静岡川柳たかねバックナンバー
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 平成十八年九月十六日 定例句会
    於 静岡市駒形神社 社務所

席 題 「名 前」  柳沢 平四朗 選
電話口孫の名前は言いません    洋 未
コミカルな名が窓口で不審な目   しげる
お名前がすてきで顔とそり合わぬ  梨 絵
強がりの演技名前を売り歩く    のぶえ
ミズキサンダレノオヨメニナルノカナ輝 男
君の名は今ではだれもきかれない  三根子
次の世へわたしの名前決めてある  しげる
名を呼ばれ返事の出来る迄はよい  のぶ男
突拍子な名前親をうらみます    零 児
雑草にも名前あります猫じゃらし  しげる
曼珠沙華その謎めいた美しさ    智 美
初孫の名前でもある丸い家     洋 未
名前より実力で勝つ心意気     零 児
代々の名前伝承名主さま      零 児
旅の夜は宿の名前でカラコロリ   智 美
美味そうな名前をつけて売る老舗  茂 瑠
ふるさとの名前四股名で売り出され 輝 男
花の名を覚えて処女からの脱皮    鰹
この名前有名人で損をする     のぶ男
秋風が無名戦士の墓を撫で      鰹
名前まけ青いシナリオ歩きだす   のぶえ
名は体をあらわす場合どうなんだ  のぶ男
どの子にも親は大器の名を選ぶ   しげる
名前だけ立派隙間が脳にある    茂 瑠
横文字に変えて売り出す新名所   輝 男
五 客
いい人を演じてみたいわたしの名  のぶえ
女文字男名前で裁かれる      しげる
野良猫につけた名前が恋敵     アキラ
好きだけど彼の苗字が嫌なのよ   智 美
民の血を流して国の名が変わる    鰹
 人 位
命名の墨は明日の色で書く     アキラ
 地 位
先祖の名貰いいまだに不服です   梨 絵
 天 位
ブランドの名前で埋まる低い鼻   茂 瑠
 軸 吟
大望へ因む名前を見失う      平四朗


宿 題 「 和 」   堀場 梨絵 選
お互いの取柄の裏を知りつくし   満 月
お互いが疑問を持つと和が崩れ   廣 司
錆びてゆく心和ます母の鈴     敏 子
殿方のお好きな和室四畳半     重 雄
温度差が和解の道を遠くする    洋 未
投句終えモーツアルトとティータイム 薫
若誕生に日本列島が湧く平和    徳 子
もの腰が柔和で芯の強い母     由利子
お昼寝も道草もよし秋日和      薫
手のうちを見せてその場の座が和む 野次馬
八掛の色あでやかに和のこころ   豊 子
浜言葉飾らぬせりふ和ませる    しのぶ
年重ね柔和になった鬼瓦      二三子
花火師の血潮で開く和火の華    太 郎
昭和史にリンゴの歌が刻まれる   泰 史
花の名は和名で脳にインプット   たき子
やわらいだことば捜して老いの鈴  美弥子
嫁姑別居していて今平和      長 仁
平和すぎると日本みたいになっちゃうよ 圀 彦
しがらみを越えてわけ入る和の境地  亘
ありがとうの本音に和む風を吸う  昌 利
お隣もきっと望んでいる平和    五 貫
ひと言が心和らぐ処世術      まつ子
三世代ひとつの屋根でやわらかい   弘
体温を合わせ和解の席に着く    茂 瑠
まだ小骨とれないままにする和解  豊 子
銃で取る平和が銃で奪われる    アキラ
 五 客
水脈を辿れば母の港まで      美佐緒
虚しさは和平に遠くいてヒト科   圀 彦仲の良い家族でしたとレポーター  静 枝
ささやかな平和であれば安堵する  安 心
かすみ草目立たぬように和のこころ 和 枝
 人 位
うれしい話筆いっぽんが蝶になる  しのぶ
 地 位
これぞ和のこころ新米ピンと立ち   鰹
天 位
和子誕生どのチャンネルも笑い出す 五 貫


