自 由 吟 虎 竹 抄
「た め 息」 谷口 さとみ 靴ひもを結ぶと用を思い出す 伊 豆 残しても食べても悔いるバイキング 一張羅さえ十年は着ていない 窓を拭くあなたの居場所見えるまで
「自 由 吟」 真理 猫子 しぶ柿のままで初恋そのままで 岡 崎 境界を引いた後ろは崖っぷち やさしさも時には風邪をひくらしい 引力の強いぐうたら星にいる
「乗 り 物」 濱山 哲也 エレベーター乗ってるときは宇宙人 青 森 エスカレーター乗ってるときは肥満体 観覧車乗ってるときは迷い人 手の平に乗ってるときは恋インコ
「破 れ 傘」 柏屋 叶志秋 雨止めばリストラされる破れ傘 山 形 最期には人も秋刀魚も骨になる 黒豆を煮る火加減の愛がいい 水溜まり一つ一つに月がある
「時 事 吟」 松橋 帆波 談合の配電盤が美しい 東 京 連休が商店街を過疎にする 国会で目糞鼻糞言うている 文明の利器自殺者を減らせない
「秋 の 蝶」 真田 義子 足早に秋が流れる交差点 仙 台 恋をして蝶に変身する私 幸せな隙間に絡むくもの糸 カーテンコールそして私は蝶になる
「コスモス」 鈴木 恵美子 また逢えたコスモスといる秋ですね 静 岡 ほほえみを返してくれる秋桜 コスモスよそろそろ別れのときが来る コスモスの群生愛は限りなく
「政 界」 岡村 廣司 国会にレッドカードが無いなんて 焼 津 長寿国なのに大臣短命で ポリシーは無いが反対だけの党 総理まで派遣勤務になったとは
「カスミソウ」 大塚 徳子 大臣の口にあてがう猿ぐつわ 仙 台 もろもろを水に流して人許す 華やかな頃の余韻で生きている そっと咲きそっと散りたいカスミソウ
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 椰子の島安いから行くハネムーン 浜 松 御祝儀の足りない分は歌を書き ダイヤモンド捨ててみたいなゴミ出し日 三千本打って見送る栄誉賞
「禁 煙」 成島 静枝 禁煙中茶の間の空気旨くなる 千 葉 木鋏が手持ち無沙汰で切り過ぎる 本気かもタスポ捨てたらファンファーレ 煙草屋のダンナ売り物吸ってない
「食 む」 藤田 武人 飴効果知名度一位金太郎 大 阪 ドラキュラもメタボトマトでダイエット 父の膳いつも一品多かった 晩ご飯食べに通ってくれたひと
「女 た ち」 栃尾 奏子 ジャジャ馬な愛と葛藤する少女 大 阪 だきしめて儚くもろいから強く 母さんは黙ってお茶を入れ直す 内緒事おんな共有して平和
「蛇・猫・咳そして眼」 戸田 美佐緒 蛇というだけでピストル向けてくる さいたま 日当りの良いほうへいく猫の髭 幸運を引きよせ咳が止まらない 口ほどに物を言う眼に狙われる
「私 と 貌」 竹内 さき 耐え抜いた口紅外の風をよむ 浜 松 コーヒーをどうぞ私へ風うごく うす化粧して風と出る街の中 そして気がつく人間の貌となる
「ゆっくりと」 増田 久子 柿八年その柿の実が一つ成る 焼 津 ダイヤルのゆっくりがいい黒電話 骨密度年相応という不安 お早うでいいかな午前十時半
「老の朝と昼と夜」 金田 政次郎 素晴らしい老人介護神話だな 静 岡 日だまりに捨てて在るのは俺の影 ジグザグと陽気に渡る丸木橋 酒や良し小皿程好い音で鳴り
