自 由 吟 虎 竹 抄
「右クリック」 毛利 由美 アルバム整理その夜昭和の夢を見る つくば 男は保存 女は上書きで生きる 右クリックしている時は悩んでる 寒すぎず熱すぎぬのがいい 人も
「雑 詠」 真田 義子 食欲の秋は無理ですダイエット 仙 台 三分粥五臓六腑が動き出す マイッタネ生命線がまた伸びる ぼんやりとしている午後の夢が好き
「 秋 」 川口 亘 鬼やんま彼岸に来る日忘れない 藤 枝 地震来て今年は違う秋彼岸 スーパーがさんま目玉に秋を呼び 冷えた身を温め起きる秋となり
「男 と 女」 戸田 美佐緒 擬態する男が眠る玩具箱 さいたま 甘噛みの好きな女と水の底 漂泊をして差し上げる鬱 その他 美しい女が撒いている疑似餌
「自 由 吟」 竹内 さき 北風に負けじと燃えるプロポーズ 浜 松 コーヒーよ私の恋が褪せぬ間に 枝矢折れて帰る故郷の風ぬくい 原点に立ち来春の指を折る
「軽い腹立ち」 増田 久子 一円貨なくてくずした諭吉さま 焼 津 旅先で旦那と来たをすぐ悔いる お通しは頼まないのに来て高い 化粧品売場呼び止められず行く
「夫 婦」 馬渕 よし子 只今の声で夫の機嫌読め 浜 松 へそくりの在り処はとうにお見通し 仕返しへ夫嫌いなメニュー攻め 結局はすべて許してああ夫婦
「十 二 月」 松橋 帆波 家計簿の折れ目の数や十二月 東 京 かみさんと足を絡める氷点下 父さんがサンタで何がいけないの 再起動 午後になります二日酔い
「割 烹 着」 栃尾 奏子 花達の愚痴初雪が真っ白に 大 阪 二泊三日 母空っぽになりに行く 母の手の平でコロコロ青林檎 ちゃぶ台を囲めば母の絵の中に
「自 由 吟」 村越 精也 詐欺電話声で判るか金欠が 静 岡 どの医者も九割因は加齢なり 売出しのジーパンに穴 解せませぬ 携帯は始め便利で今は枷
「自 由 吟」 川村 美智代 新政権船出はしたが波荒く 静 岡 も〜いくつ年賀ハガキが歌い出す アナログと聞けば落ち着く高齢者 秋の空風向きをみる私いる
「 夢 」 藤田 武人 羊水の海 心音の子守唄 大 阪 夕暮れに明日への夢を描こうか 夢一字まずは足元踏み固め 凄い夢さあ正夢か逆夢か
「 根 」 提坂 まさえ 根回しの圏外にいて風を聴く 静 岡 舌の根を乾かしてから反旗挙げ 毛根がDNAを主張する のびかけたパンツのゴムと自己主張
「通 り 雨」 稲森 豊 心地よい日差しに抱かれ咲く笑顔 静 岡 合図鳴り半額王子走り出す 緊張の心シグナル動き出す 降り出したのは気の利かぬ通り雨
「しぞ〜か弁川柳」 中安 びん郎 隙間風ちっとひゃっけー秋だなあ 静 岡 増税はかにょしてくりょう民主党 おだくって稼ぐな年をかんぎゃ〜よ ちっとばかした草取りできゃんだりい
「のめない酒」 鈴木 千代見 うまそうに飲む傍らで舐めてみる 浜 松 酒飲みの顔に見えるか注ぎにくる 辛口の酒がいいナと言ってみる 悩むことないさと酒を追加する
「覗 く」 安田 豊子 うっかりと覗いた壷に底がない 浜 松 プライバシーこっそり覗く障子の目 言い訳は止めた淋しさ覗かれる 苛立ちを鎮めて覗く万華鏡
「ノスタルジア」 石井 昇 赤いコートよメランコリーの灯がにじむ 蓮 田 流転した終着駅が決まらない ひきずった影の薄さよ俺の街 空回りしてる議論を煮転がす
「三日坊主」 鈴木 恵美子 楽天家三日坊主のなまけ者 静 岡 整理下手三日坊主を繰り返し 義理の趣味三日坊主も許されず 悲しみは三日坊主の方が良い
