自 由 吟 虎 竹 抄
「洗 濯」 鈴木 千代見 帰省する洗濯物も連れてくる 浜 松 太陽を追いかけながらお洗濯 今日は晴れ旅へ心のお洗濯 洗濯機嫁も姑も絡み合い
「自 由 吟」 ふくだ 万年 首の上外して見ればえぇ姿 大 阪 暇だから今日もお医者の梯子する 梅雨ですね嫁と紫陽花七変化 逝く時は傘が無くてもいいらしい
「あじさい」 鈴木 恵美子 紫陽花に内緒話を盗まれる 静 岡 あじさいの季節別れた友を恋い あじさいが廃墟の庭に咲き誇る 雨の日のペンは静かに燃えている
「雑 詠」 井口 薫 呑み込んだ言葉でメタボ加速する 袋 井 なぜだろう棘抜いてから孤独感 躓くと怒りどんどん遡り 原油高廻転寿司へ自己規制
「ある一日」 増田 久子 調律の日だけピアノの蓋が開く 焼 津 幸運の財布もキャッシュ出てくだけ 大根がこんなに増えたかつらむき 冬ソナの曲とっときのメール着く
「父 の 日」 岡村 廣司 父の日が話題になった事もない 焼 津 父の日もやっぱり被るヘルメット 父の日と日記に書いておいただけ 父の日はビール多目に飲んで寝る
「雑 詠」 石井 昇 さだめなら青空なんか望まない 蓮 田 同じ月見ても泣く人笑う人 沈黙のままでエロスの夜が明ける はらっても未練目にしむ薄煙り
「 震 」 高橋 繭子 ポジティブなひとは気づかぬ小地震 大河原 中地震みな平等に揺れている あっという間に引き裂いた大地震 かなしみの数だけ襲いくる余震
「自 由 吟」 松橋 帆波 談合で僕らはみんな生きている 東 京 万歳が好きで羊の無責任 ヨン様の国 日の丸を焼いている 白人がやられりゃみんなテロにされ
「自 由 吟」 提坂 まさえ タマネギがすきとおるまで第五聞く 静 岡 大荷物幸運いつも入れ忘れ 小雨降るフランスパンをたてて持ち 紫陽花の決めかねている今朝の色
「聞 く」 薮ア 千恵子 片意地の付けが回った肩の凝り 焼 津 しびれ出す足を笑っている正座 一聞いて十を知るには足りぬ脳 ふんふんと聞いて返している自慢 「淋しい日」 金田 政次郎 合歓の葉の眠り羨む不眠症 静 岡 ペタンコの夢で風船伸びている 夕闇に飛ばそう俺の処方箋 仏様休憩室は何処ですか
「梅雨明け」 小林 ふく子 にわか雨濡れて歩いた日の想い 袋 井 雷に次の予定が脅えてる 理由などいらない汗がひた垂れる 夏が来て避暑地の財布喧しい
「聖 火」 成島 静枝 チベットを引き摺っている聖火隊 千 葉 海外じゃトーチリレーと単に言う 政争でもみくちゃになる聖なる火 それはそれオリンピックは楽しみだ
「雑 詠」 萩原 まさ子 赤い糸結びきれずに空を舞う 静 岡 プロポーズあじさい色の返事して 宵宮の小粋な娘豆しぼり うさぎ小屋だから家族の目が届く
「運 命」 真田 義子 運命で繋がれていた赤い糸 仙 台 淡い恋記憶のすみでまた燃える ほろ苦い思い出混ぜて飲む紅茶 雨の日の言い訳電話鳴っている
「クロアチアの旅」 新貝 里々子 こんにちわが通じるアドリア海はブルー 袋 井 スクワットの成果城壁登りつめ 夫婦喧嘩 世界遺産の真ん中で 腹いせにド派手なピアスふたつ買う
「雑 詠」 芹沢 穂々美 花結び急いで開けるいい予感 沼 津 踊りすぎ腰痛になるフラダンス 祭りばやし女ごころが乱れます 踊らされ自治会の役引き受ける
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 拝啓も時下尊堂もないメール 浜 松 姉が逝き明治は遠くなりにけり 子の噛んだ残り医療がかじりに来 超後期霞食っても生きてやる
「家 族」 塚本 寄道 父と僕悪いとこだけよく似てる 長 泉 じいちゃんの倉に宝がありそうだ ごまかして甘えてみても母は母 試験前母の小言と焦るボク
「自 由 吟」 内山 敏子 スッピンの化粧忘れた働く手 浜 松 バス待ちへ笑いころげる手話の子等 衝動買い朱に年齢ふと忘れ ウインドーの程でなかった海老フライ
