自 由 吟 虎 竹 抄
「蜃 気 楼」 戸田 美佐緒 風向きが変われば消える蜃気楼 さいたま 石を蹴る石の行方は語らない 正解が浮かんだ夜の洗面器 恥かいてかいて林檎が熟れてくる
「カナブン」 大塚 徳子 物価高元気なくなり死にかける 仙 台 もしかして食べ残しかもAランチ 近頃は大人隠れて悪さする 侵犯かカナブンブンが行き来する
「自 由 吟」 竹内 さき つゆの雨あれは涙か失恋か 浜 松 夕顔が匂う君の名呼んでみる でんと赤い夕陽の向こう見たくなる ふる里の森平泳ぎするロマン
「平成二十歳の夏」 濱山 哲也 夏だから稲川淳二ショーが来る つがる 草などに負けてたまるか溶き卵 二十歳だが平成とても疲れてる 似合わなくなったTシャツまた一つ
「近況報告」 毛利 由美 雑草と同じ速度で成長期 つくば お馬鹿な子に夢を持たせるお馬鹿キャラ せーのーで梅雨の晴れ間に布団干す 抜歯して知る血の味は鉄の味
「雑 詠」 石井 昇 嘘っぽい顔でならんだ握り飯 蓮 田 半煮えの鍋で議論をする豆腐 薄墨の心に白い月が出る 浮雲の流れる果てや曼珠沙華
「性 分」 岡村 廣司 市役所へ入るときょろきょろしたくなる 焼 津 銀行へ入るといつも萎縮する 病院へ入ると何故か落着かぬ 警察へ入ると水が欲しくなる
「ちゅら海」 栃尾 奏子 蝋燭がユラリ私の過去未来 大 阪 踏み込めぬ溝に流れる親の愛 ちゅら海よ心洗濯しに帰る 切なさを抱いて少女の羽化間近
「 海 」 小林 ふく子 約束の海には少し遠い足 袋 井 海と会い無色の水になっていく 気晴らしに海へ心を預けます 夏の海人食べたいと言わないで
「家 族」 鹿野 太郎 ぎっちりと昭和が詰まるI・POD 仙 台 やけくそで鳴く日もあろう雨蛙 フィアンセと重い御輿を担ぐ父 玄関の前に消えない水溜り
「暮 ら し」 新貝 里々子 あれそれのあれがあれからないのです 袋 井 そば枕安定剤も切れました バリアフリーの家で足あげ体操 妻という季節外れのからっ風
「祭 り」 塚本 寄道 お祭りの道路に並ぶ宝箱 長 泉 友と行く夜店ワクワク夏祭り 夏祭り同窓会になる夜道 塾帰りビルの谷間に見る花火
「雨 の 日」 芹沢 穂々美 雨の日は間違い電話さえ来ない 沼 津 昼から雨たっぷり充電できました 愚痴よそう雨の日ぐらい笑いたい 雨音に予定を変える日曜日
「雑 詠」 鈴木 恵美子 精一杯派手に泣いてるボクといる 静 岡 ポケットにアメ年だなと苦笑い ダイエットしてよと膝に攻められる 昨日春今日は夏日と着ては脱ぐ
「雑 音」 馬渕 よし子 聴診器不平不満をまた捕え 浜 松 雑音が消えて孤独を噛み締める 雑音の中で闘志が燃え上がり 雑音と思って妻の愚痴を聞く
「警 告」 井口 薫 パソコンがまたオーナーに警告す 袋 井 スニーカーの底が警告する歪み 警告がずらりと並ぶ説明書 クリックを躊躇承諾書の厚さ
「亡 父」 酒井 可福 改心の涙で研いだ父の魂 北九州 物言わぬ遺影の父が返す笑み 結果論育児放棄の父である かあちゃんに詫びろと言って酒をかけ
「雑 詠」 成島 静枝 カタカナ語メタミドホスは載ってない 千 葉 思い出すことで報いる母の恩 留守にするキッチン二泊分磨き ご褒美に働き蟻に買う新車
「 数 」 安田 豊子 失敗の数だけ夢をふくらます 浜 松 未知数に挑む私の生命線 つまづいた石を数える余命表 付き合いの陰に隠れる嘘の数
「雑 詠」 滝田 玲子 世渡りのノウハウ学ぶ縄のれん 浜 松 満月のロマンを過去にする宇宙 晩学の余白に写経しめくくる のらりくらり口は達者で上手く逃げ
「自 由 吟」 真田 義子 紫陽花がゆっくり咲いて梅雨に入る 仙 台 シナリオの通りに今日も歩き出す あの時の嘘が今でも光ってる 生きているだけでうれしい今日の空
「ギ ー」 鈴木 千代見 振り向いて風のいたずら影もなし 浜 松 油切れ人間ドック行かなくちゃ そっと踏む築四十年だからなあ 送り出し胸さわぎして外に出る