「やれやれ国文祭」 新貝 里々子 手荷物を心配性がふくらませ 袋 井 紅さして今日いちにちの顔つくる 貧弱な身体をかくすココ・シャネル くすりより利き目たしかな入選句
「農 作 業」 酒井 可福 耕した畑のレシピを考える 北九州 収穫の夢に大きな鍬振るう 一振りの鍬が大地と語り合う 太陽が背中に温い草むしり
「映 画」 奥宮 恒代 シルバーと聞かれ思わず笑み返す 森 町 予告編見たい気になるど迫力 ロードショウ ポップコーンに満たされる 別々の映画に酔った顔で出る
「自 由 吟」 内山 敏子 バーゲンへ財布の紐が引っ張られ 浜 松 名物にかかあ殿下とからっ風 焚火の輪 話し上手が来て囲む スニーカー秋をもらって駆け巡る
「 夜 」 井口 薫 輝いた今日が眠らぬ二十五時 袋 井 寝るとする敗者の今日をちぎり捨て 名月を遺影に見せる窓を開け ときめきか痛みか星が空を切り
「 鳩 」 濱山 哲也 定年後 鳩と戯れる少年 つがる 中国の人を呼ぼうか鳩の群 キジバトは首振りをせず生きてゆく 白い鳩をパトリオットが打ち落とす
「雑 詠」 山本 野次馬 立ち止まるまでは流れをやり過ごす 函 南 フラスコの底でブルーライトな夜 この指に止まれ小さな夢だから 雑踏の中で案山子になりすます
「没句供養」 中矢 長仁 国文祭富士山麓に宿を取る 松 山 今そこで泳いでいたと初鰹 お茶漬けで仕舞にしよう三次会 趣味に生き時々旅をする余生
「鍋の季節」 萩原 まさ子 寄せ鍋が大掃除する冷蔵庫 静 岡 B級の誇り捨てないおでんつゆ 順番も味もおまかせ鍋奉行 寄せ鍋にたまに入れたい鯛や蟹
「 時 」 石上 俊枝 早送りしているように日が暮れる 静 岡 延々と笑いは時を止まらせる お開きも忘れ仲間と過ごす時 残された時間フルにと駆け回る
「同 じ 月」 西谷 秀朗 いい出会い求めて嘘のマイプロフ 兵 庫 初対面切符片手に胸弾む 君思い夜空見上げる同じ月 また逢える約束胸にさあ仕事
「長 い 夜」 森 だがやん 長い夜は月と語らい句を捻る 島 田 毎晩の秋刀魚尽くしじゃ飽きが来る 現実は座布団亭主敷かれてる 味噌汁を啜って母に思い馳せ
「夕 陽」 小林 ふく子 消えそうな我に夕陽が来て止まる 袋 井 見飽きない夕陽わたしを抱きしめる 夕焼けが今日のドラマを包み込む 追憶の夕陽に燃えた眼が熱い
「夫 婦」 鹿野 太郎 吉日に自分探しの旅に出る 仙 台 対局の大詰めカッと妻睨む 冬の海シンドバッドの頃想う 新しいトゲ抜きに行く古本屋
「自 由」 滝田 玲子 鳴きおくれコオロギ誘う星月夜 浜 松 また乗ってしまう上手な口車 懐が寒く秋風身に染みる 下駄箱で出番ないかと赤い靴
「青いバラ」 成島 静枝 青いバラ予約受付け手が出ない 千 葉 青い薔薇 棘も青いか聞き洩らし 青いバラDNAはまだヒミツ 気位の高さ一輪差しが合い
「自 由 吟」 近藤 伊佐久 我がままをゆるされガンかなと思い 静 岡 成人の娘とおとそ宮参り とそ祝い富士をおがんで国旗建て 寝たきりの母へ窓から月を入れ
「関白余話」 西垣 博司 ソロバンを弾いた妻にかしずかれ 静 岡 町内に亭主関白見当たらず 関白が定年からの体たらく 定年後 女帝に軽くあしらわれ
「自 然」 加茂 和枝 まだ時間たっぷりあるよお話しを 岩 沼 潮風に揉まれた体 今生きて 自然とは飾らぬ言葉嬉しくて さざ波の向こうに夢は輝いて
「枯れすすき」 岡村 廣司 強たかに生きたが遂に枯れすすき 焼 津 枯れすすきだけど負けん気まだ続く 喝采はもう欲しくない枯れすすき 枯れすすきカルテこんなに厚くなり