「一 週 間」 濱山 哲也 月曜日支配者顔でやってくる つがる 火のようなトラブル水をかけまくる 木の陰に隠れて五時に現れる 週末は幾ら追っても逃げていく
「雨を楽しむ」 中矢 長仁 気まぐれな私アジサイ雨が好き 松 山 雨が好きカエル・アジサイ・蝸牛 夜降って昼は仕事の出来る慈雨 梅雨空も初夏の風物傘を買う
「 窓 」 山本 野次馬 平成の窓で足踏みするラッパ 函 南 産道へ夢いっぱいの窓があく 駄菓子屋の扉にオールウェイズの窓 空っぽの小窓に百彩のドラマ
「初 夏」 毛利 由美 生足の白さまぶしい初夏の候 つくば 序の口の暑さに向かう扇風機 健全な子が塗っている日焼け止め オープンガーデン見せたい人と見たい人
「小 宇 宙」 栃尾 奏子 店内を心配りで敷き詰める 大 阪 タカイ下駄響く頑固な店の奥 臨月へ妻のまあるい小宇宙 愛のある暮らし始めるエコバッグ
「梅 雨 空」 西垣 博司 貯水槽担いだ雲が居候 静 岡 空に海有るかのように降りつづく 予報ではカサは要らぬと云った筈 梅雨空の一服を待つ屋根仕事
「 風 」 薗田 獏沓 電子辞書晩学の脳かすめ吹く 川根本町 いい風が吹いた僕らも仲直り 涸れかかる詩情微風吹き渡る この風に乗って幸せ掴もうよ
「 錆 」 安田 豊子 いつまでも錆びた肩書き鼻にかけ 浜 松 錆ついた脳にも消えぬ記憶力 ローカル線錆びたレールを渡る猿 風鈴の渋い音色も錆びてこそ
「自 由」 酒井 可福 ATC気軽に預金が借金に 北九州 耳寄りの話は一歩引いて聞く どん底に居てもデッカイ夢をみる ほどほどに大人を真似て叱られる
「メリハリ」 大塚 徳子 野球とや盗んで刺してなんぼやで 仙 台 ガソリンに振り回される四月バカ モロコシを人と車で奪い合い 昼行燈メリハリつける句読点
「 背 」 鈴木 まつ子 背中にも眼はありますよ読む空気 島 田 背中から漲る気迫芸も冴え お疲れの背骨を伸ばす呼吸法 人生のイロハ辿って色を足す
「眠 気」 馬渕 よし子 マンネリの暮らし一日眠気差す 浜 松 目覚ましが鳴ると眠気が倍になり 年金が減ってやる気が失せ眠気 飽食に慣れて心地の良い眠気
「自 由 吟」 山田 ぎん 太陽に輝く風車鯉のぼり 静 岡 嬉しさは丸をふたあつ大はしゃぎ 今日こそは勝つと意気込み勇み足 試合無い雨で出来ない空見上げ
「希 望」 畔柳 晴康 高いのは望だけにて身は低い 浜 松 今日も又不出来で終る高望み 雨が降る望ねがいは明日にする 稔らない後期高齢夢ばかり
「さくらさくら」 瀧 進 断ち切れぬ思い未練の花筏 島 田 葉桜になって堤の風を恋う 咲く春も散る春もあり山桜 金さんの桜吹雪に悪も散る
「雑 詠」 滝田 玲子 ながながと未練残した飛行雲 浜 松 句が出来ず焦りエンピツ転がされ 再生紙森の緑にいやされる 角とれた石がやさしい顔してる
「自 由 吟」 竹内 さき も一人の紅落ちぬ間にカンナ炎ゆ 浜 松 踊ろうよ芸ない影と夜明けまで 入れ替えた私の姿歩幅かえ 暮れなずむ夕焼けの海手をつなぐ
「雑 詠」 飯塚 すみと 朝の廊蛞蝓一匹頭あげ 静 岡 小書店の隅が中二の談話室 朝青龍負ければいいと妻が言う 年になりやさしい方の辞書を買う
「わが家系」 中安 びん郎 わが家系農業が好き土も好き 静 岡 わが家系音楽が好き歌も好き わが家系のんびり型で長寿型 わが家系胴長短足力士型
「白百合が咲く」 柴田 亀重 鶯が近くで美声梅雨晴れ間 沼 津 連日のシビレ・悪寒のナゾ解けず 幸せに八十越し生かす安定剤 祝長寿支える妻がいる強さ
「自 由 吟」 小野 修市 仕事行く妻に見えない尻尾振る 静 岡 めざわりなメタボも好きさ俺の腹 ポイ捨ての顔が見たくて後を追う 一度だけ信じた そして泣かされた
