自 由 吟 虎 竹 抄
「未 練」 新貝 里々子 あの頃は信号みんな青だった 袋 井 ダイエットすればこの服着られそう 泣いて笑っておとこをひとり消去する 逢いにゆく音符ひとつを握りしめ
「雑 詠」 石井 昇 盃の底に小さなおれがいる 蓮 田 資本論蟹工船の灯が暗い 信念を持てば行くのはけもの道 真っ赤っか今日を納めて陽が沈む
「 緑 」 栃尾 奏子 愛してる言葉だけでは救われぬ 大 阪 後少し待とうか時雨から氷雨 冬の海臨み再会待っている 嗚呼ここでひとつに戻る分岐点
「年 の 暮」 岡村 廣司 切り札を使い果たした年の暮 焼 津 年の暮喪中と転居やたら来る 高速道車で埋まる里帰り 何もかもご破算したい大晦日
「少し困ったこと」 増田 久子 留守電が間違い電話一つ受け 焼 津 おすそ分け生きてる鰻もらったが 文字通り粗品タオルの色が落ち 手おくれのように健康講座聴く
「雑 詠」 西垣 博司 余命の差女房はまだ紅をひき 静 岡 毒舌をたしなめている喉仏 大恐慌知るや知らずや蟻は這う 舞台からとび降りて買う秋の旬
「自 由 吟」 内山 敏子 ボーナスをジングルベルが煽りたて 浜 松 おおような顔でへそくり貯める母 咄家の笑い薬に酔うひと日 孫が来るパッと明るくなる茶の間
「漫 画」 濱山 哲也 冠が少年である週刊誌 つがる 教養は教科書よりもマンガ本 四百円おかしなことをいう総理 立ち止まり天を仰いでする風刺
「シナリオ」 真田 義子 言い勝った日いつもより早く寝る 仙 台 ワレモコウ恋の余白は開けておく 人生のシナリオを書き直したい もう少し飛び続けたいブーメラン
「自 由 吟」 ふくだ 万年 間違えて妻の貯金に振り込んだ 大 阪 正座して初めて解る気の弱さ 医者の技一度で治さず通わせる 酒タバコ止めてメタボで早く逝く
「日常生活」 恩田 たかし ポニョポニョと歌をうたいて腹つまむ 静 岡 ダジャ関を考えてると句が浮かぶ 川柳を考えてるとダジャ関が 仕事しろラジオにメールしてばかり
「 風 」 馬渕 よし子 木枯しが骨の髄まで痛めつけ 浜 松 風向きが変わらぬ内に逃げ帰る わだかまり解けて風まで心地良い 孫が来て夫婦の風を入れ換える
「 夢 」 安田 豊子 拭っても笑んでも消えぬ泣きぼくろ 浜 松 離れたい影がしつこく付きまとう 陽の温み包まれ母と逢う夢路 七十の夢にもちゃんと色がある
「振り向けば・・・・」 金田 政次郎 子は大将妻元師で俺伍長 静 岡 合掌す仏は見えず妻過ぎる 相棒は貸し借りが無い良い仲間 本当に幸福なんだ我が家の灯
「四季 喜怒哀楽」 小林 ふく子 冬の日に小さな孫の重さ知る 袋 井 春の日に遍路で自分省みる 夏の日に足へ車がおんぶした 秋の日に試歩で台地の温さ知る
「ぼろぼろ」 大塚 徳子 モッタイナイダンナの古着妻が着る 仙 台 真っ直ぐな道にもあった水溜り 髪染めてナンパされそう予感する ぼろぼろと年月零す飯こぼす
「寒 と 私」 竹内 さき 落ちつかぬ恋をしている師走時 浜 松 ハーハッとかじかんだ手に一句舞う 恋しくて石焼芋の愛を抱く 北風に負じと行こう寒の坂
「人を見る」 薗田 獏沓 先生の目を引く為に悪さする 川根本町 六法を盾に素人人裁く 白い歯をキラリ人を信じさせ 年なりの地味なプライド漂わせ
「重 大」 鹿野 太郎 甲高い声が巨人のキーワード 仙 台 小遣いが減らないようにゴミ減らす 慎重に止める規制のベルト穴 物作り大国を揺さぶるキャリア
「 風 」 畔柳 晴康 待ち兼ねた涼風こんど寒い風 浜 松 吹く風は名物なれどからっ風 ウン決めた墓に入らず千の風 墓参り千の風とか留守でした
「好 奇 心」 鈴木 千代見 飲んだふり彼の心はどっち向き 浜 松 いけないと分ってメールそっと見る 居酒屋に背のびしている未成年 襖越し気になる話息を詰め
「 濁 」 藤田 武人 この愛を告げる瞳に濁り無し 大 阪 純真な心が濁ったら大人 悪友と徹夜で飲もう濁り酒 老兵が濁った空を見上げては
「ガラクタ」 井口 薫 困るだろうなこんなガラクタ置いてけば 袋 井 ガラクタも無ければ風邪を引きそうで 想い出を見せてガラクタ命乞い よれよれの地図に迷ったあとばかり