「青 春」 加茂 和枝 春ごよみ農の季節がやってくる 岩 沼 気持ち良い空気が顔を撫でて行く おとなしい喧嘩相手が気にかかる たっぷりと今が青春言える年
「オンリーワン」 瀧 進 子を連れて女房無言の里帰り 島 田 父の日は毎日ですと酌をされ 月末の女房神様ほとけ様 「ありがとう」愚妻よ俺のオンリーワン
「長 生 き」 金田 政次郎 三代を生き三代に悔があり 静 岡 閻魔から催促が来た読み捨てる お詫びして娑婆の片隅借りてます 自らと向き合う弱さ蝉しぐれ
「自 由 吟」 内山 敏子 寄り添いて心遊ばすコンサート 浜 松 コンサート足からやって来る冷気 誕生日明日から後期高齢者 級会おしゃべりの種どっさりと
「無 情」 鈴木 まつ子 人の逝く静寂無情の雨が降る 島 田 無情にも家族置き去り許されぬ 脛齧り情け知らずな子に育ち 今更と根掘り葉掘りとおせっかい
「気 休 め」 山本 野次馬 一時の笑いが気休めを誘う 函 南 念じてる気休めなんて脆い物 カラカラ喉からわめく常連語 有頂天煽てた脳へサロンパス
「区 切 る」 薗田 獏沓 激動の昭和戦争で一区切り 川根本町 街の灯の悲喜それぞれにあるドラマ 先代と区切りをつける三代目 喜寿米寿白寿と区切るよい讃辞
「自 由 吟」 ふくだ 万年 小走りで試食に並ぶツアー客 大 阪 後ろから嫁が糸引きジ・エンド 嫁の部屋時々ノックして暮らす 席ふたつひとり占めしてひとり旅
「実 感」 川口 亘 暫くはそっとしてねといい笑顔 藤 枝 云うことにこと欠いて知る付け焼刃 仕草だけ追って道理に近づける 揚げ句には出来ないことで音をあげる
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 あじさいがうるさい程に路に咲き 浜 松 父の日も戦争ぐらいに忘れられ スピードでもしも負けたらどなんしよう 蝸牛見えぬ葉陰に季語が泣き
「法 事」 畔柳 晴康 読経する僧侶片手で汗ぬぐう 浜 松 大伽藍木魚すずかぜ孫眠る 法話聞きあとは包んだ金寄進 法要を済ませヤレヤレ軽い肩
「 春 」 川口 のぶ子 暫らくは春と云う季に遊ばれる 藤 枝 夢うつつのどかに春の息を吸い そっと手に抱いた春から空を見る 手拍子が春と遊んでさくら堤
「しりとり川柳(避暑)」 中矢 長仁 梅雨明けの猛暑になった避暑に行く 松 山 避暑に行く場所は我が家の霧ケ峰 霧ケ峰冷房病で点けられぬ 点けられぬクーラーせめて風送る
「幸 せ」 中安 びん郎 幸せになるには欲を無くすこと 静 岡 火星には水があるのか五分と五分 小姓より豊太閣に成り上がる 付き合いは細く長くとよくおごり
「雑 詠」 柴田 亀重 お絵描きも下手で無理だと言う手本 沼 津 箱ばかり残る政治に似てる家 見た目良い悪い仕事と語らない 此のグチを捨てねば妻に捨てられる
「自 由 吟」 山田 ぎん 白内障手術したのでよく見える 静 岡 家の前花が見事に咲き競い 食事前ビール飲んでるいい笑顔 ビアガーデンみんな笑顔でさわいでる
「雑 詠」 飯塚 すみと 盲学校名称替わり偉くなり 静 岡 ミカン買いチョコ買い満足行楽日 しっかりとたたむ癖あり潔癖症 日曜日金魚水替え待っている
「なんだかな〜」 小野 修市 物価高目尻の皺も吊り上る 静 岡 気が多く手ばかり出して空回り 財があり気前良い方まってます ぬかるみに足踏ん張って生きていく
「孤 憂」 西垣 博司 その先は崖でしかない泣きぼくろ 静 岡 地に這った薄日の中の影法師 障子越しいつかしじまで雨が泣き とっくりの酒冷えて妻七年忌 「自 由 吟」 恩田 享史 目に見えぬ嘘は必ず暴かれる 静 岡 幸せな笑顔でつくる目尻シワ 複数のビール混ぜると鉄の味 ぐらぐらと思いつくのがグリとグラ
