自 由 吟 虎 竹 抄
「花は散る」 新貝 里々子 若き日へリセットしたい食前酒 袋 井 おしながきサクラ吹雪も盛り込まれ フルコース団体客がなだれ込み マイセンのお皿が嘆く不況風
「兎 小 屋」 岡村 廣司 玄関を開けるコツ要る兎小屋 焼 津 兎小屋貧乏神が蹴躓き 裕福と書いて貼っとく兎小屋 兎小屋なんとか手足伸ばされる
「雑 詠」 西垣 博司 底力秘めた女のノーメイク 静 岡 スニーカー余生のひもをしめ直す 大不況ここで会ったが百年目 雑踏の中で一人の旅をする
「行 く 春」 井口 薫 花追って古希の幸せ全開に 袋 井 風吹くなも少し咲いていたいから さくら散る五線譜を舞い泳ぎつつ 咲ききってそして桜は樹に還る
「お 菓 子」 濱山 哲也 駄菓子屋のくじに人生教わった つがる 母は見た僕のケーキが逃げるのを 卒業し息子は東京のひよこ 幸せはバームクーヘンだと思う
「フランスにて」 真田 義子 エスカルゴ食べてフランス人になる 仙 台 エスカルゴどこからみてもかたつむり モナリザの顔で過ごしたパリの午後 レストラン水も買わせるしたたかさ
「年 度 末」 毛利 由美 先生の人気が分かる離任式 つくば たくさんの別れ見てきた年度末 エイプリルフールグッズはさすがない クラス変え前のそぞろな春休み
「ぬくもりを感じて」 栃尾 奏子 春コートふわり私に蝶の羽 大 阪 猫足で行く一面の花畑 にっこりと君は四葉のクローバー もう泣かぬ今日から春の絵の中に
「煙 草」 松橋 帆波 禁煙の理由を書いて売る煙草 東 京 胃カメラの日が決まってもたぶん吸う 禁煙の三日ぐらいは君子めき 喫煙者組合などをふと思う
「 春 」 藤田 武人 ホームラン狙ってみたい始球式 大 阪 ラブコール受話器を持つと標準語 雪解けを待っていたのは胸の傷 花霞まとい夢見る山の神
「雪よもい」 戸田 美佐緒 くすぐりの刑を受けてる俺の臍 さいたま 裏ごしにされた南瓜の自暴自棄 終止符が打てぬ鬼ごっこで転ぶ パンドラの蓋を忘れた自由主義
「男 風 呂」 瀧 進 自慢気に何やら隠す男風呂 島 田 磨りガラス君ビーナスのシルエット 女風呂気になるうちはまだ元気 今日の垢流し湯上り缶ビール
「電子辞書」 成島 静枝 プッツンをして黙り込む電子辞書 千 葉 電気屋のチラシまだ来ぬ給付金 便利さに馴れて引けない紙の辞書 叩くのもスキンシップか直る辞書
「雑 詠」 馬渕 よし子 長生きは嫌だと父の背が語る 浜 松 避けたいと思う相手と乗り合わせ 先手読むコツを覚えた運の向き 一言が眠りのマグマ揺り起し
「雑 詠」 滝田 玲子 人間を見下しカラス高笑い 浜 松 言い訳は聞いてくれない娑婆の風 達筆の寸志びっくりする中味 カルテ見て老化ですべて片付ける
「無 題」 寺田 柳京 自転車で中学生を避けて行く 静 岡 若者よお國のために死ねますか ほっとけば忽ち伸びる八重葎 ほろ酔いの俺を埋めろよ花吹雪
「菜種梅雨」 畔柳 晴康 菜花咲く誰が呼ぶのかしとしとと 浜 松 草と花待って居たのよ走り梅雨 まだ降るの花見の予定決めかねる おしめりが有って楽する花粉症
「挿絵の女」 金田 政次郎 美しい挿絵の女に恋をする 静 岡 ページから挿絵の女の吐息訊く 浮きたてるリアルに挿絵の女が炎え イラストに生きた挿絵の物語り
「初夏が来る」 小林 ふく子 かげろうの恋トマトはあおいまま 袋 井 君と観た桜も君もどこへやら それからも続いて欲しい花便り 特急列車のように初夏が来る
「黒いバラ」 竹内 さき 頑張って生きて残った黒いバラ 浜 松 趣味多彩君臨の輪に影見えぬ 素顔です両手の米が忙しい 夕暮れてちーさき海で背伸びする
「自 由 吟」 鹿野 太郎 平成の三種の神器持ち無職 仙 台 お互いに墓穴を掘って出す誤報 太陽と指きりをしたアデランス 男運悪いがツバメ巣を作る
「自 由 吟」 萩原 まさ子 春ですね思いっきりの派手を着る 静 岡 振り向いてちょっと直して行きましょう 平服と言われかえって迷い出す 平静を装う波が沈むまで
「自 由 吟」 川村 美智代 思い出はまだ捨てられぬ青い服 静 岡 日が落ちる群青色が苦笑い 一生を引立てかカスミ草 こんなにも青があるのに拾えない