「 朝 」 鈴木 千代見 朝なのに愚痴くずかごにポイと捨て 浜 松 朝の活気トイレが二つ感謝する 妥協した朝はどんより曇り空 再会に心に糊をきかす朝
「帰 省」 芹沢 穂々美 ガソリン代先に渡して帰省させ 沼 津 年取らずにジーパンはいて帰省する 川で泳ぐそんな時代の少年期 青くさいトマト畑の淡い恋
「未 熟」 提坂 まさえ この家も熟したなあと床軋む 静 岡 私こと熟年ですが未熟です キッチンで熟睡をするメロン様 一行のメール熟読雨あがる
「熟しどき」 萩原 まさ子 機は熟しニートが空へ飛び立つ日 静 岡 柿熟れる頃渋い顔見せる医者 熟しどき時間ではない両想い ごめんねが言えず気遣い豆々と
「完 熟」 石上 俊枝 シューベルト聞きつ眠っているワイン 静 岡 完熟の我が娘まだ嫁き遅れ 熟す歳 角も年々丸くなり 共に生きカラスに残す熟し柿
「自 由 吟」 伊藤 泰史 熟読は無理だ女の恋心 静 岡 サンマなら秋が一番おいしいな 鬼は外だから世の中鬼の群れ 今一度あの日の君に会いたいな
「運 動 会」 毛利 由美 天気図が語る運動会日和 つくば バズーカ砲かかげ我が子をビデオ撮り 玉入れにPTAは策を練る フォークダンス喜んでいるのは外野
「 本 」 山本 野次馬 死ぬまでは本音が言えぬ腹八分 函 南 引き潮に本音ポロリとぼろを出す 本物になろうと深海を覗く 本心を捨てる樹海のど真ん中
「絵 馬」 酒井 可福 張り込んだ絵馬に多少の期待掛け 北九州 どの絵馬もお願い頼む悲壮感 神様も本気になれぬ絵馬ばかり 神様を笑わす一句絵馬に書く
「灯火親しむ」 川口 亘 助動詞や副詞一字で気を変える 藤 枝 書き印るし残せるだけの歌を書き 思い出を絵にする迄に手間をとり いい話タンスの奥で眠りこけ
「老 眼 鏡」 安田 豊子 後期高齢などと勝手に言うお上 浜 松 あきらめと失う事に慣れました じっくりと発酵する間ありません 夢捨てず辞書を操ってる老眼鏡
「自 由 吟」 ふくだ 万年 留守と言え電話の向う怒鳴り声 大 阪 ギネスもの妻は元気で長電話 駆け落ちをするほど深い仲じゃなし あの二人消える順番あるらしい
「趣 味」 薮ア 千恵子 携帯も必要かなと気が変わる 焼 津 雑用に追われ川柳逃げていく お喋りを楽しみにいく趣味の会 文化祭作品できぬ趣味三つ
「大 空」 馬渕 よし子 ちっぽけな悩みと知った空の青 浜 松 満点の星がロマンを持って来る 大空へ放った夢に兆し見え 大空の下で喘いでいる暮らし
「自 由 吟」 鹿野 太郎 上達の早い月謝に負けられぬ 仙 台 阿久悠に近いセリフを言ったのに 嬉し泣き凭れる中の味噌にぎり 髭のある妻が起死回生の駒
「カ ラ ス」 石井 昇 カアと啼くカラス戦を起こさない 蓮 田 母さんは烏でいいの鵜は嫌い 烏の子帰るお山がありません 黒いことは悪いことですかカラス
「自 由 吟」 内山 敏子 紅葉にひかれ一泊露天風呂 浜 松 叱るだけ叱ってけろり親子酒 あの猛暑いつか忘れて冬支度 飼い主を引張り散歩させる犬
「ステージ」 薗田 獏沓 歌手になるステージ夢に皿洗い 川根本町 ステージへ花を贈って盛り上げる 将来を任せる弟子の初舞台 迫真のステージ涙そそる席
