自由吟 虎 竹 抄
「 道 」 鹿野 太郎 老いらくの恋にメールの花便り 仙 台 不器用にしか生きられぬ道一つ ライバルの走りを見ると胃が痛む 犠打一つ決めておいしい酒を呑む
「自 由 吟」 薮ア 千恵子 懐のせいだと風邪をひいている 焼 津 買物をし過ぎストレスまた溜める カーブスでポパイになっていく熟女 夢を見るのはやめました宝くじ
「偽 装」 増田 信一 偽装なら顔と体と年までも 焼 津 偽装して嫁に出したい娘居る 偽装などとんと縁ない自営業 東大出に化けて一流もぐり込む
「計算ずく」 増田 久子 旧姓に戻れば吉になる字画 焼 津 スーパーは時に百均より安い 顔写真撮る来年のパスポート 貰う気で隣りの小菊ほめちぎり
「 嘘 」 小林 ふく子 花束にちょっぴり嘘が混じってる 藤 枝 口紅を濃く塗り嘘をまき散らす 嘘を聞く耳は半分眠らせる 今だから笑い話になった嘘
「偽 り」 馬渕 よし子 大粒の涙しっかり仕組まれる 浜 松 無理矢理に接着剤で接ぐ絆 真相を突かれ入院して安堵 目的は金です愛は餌でした
「雑 詠」 内山 敏子 バスの中雨の雫をもてあます 浜 松 フルコースよりも一杯のり茶漬 お隣も平気で値切る市場篭 食べさせる物を探した戦中派
「ふ し ん」 高橋 繭子 公園にいたら不審者にされた 大河原 会長にたてつき不審者にされた 厚着していたら不審者にされた 事件事件みんなが不審者になった
「雑 詠」 酒井 可福 大漁を誓う小舟の無鉄砲 北九州 全力を挙げて燃えきる決意だけ 我が道は理想を描きマイペース 天空の月に仏の顔を見る
「コ ー ド」 井口 薫 二次元コード老いを迷路へ誘い込む 袋 井 嗚呼ショック鏡の中のバーコード 認知症加速コードで処理をされ Gコードしもべのように忠実に
「自 由 吟」 真田 義子 落葉踏む今年も同じ道歩く 仙 台 曲がり角思いがけない事ばかり 青春の光景よぎるメロドラマ こだわって空の青さを気づかない
「ALWAYSわが家の夕日」 濱山 哲也 コロッケとカレーが天下獲っていた つがる 風船をくれた富山の薬売り 金が無いのが自慢だと父だけ笑う 平成になってラムネに色が着く
「いまどき」 毛利 由美 昔とは違う重ね着の順番 つくば 顔文字でつつがなくドタキャンをされ 健康が手段から目標になる 家庭ではまかり通っている偽装
「年 の 暮」 岡村 廣司 突然に来たわけでなし年の暮 焼 津 いろいろの鬼が出たがる年の暮 喘ぐ人ばかり見ている年の暮 女房の財布覗いた年の暮
「陽 気」 鈴木 恵美子 陰を陽に変えてしまったジンフィズ 静 岡 逢って来た余韻ハミング出るくりや 宴会を笑い上戸が盛り上げる 母の振るタクトで踊るひよこ達
「戦 中 派」 中安 びん郎 ラブレター墨で消された戦中派 静 岡 動員で英語を知らぬ戦中派 戦時中干し柿だけが甘かった 戦中派廃物利用お手のもの
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 原発でイルミネーション花盛り 浜 松 大安は老いの吉日入選句 コンビニで昔は値段いま日付 国防を食い物にする司令官
「 嘘 」 瀧 進 方便の嘘がけろりと澄まし顔 島 田 やめてけれ嘘に訛りは似合わない 感嘆符つけて嘘から出た実 嘘の嘘見抜く女房の顕微鏡
「面取り芋」 石上 俊枝 三つ指をついて不満を殻に入れ 静 岡 面取りをした芋のよう生きたいな 目立つ人どこに弱点隠すのか 面倒な事ほど先に飛んでくる
