自 由 吟 虎 竹 抄
「夏 の 宵」 成島 静枝 七夕の飾り怪しい空模様 千 葉 カラオケの舞台人待ち顔の昼 ガソリンが足を引っ張る遠花火 裏方へおばけいそいそ盆踊り
「赤トンボ」 大塚 徳子 世の中が歪んで見えた赤トンボ 仙 台 物価高レジで目玉が回り出す 蒲焼は食べずに済ます妻用事 買い控え丁度良かったダイエット
「残 暑」 金田 政次郎 天高く澄み望楼に人見えず 静 岡 天窓を開ける麒麟の住む我が家 残された私の靴と違う靴 一枚の最後のパズル妻が埋め
「先 生」 寺脇 龍狂 先生がセンセイ並みに見えてくる 浜 松 先生が黙って休むこともあり 衣食住みんな油の使いすぎ 立ち退いた村へ要らない泉湧き
「夏の太陽」 加茂 和枝 あの人を許して空は夏になる 岩 沼 ライバルは必要でした今日の汗 有難い自分ひとりで咲けぬ花 灼熱の太陽浴びて生きている
「雑 詠」 石井 昇 カリスマの体内時計進みがち 蓮 田 石蹴って好い日と思う日和下駄 万物流転ひと爭って澱む 覇者の剣所詮うたかた土となる
「節約生活」 毛利 由美 小さいともう言わせないエコライフ つくば 節約の一端になうMサイズ お買い得品でまかなう成長期 買いだめをきちんと使い切る努力
「 火 」 薗田 獏沓 政爭にももみくちゃになる聖なる火 川根本町 全力で火を煽る人疎外され それなりに身を整えて火を鎮め 神様の示す道だが火が見えず
「満 足」 岡村 廣司 思いきり汗を流した満足感 焼 津 満足な顔で昼寝の大連休 腹八分ほんとにそれで満足か 平凡に生き長らえた満足度
「極 暑」 川口 亘 先ずこれが本音と見せた嘘も有る 藤 枝 書き損じ許されないでいる清書 もっともの話と云って気をもたせ 効果など出ない内から気が萎れ
「雑 詠」 川口 のぶ子 泣きじゃくる幼の顔に玉の汗 藤 枝 扇風機一人じめして風邪を引き くもの巣にあそばれている私 屋根の上眞赤な夕日が落ちてくる
「自 由 吟」 竹内 さき 夕暮れて人影恋し湖畔の灯 浜 松 棘抜いたバラひっそり買うピアス 日が暮れてポックリ高く古都の秋 コーヒーも熱く両手にほっと秋
「迷 い」 安田 豊子 焦る程迷い言葉が浮かばない 浜 松 戸惑った隙に突かれた肚の虫 聞き耳を立て逃さない噂好き 戻れない迷路あなたと組むプラン
「雑 詠」 滝田 玲子 プライドはあるが老化が邪魔をする 浜 松 嘘少し混ぜた会話が盛りあがる 大正のロマンに生きた夢二の絵 低迷のドアをノックの風の音
「リハビリ」 畔柳 晴康 一歩二歩胸張り手振る試歩の足 浜 松 リハビリは痛さ苦しさ汗までも 痩せ我慢男の意地は未だ捨てぬ 足の怪我癒えて正座に笑みこぼれ
「食 い 気」 鈴木 まつ子 腹の虫鳴って困った会議中 島 田 腹ペコでみな平らげる回復期 それとなくすぐ手が伸びるつまみ食い 色気より食べる生きがい通になる
「迷 う」 鈴木 千代見 回転すしながめていたら取りそびれ 浜 松 雨の日の受話器持つ手が落ち着かず あの時の選択中の暮らしぶり 神様の目を引くような派手な絵馬
「おはよう」 内山 敏子 朝が来るそれは明るい家庭から 浜 松 おはようのリズムで朝の歯をみがく おはようが今日一日を左右する おはようが駆け抜けてゆく通学路
「飲 む」 芹澤 穂々美 大ジョッキ持つ手の重み憂さ晴らし 沼 津 裏切られ思いきり飲む赤ワイン 梅酒まで見くびっている空財布 焼香のけむりで人が消えてゆく
「雑 詠」 ふくだ 万年 お父さん飲み屋じゃ何時も社長さん 大 阪 気に入りのスカート穿く為筋トレを くだらない事覚えている枯れた妻 メタボ腹逝く時スリム気にしない
「お元気で」 中矢 長仁 落し穴低カロリーも食べ過ぎりゃ 松 山 対策さメタボと言われメジャー買う 取り柄です元気に口の利けるのが 妻元気夫を連れて散歩する
「実 る」 小林 ふく子 実りまで大器晩盛の日を過ごす 袋 井 なす実り嫁と姑が奪い合い 十五夜の今年の実り味見する それぞれの色に化粧の実がたわわ
