自 由 吟 虎 竹 抄
「雑 詠」 井口 薫 喝采を浴びた桜に風の恩 袋 井 独り旅佛に道を聴き歩く 独りです開脚立ちをして耐える がらんどうだからリボンを掛けておく
「さ つ き」 小林 ふく子 鯉のぼり空気まずいかおいしいか 袋 井 新茶飲む腹の虫にも知らせとく 五月晴れここらで答出しましょう すぐそこの夏をのぞいてみることに
「自 由 吟」 栃尾 奏子 覗きみて以来妬心をたぎらせる 大 阪 自尊心かき集めては狭い視野 路地裏を黒いルールが支配する 場違いなムードつま先から凍る
「雑 詠」 成島 静枝 姑の癖を夫も持ち合わせ 千 葉 私にはカチンと来たわ無言劇 ヨイショして男の面子らしきもの シーソーの中で迷惑してる猫
「無 人 駅」 真田 義子 ゆっくりと春彩になる無人駅 仙 台 肩に星はらりと落ちた無人駅 草笛のこだまが返る無人駅 寅さんが帽子忘れた無人駅
「四 月」 毛利 由美 入園式ママはまだまだ美しい つくば 新社員スーツ姿もスリムだね エイプリルフール生まれのお友達 新しい試練 仕送りが始まる
「昆 虫 記」 濱山 哲也 引きこもり蓑虫だって羽がある つがる 年とった僕にカマキリもう逃げぬ 浮気ムシ妻の視線が殺虫剤 お目当てはお隣ですよコガネムシ
「四 姉 妹」 戸田 美佐緒 おんなですどこを押しても非常ベル さいたま 刃こぼれをしても女が転ばない 万華鏡くるりと戻す女の手 女が崩すポーカーフェイスの夜
「凸 と 凹」 加茂 和枝 辛いとは絶対言わぬ冬の花 岩 沼 土作り春の希望が膨らんで 凸凹の工事に使うエネルギー わだかまりようやく消えて春の色
「文 字」 塚本 寄道 筆書きでベタぼめされたヘタな文字 長 泉 読めるけど書けなくなった現代人 必勝という文字ボクにのしかかる 好きですと書いた向こうに君がいる
「自 由 吟」 萩原 まさ子 悔恨を集めなおして明日の夢 静 岡 争いは中腰で聞く処世術 中流の胡坐崩していく格差 赤福の甘さ加減は藪の中
「雑 詠」 藪ア 千恵子 先人の話此の身も近くなる 焼 津 自信家に逆らっている肚の中 それぞれの暮らし個性が花ざかり ほいほいと煽てに乗せる二言目
「自 由 吟」 安田 豊子 覆面を脱いでひとりの日向ぼこ 浜 松 冗談で済まぬ言葉が胃に溜る ひたむきに走る車は語らない 七十の坂ひたすらに強い自我
「雑 詠」 滝田 玲子 いまポトリ散ると知ったか藪椿 浜 松 法話聞き己を悟る道広げ 輪の中に仕切り上手がいて平和 旅プラン練ってうかれる春の靴
「雑 詠」 芹沢 穂々美 紙風船しおれてからの怨みごと 沼 津 高いハードル越えて生きる気教えられ 恐い者知らずで行った敵の家 ミンチされわたくしの句が上手く出る
「 息 」 馬渕 よし子 老人を痛める国へ出る吐息 浜 松 悪巧みこの時だけは息が合い 鼻息の荒さ回りを寄せ付けず 休止符へ辿り着く前息が切れ
「 底 」 鈴木 恵美子 底抜けに明るい母の子育て記 静 岡 どん底で本当の愛に支えられ 底光りする勝手場に城を持つ 胸底にそっと沈めた過去の愛
「そして春」 新貝 里々子 そして春花子の人形目を覚ます 袋 井 春野菜コロコロ会話弾み出す ある時は花より団子よもぎ摘み そして春しだれ櫻を身に纏い
「ロケット」 柏屋 叶志秋 直ぐ切れる芸能人の赤い糸 山 形 日本の政治を変える奥座敷 食いだめができたら人は働かず ロケットも神に祈って打ち上げる
「期 待」 増田 久子 コラーゲン加齢の加速には負ける 焼 津 大きめの園服に夢込めて着せ 幸運な朝だ卵に黄身二つ 胎教へくり返されるモーツアルト
「自 由」 酒井 可福 カミナリに泣く子あやしてヘソ踊り 北九州 家系図に頑固頑固と書いてある 一喝のカミナリ今も耳の奥 エアロビのリズムに合わぬトドの妻
「木 乃 伊」 石井 昇 木乃伊になりなさいとミイラが云った 蓮 田 古備前がぽつんと一つ置いてある 悔いはない二人で漕いだ舟だから 乱反射只ほど高いものはない