「句会初参加」 海野 満 ねじれても何も変わらぬ日本国 静 岡 いるだけであなたの笑顔華やいで 無口でも背中でわかる男粋 甘い汁ヤミに集まる黒い影
「どっこいしょ」 石井 昇 信念を味方につけて河渡る 蓮 田 過去からの招待状が波を立て どっこいしょおみくじは凶 花を買う 老いたるや思考の海で溺れてる
「二〇〇八年元旦」 金田 政次郎 トップ切る子歳に負けぬ朝を起き 静 岡 知友チューと友の賀状が賑わしい 初笑いクシャクシャにする百面相 こころして春の息吹を深呼吸
「故 郷」 薗田 獏沓 くに訛りくにの銘酒でくにの唄 川根本町 廃道に昔を拾う古い橋 星空と水美しい僕のくに 凧糸と飛行機雲の幾何模様
「音 楽」 畔柳 晴康 音楽に耳傾けてよだれたれ 浜 松 幼稚園孫の音楽目を細め 音楽の切符二枚が嬉しいの ナツメロに昔の若さ取り戻す
「雑 詠」 滝田 玲子 清貧に生きた昭和の頑固者 浜 松 辛抱をしたか石まで丸くなる 祠から座敷わらしが顔を出す 核のゴミ残す現代人のエゴ
「自 由 吟」 ふくだ 万年 ユニクロをヴィトン袋で持ち歩く 大 阪 肺ガンになるまで吸えない僕でした 当たるまで買い続けますジャンボ籤 熟れてても生き残れないと職安に
「喪 中」 成島 静枝 ネズミ年喪中ハガキに描けぬ干支 千 葉 年始客用の準備も空気抜け JPの窓口賀状へ言う喪中 神仏も英気養なう子(ね)正月
「自 由 吟」 御田 俊坊 失言で信用落す羽目となり 高 畠 失言と感じて終い悔い残る 騙される金がないからほっとする 酒に酔い車運転暴走とは
「自 由 吟」 川口 のぶ子 あっしまった思った時には腰立たず 藤 枝 危険とは身近に起きる気のゆるみ 気にかけて呉れる人あり良い出合い 出来ないと云い出せないでいる内気
「 疑 」 川口 亘 やがて知る自分の下手な猿芝居 藤 枝 洒落言で笑わせる手も少し萎え 知らないと云い切るまでに嘘を云い 考えを伝えることに骨が折れ
「 友 」 加茂 和枝 あったかい言葉を残し逝った友 岩 沼 最高の笑顔でいつもありがとう 何でもない何でもないと友笑う 友のよに生きる指針が出来ました
「中 位」 安田 豊子 平均を保つ苦心のやじろべえ 浜 松 中流と思って暮らす定年後 中立の構えで生きる三世代 身の丈の暮らし静かな老い二人
「幸 せ」 大塚 徳子 アルバムの幸せだったツーショット 仙 台 苦汁を誉めて脳味噌冴えてくる 毛糸二本結んで一目立ち上がる 抜糸して歩く幸せ噛み締める
「 影 」 高橋 春江 影法師お前もするか俺の真似 袋 井 夕焼けが影を妬いてるペアルック 師の影を踏んで大きくなる子供 ねえあなた遺影の夫が笑ってる
「偽 装」 鈴木 まつ子 見せかけの偽装わずかな欲を買い 島 田 浅はかな奢り指輪でつりあげる 善人と仕立て秘策を練っている はずせない仮面でじらす恋心
「今年の私・・・・・」 中田 尚 明けまして目出たく年を一つとり 浜 松 ネジをまくでも私は私で 一病をもって今年もスネかじり いつまでも甘えています足 ワ・タ・シ
「持 続」 石田 竹水 好い話 続きは明日の顔で聞く 静 岡 好奇心持続している万華鏡 気遣いは無用に願う水墨画 七転びやっと六十路で起き上がる
「雑 詠」 林 二三子 悩みいっぱい希望が入る余地がない 芝 川 奉仕する笑顔相手も和ませる 豊食に鈴生りの柿放っとかれ 持ち歩く辞書にひとひら紅葉の葉