「入 院」 寺田 柳京 痩腕のわずかしかない血を採られ 静 岡 点滴の一つ一つの命かも 頼母しく見る看護婦の鼻の孔 罅入りの甕の命をいとおしむ
「た め 息」 新貝 里々子 敗戦忌ため息を消す蝉しぐれ 袋 井 エアコンがあってよかったこの暑さ エアコンを利かせ地球を考える 大袈裟なため息暑さ頂天に
「大吉の日」 増田 久子 ありがたくまず通される台所 焼 津 中ジョッキ仰向くほどもなく干せる この家の黒猫あぐらだけ狙う 生まれつきです鼻声という長所
「体 操」 濱山 哲也 ライバルとジャンプボールを奪い合う つがる 得意先前屈ばかり繰り返す 残業に酒にカラオケ右左 ピン札の匂いを嗅いで深呼吸
「青 い 空」 真田 義子 青空を写す鏡を持っている 仙 台 青空を残してくれて逝った人 この道をずっと行きたい青い空 新しい気持ちで歩く青い空
「おばけU」 西垣 博司 視聴率おばけをねらうディレクター 静 岡 柳の木さがしておばけ棒の足 すっぴんが化けて鏡をあとにする ギャル化粧おばけ以上に怖くなり
「男を縛る」 戸田 美佐緒 個性派を揃えてラッパ狂い出す さいたま あらそった朝には指輪きつくなる コスモスの這いつくばって生きている 手に残る男を縛る赤い紐
「 嘘 」 馬渕 よし子 嘘ついた口だ何度もうがいする 浜 松 身を守る嘘がだんだん上手くなり 美しい嘘で希望をまた持たせ 恋多き女の涙に味がない
「自 由 吟」 山本 野次馬 蝉しぐれ今を生きろと励まされ 函 南 壇上の声が庶民に届かない お人よしそれでも人を憎めない 野に降りてやがては土になるつもり
「 線 」 井口 薫 線引きが下手でストレス溜めている 袋 井 なぜここに赤線なのか借りた本 白線の内側にいて飛び立てぬ 普通の人が普通の顔で銀座線
「 葉 」 鈴木 恵美子 木の葉みな違った顔を持つ張り絵 静 岡 葉隠れに逢うジョギングの片想い 人生の航路木の葉に乗ってみる 草いきれ有機野菜に励む汗
「夏の思い出」 恩田 たかし 誕生日お寿司を食べて腹壊し 静 岡 もう四日お腹今でもパラダイス コアリズムしてる妻より痩せる僕 終戦日毎回食べるすいとんに
「自 由 吟」 鹿野 太郎 モンゴルに勝てるほうれん草がない 仙 台 切りのいいとこで猫撫で声がする 友好の太いパイプがすぐ詰まる フリーターの輪から零れる未来像
「愚 痴」 瀧 進 愚痴の無い亭主も女房物足りぬ 島 田 いゝ嫁も愚痴手土産の里帰り 嫁の愚痴無くて姑出番ない ライバルの愚痴三昧線がよく響き
「雑 詠」 飯塚 すみと 噛み合わせよく診る医者はどこにいる 静 岡 自分では分らぬ色を妻見分け スイッチを切ったつもりがまだついて あちら捨てこちらとろうか花屋さん
「リハビリ」 中安 びん郎 リハビリに伸びた嬉しい試歩の距離 静 岡 リハビリに行くにはいつも杖を持ち リハビリにとても好くない酒タバコ リハビリに何時か大勢仲間出来
「雑 詠」 山田 ぎん つばめの子大口そろえ親を待つ 静 岡 花が咲き水をやってる老日か 女の子大きな目をして口も開き 散歩道花を摘み摘み仏壇に
「夏の落とし物」 栃尾 奏子 太陽の死角で胸をときめかす 大 阪 熱帯夜彼女は人魚だったのだ さよならを告げられてから向日葵に 交差点フワリおんなじアクセント
「息子よ…父よ…」 藤田 武人 平等に育てた筈の好き嫌い 大 阪 歓声に伸びる白球弧を描き 変わらない青空待っている田舎 知らぬ間に追い越していた父の背な 「白 髪」 酒井 可福 人は人 白髪羨む禿頭 北九州 妻だけは禿げずに白く居てほしい 五十路坂日に日に増える共白髪 玉手箱程のご利益ない白髪
「言 い 訳」 塚本 寄道 ボクがウルトラマンだった頃の話 長 泉 満腹になってもすぐに腹が減る テスト後言い訳ばかりしたくなる 踏まれても負けるもんかと伸びるバネ