「春 帽 子」 大塚 徳子 さくらさいたらドナーカードに名を書こう 仙 台 おだやかに山懐に抱かれてる おせんにキャラメルひとついかがと目を配る ゆうやけこやけひとり佇む春帽子
「雑 詠」 内山 敏子 朝寝坊遅刻は春のせいにする 浜 松 旬を待ち旬を食する平和です 赤を足しとっても軽いローヒール 甲子園喜びの声天に抜け
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 病み上り三坪の庭出足ならし 浜 松 見てみたい元大臣のム所暮らし 団塊が葬際族に衣替え 公害の元は油屋自動車屋
「雑 詠」 鈴木 千代見 箱の中りんご無言で腐ってく 浜 松 病院の梯子私も仲間入り 青い空邪魔っけの雲きっと彼 おばさんと声をかけられ向く私
「自 由 吟」 鈴木 まつ子 孫と居て平穏無事の小宇宙 島 田 端っこを捕っては批判するカラス 旨い汁口を拭って知らん顔 退いて暦もフリースケジュール
「花 嵐」 中矢 長仁 それぞれに咲いた便りを待っている 松 山 開花日は南からとは限らない 満開に心躍らせ旨い酒 花嵐一夜吹かれて乱れ散る
「雑 詠」 ふくだ 万年 よく見れば髪の毛細くなっただけ 松 原 薄着です風邪は怖いがウフフです 薄味と濃い味重ね夫婦味 義理のチョコ皮算用が埋めてある
「曖 昧」 岡村 廣司 曖昧な言葉がうまい日本人 焼 津 程程と言う曖昧が性に合い うま過ぎる話曖昧さも交じり 曖昧な妥協するから残る悔い
「 湯 」 瀧 進 婿殿の愚痴も浮いてる終い風呂 島 田 バスタブがメタボな腹を排除する ひとり旅一寸淋しい露天風呂 ダイエットできぬ分だけ湯が溢れ
「自 由 吟」 竹内 さき わたくしを隠してみたい古都ローマ 浜 松 ありがとう又よろしくで生きている まじないで心と語るひとりごと いつの間に母色の飯たいている
「命買います」 金田 政次郎 分け売りの命まとめて吟味する 静 岡 首のない背筋がぴんと立っている 引き返す負けのリズムが口惜しい いい風だ二人分買い妻を呼ぶ
「自 由 吟」 川口 のぶ子 ふところが春に目覚めて軽くなる 藤 枝 花粉症春にはきつい仕置き待ち しっかりと春という季に遊ばれる いかなごの何時もかわらぬ味とどく
「雑 詠」 山本 野次馬 フリーサイズ着て存在感を消す 函 南 アピールが下手で携帯すら鳴らず 片足へ義足を付けてジャンプする 的外れの矢が私を苦しめる
「人形供養」 畔柳 晴康 供養する嫁したむすめの雛人形 浜 松 役終えた人形供養読経する 香を焚くけむり人形軽く笑み 人形は逝く春共に永久の旅
「服 装」 薗田 獏沓 軍服がぴったり決まる独裁者 川根本町 ユニフォーム死力を尽くし砂まみれ おしゃれ着にポケット無くて不自由し 軍服を着ると正義の貌になり
「 中 」 川口 亘 家中が寝坊する日を待ち侘びる 藤 枝 中位まだまだ甘い親の依胡 中毒になるから好きな酒は断つ 家の中支えて呉れる妻が居る
「音 キ チ」 中安 びん郎 音キチは三味線が好きソプラノも 静 岡 音キチはいつもスキャット唄ってる 音キチは数学は丙音楽は甲 音キチはテレビの洋楽全部聴く
「自 由 吟」 今井 卓也 午前様妻の尋問目が泳ぐ 浜 松 ちぐはぐな会話塞ぎて契り籠む サボリーマン冴えた言い訳墓穴掘る 野良猫の腋をくすぐる初夏の草
「 春 」 山田 ぎん お茶席で着物姿のしとやかさ 静 岡 茶花ほめ掛軸読めぬ茶席着く 桜花ちらちら落ちて手に受ける けしの花おし絵に作りプレゼント
「御 用 心」 鹿野 太郎 鬼来ないようシャボン玉吹いている 仙 台 狩人になれない鯖のアレルギー 人の道から校長が踏み外す 深そうだ納豆食べるあの二人
「自 由 吟」 松橋 帆波 大臣も苦手らしいなカタカナ語 東 京 新旧交代村の掟が邪魔をする 演出とヤラセ 政治とバラエティー 首都移転 そんな童話もありました
