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霜石コンフィデンシャル77   高瀬 霜石

「オールド・ルーキー」

 突然、浮世の義理で、断りきれなくて、テレビの川柳番組に出なくてはならなくなった。ラジオはまだいい。なにせ声だけだもの。でも、テレビは大変。
 実は十年ほど前にも、テレビ出演の話があったのだ。もう時効だから、バラしてもいいだろう。
 NHK総合テレビ、毎月第1金曜日の夜7時半から「渋谷伯龍のお国言葉で川柳」という番組がある。 以前は、夕方に流れていたのだが、人気が沸騰。去年からゴールデンタイムへと昇格したのだった。
 この番組が生まれる少し前、仙台から発信していた「方言川柳番組」があった。企画は面白いけれど、東北6県全ての方言を扱うのはとても無理となり―そりゃそうだ。青森県ひとつとってみても、津軽弁、南部弁、下北弁とあるんだもの―各県ごとに独自に方言川柳番組を制作することになっていたのだ。
 その仙台のキー局を束ねていたのは、美人で切れ者で名高い、仙台は「宮城野川柳社」の雫石隆子主幹(当時は編集長)その彼女からの紹介ということで、NHKのプロデユーサーだったか、ディレクターだったかが、オラの所にやってきた。
「雫石隆子さんは、青森県は、高瀬霜石さんに頼めば大丈夫だということで、お願いにきたのですが」
「マイネ。マイネ。(注・ダメだ)醜いモノを世間に晒さないちゅうのが、オラのモットー。美学だな」
「高瀬さんは、ラジオにも出ているということで、話のリズムはいいし、なんとか頼みます」
「何度も言うように、オラはダメ。でもどうしてもとアナタが言うんなら、面コ被ってもいいが?」
「ハッ?お面ですか?冗談でしょ。仮にも、天下のNHKですよ。そ、そ、そんなのは無理ですよ」
「そんなら、NHKさん、最適な人を紹介します。なにせ、津軽弁研究家。かつ、川柳人。しかも、画家で、いい男ときているから、もうバッチリですよ」
 親分とも兄貴ともいえる伯龍さんに、これに限ってはオラが振った仕事であった。今となっては、伯龍さん自身のライフワークともいえる番組に成長したのだから、オラとしては鼻高々なのである。オホン。
 この度、またも雫石隆子さんからの頼みで、どうにも逃げられなかった。3ヶ月に1回、仙台からの生放送。この醜い面体を、世間に晒している。アーア。
[47] (2009/07/29(Tue) 15:05:14)



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