「 夢 」 毛利 由美 いい夢見てるね幸せな寝顔 つくば つかの間の再会果たす夢のなか 再会のシチュエーションが変 夢だ アラームが鳴る 現実なのか夢なのか
「自 由 吟」 山本 野次馬 反論の知恵沸いて体力使い切る 函 南 小波抱く母なる海が騒がしい 数式へ時々首の空回り 前を向くことしか出来ぬ零の位置
「車で旅行」 中矢 長仁 満タンにしたらのんびり出掛けよう 松 山 のんびりの旅の筈だが飛ばす道 飛び回る北海道のでかい道 お土産が一杯になり帰ろうか
「自 由 吟」 鈴木 恵美子 肩凝りをほぐしてくれるもみじの手 静 岡 夕焼けの男のロマン背に秘める 満ち足りて古巣で趣味に生きる日々 晩年は心鍛える真剣味
「時 事 吟」 寺脇 龍狂 天国も神無月なら降りてこい 浜 松 立候補せぬが解散気にかかり アフガンに一粒の麦蒔いて逝き 大エースホームラン王いてチームビリ
「秋の画布」 加茂 和枝 もうちょっと ちょっとの時間大事です 岩 沼 ありがとう細い絆が切れました たくさんの夢を見ましたこれからも 自分流本気で描いた秋の画布
「雑 詠」 滝田 玲子 派手を着て熟女パワーに燃える秋 浜 松 脈がないと見たかセールス腰浮かす 口先の強がり犬もお見通し 永田町背後で派手に動く金
「 小 」 川口 亘 小才効き其の場凌ぎの知恵で逃げ 藤 枝 小咄が間合のぬけた座を救う 小半刻孫の相手に飽きる頃 小兵よく大きな者に食い下がる
「汚 染」 芹沢 穂々美 青虫に食い尽されて認知症 沼 津 空気汚染青虫にまで飛び火した 汚染米食べた毛虫の面汚し カタツムリ環境汚染察知した
「老 猫」 成島 静枝 孫が来ていじくりまわすうちの猫 千 葉 テリトリー面子にかけてする威嚇 豊漁の秋刀魚に猫も膳につく 年だねえ目やにを拭いて引っ掻かれ
「雑 詠」 飯塚 すみと 例のアレそうそう私もそれにする 静 岡 水を眺めて写生うまくゆき 子の見合い期待はせぬが受けてみる 歯の治りょう女医のやさしき声があり
「高 い」 鈴木 まつ子 エリートが高飛車になる身のこなし 島 田 プライドが高くなるほど傷がつき 身の丈がすらりとポーズ超美人 届かない高嶺の花に遠眼鏡
「いの一番」 瀧 進 夫唱婦随黙って俺について来い 島 田 栄転のメール女房にいの一番 陳情書まずはお土産見比べる 勝馬に乗って駆け出す金と欲
「 つ 」 川口 のぶ子 積立も出来ない悩み年金者 藤 枝 つきなみの答も出ない今ピンチ 通販があの手この手で押してくる つめ込んで横にそれたか出ぬ答
「自 由 吟」 酒井 可福 いじめだな今更メタボ扱いは 北九州 のろのろと走る車に飛ばす眼 行き先も告げずに父の旅支度 食い過ぎを残す子供のせいにデブ
「骨 折」 伊藤 理 ラッシュでもそこのけそこのけ松葉杖 東 京 上半身きたえてやるさ松葉杖 ここどうぞ車窓も霞む松葉杖 駆けまわる夢の枕は松葉杖
「自 由 吟」 山田 ぎん 濡れるのも良し此の人と傘をさす 静 岡 老い歌う酒飲軍歌肩を組む 朝夕は涼しく虫の声を聞く 官僚は人の金でも我の金
「真っ赤だな」 照山 紅葉 真っ赤だな恋する婆の艶姿 秩 父 真っ赤だな佛舞い降る巾着田 真っ赤だなハワイの土産マカダミア 真っ赤だな巣鴨のパンツ真っ赤だな
「不 眠 症」 中安 びん郎 生まれ付き悪くもないが眠られぬ 静 岡 不眠症千数えても眠られぬ 老妻はいつでも側で高鼾 不眠症夜は無料の警備員
「王 さ ん」 尾崎 好子 ホームラン三十本へバット置き 藤 枝 テロップで事ある如におどかされ 手術後の体調みんな気遣った 王さんのラストゲームが儘ならぬ
「自 由 吟」 石上 俊枝 新米の湯気に苦労の汗消える 静 岡 嫁姑役者見ている我が息子 コップ酒一期一会で盛り上がる 猪口も手も胸のバリアも眠くなる
「自 由 吟」 堤坂 まさえ アドレス帳もっと探せと芋のツル 静 岡 栗をむく二時間ドラマけりがつき 桃太郎洗濯機から飛び出した 神様が留守だ大いに楽しもう
「まつりごと」 松橋 帆波 食の安全を言うと残飯が笑う 東 京 背景は平和ではない平和賞 戦争を知らない居酒屋のホッケ 昭和史が苦手で困る金バッヂ