「山 頂」 大塚 徳子 迷いあるふっ切るために山歩く 仙 台 山頂で朝日を浴びていい気分 山頂で雲の上のひとになる 山頂でみれば下界のちっぽけさ
「柿 の 実」 芹沢 穂々美 柿の実と夕陽は同じ魔の朱色 沼 津 葉が落ちて代を譲った守り柿 渋柿を主役に決めたつるし柿 お隣りの柿の葉名札つけている
「 秋 」 畔柳 晴康 秋霖がまたも予定を狂わせる 浜 松 アルバムで昔を偲ぶ老二人 小春日だ拗ねてみたいよ八十の爺 待っていた秋が来たのになぜ寂し
「生 活」 川口 のぶ子 見つめられ上手のてから水が漏れ 藤 枝 しきり泣く生活の声アウトダウン 日常の生活けわし老いすれば 青い空雲一つない秋日和
「逢い別れ」 鈴木 まつ子 抱き合っていると絡繰る風が立つ 島 田 ひとときをその気にさせる包囲網 言い逃れ下手な男の仮面ずれ 花は散り触れて人と逢い別れ
「自 由 吟」 篠原 久 気長に獲物待ってる蜘蛛の糸 四国中央 千代紙の鶴が飛び立つ回復期 真正面妻に好きだと言ってない 不器用な男曲らぬ曲り角
「偏 平 足」 寺脇 龍狂 ビリの孫 偏平足が慰める 浜 松 改めて足のうら見る運動会 ヤジ馬か同情票か六千人 矍鑠と老農挑む草の波
「来 年」 薗田 獏沓 来年の夢年金では高が知れ 川根本町 来年をどう生きようか思案する 我慢してよかった来年好きに生き 来年に堪えて信用辛さにも
「す て 石」 瀧 進 ぼた山の石が賑わいなつかしむ 島 田 チャンスまで捨て石ポーカーフェイスする 水底の石も世に出る渇水期 捨て石が活路を開く四面楚歌
「雑 詠」 飯塚 すみと 平和だな道路に座りおでん食う 静 岡 公園で稚児を放ちて親ばなし JAという字の野菜よく売れる 殿下来てツインメッセは上機嫌
「赤まんま」 尾崎 好子 赤まんまついしゃがみ込む懐かしさ 藤 枝 赤まんま幼なじみは遠に逝き 赤まんまみて赤飯を炊いてみる 深夜便花言葉まで知りました
「銭 太 鼓」 多田 幹江 小銭ジャラジャラ我が家と同じ銭太鼓 静 岡 銭太鼓やせた年金待っている アトラクの余勢で買った銭太鼓 銭太鼓埋蔵金にしておこう
「世間に生きる」 小野 修市 無学でも生きる智慧知る世間から 静 岡 街角で世間のウソを覗いてる 長いこと火の粉あびて穴があき いつ迄も世間の流れつかめない
「願 い」 中野 三根子 願い事いっぱいあって叶わない 静 岡 少しづつ願いをかけた雨の夜 どこまでも続いた路にある願い ひとつづつ願いは叶う旅の空
「還 暦」 増田 信一 還暦がうれしいような無いような 焼 津 還暦をもう一回は無理かいな 還暦を過ぎても会社行ってます 還暦でちゃんちゃんこなど着たくない
「ショッピング」 勝又 恭子 ショーウィンドゥ私まだまだいけてます 三 島 マネキンがこっちこっちと呼んでいる ストレスをブランド品と取りかえる マネキンが着てるときほどきらめかず
「菊 日 和」 高橋 繭子 マッチ擦るつかのま戻る命の灯 大河原 線香の煙を揺らすのは…あなた? 両の掌をあわせるほかはない仏間 死者生者分け隔てなく菊日和
「交響曲ブライチ」山口 兄六 助け乞うメールの返事寝て待とう 足 利 迷い道誰にも会いませんように 串刺しの具ポロリもしかしたら 嘘 留守電の「あ」や「え」の語間 深いまま
「秋の一日」 森下 居久美 友来る 国文祭の風に乗り 掛 川 ジャグリング バルーン 街はおもちゃ箱 友来る 訛りで囲むおでん鍋 さよならの握手は堅く暖かく