宿 題  「べったり」 池田 茂瑠 選
綿菓子で幼子の口汚れてる     二三子
触れ合った肌のぬくもりまだ残り  まつ子
べったりの砂執念の滑り込み    寿 恵
ワイシャツに言い訳出来ぬ紅の跡  泰 史
寂しさを隠すピエロの厚化粧    由利子
致死量のストレスを脱ぐ定年日   アキラ
塗り重ねルージュいつしか嘘に慣れ しのぶ
べったりと老いが背中に纏いつき  春 江
甘い汁秘書もべったり離れない   玲 子
コンビニの地べたに座る女学生   竹 水
べったりの親子になって子を壊す  亜季浩
赤紙が胸にべったり剥がれない   草 園
べったりと二人の影を見てる月   ぎ ん
親離れ出来ず仕事に就きもせず   二三子
番記者が付くうち華よなあ総理   圀 彦
死ぬ迄に着いた汚れをそぎ落す   アキラ
べったりと寄り添って居て子が居ない獏 沓
鼻声で横から酌がれ断われず    大 鯉
 佳 作
抱擁に満天の星味方する      のぶ男
影法師だって貧乏神に似る     平四朗
ホールドがべったり過ぎて踊れない びん郎
いいじゃない結婚式はすぐだから   弘
職安も歯医者も妻がついてくる   五 貫
 人 位
足崩しサテ雑談も第二章      輝 男
 地 位
べったりとついてこないでお風呂まで洋 未
 天 位
参観日机の脇に派手なママ     静 枝


宿 題「はち(表現自由)」加藤  鰹 選
女王ばちつぎつぎころすぞ怖いなあ 美 月
すずめばちきっとでさされるといたい龍 輝
やっぱりね蜂になるなら女王蜂   三根子
舞い込んだ蜂が部屋中修羅にする  泰 史
お彼岸の寺の蜂の巣煙たかろ    重 雄
一匹の蜂でサイレン越す悲鳴    安 心
蜂の毒口付けしたら離さない    草 園
蜂の子の料理初めは義理で食べ   輝 男
蜂の刺ささったままの古い傷    アキラ
蜂の巣を女がつつくティタイム   和 枝
働き蜂せっせと今日の靴をはく   和 枝
みつ蜂の稼ぎ我が家の救世主    梨 絵
蜂の巣を突きガソリンまた値上げ  政次郎
ハチ公の渋谷の駅で待ち合わせ   零 児
ハチ公になれぬ駄犬に飯をやる   昌 利
特売場お隣りさんとはち合わせ   敏 子
特売品自称セレブの鉢合わせ    博 司
八月の暦の傷が深すぎる      圀 彦
八才の記憶に残る焼夷弾      廣 司
八月の淋しさ水を買いに行く    美佐緒
八ッつあんと熊さんが言うべらんめぇびん郎
熊公も八も路地からいなくなり    薫
八ッつあんは暮らしにくいな今の世は信 一
八起き目に又も噛みつくお節介   千恵子
八起き目に見つけた職が性に合い  二三子
八起き目で掴んだ幸は譲りもの   しげる
八起き目はプライドで立つ萎えた脚 アキラ
八文字に遊女が歩む艶っぽさ    のぶ男
八の字の干菓子に母のわらべ歌   政次郎
黄八丈着せて清楚も娘にゆずる   茂 瑠
中八はイヤよ言葉のダイエット    尚
披露宴八掛けで聴く誉め言葉    静 枝
食欲の秋恨めしい腹八分      豊 子
食欲を少しなだめて腹八分     博 司
腹八分別腹八分妻の腹       まさえ
朝採りが小鉢の中で夏と言い    俊 枝
お通しの小鉢本音を隠せない    智 美
ゴマ一粒すり鉢の底逃げ回る    まさえ
八つ当たりすげなくかわす母のわざ  亘
八つ当たり当り疲れて寝る夢は   しのぶ
八十点主義に徹する軽い肩     由利子
雛壇に口八丁の寒い顔       草 園
ふる里に八つ当たりした壁の染み  穂々美
金魚鉢猫も横向く暑い夜      のぶ子
現代の托鉢なのか消費税      まさ子
捨て鉢の妥協が白い眼を集め    平四朗
勇壮に喧嘩神輿の鉢合せ      長 仁
八方美人結論もたぬ主義でいる   美弥子
すくえずに今年の金魚鉢は留守   智 美
晋三へみんな尾を振る金魚鉢    野次馬
妻と子のケンカ回ってくるおはち  五 貫
鉢巻きを締め直す手に迷いあり   たきこ
大敗の底で鉢巻き締めなおす    昌 利
ベランダに枯れてしまった鉢ばかり 二三子
夫婦道うその軌道で鉢合わせ    安 心
マネーゲーム頭の鉢へ箍が要る   平四朗
 五 客
鉢植えのバラが俺の手はなさない  洋 未
八合目野心のベール透けてくる   しのぶ
蜂蜜の甘さにコロリ騙される    由利子
八百よろずオラの神様どれだべな  圀 彦
お互いに二人連れです鉢合わせ   洋 未
 人 位
皇室に羽をもがれた女王蜂     亜季浩
地 位
原油高大八車手入れする      びん郎
 天 位
少子化の悩みへ蜂の巣がでかい   竹 水