「自 由 吟」 提坂 まさえ 神様を振り向かせたか原ジャパン 静 岡 振り向けば団塊だらけ春うらら ほんとうはすごく派手かもカタツムリ 振り向いて私を嗤うチューリップ
「自 由 吟」 石上 俊枝 働き蜂派手な論争かやの外 静 岡 サンバかと思う露出度目が笑う 開港を立ち木フラッシュ地権者と 好奇心旺盛わたし七変化
「育 て る」 芹澤 穂々美 良い種を蒔こう非行の芽は出ない 沼 津 逆上がり苦労話を聞いてくれ クラシック聞いた茸がヘソを曲げ やりすぎた肥料で育て愚痴を言う
「あら、あら」 鈴木 まつ子 質問へ野党持ち上げては落とし 島 田 懐にしのばせた恋妻にばれ 暴走車信号無視で直走り やんちゃな児ハラハラさせるウインドー
「春の一歩」 加茂 和枝 春風に押されて未知の入口に 岩 沼 新しい足跡つけて新入生 夢だけはでっかく一歩踏みしめて 春の絵に解けてみようと肩に雨
「お星さま」 大塚 徳子 ピリピリと左右前後を見て歩く 仙 台 年金の制度が生んだ核家族 玄関のドアを開ければ身構える 雲間からウインクしてるお星さま
「明 日」 鈴木 千代見 酒の量明日の休みが味方する 浜 松 明日あると甘え心が顔を出す 手探りで明日を探す闇の中 明日がくるやっとやっとの退院日
「自 由 吟」 恩田 たかし 桜散る入園式の華やかさ 静 岡 昔なら入学卒業父はこず 沢山の夫婦で参加入園式 ここに来てラジオに送るネタ探し
「雑 詠」 寺脇 龍狂 食べて洗い一人二役オイとハイ 浜 松 独り者時々ほしい糸切歯 アメリカの孫へ単語の長電話 米ドルと孫の百点不安定
「覗 く」 安田 豊子 覗き目の好きな雀の群れる軒 浜 松 強がりは止めた淋しさ覗かれる プライバシーこっそり覗く障子の目 苛立ちを宥めて覗く万華鏡
「いい加減」 薗田 獏沓 前借りをしてから来ないアルバイト 川根本町 結論を後回しにする夫婦劇 どうせ直ぐばれる恋仲美辞麗句 法話聞き一言二言覚えてる
「旨 い 酒」 中谷 長仁 美味いのは仲間同士で飲むお酒 浜 松 うまいのは小野の小町と飲むお酒 美味いなあ酒の肴にかつお節 何よりも大切なのは酒の味
「 鬼 」 酒井 可福 制服が仕事の鬼に仕立て上げ 北九州 鬼だって反省もする泣きもする 仏にも鬼にも父は成る役者 金棒を忘れた鬼が照れ笑い
「迷 い 道」 石井 昇 知らぬまに墓穴を掘ったナルシスト 蓮 田 名も知らぬ浜で口笛吹いている 迷い道抜けて人間らしくなり 雨のち雨苦い快感受けている
「昼 休 み」 山本 野次馬 ラーメンと引き換えにする時間給 函 南 喉もとのあたりへエコがしがみつく ワンコインランチタイムの蟻になる 胃袋と戦争してる五分前
「疑 念」 川口 亘 試練にも堪えて初めて価値を知る 藤 枝 試さざる内の疑念はそっと捨て 他所ごとのように云われて身が火照り 四方山の話にいつか花が咲き
「 夢 」 川口 のぶ子 終日を何もしないで夢うつつ 藤 枝 投げ槍の答をいつか持て余す 春一番暫しの夢も掻き消され 抜け出して見る可きものを知る今宵
「麻生首相」 尾崎 好子 億分の千が支持率出して来る 藤 枝 柔軟さ二転三転悪怯れず 真紀子節にも怯まない強靭さ カメラマンひょっとこ面に撮ってみせ
「雑 詠」 飯塚 すみと ふとん干しやれど息子は感じない 静 岡 花粉まひ車の窓をあけられず 野球勝ちみんな笑顔の日本人 痩せすぎはかえって悪いと医者はいう
「自 由 吟」 内山 敏子 放送局むこう三軒花火散る 浜 松 玄関の偽装セールス追い返す ハミングで今日の料理が出来上がり 大地から春の勇気があふれでる
「 箱 」 鈴木 恵美子 千羽鶴無心に貯めている小箱 静 岡 ダンボール子の夢運ぶ貨車となり 宝石箱母の形見がひとつだけ おもちゃ箱母の手作りかしこまり
「花のあとさき」 増田 久子 偵察のように一枚咲くさくら 焼 津 満開も五部咲きもある花だより 禁漁区草魚をかくす花筏 道路際落花さかんを掃き寄せる
「給 付 金」 森下 居久美 給付金ヒナもパクパク口を開け 掛 川 冷蔵庫壊れています給付金 ETC付いてないから野良に居る バラ撒きの後が恐いな消費税