「霜 月」 増田 信一 温暖化半袖裸足霜月に 焼 津 霜月も季節の色が薄くなり 霜焼けも皸無い霜月に 干し柿も汗を掻いてる霜月に
「 手 」 中田 尚 人の手に癒されてまた使われる 浜 松 不運しか掴んでいない手が二つ 白い手がハートに触れて助けられ 票つかむでかい右手が肩透かし
「 秋 」 林 二三子 色づいた森に流れる秋時間 芝 川 トンボ見つけ思わず指を立ててみる 黄金色の棚田芸術品に見え 渋皮煮じっくり煮てる秋夜長
「自 由 吟」 藪ア 千恵子 特売の鮭の切身が薄すぎる 焼 津 勢いに釣られて奢る羽目となり 懐メロが青春の日々誘い出す 登下校見守っているボランティア
「約 束」 石田 竹水 老い先は聞くなよ俺はまだ米寿 静 岡 有り得ない事が地球に起きている 青空に平和の鳩が黒過ぎる 五分前約束守る人だった
「還 暦」 小野 修市 定年へ支えた妻の手弁当 静 岡 還暦の疲れが溜るが金はない 年金をあてにしていたお人好し 六十と言えども若い夢も見る
「普通のサラリーマン」 今井 卓まる 昇る陽にタイマーかける沈む時 浜 松 いわし雲ツマミ食いしてサボる午後 飲むだけと言ったじゃないの嘘つきね おむすびに混ぜた黒ゴマ呪文あり
「東 京」 川村 洋未 皇居前ビルに輝く月静か 静 岡 浅草のレシートが出る土産買う 青い目と交番さがす雷門 地下鉄を乗り継ぎ雨と知恵比べ
「キ ス」 谷口 さとみ おはようもおやすみなさいもキスで言う 伊 豆 気持ちいいことは気の合う人とする ひっそりと歳だけふえる誕生日 キスだけは喧嘩中でもしようよね
「秋 の 音」 真 理 猫 子 指揮者だけ笑顔で踊るシンフォニー 岡 崎 冬枯れの夫婦いろりの火は熱く のこぎりを引く我慢したこと数え 落ち葉踏む音イタイイタイヨサヨウナラ
「ロータス」 山口 兄六 ハリケーンその真ん中にいるオバマ 足 利 フル稼働させる失恋洗濯機 悲しみをためて映画を見て泣こう 言い訳は無用ごめんで事足りる
「鮎友釣り三昧・・・其の二十六」永田 のぶ男 鮎絵皿いつも一緒に泳いでる 静 岡 香の鮎をしばらく焼かず皿の上 焼き鮎に猫もうっとり足竦む 塩焼きの鮎は笑顔か泣き面か
「悪 い 癖」 長澤 アキラ 触りたい所にバストが付いている 静 岡 午前二時妻を騙したドアを開け 募金箱 素通りできぬ悪い癖 誰にでも傘を差し出す悪い癖
「ご 時 世」 川路 泰山 山吹の花が似合いか議員さん 島 田 兜虫ばかり集めた組閣だな 投資家の闘志乱れる乱降下 皺寄せの波に呑まれる蟻の列
「マドンナ」 多田 幹江 マドンナにカーブ投げ合うエイジング 静 岡 姫老いて緩いカーブにひっかかり 宴更けて元マドンナの肩を揉む 塩漬けの夢食べ頃をとうに過ぎ
「白い旗と帆」 池田 茂瑠 大まかな妻で女が欠けている 静 岡 白旗の白は染めずに残します 頷いて去る背に白い帆を貸そう 過脂肪の妻の背後で生きてます
「淡 心」 佐野 由利子 だんだんと趣味でなくなる趣味の会 静 岡 謎ひとつ方程式にない答え 人間の脆さを隠す頬っ被り 好きなのに反発ばかり淡心
「気が弱く」 高瀬 輝男 また妥協悔いているのはパンの耳 焼 津 陽が沈むその一ときの走馬灯 効用書なるほどよくも調べたな 雑草の生きる権利を奪っちゃった
「山の便り」 望月 弘 前略で猪が出ますお大事に 静 岡 ふるさとは硲で隣り呼んでいる 美しい国です水に戻したい 矍鑠に猪突猛進だった傷
「十 二 月」 加藤 鰹 ぬる燗がいいねお酒も抱擁も 静 岡 半額になるまで君のこと待つよ 白い息吐いてあなたが駆けてくる 冬銀河そうっと肩に手を回す
「沸 く」 柳沢 平四朗 つるべ落しへ甘い妥協を強いられる 静 岡 自惚れがKYの眼に届かない 陽だまりのベンチへ沸いている徒党 天引きがポックリ寺へ愚痴を塗る
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[136] (2008/12/25(Wed) 15:33:01) |
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