエット。日本人(モンゴロイド)には両方いるが、驚いたことに、白人(コーカソイド)と黒人(ニグロイド)には、ドライはいないのだそうだ。世界の耳垢型分布図に、こう載っている。数値は、ウエットタイプの割合。
○日本の本州の人       二〇%
○アイヌの人々        六〇%
○沖縄の人々         四〇%
○アメリカ白人     ほぼ一〇〇%
○アメリカ黒人    ずばり一〇〇%
 日本人は、先に住み着いた縄文人と、後から来た渡来人との混血で、その混ざり方が地方によって様々。アイヌの人たちは縄文の直系の子孫で、沖縄もその色が強いのだそうだ。
 人間の耳垢は、元々がウエット。ある日突然、アジアの草原あたりでドライが生まれ、それが広まったというのが定説。つまり、ドライは新参者なのだ。
 オラの亡夫が、小柄で、眉も髭も濃く、アイヌ風の顔つきをしていたので、かつては蝦夷(えみし)と呼ばれ大和朝廷に滅ぼされた人々と同じ「縄文の血」が、オラにもきっと流れていると、子供のころから信じていた。
 オラはときどき、同居人を《ヤマトンチュ》(沖縄の言葉で本土の人)と呼ぶ。意見の相違は、すなわち、人類の違いというわけである。
 「お前たちは、いわゆる侵略者。ところがどっこい、こっちは日本原住民の末裔なるぞ」と胸を張っていたのが、ある日突然、その誇りがガラガラと崩れた。オラの耳垢はドライなのだから、如何ともしがたい。
耳垢の奥に、こんなミステリーがあったとは……。
ところで、あなたは、ドライ? ウエット?
[39] (2008/11/29(Fri) 14:41:53)



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