宿 題 「自 由 吟」  互 選
E輪の中に入る勇気と出る勇気    尚
Eドングリの頃は苦しみ分け合えた 廣 司
Dときめきを忘れた壷へ花を足す  大 鯉
C洗いたてこんな私でいいですか  洋 未
C人間の言葉よ何とややこしい   輝 男
B相槌へ不意な演技を強いられる  平四朗
Bさみしくて口紅の色かえてみる  三根子
Bどしゃ降りに借りる庇も無い孤独 しのぶ
Bひと通り味見してからこの次ね  玲 子
B嫁姑たとえばヘビとマングース   鰹
B秋のドア開けると蝶が迷い込む  義 子
A紙風船のような私の正義感    アキラ
Aよこしまな鬼を一匹飼っている  由利子
A晩学が果報挑む趣味の道     零 児
Aデジタルの時計妥協は許さない  兄 六
A雲切れて決断せまる青い空    和 枝
A七坂を越えて女の樹が枯れる   豊 子
A目標があるから忍の汗を抱く   は な
Aバーコード読めたらきっと気がもめる 薫
A人差し指時々平気で人を斬る   登 志
A毛穴まで映るビジョンの顔エステ まつ子
A残り火が消えぬ自由を読んでいる 満 月
@マニュアルに一拍二礼宮参り   静 枝
@福顔でその不機嫌は伝わらぬ   たきこ
@その先が見えているとは淋しいね 梨 絵
@酔い痴れてみたい日のあり泣き黒子春 江
@鉢巻きで威勢のよさに惚れられる 俊 坊
@胸の奥セピアで笑う君がいる   智 美
@親不孝数えて長い墓掃除     五 貫
@酒の意でちくりちくりと急所突く 昌 利
@八月も過ぎて待合室にいる    徳 子
@悩み事煮込んで悩み整える    竹 水
@自販機へ孤独をひとつ転がせる  野次馬
@思い通りなったらドラマ生れない 二三子



 参加者(順不同・敬称略)柳沢平四朗、
加藤鰹、望月鐘雄、堀場梨絵、佐野由利子
曽根田しげる、中安びん郎、中野三根子、
川村洋未、長澤アキラ、中田尚、高瀬輝男
池田茂瑠、川村美月、森田安心、市川重雄
中村教子、永田のぶ男、朝比奈零児、望月
満月、堀内しのぶ、金田政次郎、内山敏子
岡村廣司、堀場大鯉、堀井草園、成島静枝
薗田獏沓、山田ぎん、高橋春江、笹美弥子
伊藤泰史、御田俊坊、鹿野太郎、竹内登志
井口薫、芹沢穂々美、横山昌利、谷口智美
大塚徳子、川島五貫、石田竹水、松野はな
安田豊子、滝田玲子、西垣博司、林二三子
中矢長仁、川口亘、戸田美佐緒、田制圀彦
鈴木まつ子、望月弘、加茂和枝、森島寿恵
石上俊枝、増田信一、設楽亜季浩、川口の
ぶ子、宮野たきこ、薮ア千恵子、山本野次
馬、提坂まさえ、山田三千代、萩原まさ子
山口兄六


定例句会 | Link |
(2006/11/26(Sat) 08:26:41)

