自 由 吟 虎 竹 抄
「メ ガ」 大塚 徳子 どうぞどうぞと仮面の注ぐ赤ワイン 仙 台 人間が大きく見えた青リンゴ タスポカードの貸し借りはご法度か これでもかメガ文字足らずカギカッコ
「私とバラ」 竹内 さき 占ってコーヒー甘く君を待つ 浜 松 ときめいて唇少し揺れている ため息も深く尽くして春はゆく 以上ですテーブルのバラ仐をかす
「ためいきの・・・」 新貝 里々子 「愛してる」なんて気軽に嘘っぱち 袋 井 花束を抱いたおとこは大嫌い 本心は花束も欲しラヴも欲し ときめいたそんな昔は遠い過去
「雑 詠」 滝田 玲子 富士を背に照れて赤らむ桜えび 浜 松 ノンちゃんが待つ雲に来る桃子さん 値上がり品ずらり並んだ痛い春 栄転の内示で靴が軽くなる
「未 練」 安田 豊子 コーヒーへ苦い未練をかき回す 浜 松 脳みその眠気を覚ます濃い煎茶 独り酒飲めばあれこれ悔いばかり 花より団子飲んで喋って泣けてくる
「雑 詠」 ふくだ 万年 定年でスーツと仮面脱ぎ捨てた 松 原 お疲れさん壁の背広に話しかけ 籤買って心ウキウキ居酒屋へ 買ったけど使う宛てないペアカップ
「目のやり場」 増田 久子 人目気にするほど人は気にしない 焼 津 交番で眼鏡のまんま泣く迷い子 正直に叶姉妹へ異性の目 親の目が黒いからいい気のニート
「 恩 」 馬渕 よし子 恩人の影をしっかり踏んでいた 浜 松 恩なのか計算高い人なのか 恩返し当てにしないが忘れない 恩返しなどと孫連れ食べに来る
「未 練 酒」 鈴木 まつ子 失意の日しばらくそっと保温する 島 田 花の雨少しほとぼりさめるまで つかの間の気分転換聴くショパン この思い惚れた弱みの未練酒
「家族の肖像」 濱山 哲也 一言多い弟と足りぬ兄 つがる カタログ誌童話のように妻が読む 発泡酒ほどよく舐めて眠る犬 劣勢の遺伝が親と子の絆
「5月5日」 毛利 由美 結婚記念日ユニクロでシャツを買う つくば 夫には5月5日はこどもの日 5月5日かぶとは屋根裏で眠る あまりない屋根より高いこいのぼり
「雑 詠」 飯塚 すみと 上手くない口笛吹いて児が下校 静 岡 カード出しレジ長びかす老婆居て 女子高生どっち向いても笑い合い 安い靴右と左の履き心地
「雑 詠」 山本 野次馬 失恋中ですファミレスでカフェラテ 函 南 鉛筆の芯の脆さに気付かない 折じわのシャツが弾ける入社式 雨漏りの穴から木漏れ日の笑い
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 湯上りと言えばメールも艶かし 浜 松 顔ぶれが変わる四月のヘルメット 高齢へ中期を作るチエがない 祖父が逝き天長節が死語となり
「雑 詠」 内山 敏子 肩書きが取れてフワリと軽くなる 浜 松 ペダル踏む裾にまつわる初夏の風 凧の糸切れて自由な風に乗り 連休の来客妻は音をあげる
「自 由 吟」 栃尾 奏子 一途さを愛してやまぬのは飛天 大 阪 ひらりらと蝶が覗き穴にとまる その場から世相を払う柔軟さ はじまりも終わりも知っている宇宙
「丸 い 月」 石井 昇 誰が宥めたのか月が真ん丸い 蓮 田 泣き出したお好み焼きを裏返す 極楽は塩がのってる升の角 上衣着る認めたくない負け戦
「自 由 吟」 藪ア 千恵子 薄墨の袋を抱いている涙 焼 津 袖振り合う人の情けが身に沁みる 届かない背中に焦れる五十肩 踏ん切りの悪い男の愚痴を聞く
「母 の 日」 酒井 可福 ひとときを母の墓前に手を合わす 北九州 母の日は男料理の見せどころ 母の肩つぶれぬようにもみほぐす 母の日の前は小遣いせびられる
「鮎を食う」 金田 政次郎 手を延べる遡上の堰に舞う鱗 静 岡 年魚とは悲しみ誘う鮎の性 鮎を食う焼きたてを食う指で食う 落ち鮎はしっぽも食って供養する
「ほろ酔い」 岡村 廣司 ほろ酔いにならなきゃ軍歌出てこない 焼 津 水溜りぐらいほろ酔い避けてゆく 副作用有るわけないさほろ酔いに ほろ酔いがたたいたドアーお隣だ
