自 由 吟 虎 竹 抄
「雑 詠」 石井 昇 捨てたのにやっぱり海に来てしまう 蓮 田 遠い日に父と作った砂の城 嬉しさの涙は熱きものと知り 恐ろしい話をどうもありがとう
「もうすぐ春」 小林 ふく子 春の音するまで毛糸編んでます 袋 井 足跡が消えかかります春はそこ 一番に出した芽だから摘んでおく 花便りそろそろ床を上げようか
「笑 い 話」 増田 久子 無人駅ただで乗る気の人も来る 焼 津 塾通いしても遺伝子元のまま 沿道の大声援で走るビリ 使用前使用後逆もある写真
「フリーズ」 毛利 由美 あれ以来がらんがらんの冷凍庫 つくば 失言に凍りついてる関係者 抱擁をされて固まる異国の地 家族には内緒再解凍カレー
「雑 詠」 井口 薫 雑念も生きてる証ヤジロベー 袋 井 おおかたの場に根を張れる雑種です 雑学を秀才に説くクラス会 壁一重時差も格差も雑居ビル
「自 由 吟」 藪ア 千恵子 しっぺ返しされて落ち込む正義感 焼 津 口チャックしないと愚痴が溢れ出る 聞く耳を持たずに帰る良い話 強烈なパンチ浴びせにくる笑顔
「 心 」 鹿野 太郎 傷付いた形で落ちて来る涙 仙 台 ささやかなプライド僕を苦しめる 歳重ね軽くなったか胸の石 大冒険決めた社長に身を砕く
「漂 流」 新貝 里々子 豹柄のマフラー疑似餌かもしれぬ 袋 井 思考停止魂神の思し召し ピンヒールおとこひとりを串刺しに 切なくて泣くこともある夜更けまた
「白 い 息」 濱山 哲也 消しゴムが降って一面画布になる つがる 吹雪止む笑顔眩しい青い空 性善説信じています白い息 雪国に生まれた父の黒い首
「節 分」 増田 信一 鬼は外間違えたふり妻の背に 焼 津 腹は内メタボ糖尿血圧と 鬼と福貧乏神に追い出され 鬼だってピンキリあるよ福だって
「怒り川柳」 山本 野次馬 社長だと威張るが社員私だけ 函 南 おはようの声で娘はそっぽ向く 娘は一番風呂私は終い風呂 親指で始まる味気ない会話
「軽いごみ」 寺田 柳京 辞書にない言葉が老を愚弄する 静 岡 国会のテレビで俺も眠くなり 植林の昔をうらむ花粉症 年寄りの二人ぽっちの軽いごみ
「三 月」 金田 政次郎 誰が為の鼓調べや春の宵 静 岡 抵抗の雛人形の無表情 桃色に染まり少女が脱皮する 有難いよいしょ支える妻と居る
「モアイ像」 瀧 進 言い訳は何んにも言うなモアイ像 島 田 定年を待ってる俺もモアイ像 野暮言わぬ男どっしりモアイ像 人類の明日見えますかモアイ像
「 色 」 馬渕 よし子 反発をして塗り替える自分色 浜 松 色褪せた夫婦茶碗が重すぎる 似合わない朱がこんなに好きになり 美しい国から明るい色が消え
「智 恵」 岡村 廣司 言い訳の仕方で智恵の程が知れ 焼 津 入れ智恵を妻に復習して出掛け 智恵の無い親でがんばれしか言えず 智恵袋有るのに補充間に合わず
「雑 詠」 酒井 可福 石つぶて三回ジャンプ諦める 北九州 少子化の町にも親の無責任 越後屋の擦り手の真似が似合う奴 温暖化騒げば寒く成る季節
「人 柄」 鈴木 まつ子 人柄がいいとその気になってくる 島 田 天然の笑いど忘れ物忘れ 人柄が良すぎて見えぬ落し穴 日々好日明るさだけは持ちつづけ
「角 砂 糖」 加茂 和枝 揉め事にたっぷり時間塩胡椒 岩 沼 バラバラの家族をつなぐ母の味 サービスは笑顔ひとつで事足りる 時間だけ過ぎて平和な角砂糖
「温 暖 化」 佐藤 香織 大気層開けてはならぬ開かずの間 福 岡 水中の稲作農家大繁盛 海草の野菜畑がトレンディー 進化して大海泳げ鰓呼吸
「自 由 吟」 石上 俊枝 うちの鍋ネギがギューッとでかい顔 静 岡 欲のない人ほど金は転げ込む あの世まで金金金と掻き集め ストレスを捨てに集まる縄のれん
「明 U」 西垣 博司 あの角の先に明日が有ると云う 静 岡 明け方の夢は朝日に溶けぬまま 人並の明るさの灯がわが家にも 本心は明かさぬままでひとつ屋根