「宿題余句」 西垣 博司 ハイヒール毛皮で見切品値切り 静 岡 又ひとつわからぬ後期高齢者 家よりも立派な車庫で車寝る 蘊蓄が冴えて時計が動かない
「切 符」 石田 竹水 笑わせるジョークとぼけた顔が効く 静 岡 躓いた石に笑われたくはない おもかげの消えてく母の温い手よ 天国へ行ける切符の途中下車
「約 束」 中野 三根子 指きりをしてもしっかり忘れてる 静 岡 忘れないつもりでいつも生きている 小指だけいつもあなたを覚えてる 約束のいつもの歌を口ずさむ
「脳 ト レ」 林 二三子 何用か忘れて戻る元の位置 芝 川 知っている筈の言葉が出て来ない 孫と遊ぶ脳の活性化につなげ 脳トレにクイズ番組利用する
「隠 れ 虫」 山口 兄六 逆切れのチャンスに賭けるズルイ癖 足 利 喧嘩後に二人で積んでいるレンガ 手料理のまずさもちょっとした個性 着信の履歴に隠れ虫が居る
「自 由 吟」 真理 猫子 哀しみが仮装行列する電車 岡 崎 掃除機が壊れてしまうほどの嘘 雨音が月光仮面を連呼する 石けんの小さな泡の中に春
「雑 詠」 多田 幹江 品格の差問うまでもなくお里 静 岡 わたくしに無いもの一つ美女の面 アンテナが高過ぎ風も通らない 余所見しない人も何だかつまらない
「鮎三昧・・・其の十九」 永田 のぶ男 炎天下傘だけ浮いて移動する 静 岡 足使い石の頭をみぎひだり 長袖と手こう虫よけ万全に 大切なマナー守って釣り修行
「雑 詠」 柴田 亀重 老い走る干した布団へ俄か雨 沼 津 ガン二回手術完治の運の良さ 笑う夢テンツクテンの幻か 姉米寿負けず楽しい明日の夢
「自 由 吟」 中田 尚 青春がポンとはじける甲子園 浜 松 春の芽が弾けサクラが加速する スタートは確かサクラが咲いていた サクラの木親の見栄には苦笑い
「エイプリルフール」 増田 信一 モテまくりフリまくってもモテまくる 静 岡 運が運 金が金呼び大富豪 招待状彼の世から来て目が覚めた 月世界食いまくっても無重力
「泥 沼」 谷口 さとみ ニンニクを抜いたあなたの猜疑心 伊 豆 袋菓子に手をつっこんで生きている 何したいそう聞く君と別れたい 君と会う会うだけだけど歯をみがく
「雑 詠」 川村 洋未 五分だけ昼寝また生きかえるから 静 岡 あたしにもあめ玉一つわけてよね 化粧した生きているかと確かめる ありがとうその一言で軽くなる
「廻るすし」 池田 茂瑠 古き世を華麗に残す雨の古都 静 岡 回転のすしで埋まるか愛の溝 鶴一羽折って別れの手紙出す 許せない私を蹴散らした靴を
「大 跨 ぎ」 佐野 由利子 ふてぶてと昼寝の夫 大跨ぎ 静 岡 気をつけていってらっしゃいさぁ昼寝 家系かなすぐ熱中し直ぐ冷める 野暮用は明日に回し桜花
「 涙 」 川路 泰山 勇ましく生きて群青色を選る 島 田 赤鰹の素振り百遍背を研く 生きざまへ涙が集く八十路かな 目標の消えて寂しい男坂
「雑 詠」 高瀬 輝男 人間の策には勝てぬ鬼も居る 焼 津 爪のない指したたかに世を渡る 欲捨てず這いつくばって生きてやろ 四次元でさ迷いたくて酒を手に
「さ く ら」 望月 弘 入学を果たして愛でるちりぬるを 静 岡 散りそうな人も花見の中にいる 踏みそうで桜の下を歩けない 金さんのDNAと花吹雪
「エイプリル・メイ」 加藤 鰹 とりあえず嵌めた指輪が外れない 静 岡 やり直すべきか三面鏡に問う クーデター頷いていた奴がグル 無礼講でいいよと上座から言われ
顧 問 吟 「尾 鰭」 柳沢 平四朗 貸せたがる杖は苦汁を匂わせる 静 岡 過去は背に行末胸に日記濃い 小康の食卓へ置く自己批判 理髪やの椅子から尾鰭生えてくる
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[116] (2008/05/26(Sun) 08:37:12) |
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