「ゆっくりと」 真田 義子 思い出の中で生きてる淡い恋 仙 台 自画像は素顔のままに描くつもり ゆっくりと過去振り返る春の月 ゆっくりと心浮かせる露天風呂
「花 見」 鈴木 恵美子 桜散る野辺にすみれが顔を出す 静 岡 たましいがそぞろ歩きをした花見 タンポポの黄に語りかけたい散歩 風みどり詩人の椅子にちょっと掛け
「定 年」 鈴木 千代見 定年日熱い視線に背を押され 浜 松 アイロンがけ着ることもない作業服 明日からは肩書きもとれ自由人 待つ妻に先ずは感謝の赤いバラ
「売 る」 薗田 獏沓 名を売ってから選挙に出る時代 川根本町 日本の舌を馴らしたハンバーガー 生臭をラップして売る焼き魚 恋人の居ない女が艶を売る
「 道 」 井口 薫 怖いもの知らずの頃のハイウェイ 袋 井 直線の道で疲れがどっと出る インターが出来て野原に御殿街 逃げ道をせっせと造る道路税
「凧 祭 り」 畔柳 晴康 伝統の凧の祭りに老い忘れ 浜 松 大きさと糸を切り合う凧合戦 天までも子の成長を願う凧 空に凧よくぞ男に生まれけり
「梅雨間近」 小林 ふく子 びしょ濡れの心シャワーで癒してる 袋 井 急な雨時間潰しに友が増え 思いの外いい句に会える雨の午後 梅雨晴れ間ソーダ水を飲んだよう
「風 邪」 成島 静枝 三食の合間を休む主婦の風邪 千 葉 風邪声を武器にセールス斜め切り ウイルスが右脳左脳を掻き混ぜる 鼻水を猫も垂らしている師走
「 靴 」 芹沢 穂々美 新品のスニーカーおろす大安日 沼 津 慣れぬ靴はいて愚痴でも聞きましょう ピンヒールはくには足が太すぎる 雨の日のセールスの靴乾いてる
「山 頭 火」 瀧 進 たんぽぽの風と奏でる自由律 島 田 野良犬と軒共にする秋しぐれ 破れ笠月を添い寝の無住寺 生かされてまた故郷の空を見る
「無 農 薬」 中矢 長仁 この野菜虫も食べてる無農薬 松 山 食べて見て素材は自信無農薬 新鮮で味一番の無農薬 子に送る味一番の無農薬
「近 況」 川口 亘 威張るだけ損をするよと諌められ 藤 枝 威張っても杖の分だけ労わられ 少子化に出す小遣いも高くつき 気懸りを幾つものこす未知が有り
「 春 」 川口 のぶ子 愚痴の芽も新茶も同じ春を知り 藤 枝 幻想に悩まされてる春の宵 人恋し春という季をもて遊ぶ 気詰まりを段々外し春を呼ぶ
「雑 詠」 山田 ぎん 触れ合いの仲間笑顔で話し掛け 静 岡 用宗の老人センター人が寄り カーネーション母の日祝う玄関に 家曾孫アレコレ言って指をさし
「身を洗う」 加茂 和枝 太平洋波はざぶんと身を洗う 岩 沼 本当の旅に出逢えた友ができ ゆったりの旅で元気になる私 次次と課題が生まれゆく地球
「歯 科 医」 中安 びん郎 老化して顎が細まり歯科へ行く 静 岡 口開けて痛くないねと歯科医言い 川柳に興味持ってる歯科医院 梅干しの種噛んで行く歯科医院
「08 4/30〜5/1」 西垣 博司 駆け込みでささやかなトクしたつもり 静 岡 古のれんやめて今夜は給油する 日本中火気厳禁の夜が更ける ガソリンが五月の空に高く舞い
「自 由 吟」 松橋 帆波 料亭で大人の知恵を授けよう 東 京 放射能以外も漏れる原子力 米軍はやはり占領軍であり 平壌は投げる卵も無いだろう
「無 題」 鹿野 太郎 年金で豊かに過疎の風になる 仙 台 筍の皮を丸めて吸う昭和 伏せをする盲導犬が消す邪念 火種撒き散らしてトーチリレーする
「夫 婦」 戸田 美佐緒 ゴキブリも家来にしてる妻の乱 さいたま 殿様と呼べば振り向く妻である 駄目ですよそこは私の天守閣 それだって照る日曇る日夫婦です
「ガラクタ」 塚本 寄道 ガラクタも言葉ひとつで値打ち物 長 泉 ガラクタと分かっていても欲しくなる ガラクタの中に隠れた猜疑心 ガラクタと言われてもこれ宝物
「アドベンチャー」 多田 幹江 情報の森にぽつんと天邪鬼 静 岡 食充ちて飛ばぬヤンバルクイナ生む チャイナを食すアドベンチャーの貌をして 親の気も知らぬハシブトカラスの子