「家族旅行」 川村 洋未 風邪ひくな二度とはないぞただ旅行 静 岡 孫連れちゃセレブのふりもボロが出る 親類にないしょの旅行そっと出る 超リッチ高層ホテルお客様
「雑 吟」 堀井 草園 鬼の首取った明日の背暗い 静 岡 無いものを強請って迷う道しるべ 阿保臭いコンチキチンの馬鹿踊り 訛声の方へ流がにくらしい
「自 由 吟」 田中 うね子 クリスマスチキンの骨でジジが死ぬ 上 尾 詰まらせる餅も買えないババ独り 新年は誰も居なくて寝正月 寝正月床擦れ出来てボケ進み
「鮎三昧・・・其の十三」 永田 のぶ男 晴天に雨は奥でも降っている 静 岡 増水に塵の流れと空見上げ 鉄砲水身一つでいいすぐ岡へ 安全は無事なればこそ世に残る
「鮎三昧・・・其の十五」 永田 のぶ男 岩陰に魚体きらめき一人締め 静 岡 竿とられ滑る河原で臑に傷 滑っても竿は死んでも離さない 百の神すべて味方にタモの中
「春 秋 T」 長澤 アキラ なだらかな坂を拒んでする血止め 静 岡 最終回神の手形がまだ落ちぬ 負け組の夫を妻は受け止める 振り返るゆとりは有るが金が無い
「ワ イ ン」 中野 三根子 ワインならあなたの好きな赤い色 静 岡 上機嫌 今日はピンクのロゼにする イブの夜やっぱり雪と赤ワイン 星空に二人でグラス傾ける
「 流 」 谷口 さとみ 流し目にパワーがあったバブルの世 伊 豆 残飯がもの申してて流れない 願われて星は律儀に流れてる うきななど流していてもプリン好き
「ヘルメット」 佐野 由利子 言い分はまだまだあると喉仏 静 岡 ホカロンは無用わたしの皮下脂肪 秋トマト何か足りない味気ない カールした髪が嫌がるヘルメット
「 下 」 真理 猫子 財政が討議されてる袖の下 岡 崎 縁の下なんて実家へ置いてきた 小説になりそうなほど下心 イケメンの下ごしらえは醤油味
「雑 詠」 多田 幹江 あたくしの席でしょタヌキ起きなさい 静 岡 真実を吐いてデスクを去る男 リップサービスたっぷりの売れないエステ ワープロは乱筆ご免とは言わぬ
「氷 塊」 池田 茂瑠 二枚目の舌と半端な火を煽る 静 岡 父走る出世を知らぬ貨車のまま 溶け切れぬ氷が胸にある妬み 私を青く育てた青い月
「寝 正 月」 川路 泰山 自我の慾だけを願うた初詣で 島 田 禁の字は遠に麻痺した寝正月 脳味噌の黴に気付かぬ温暖化 末期かも老漢一人米を研ぐ
「自 由 吟」 高瀬 輝男 文化の世財布なんかは持ちません 焼 津 ひとり酒この平凡は捨てられぬ 三叉路だ五叉路だ決にまだ迷い 策はまだある筈雨の音を聞く
「スイッチ」 望月 弘 スイッチをONシャッターは上らない 静 岡 スイッチがエレベーターで苦笑する スイッチの自動音声どっこいしょ 平和へのスイッチ故障しています
「秩父路へ」 加藤 鰹 妻でない人と秩父のからっ風 静 岡 着膨れてスターマインを観る師走 肉まんを半分こして冬銀河 山車が往く冬の緞帳降りて来る
顧 問 吟 「 秋 」 柳沢 平四朗 人を読むお世辞の中の照返し 静 岡 走る日へ振分け荷物あえぎ出す 逃道をやっと探して偉くなる 旅プラン彩濃く秋の仕掛人 猫も噛む窮鼠で道をこじあける
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[103] (2008/01/26(Fri) 08:37:12) |
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