ちゃっきり し ぞ 〜 か 弁 川 柳

こきもきに洗う肌荒ればかあ見た     柳沢平四朗
うっしょろの掃除なりきな人と揉め    柳沢平四朗
あんたらーそんな話はやめまいか     高橋 春江
いい娘だになんでお嫁さいかんずら    高橋 春江
しび〜お茶さみゃあた方が味がええ    堀井 草園
ほざけんな他人の飯はうんみゃ〜か    堀井 草園
ええずらか何時ものなりで行ったって   岡村 廣司
東京のてえが笑ったやえ〜ず弁      岡村 廣司
あんま無理すんな若きゃ〜ねえだから   加藤  鰹
ヒドロシーマンボ抜ければヒンズラシー  長谷川寅吉
おんぞくたい娘でも色づきゃけっこーだ  鈴木まつ子
何だこれあーどんじらかってささほうさ  藤野 俊子
おっこうな用事がすんでごせっおい    西垣 博司
帰省した子供のなりがおとましい     西垣 博司
名月のあの黒かぎゃ〜うさぎずら     中安びん郎
年寄りんやせ我慢してでやーこ掘る    中安びん郎
てゃーふーの天気予報はひっぱずれ    中安びん郎
増税はかにしてくりょ〜おとましい    中安びん郎

▽しぞ〜か弁コーナー大盛況。ふんとに沢山の投句があって嬉し
いやあ〜。スペースがこれっぱかだんで全部は載せられないけど、二句、三句送ってくれた方、必ず載っけるで待っててくりょ〜。
〒421‐2106
しぞーか市葵区牛妻2095の13  加藤 鰹あて
(受付随時、投句料もいらにゃあでね〜)
ちゃっきり しぞ〜か弁川柳 | Link |
(2006/11/25(Fri) 21:14:30)

「小  生」            川口   亘
赤い灯が揺れて禁酒の字を忘れ        藤 枝
手を添えば怒るくせして介護待つ
外出にこころの鍵を掛け忘れ
悩んでもこの山越えて里を見る



 「自 由 吟」            酒井  可福
秋の風本の枕が欲しくなる         北九州
名月が何だ歪んでいる乱視
積ん読のページをめくる秋の風
世間では僕を異色と呼んでいる



「雑  詠」            成島  静枝
洋上の国境線をわらう虹        千 葉
まだ誰も虹の根元を見ていない
真っ直ぐな道だ隠れるとこが無い
ママチャリは必須アイテム特売日


「結  ぶ」            芹沢 穂々美
百足競争むすんだヒモが緩みだす      沼 津
結局は言い出しっぺに役がくる
堅結びしよう夫婦でいる限り
結び丈そっと渡した芝居小屋


「潔  し」            薗田  獏沓
竹を割った様な男で潔し          川根本町
冗談の隙間へポンと置くジョーク
未練など後に残さぬ潔さ
別れてもさ程気にして居ぬ女


「過  去」            朝比奈 零児
過去の灰汁洗い流した胃の切除        島 田
胃の切除過去を断ち斬る句読点
過去幾度妻を泣かせた酒の癖
過去のことさらりと捨てた虹の橋


「となりの核」           羽田  共生
大国を揺さぶっている核ひとつ         牧之原
となりの核はよく人喰う核だ
なりふりはかまわず核をあからさま
蛸がいるか火星にカメラ歩かせる


「は な し」           石田  竹水
枯らしたら二度と咲けない花言葉      静 岡
仕合せのランクはCで太らない
二人居て恋は一つの影に成る
呑み込めん話ミキサー噛み砕く


 「虎 竹 抄」            新貝 里々子
秋刀魚焼く昭和レトロの家に住み     袋 井
しっかりとソファーについた沈み癖
段差などなんのこれしきどっこいしょ
キイキイと椅子もわたしも吐く弱音


「人生の秋」           井口   薫
紅葉前線既に手の指足の指       袋 井
頑張れと娘が渡す脳ドリル
残照を集めて詩へ指を折る
現在地人の秋です下流です


  「雑  詠」            藪ア 千恵子
追伸の本音電話でやってくる         焼 津
白黒の写真に孫が出す奇声
理想論一人歩きをして困る
擂り鉢の底に取れない猜疑心