「 枕 」 鈴木 まつ子 一湾の波を枕に旅はるか 島 田 折り紙が笹舟になる箸枕 新婚の甘さすっぽり腕まくら 親を看る祈りをこめた水枕
「医療検診」 畔柳 晴康 サア検診不安が先で身が震え 浜 松 採血で添えた白衣の手が温い 内視鏡歳はとれどもなかピンク 検査すみアトは欠伸と背伸びする
「も み じ」 小林 ふく子 早すぎる秋を覗いてみることに 袋 井 皆に会う命燃やしているもみじ 小春日にもみじやさしく地に還る 来年の約束しよう濡れもみじ
「自 由 吟」 川口 のぶ子 物価高年金者には辛い夏 藤 枝 外出に金の要らない散歩道 物価高横目で睨むだけになり スーパーを見させて貰うエコバック
「事 故 米」 尾崎 好子 古希すぎて事故米という米を知る 藤 枝 事故米でボロ儲けした金を出せ 買う方も米の善し悪し分る筈 成敗は黄門さまに頼みたい
「秋祭りさまざま」 中矢 長仁 宮出しに子等早起きし駆け付ける 松 山 怪我も出る喧嘩神輿の鉢合わせ 太鼓台勢揃いしてかき比べ お神輿が海に飛び込み禊ぎする
「雑 詠」 西垣 博司 かけ違いされたボタンの所在なさ 静 岡 長電話同病という赤い糸 マンション化九尺二間をカナに変え くつ下の穴が窺うシャバの風
「炎 天」 滝田 玲子 蟻の列ぞろぞろ動く炎天下 浜 松 炎天下熟れたトマトが雨を待つ 炎天下日傘まわして愚痴を聞く 炎天下白球を追う甲子園
「雑 詠」 飯塚 すみと コーヒーの香りの中にアイデアを 静 岡 思考する回路を逆にしてみたら その日ぐらし大方のひと感じてる あやつりのサッカーロボット右ひだり
「子に帰る」 瀧 進 脳細胞ひと皮むけて青い空 島 田 脳の皺伸ばし心の若返り 思い出のひと日を綴る老介護 子に帰る笑顔の老母は慈母観音
「秋 の 色」 加茂 和枝 きっと来る寒さに種が実ります 岩 沼 秋色に心と体嬉しそう 秋満載少し遠くへ足運ぶ 体だけ元気で実り手に残る
「雑 詠」 中安 びん郎 リハビリへ行ったお陰で友が出来 静 岡 リハビリで知った性善説の人 リハビリで日増し好くなる足と腰 原油高松根油でも掘りましょか
「自 由 吟」 恩田 たかし 七五三喜ぶ娘微笑まし 静 岡 仕事料あれよあれよと泡と消え 今日も又ラジオに送るネタ探し 新たなる事にチャレンジ秋の空
「 赤 」 森下 居久美 記念日を語らっている赤ワイン 掛 川 赤点を見せられた日の偏頭痛 ボジョレーの旗ひらひらと赤とんぼ 待ち受けは君にもらった赤いバラ
「自 由 吟」 中田 尚 前前とあせるメガネを持っている 浜 松 よく転びカルテメタボにさせるだけ しもやけの手にまず冬が降りてくる 善人か まず赤ちゃんに仕分けられ
「雑 詠」 林 二三子 親のエゴ背負い塾行く子が暗い 芝 川 親の背が見えれば子らも迷わない 無欲の汗額に被災地で励む 枝整え冬に備えてお礼肥え
「暮 ら し」 堀場 梨絵 淋しさはこの鳩尾に埋めてある 静 岡 馬上ゆたかに風よけの夫だった 編みかけのマフラー風が追いかける 運命は神にさからう足袋はだし
「丸 ご と」 石田 竹水 こつこつと耐えてそのまま石になる 静 岡 お月さん丸ごと食べます十三夜 物言いは聞かない夫婦四ツ相撲 ジャンケンの鋏が人情切り捨てる