「初 春」 芹沢 穂々美 ブーツはく大根足の照れ笑い 沼 津 ポチ袋とび交う親の胸の内 おせちにも来し方の味受け継いで 機器文字の謹賀新年味気ない
「勝 負」 塚本 寄道 目標へ最初の一歩踏み出した 長 泉 いつだって本気を出して勝負する 乗り越えた経験ボクのエネルギー 白か黒つけてはならぬ事もある
「 薬 」 鈴木 千代見 雨の日に笑い薬を買いに行く 浜 松 薬になる酒にしておく今日の酒 妙薬と梅干を貼るおばあちゃん 失敗を耐えて見守る父と母
「雑 詠」 ふくだ 万年 嫁さんを変えず米寿の仲間入り 松 原 痴話げんか目線ずらして仲直り 書いたメモメモの置き場所メモに書く 老いたなぁ手摺り階段選んでる
「小さな夢」 真田 義子 フラスコの中に小さな夢が咲く 仙 台 女偏夢ひとすじに生きて行く 我が胸に冬の蛍が迷い込む 笑うたびしわを伸ばして生きてます
「雑 詠」 寺脇 龍狂 上るほど詫びと謝罪のメカニズム 浜 松 郵政の年賀ハガキはキレイ過ぎ 囚徒にも見せてやりたい星月夜 初メールまず○○へ送信し
「鬼 は 外」 薗田 獏沓 優しさも鬼面で隠す天の邪鬼 川根本町 鏡見て鬼も優しい顔になる 柊が苦手な鬼が憎めない 鬼は外拾った豆は落花生
「雑 詠」 内山 敏子 用心をしながら敵の策に落ち 浜 松 友情を恋と信じていたピエロ 欲の手がたんまり狙うつかみどり 腰のばす時間が長い老の鍬
「夕 焼 け」 畔柳 晴康 奇麗だな想い出よぎる夕茜 浜 松 今一度夕日のように燃えたいな 眞っ赤だよ退き際映えて幕を引く 夕焼けだ明日も良き日と手を合せ
「糸 口」 戸田 美紗緒 やさしさのひと言靄が消えました さいたま 手がかりを探して夜の米を研ぐ 春日和あすの私を抱きしめる 菜箸を揃えて語尾を改める
「如 月」 成島 静枝 如月に新年会が三つほど 千 葉 節分会雪掻きをするうちの鬼 立春の声省エネを励まされ バースディ一日延びる閏年
「冬 半 ば」 辻 葉 雪降りの街のりんごが着きました 大 阪 つくり話を咎めはしない冬の夜 お湯割りの焼酎とワインが並ぶ さくら咲くその頃まではノーメイク
「雑 詠」 安田 豊子 輪の中に乗れず二の足踏む辛さ 浜 松 ふらついた足に絡まる請求書 雑草で生きて悔ない七十坂 過去の無理仲よく暮らす今が花
「雑 詠」 川口 のぶ子 さわやかに明けて初日を拝みおり 藤 枝 七草の粥に心も暖まる 暖かな日差しに猫の髭動く お年玉あちらこちらへ旅をする
「読 む」 鈴木 恵美子 時を読むキャスター世界へ目を配り 静 岡 母の膝童話づくしへ子の寝顔 しおりからあの日の想いこぼれ出る ウフフフフこらえ切れない本といる
「捩れ舞台」 堀井 草園 左利き口より前へ顎を出し 静 岡 桃色吐息鼻水だけはまだ拭ける 下手な嘘顔色だけはおてのもの 十二才進化もせずに馬鹿踊り
「 葦 」 大塚 徳子 ジャガイモと思えば気持ち楽になる 仙 台 一本の葦の善し悪し見える底 足を地につけて生きよう農作業 雨上がる明日の山から陽は昇る
「ある夫婦」 中矢 長仁 悪友が祝辞を買って出ると言う 愛 媛 付いて来るかい山坂あるが夫婦旅 孫の声聞いてジジババ顔ゆるむ 眼で話す口は要らない老夫婦
「近 況」 川口 亘 介護の手口惜しいけれどちから借り 藤 枝 どうしたの自分のからだ他人が住み 手加減に容赦はないか遊ばれる 気にすればする程辛い身の不承
「雑 詠」 滝田 玲子 ペット様我が家のポチも家族並 浜 松 刑務所もバリアフリーという時代 伝統の箱根を走るあつい息 聞き上手話し上手で輪がはずむ
「自 由 吟」 山田 ぎん 静岡は雪も降らない暖かい 静 岡 曾孫可愛い歩き始めて笑顔見せ 裏の川小鳥が餌を取りに来る 子供たち仲良く学校帰り来る
「老 化」 中安 びん郎 老化とは病気で無いと医者が言い 静 岡 起きる度毎朝老化新記録 家内より貴重な物に杖が有る 林無くば杖を探し様が無い