「しぞ〜か弁川柳」 中安 びん郎 杖突きゃあポストぐりゃーはやーけーる 静 岡 足腰はこきたん悪りい治んにゃ〜 年寄りに生きぎゃあがある生き字引 眼鏡〜よ探す刑事みてゃ〜な目つきょして
「今更一人」 永田 のぶ男 豪快に笑うと怖いものはない 静 岡 豪快に笑って腹の虫治め 喝采も拍手もいらぬ腹の虫 一人身でしみじみと洗濯の泡
「 桜 」 真理 猫子 母の胸いつも桜が舞っている 岡 崎 足元がショパンを弾いている桜 哀しみも三分咲かせる姥桜 桜散る酒の肴を引き連れて
「八 起 き」 石田 竹水 塩少し加えた恋が愛に成る 静 岡 一手先読んで手の内さらけ出す 八起き目の運はチャンスだ掴み取る 言い過ぎの主張いさめる大笑い
「散 歩 道」 山口 兄六 行列の出来ない店で買う時間 足 利 嫁に行く娘の風呂を父は待つ お互いに年を取ったな散歩道 仲直りしよう畳の目を超えて
「不 景 気」 増田 信一 不景気で勿体無いが見直され 焼 津 不景気で会社の空気ピリピリと 不景気も景気も家は大差ない 不景気で貧乏神が大はしゃぎ
「長 寿」 林 二三子 百歳の言葉にカドのない温み 芝 川 百歳の未だ狂わぬ鯨尺 刺し子の目少しの狂いもなく進み お喋りや笑いで認知症逃れ
「いざさらば」 多田 幹江 マジックの種も尽きたしいざさらば 静 岡 念願の開港見えたいざさらば アナログよ口惜しいけれどいざさらば 年金の日までぢいちゃんいざさらば
「自 由 吟」 中田 尚 ミサイルに国が地球が揺れている 浜 松 おれそうな心に初夏の風が吹く タレントを知事にマイナス埋まるかな 木を切って知事の命を斬りました
「デスマッチ」 今井 卓まる 春眠の暁を知るデスマッチ 浜 松 デスマッチ終わる気配のデスマッチ 畳の目 数え戦うデスマッチ タイトルに困った恋のデスマッチ
「春 の 月」 小野 修市 満月はしっぽりつつみ深情け 静 岡 三日月は涙も見せぬ薄情け 川面にゆれてる月は移り気だね 家の月毎月赤字並んでる
「ひでスタート」 川村 洋未 ひかえめといいつつ主張するピンク 静 岡 ひとりでもケーキを二つ買う重さ 火の車この頃やけにはばきかす 一人言誰か聞いてよ返事して
「さみしさ」 中野 三根子 行くあてのないさみしさに涙する 静 岡 もう少し近くに居たい今日もまた 夕暮れの空に描いた母の顔 もしもしとそっとダイヤル押してみる
「錆びた鍵T」 谷口 さとみ ひとつでは済まぬ四葉のクローバー 伊 豆 サルビアを吸う遊びにもあるハズレ あつすぎてひまわりのない道選ぶ ケイタイを忘れただけで溺れてる
「たてがみ」 池田 茂瑠 振り過ぎた尾から逃げてく運だった 静 岡 この恋も切った女の糸切り歯 勢いがあるたてがみの絵を飾る 眉細く奈落の底で整える
「雑 詠」 長澤 アキラ タライから海まで長い平泳ぎ 静 岡 余り物ですと貧乏神を出す 何にでも治癒の上手い砂時計 背負うもの無くてチョウチョをやってます
「春 4 月」 佐野 由利子 春4月それぞれの靴音響く 静 岡 初孫をそーっと抱いてほくそ笑む ファインダー覗けば友のいい笑顔 お揃いのシューズを買おう給付金
「自 由 吟」 高瀬 輝男 従順な川を煽動する雨量 焼 津 恥などは無視人間を続けるぞ よんどころ無く中立でいるわたし 試すため生かされているモルモット
「鉛 筆」 望月 弘 HBから生まれてるあいうえお 静 岡 4Bで父6Bで母を描く キツネ貌Fの硬さで書いてみる 平和から色鉛筆が招かれる
「自 由 吟」 加藤 鰹 ちっぽけな器だ愚痴をよくこぼす 静 岡 大器晩成いいえあなたはパラサイト すり寄って来るのはおとり鮎ばかり 命はらはら両手で受け止める桜
「ほ こ り」 柳沢 平四朗 駄菓子屋の甦生へ父も子になった 静 岡 目鯨を立てても老いの絵空事 自画像の裏へ埃が溜り出す 善人のルピを阿呆とする夕日
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[172] (2009/05/08(Thu) 10:45:53) |
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