「日 常」 堀場 梨絵 台本のない演技を今日もしています 静 岡 その先へ待ったをかけるのも日課 がまんしたから今日はごほうびあげようか 矢面に立っても命まだ達者
「六 月」 増田 信一 水無月と何で付けたの入梅に 焼 津 六月と思う暇なくすぐ師走 半年で稼ぐお仕事ありますか 六六六六六唸っていたら梅雨明けた
「自 由 吟」 林 二三子 訪販の罠を見抜ける歳になる 芝 川 身長が年取る毎に減る辛さ 老化かな許せることが多くなり 右左脳を塞がぬためによく喋る
「御 招 待」 石田 竹水 晴れた日は喜び半分温暖化 静 岡 天国の消印で来た御招待 鉄よりも強くてやわい思い遣り 老いの日々寝るのも惜しくなる時間
「鮎友釣り三昧・・・其の二十一」永田 のぶ男 つれづれに誘いさそわれ鮎河原 静 岡 雨の日も風にもめげず鮎が呼ぶ 釣り師には雷さんは嫌な奴 ハス任せ遡上の川に苔任せ
「生 渇 き」 多田 幹江 灰汁抜いて軽い女になりました 静 岡 他人は他人今日も暮れゆく無言坂 人間を乾しに出ましょう梅雨晴れ間 老春の陽だまりにいる生渇き
「市民川柳葬送曲第八」 長澤 アキラ おにぎりが駆け出して行く五月晴れ 静 岡 流れ矢に当たったような絶頂期 みよちゃんと落書きをした寺の塀 五月晴れ 妻にもばれず別れたし
「ピンク・デビル」 川路 泰山 桃色の鬼が笑っている谷間 島 田 大きな河だな少し泳いでみるか 悪臭を放つ河ならぶった切る 強引に生きて漢の譜を綴る
「青 い 鳥」 池田 茂瑠 騙された祭りだ笑い過ぎぬよう 静 岡 青い鳥君には羽根があるのだね 花が咲く女の罠の渕なのか 私まだ蕾ゆっくり開きます
「寵 愛」 山口 兄六 神様に頼み忘れて今日の雨 足 利 見え透いた自己紹介に騙されて 寵愛の迷路 私は花菖蒲 うっかりと妻に漏らしたボーナス日
「匂 い」 真理 猫子 禁煙のタクシーだけど酒くさい 岡 崎 きな臭い還元水で育つ芋 裏切りの匂い漂うクオカード 与野党の切り札おなじオヤジ臭
「自 由 吟」 今井 卓まる したくても自慢できないツーショット 浜 松 足元で仕事終わるを待つ子猫 理攻めして客に勝ってもノルマ負け アリバイに使った店は定休日
「かけひきゲーム」 谷口 さとみ 人相の良くない招き猫がきた 伊 豆 嘘と知りながら待ってる逃避行 捨てたいが鏡は秘密知っている 君が今食べたケーキは人参よ
「おもいきり」 中野 三根子 心からさけんでしまうありがとう 静 岡 夢の中やっぱり今もおかあさん 夢で良いやさしい君とただ握手 青い空ただそれだけで感謝する
「マナー違反」 中田 尚 ああこわい人形いくつ潰すのか 浜 松 十五才親のタスポを使わせる ケータイででっかい声の独り言 押し車わざと後ろを蹴らないで
「薔 薇」 川村 洋未 芽は出たがここには薔薇を植えたはず 静 岡 どの薔薇を連れて帰るかまよい道 しおれても薔薇の姿はとどめたい あの薔薇は他人の庭で動かない
「忘 れ る」 佐野 由利子 忘れごと多い自分に腹が立ち 静 岡 出来ないと思わせるのも一つの手 ライバルのテンポに合わすことは無い おやアンタも私と同じ猫嫌い
「雑 詠」 高瀬 輝男 空想をケタケタ笑う流れ雲 焼 津 笑えない事故を笑顔で応えてる 混迷の世を跋扈する悪企み 去って行く背中悔しさかくさない
「花 泥 棒」 望月 弘 運のいいことに躓く石がない 静 岡 花好きの花泥棒を許せない 真っ白に漉かれた紙がウツになる ふるさとにのるかそるかの三世代
「自 由 吟」 加藤 鰹 初恋の日に揺れているタチアオイ 静 岡 ずるいのが一人たちまち醒める酔い 温室の中で育てた殺人鬼 謎一つ解けて僕らの梅雨が明け
「五月の風」 柳沢 平四朗 子に負けて五月の窓の風と逢う 静 岡 どんじりを笑う元気が憎めない 前頭葉枯れて積ん読しおり棚 天引きで楢山行きを急かされる
|
[124] (2008/07/24(Wed) 09:34:57) |
|