「雑 詠」 柴田 亀重 庇い合う痛い苦しい言わないで 沼 津 麗なる外へチワワの甘えなき オリンピック聖火へ御負付く話題 時過ぎて誰も聞きたくない話
「水 芭 蕉」 林 二三子 新緑の風に吹かれて露天風呂 芝 川 ハイキング会釈で木道譲り合う 水芭蕉雪解けを待ち顔を出す ひっそりでもしっかり自己主張している
「五 月」 増田 信一 五月は春か夏俺の心秋 焼 津 鯉のぼり男の影が薄くなり 五月病俺の場合は秋になる 五月晴れ雨が降っても前を見る
「鮎友釣り三昧・・・其の二十」 永田 のぶ男 子供らが河原で学ぶ水泳ぎ 静 岡 せせらぎで真夏に育つ元気な子 子供らの遊び場あけて竿を出す 見守ってマナーを示す天狗連
「自 由 吟」 中田 尚 無関心命命が軽くなる 浜 松 ミスをして反省をしてミスをする パンダにも二十五円にも揺れる 先着に電車つかって間に合わず
「 心 」 中野 三根子 いつまでも母は心の中に居る 静 岡 母の日に心づくしの花の色 心にもない言葉さえ言ってみる 心から感謝をしても遅すぎる
「タイミング」 川村 洋未 時お金いつもおくれてやってくる 静 岡 中間にいればいつでも逃げられる さがし物見つかる頃は役立たず ごめんねと言えるチャンスが消えて行く
「甘 え」 石田 竹水 傷口の甘えに耳は貸しません 静 岡 人混みの中で甘えの孤独感 ビー玉を転がしている密告者 三日月が恐い徘徊もうしない
「祟 り 神」 山口 兄六 仲がいいお互い後ろめたいから 足 利 どうぞどうぞと危険ゾーンを譲り合う 行列のできない店で買う時間 天国か地獄か一夫多妻制
「毒りんご」 真理 猫子 バイパスができた過疎地は過疎のまま 岡 崎 どんぐりを知らない子らのせいくらべ あら熱を恋の微熱で取っている 正直に生きているから毒りんご
「自 由 吟」 今井 卓まる 大海で鯨も独り大涙 浜 松 海の深さを目分量で測る猛者 煩さに起きて気付いた我がイビキ 大の字もそろそろ飽きたニート君
「ストーリー」 谷口 さとみ 花が咲くまでは水やり欠かさない 伊 豆 たいくつで口紅変えてみたくなる もう一杯呑めばデジャブがみえたかも 実印に託す喜怒哀楽のケリ
「雑 詠」 佐野 由利子 乗り換えに夫と走る跨線橋 静 岡 男より早く歩いて嫌われる 五線譜に少年の夢踊ってる 駅までの散歩も兼ねるマイホーム
「懐かしい過失」 寺田 柳京 パラソルで顔かくしてもそれと知れ 静 岡 黒くても金魚覚悟は出来ている 整形をしない当時に似て生れ 懐かしい過失だったと諦める
「浅い考え」 池田 茂瑠 踏み込めぬ掟の線を持つ二人 静 岡 両親の手が弾めない毬にした 考えの浅い部分もある手紙 薄い胸おこした思慕の火も淡い
「乱 調」 川路 泰山 十指皆恋人にして妻がいぬ 島 田 熟れ過ぎた桃だが味は抜群さ 太陽を半分に切るジジとババ 高齢者乗せて地盤が陥没だ
「雑 詠」 高瀬 輝男 社交辞令の余韻にあったバラのトゲ 焼 津 黙殺をされているなと気付く宴 輪の中に隠されていた落とし穴 重病の地球へカンフルでも打つか
「宇宙から」 望月 弘 万華鏡から覗かれている財布 静 岡 衛星が捨てられていく青い空 徘徊のワタシを宙が監視する 宇宙人もどきが棲んでいる地球
「しぞ〜か弁川柳」 加藤 鰹 オトマシイ明日は我が身か大地震 静 岡 容姿などトンジャカネエと言うけえが センダッテ買ったテレビだセセクルな コクルってコックリさんじゃにゃあだから
顧 問 吟 「 臍 」 柳沢 平四朗 春いっぱい旅の言葉が屯する 静 岡 腹いせのペンを写経で見失う 帳尻は天へ預ける四面楚歌 熟年の視点へ臍をつけ替える
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[119] (2008/06/26(Wed) 08:37:12) |
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