「ラブソング」        鈴木 まつ子
ラブソング秋の哀れさただ侘びし    島 田
酔いほろろしきりに疼く恋心
つかの間の逢瀬余韻がまだ続き
何となく逢いたい気持また募り


 「  花  」            大塚  徳子
賞味期限切れてどどっと疲れ出る 仙 台
ゲコゲコ下戸とカエルが囃す帰り道
花のうちに華華しく散るがいい
自画像に細くやさしい目を描く


「末  席」         堀場  大鯉
腹案を口に出せないこの辛さ  焼 津
インテリの恋に理屈が多すぎる
父親を黙って睨むおそろしさ
見ぬ振りの情けを粋と見てくれず


  「零点・満点」       柏屋 叶志秋
他チームのファンが好きな巨人軍    山 形
映画館主役になった顔で出る
○×で零点取るも難しい
満点の答えはなぜかつまらない


 「男 な ら」             岡村  廣司
蹴られたら蹴り返しなよ男なら        焼 津
智恵と汗出せぬ男に用はない
逆風に泣きごと言うな男なら
尾を振らぬ男が見せるど根性


 「雑  詠」            設楽 亜季浩
腰浮かせ名前が違う恥ずかしさ        静 岡
いい人にされて割り勘とも言えず
ロー人形サラサラですか血の流れ
街に出た息子気遣う黒電話


 「自 由 吟」             鈴木 恵美子
うんうんと調子良い子の乱気流        静 岡
迂回してコスモスと逢う道を選り
受皿に笑いの種を盛り付ける
浮き雲に亡夫を偲ぶ秋が来る


 「雑  詠」             笹  美弥子
強がりをいわなきゃしおる夏の花    仙 台
悔いひとつ残し絡まるつたかずら
残されたいのちを洗うふたり旅
たかだかのバラ一本に汚される


「雑  詠」            寺脇  龍狂
交番の花を枯らさぬ町に住み         浜 松
年金が素通りしてく政令市
一人っ子脱線させる親がいる
入選が減って量より質といい


 「秋 の 風」             中田   尚
反省をうながしている秋の風      浜 松
やきいもも大学いももうまい秋
ドラフトのクジで決まった運不運
満月も人間様に大笑い


「秋ですね」            辻    葉
時雨くる前に約束果たします       大 阪
秋バラにどんな台詞を囁こう
背伸びする団栗だから愛される
愛唱歌「野菊」に母の影をみる


  「何となく秋」           鹿野  太郎
ドラッグが効いているのか法の網        仙 台
鉛筆は張り詰めている再生紙
コーヒーも砂糖も妥協しない祖母
コスモスが揺れる寅さん旅仕度


「秋 の 恋」             真田  義子
大海を知らずに泳ぐ熱帯魚           仙 台
荒海の中でも母は船を漕ぐ
ひっそりと終わる二度目の秋の恋
思いやりの心が解かすわだかまり


  「歩 ・ U」               増田  信一
歩み寄るその下心顔に出る           焼 津
遺伝かなほっつき歩く癖抜けず
学び舎を一歩出てすぐ家の中
一歩だけ遅れたことが今千里


  「自 由 吟」            藤野  俊子
スプーンまげ其れより地震予知をして     掛 川
失敗も苦労も宝と悟る齢
アルバムに見る子と孫が同じ顔
背に重みまだ残る孫振り仰ぐ


  「もう秋だ」            加茂  和枝
雨の音ぐずぐず続く秋になる          岩 沼
こっちへおいで紅葉の空が待っている
秋の空実のなる仕事やりかける
秋だから冬に備える冬支度


  「  肩  」            馬渕 よし子
ふり向けば駄々をこねてる影法師       浜 松
ちょい悪が肩の力を抜いて生き
どっしりと肩に食い込む父母がいる
嫁がせて返品固くお断り


  「  歩  」             阿部 闘句郎
退職へ心の駅へ足が向き           神奈川
一歩目で異常接近した二人
ナンバーワンオンリーワンへ歩き出す
二歩目からクレーム付いた足の裏


「い の ち」              安田  豊子
スキンシップだけで素直な子が育つ       浜 松
神に背いて遺伝子触れる医の倫理
長生きに秘訣など無い笑い皺
人生の坂で時々聞く軍歌