「雑 詠」 西垣 博司 余命の差女房はまだ紅をひき 静 岡 毒舌をたしなめている喉仏 大恐慌知るや知らずや蟻は這う 舞台からとび降りて買う秋の旬
「自 由 吟」 長澤 アキラ 楽焼の肌に命を染めあげる 静 岡 良心の転がる音が絶え間ない 対岸に今も聞えるわらべ唄 自分史の最後を飾る紙オムツ
「 空 」 中野 三根子 青空に見上げる虹のかけた橋 静 岡 こんなにも青空が好き君が好き 秋空を一人ながめるいわし雲 時々は秋空みつめ考える
「没句に日の目」 川村 洋未 目が見えて歩けるならばバリバリさ 静 岡 一、二食食べなくたって働いた スケジュールあればあったで尻重く 男の野心見きわめて乗る女
「鮎友釣り三昧・・・其の二十五」永田 のぶ男 一杯をやるまい鮎の寿司の山 静 岡 指定席話の弾む鮎の会 赤ら顔意気投合の鮎仲間 酔う程に天下泰平釣り頭
「神 無 月」 増田 信一 神無月一年全部神無しだ 焼 津 神無月お宮参りは無駄骨か 神無月お頼みします仏様 神無月関係ないね無神論
「紅葉前線南下中」 高橋 繭子 震災に負けるものかの秋祭り 仙 台 デスティネーションキャンペーンおらほさ来てけさい 着ぶくれて何やらおかし秋の暮れ 夏はもう一年後ですご自愛を
「凡 夫 婦」 多田 幹江 俺さまの肩もなだらになって秋 静 岡 ふたりならクモの巣城も悪くない ありがとうは食えないなんて言わないの 飲み食いの祭りのあとのとばっちり
「自 由 吟」 小野 修市 となりより伸びきたカキを味見する 静 岡 仕事をば敵のようにつっぱしり 神無月でも家に居る山の神 意地を張り目ん玉むいて損をする
「自 由 吟」 今井 卓まる 月明かり冴えない色気二割増し 浜 松 妻の年若く間違え上機嫌 僕の趣味彼女が変わりまた変わる 意味もなく愛という字を二度なぞる
「定 年 後」 佐野 由利子 よい便り郵便やさんありがとう 静 岡 簡単に他人に添わぬ太い眉 人込みを猪突猛進母が来る 反骨がいやに素直に定年後
「ク ッ ク」 山口 兄六 秋刀魚サンマ小骨で母を思い出す 足 利 秋味のビール夜長のお友だち マイホーム蝉が消えたら秋の虫 NG大賞は君へのプロポーズ
「 鴉 」 川路 泰山 夕暮れの街で啖呵を切る鴉 島 田 一本が足らず烏は黒のまま 鵜の真似も出来ず烏は群をなす 弁証法烏も迷う無精卵
「妻の構図」 池田 茂瑠 風上の陣を有利に使えない 静 岡 妻の引く構図も影が多かった 花のない小枝つないで逢いにゆく 悔い残る赤い踵の高さだけ
「自 由 吟」 高瀬 輝男 黄菊白菊多彩な秋のプログラム 焼 津 飲食の舌にも水の美味が染み 目の前で回れ右する青い鳥 歌姫も時勢に勝てぬ歌謡曲
「 秋 」 望月 弘 女から体重計から睨まれる 静 岡 ビールから酒へ気転の妻がいる 稲を刈る父が枯葉をくちずさむ ふるさとの秋デジカメを呼んでいる
「晩 秋」 加藤 鰹 雲に乗る話に乗ろう酒追加 静 岡 ご意見はもっとも鼻毛出ているよ ワインより赤い貴方の嘘に酔う サヨナラの向うは深い深い闇
「自 由 吟」 柳沢 平四朗 忠告は父の昔が底にある 静 岡 脈のある間は明日を揺り戻す 秒針は杞憂を敵にして進む 影法師も皺くちゃだから振向かぬ
|
[133] (2008/11/25(Mon) 14:28:38) |
|