「独り国文祭」 谷口 さとみ 童顔でいまさら虫も殺せない 伊 豆 強かに龍の裏地の喪服着る 私の遺影ピースで赤い薔薇 根を切ってくれたあなたの部屋で咲く
「自 由 吟」 中田 尚 何気なく明日へ明日へと歩くだけ 浜 松 書きたしてどんでん返しするつもり ストーリー見えぬドラマが人生だ 文化の日グリコのおまけ勲章に
「慌 て 者」 佐野 由利子 あれこれと遣りすぎ結果 為損じる 静 岡 あわて者六十路過ぎても慌て者 激安のチラシで今日の予定決め 敵味方その行間が住み易い
「派 手」 真 理 猫 子 年々とパンツが派手になってゆく 岡 崎 クリスマスツリーの陰に駅がある 派手なシャツ地味な私を包むため ショッキングピンクの墓に入れてくれ
「ヘルパー2」 恩田 たかし 毎日が同じ会話で汗たらり 静 岡 営業はつぶしがきくとよく解り テレビよりラジオいいよと話しする 料理する担当の日はハラハラと
「濾過します」 石田 竹水 リコールに僕の心意を練り直す 静 岡 耳打ちの言葉は一度濾過します 昼寝する癖が僕には処方箋 羽根の有る風に私は成って飛ぶ
「 骨 」 川村 洋未 骨さえもカタカタ泣いた僕の恋 静 岡 レントゲンあんな美人がすかし彫り 骨一本折ってめでたく花が咲き 骨抜きの魚 我家へ通販で
「されど酒」 山下 和一 酒絶つと誓った夜の般若湯 伊豆の国 恋の傷 百薬の長注ぎ込む 雨だから出歩かないで酒を酌む 熱燗の肴は君の深なさけ
「SPIRAL LOVER」 今井 卓まる 雨の後 虹が出たってもう遅い 浜 松 人情はあるけど金は別物だ 靴の砂 掃って帰る営業所 六が出たゴール寸前ふざけんな
「私の尻尾」 池田 茂瑠 コンビニの町で手抜きの愛に慣れ 静 岡 背景のバラが悲恋へ赤すぎる 掴まれる程長くない尻尾です 女の理しおりのページから乱れ
「成り行き」 薮ア 千恵子 成り行きに任せて乗っている小舟 焼 津 成り行きに釣られ財布が空になる インフルが怖くて行けぬ紅葉狩り 立ち話つるべ落としに急かされる
「二十四国文祭葬送曲」 長澤 アキラ さわやかな自己主張です新茶です 静 岡 二杯目のお茶に潜んでいる阿吽 二十年さきを見つめている麓 父と子が無言の風ですれ違い
「肌 寒 い」 永田 のぶ男 待合室 痩せた蛙が待ちきれず 静 岡 ムダ使い臭いものみて蓋を開け 我輩が誰れか解らぬ日が迫る 冬の月今宵大きく欠けている
「 道 」 高瀬 輝男 真っすぐな道などあろう筈がない 焼 津 どの道を行っても坂はきっとある 疲れたら休むさ長い道だもの 先人の足跡の無い道探がそ
「忘 れ る」 望月 弘 紅葉が秋を忘れることはない 静 岡 物忘れ封じの祈祷まで忘れ 食ったのは忘れ食うのは忘れない 秋深しこころへ栞はさまれる
「十 二 月」 加藤 鰹 修羅幾つ越えて貴方に逢いに行く 静 岡 海に降る初雪音もなく消える ロックウェルのサンタは何時も無防備で ウイスキーコーク二人で過ごす刻
「拒 む」 柳沢 平四朗 思考ゼロ空気を読めぬ言葉尻 静 岡 ギブアンドティーク拒む腹芸だってある 大安売り定年の絵はまだ在庫 繰り言を繋ぐと過去が肥えてくる
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[178] (2009/12/27(Sat) 08:15:28) |
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