「自 由 吟」              山田  ぎん
百日紅艶やかピンク夏惜しむ          静 岡
虫の声聞き風呂上り気持ち良い
大根を蒔いて青葉線を引く


「と ぼ け」             増田  久子
気付かれるまでは内緒にしとくボケ       焼 津
「わ」ナンバーと知っててほめるいい車
ヘルメット皺まで誇張してくれる
カラオケとダンスどちらも駄目で飲む


 「冒  険」            竹内  さき
冒険を織るあふれ出る縦糸に      浜 松
悲喜こもごも私の今日をペンが聞く
このいのちわかれもできずついてくる
天までとその実をはざす女神かな


 「鍋 料 理」            金田 政次郎
蕩けてる笑顔が囲む鍋料理          静 岡
燃えかすを酢味噌に和える冷やし鍋
しみじみとぽかぽかうどん親子鍋
コクの有るあなたを煮込むタフな鍋


  「走  る」            高橋  春江
見栄はった衣に走る静電気          袋 井
向う気の強い短足よく走る
まだ少し未練が残るライセンス
青い実は鋳型が嫌いほっといて


「犬  猫」            横山  昌利
迷惑な話叙勲の通知くる           相 馬
聡明なお方で犬に会釈する
犬猫を飼って平和に呆けている
萩の葉が揺れて一息つく日暮れ


 「 事 」            宮野 たきこ
些事ながらこの充実を生きる今      岩 手
次々の用事の波に夢忘れ
きみが言う大事なことは過去にあり
目の前の仕事に追われ歳をとる


「雑  詠」            ふくだ 万年
オーイ飯言うてみたいね妻の前      大 阪
朝だから妻の愚痴聞く耳を持つ
やり遂げた自負であの世に逝くつもり
遠慮なく欠伸が出来て家平和


  「  帯  」            升  ますや
帯高く締めてシナリオ書き替える        気仙沼
帯強く締めて待ってるYES、NO
言い訳が通って帯をゆるくする
子の夢に合わせ編んでる帯袋


「雑  詠」       西垣  博司
横文字のカルテで恐怖薄められ    静 岡
スピードはエンジンじゃない酒の指示
胃洗浄まだ残ってる腹の虫
秋空に案山子どうしのテレパシー


  「雑  詠」        竹内  登志
生かされて喜怒哀楽が身を責める 浜 松
星影の道でときめきかくせない
外遊び影と遊んだ日もはるか
知らぬ間に親をまねてる眼がこわい


「雑  詠」         森島  寿恵
言葉とは世にも不思議な綱渡り 浜 松
聞き流す事も大事と思い知る
親切もほどほどにする快復時
一言の善意が結ぶ仲直り


  「ダイエット」            内山  敏子
ダイエットに負けてLLサイズ着る       浜 松
ワンサイズ細めを着たいダイエット
ダイエット忘れて秋の食を悔い
秋の食三日坊主のダイエット


「雑  詠」             川口 のぶ子
ほうずきの朱あざやかに盆飾り         藤 枝
ひぐらしの遠くきこえて夏去りぬ
ミニ畑土をおこして秋植える
冷蔵庫賞味期限でストップか


  「  秋  」        滝田  玲子
松茸の味は忘れて焼くサンマ   浜 松
読書の秋積んどく本が崩れかけ
栗よりも旨いと叫ぶ十三里
大佛がうっとりと聞くコンサート


「川柳修行中」        中矢  長仁
川柳に嵌って今が真っ盛り   愛 媛
先輩に習い揉まれて穿ち追う
しり取りのホームを追って三十句
穴埋めに首突っ込んでもがいてる


  「雑  詠」             山田  光男
今日元気夕焼け雲よありがとう         静 岡
ありのまま生きればきっと明日が来る
迷信も神も信じて生きている
意地ばかり通せぬ道もある世間


「自 由 吟」       御田  俊坊
長生きし走り続けた笑い皺      高 畠
子が巣立ち走り続けた母の汗
頂点に登ると里が遠くなる
親想う職場を嫌と都行き


  「自 由 吟」        望月  満月
言い訳を数えて悔いのないお鼻  静 岡
小休止熱い卵の中にいる
君とまた熱い思いを描きつつ
蜂の子は私ですよと見せられて