「雑 詠」 藪ア 千恵子 この暑さ脳の回路が停止する 焼 津 良い事があって素直な耳でいる アメリカの学校に五年生の孫 宿題も英語できます四苦八苦
「楽しめよ」 石田 竹水 水掻きが無くて世の中泳いでる 静 岡 人間に揉まれて孤独楽しめる 憎まれているのも生きている証 敗北は認めていないから長寿
「夫 婦」 山口 兄六 どちらからキスをしたかでばれる嘘 足 柄 手を握り二人子供の顔になる デジタルの時計妥協は許さない いつも待ちいつも待たせる腕時計
「蜃 気 楼」 真 理 猫 子 気温より少し低めの嘘を吐く 岡 崎 煙突から後期高齢者の叫び 何事もなかったことにする鞄 不自由な理性が写す蜃気楼
「雑 詠」 林 二三子 覚めないでほしい楽しい夢だから 芝 川 足腰は痛むが口はまだ元気 山一つ崩して郷が都会めき もっとエコしろよと地球動き出す
「猛 暑」 小野 修市 デブ腹が夏の温度をもっと上げ 静 岡 デブの息車の窓をくもらせる この猛暑妻ドタドタと元気良い 熱帯夜忘れしばしの花火かな
「猫じゃらし」 多田 幹江 おばさまを思い出せない犬が吠え 静 岡 白星をつけると咽ぶ窓の月 ハンガーが足りないひょっとしてカラス 老春の陽だまりに咲く猫じゃらし
「鮎友釣り三昧・・・其の二十三」永田 のぶ男 釣れた鮎タモに入れると西瓜の香 静 岡 趣味の会囮と酒を持ちきれず 落ちつかぬ河川の工事気もそぞろ 来年の予想占う下り鮎
「葉 月」 増田 信一 雑草の生き様を見ろもやし君 焼 津 旧盆が分かり始める年になる 葉月です雑草取りに四苦八苦 甲子園汗と涙にかぶりつき
「エコかな?」 川村 洋未 長雨でたまった過去を整理する 静 岡 ゴミあふれ世界遺産は遠い富士 身の丈にあった車で無事故です ほめまくりかたづけさせてエコ教え
「思いきり」 中野 三根子 思いきり笑ってしまう母の前 静 岡 思いきり泣いたら朝が美しい 思いきり飲んだらすべて忘れてる 思いきり食べてしまったああこわい
「金 魚」 佐野 由利子 目覚ましは数十匹のセミの声 静 岡 反論はゆっくり咀嚼したあとで 根性があって勇気の無い男 祭りの夜買った金魚は三日間
「夏まつり」 谷口 さとみ 秘め事をひとつ探しに夏まつり 伊豆市 口止めを目配せでしてすれ違う 戻れないだから尺玉哀しそう アセチレンガスと一緒に終える夏
「自 由 吟」 今井 卓まる 通院の皆勤賞は自慢なの 浜 松 大儲けないが大損とも無縁 裏切りを朝まで待てずキーを挿す 仕方なしソーメンすする初夜の箸
「死 角」 池田 茂瑠 感覚の乏しい視野に花が散る 静 岡 後ろ髪引くのは狂う風ばかり 悪ならば死角の鬼が売ってます 厚底に時代遅れの足はめる
「 雨 」 川路 泰山 霧雨の中で漢を確かめる 島 田 運不運凌ぐ手のない逆さ雨 茫々の野面を敲く戦雨 大河相承残夢の中に漢一人
「自 由 吟」 高瀬 輝男 夢があるから人間として生きる 焼 津 頃合いへ愚見一つを進呈す 尻尾まで変身なんて出来ないな 上手だな喜怒哀楽の猿芝居
「ビールの季節」 望月 弘 百日花大人の恋を稔らせる 静 岡 風鈴をうるさく聞いて熱帯夜 太陽もそばかすがある気にしない 男だな小便小僧オトコだな
「自 由 吟」 加藤 鰹 引き抜いた釘が造反組になり 静 岡 未熟者だな未熟さに気づかない 自分へのご褒美だとさパスポート タバコ税アップいじめはやめたまえ
「西 日」 柳沢 平四朗 追憶の手でむしってる夏の草 静 岡 歪んでいる靴で西日を蹴っ飛ばす 用意した篭を嫌った青い鳥 秒針は杞憂を敵にして進む
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[128] (2008/09/25(Wed) 09:40:13) |
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