「翔 ぶ」 林 二三子 自分へのご褒美を買う誕生日 芝 川 旅の空主婦を忘れて翔んでいる ひとまわり先も翔びたい年女 カレンダーが予定で埋まる有りがたさ
「鮎三昧・・・其の十七」 永田 のぶ男 健脚についていけないご老脚 静 岡 努力家も囮が浮いたビール党 汗しぼり入賞なんぞ屁でもない 締め切りに軽量の缶山となす
「立 春」 中田 尚 こよみだけ春だ春だと騒ぎ出す 浜 松 セーターを脱いだらあれれ春の雪 まだ寒いクビをちぢめる福の神 救われたまだあたたかい甘酒に
「白 加 賀」 柴田 亀重 あって普通さ一人一台自家用車 沼 津 ジジババはネズミモグラか穴の中 白加賀よ今年こそ生れ梅の花 メジロちゃん今日は寿太郎オゴリだぜ
「チョコレート」 中野 三根子 義理チョコを集めたパパはニッコニコ 静 岡 こっそりと私にひとつ高いチョコ チョコが好きやっぱり母とチョコが好き バレンタイン今年も家族で食べくらべ
「つれづれに」 堀場 梨絵 恩給の額が私の付き合い費 静 岡 女傑にもなれずピンチを我慢する 欲張りの多趣味いつまでやれるのか 思い出と共に私もたそがれる
「北 の 酒」 池田 茂瑠 姫ダルマだけで孤愁の部屋飾る 静 岡 左遷地の銘酒住みよい北だった 妻という肥満の謎が横にいる 簡単に終止符を打つ癖と老い
「ショッピング」 川村 洋未 バーゲン品ゼロの多さに手を離す 静 岡 ストレスがバック一つに化けた時 見るだけと言って帰りは大荷物 試着室こんな私もかわいくて
「February」 谷口 さとみ 豆撒きで鬼が出てゆき土笑う 伊 豆 淋しがりダダッ子の冬なごり雪 ホワイトデー渡せぬままのチョコ食べる リスト見て土産のように配るチョコ
「ビッグジム」 山口 兄六 七転び八起き早起きなのは妻 足 利 終電で電車男は売れ残る 大胆になれる世界は君のため 失恋に耐えられるかなGショック
「しあわせのかたち」 真理 猫子 前向きになれば出口のない炬燵 岡 崎 真冬でもプラス思考の熊になる 真っ直ぐの基準は猫に任せてる しあわせを形にするとアメーバー
「遠慮なく」 石田 竹水 無器用を武器に遠慮なく生きる 静 岡 まかせとけ最初に俺が毒見する 振り向いたから見たくない物を見る どん底を歩いたなんて甘えてる
「わたくし」 多田 幹江 わたくしの波長に合わぬノッポビル 静 岡 テンションの高い人には触らない 友だちのお友だちから買うサプリ 私の敵はわたくしでしたハイ
「自 由 吟」 佐野 由利子 ごちゃごちゃと煮込んで冬の鬼退治 静 岡 そこそこの暮し私のティータイム どんどんと仲間が減っていく不思議 のろのろと見えてチャッカリ者である
「追 憶」 川路 泰山 とんぼ追い稲叢に伏す ててなし子 島 田 稲叢と犬の乳首を母代わり 紺碧の空へ届かぬ相聞歌 結跏趺坐 遠いところで鳶の輪
「雑 詠」 高瀬 輝男 課題一つ解けた芯から笑えるぞ 焼 津 とどのつまりはすべては霧の中に消え 儀式好きなピアノで君が代が得意 柿を剥くこの昂りは沈まらぬ
「人 格」 望月 弘 品格を朝の鏡へ貼っておく 静 岡 ブランドはいつも心に着せている いちにちを生きた自分を誉めてやる 人格の坂を転げていくことば
「ディスペラード」 加藤 鰹 冬銀河愛の台詞が見つからぬ 静 岡 ケータイも僕もそろそろ電池切れ 感謝状よりも福沢諭吉かな 産めよ増やせよ戦後を生き抜いたネズミ
顧 問 吟 「 夢 」 柳沢 平四朗 ハイテクの夢へ動きの取れぬ壷 静 岡 自分だけの定規で計る保身術 ひけらかす夢が生活を傾ける 可愛げの無い老練の孤独癖
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[110] (2008/03/26(Tue) 08:47:12) |
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