「自 由 吟」         堀井  草園
こつこつと登って星へ一礼す  静 岡
惚れぐせを剥がす小指を噛みつかれ
肩で風切らぬと雑踏渡れない
ユーモアを掴めぬ箸を握ってる


   「貸し農園」            中安 びん郎
貸し農園 園主の役はもぐら捕り        静 岡
奥様が日焼け構わず農地借り
園主よりでかい貸し地の黒カボチャ
園主より外は綺麗な標準語


「秋を見に」       林  二三子
落ち葉踏むふわふわ足にやわらかい  芝 川
秋の森きのこが顔を出している
ローカルで風を感じる列車旅
棚田ある風景平和だと思う


  「鮎三昧・・・其の一」    永田 のぶ男
藁科に稚鮎が踊る初夏の風    静 岡
ふる里は銀鱗おどる鮎の瀬な
友釣りの竿のトンボや滝の音
竿先のかすかな動き胸騒ぐ


「無  用」         多田  幹江
肩書き不要検尿の紙コップ   静 岡
深追いしない国産と書いてある
詮索ヤボよ回転寿しのイクラです
宿酔の言い訳なんか聞いてない


  「無風の旗」            池田  茂瑠
固めてた城で愛語が届かない          静 岡
強く翔ぶピアスの穴を開けてから
スリムへの願望を抱く老いてなお
無風でもあなたへなびく旗を持つ


「 瞳 」       中野 三根子
うるんでる君の瞳が話しかけ     静 岡
赤ちゃんの瞳の中に君がいる
君を待つ瞳に涙ためながら
輝いた瞳に心いやされる


  「見回せば」        川村  洋未
敵の敵さらに手強い敵と知る   静 岡
恋人もレンタルします期限付
立ちあがるどっこいしょとは言わないぞ
後ろから財布のヒモを握る嫁


「頑  固」         佐野 由利子
頑固って煮ても焼いても食べりゃせぬ 静 岡
お互いに我を張り通し無言劇
「悪かった」たった一言なぜ言えぬ
怒鳴っても果ては惚れてる方が詫び


  「こ こ ろ」           堀場  梨絵
たが為に涙は頬を濡らすのか          静 岡
空想の視野であなたの妻になる
こころまで売らぬ熟女の負けいくさ
日傘くるくる亡母と歩いたこの道だ


「  月 」             谷口  智美
初めての嘘は月夜のことでした         伊 豆
明る過ぎ月あかりの中月探す
兎くらい信じ続けていたかった
マロングラッセ今年はムーンルッキング


  「 男 V 」        長澤 アキラ
万策が尽きて独りの茶漬け飯   静 岡
小心な男ででかいホラを吹く
失恋に慣れた男の発泡酒
逃げ切れる距離に靴ぬぐ卑怯者


「コント繰り」        川路  泰山
一日を北斎になる五湖巡り   島 田
食客となってお忍の姫と会う
湯治より先ずは地酒の匂い嗅ぐ
隠れめく湖畔の宿でコント繰り


  「雑  詠」             高瀬  輝男
天気図は読めても明日の運読めず        焼 津
春夏秋冬豆腐に厄日なんかない
酒杯手にすれば議論も華やかに
善人に変われる技で波立てず


「木曽の亜紀」              山口   兄六   
語り合い切れずに別離する夜長         足 利
妻でない誰かに捧ぐ月の笛
舞い落ちる葉っぱに紛れたいパンツ
純愛のバイブルにある憎悪劇


「善 と 悪」                望月   弘
新聞を見ないと今日がわからない     静 岡
四捨五入よりも僅差でバカになる
原っぱの放尿ウツが消えている
善と悪コレステロールお前もか


 「Fコード」            加藤   鰹
萩の花ぽろぽろ涅槃へと続く      静 岡
越えられぬものに女とFコード
さそり座でAB型でホットです
牡蠣酢って哀しい味がしませんか


   顧  問  吟 
 「わだかまり」       柳沢 平四朗
口癖の言葉言葉を探らせる           静 岡
怒る時怒るあざとい真っ正直
水臭い水を向けてる蟠り
八十路なおたかがされどの風景画




虎竹抄 | Link |
(2006/11/26(Sat) 07:26:41)

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