「自 由 吟」 藪ア 千恵子 別腹にする好物が出てギャフン 焼 津 量よりも質にこだわる歳となり カラフルな旅です梅雨もなんのその 自分にも旅の記念を買ってくる
「七 月」 増田 信一 ラッキーな月だと思い宝くじ 焼 津 真夏でも風鈴吊るし後団扇 文月に恋文出して秋を待つ 短冊に願いを綴る年は過ぎ
「鮎友釣り三昧・・・其の二十二」 永田 のぶ男 水も冷え友の動きも鈍くなる 静 岡 下り鮎群れて仲よく追い忘れ 日は西に動きの悪い群れの鮎 下りでの昔は釣れた尺の鮎
「自 由 吟」 長澤 アキラ 目の中に入れたらやはり痛かった 静 岡 文明の極みであろう湯が沸る 淋しさも脆さも包む馬鹿笑い おろおろと足音だけが遠ざかる
「旅 の 空」 中野 三根子 地図だけで世界の空へ飛んでみる 静 岡 テレビでも世界旅行をしてしまう 雲の上小さな自分みつめてる 地平線追いかけている旅の空
「雑 詠」 林 二三子 強がりを言ってもやはり年に負け 芝 川 通販で飛び付いた器具部屋の隅 町名が変わって郷が味気ない 友の無事暑中見舞で確かめる
「老 朽 船」 多田 幹江 老朽船軽いものなら積めますか 静 岡 気がつくと空っぽの舟漕いでいた 日が暮れてオムツも眠くなりました 絞られて花のオブジェになりました
「雑 詠」 川村 洋未 一番の笑顔見せるのまだはやい 静 岡 プチ整形心のしみも消え去った お帰りのお返事ボタンセットする 女です化粧の時間確保する
「茶を入れる」 石田 竹水 尾を振れと尾の無い俺に無理を言う 静 岡 もう一度転べば痛み思い出す 昔ばなしが大好きで茶を入れる 陽は昇るみんなに笑顔振り撒いて
「しっとり」 山口 兄六 しっとりとなついて欲しい雨宿り 足 利 メール内チラッと覗く顔がある ダメだって言ってもピィと鳴くヒヨコ 脳みそを返して欲しいアツイ夜
「 命 」 中田 尚 点滴が最終章を書き換える 浜 松 見舞い客最終章に長い列 カラフルな管が命にしがみつく 付き添いもシフトを組んで引きのばし
「 火 」 真理 猫子 忘れたい事はくすぶる火山灰 岡 崎 初恋は今も火種を点けたまま 見守っていたい花火もあの人も 陽が落ちて火星へ帰るミニトマト
「自 由 吟」 今井 卓まる 旋律が際立つ今宵機を迎え 浜 松 生業は握手とお辞儀する笑顔 記念日を妻間違え俺女々しい ぐらぐらと沸きに沸きます原油高
「フォトグラム」 谷口 さとみ 花を撮るふりしてあなた狙ってる 伊 豆 私のシャッターチャンスにいたあなた リセットのボタンに慣れてない昭和 一枚でくるくるまわる風ぐるま
「 男 」 佐野 由利子 公休日 男はウソを考える 静 岡 生ぬるい男にワサビてんこ盛り クスクスとラジオ聞いてる独り者 嘘少し混ぜれば手紙上手くみえ
「赤いパズル」 池田 茂瑠 逢う前に赤いパズルの隅を解く 静 岡 討ちにゆく胸の水はけ終ったら 姑使う私がゴミに出した羽根 濃く塗って逢って掴めたものは泡
「漢の画譜」 川路 泰山 舌峰に布は着せない表道 島 田 連山を串刺しにして酒肴とす どこまでを許すか山に霧が降る 山ばかり描いて漢が綴る画譜
「雑 詠」 高瀬 輝男 気まぐれなコント拾った繁華街 焼 津 見え透いているから乗ろう口車 身の程を知らされ冬が尚寒い 華やかな舞台夢見る小銭たち
「ビールの季節」 望月 弘 大切な客かも知れぬ瓶ビール 静 岡 サヨナラに同席しない缶ビール 生ビール進行形の恋がある 地ビールに案内されていくホテル
「自 由 吟」 加藤 鰹 ニイハオと言うかも知れぬこのウナギ 静 岡 総選挙しろよと鍋が吹きこぼれ ちょいウザい等身大のルミエール 幸せがたじろぐ通り雨が降る
「ピ エ ロ」 柳沢 平四朗 福相の血圧という敵を抱き 静 岡 足跡に平伏しない予定表 影法師お前も優柔不断だな 盃の底にピエロが棲んでいる
|
[125] (2008/08/24(Sat) 13:53:24) |
|