自 由 吟 虎 竹 抄
「お 正 月」 谷口 さとみ 賽銭は増えずお願い事は増え 伊 豆 雑煮食べママはパートへ子は塾へ もういいかい今日はひとりだカップ麺 明日もまた笑いたいから豆浸す
「新 年」 岡村 廣司 どの神にしようか迷う初詣で 焼 津 忘れては居なかったんだ賀状来る おだやかな顔していよう松の内 鼻唄のゆとりを持とう今年こそ
「元旦に思う」 金田 政次郎 八度目の丑ですドーモ済みません 静 岡 元旦の採光老いを引き締める 天寿とや加齢の芯の先細り 夢多く盛って描いた初春の空
「自 由 吟」 竹内 さき 初雪よ一直線なプロポーズ 浜 松 寄り添うて短き命願をかけ 恋と米両手でこなすいい女 さらさらと私を写す水鏡
「外 圧」 鹿野 太郎 夕張のメロン北への使者にする 仙 台 忙しい顔、貌、面の伏魔殿 アマチュアをごぼう抜きする大リーグ 日の丸のスピーチ耳の掃除する
「雪 の 日」 栃尾 奏子 神代から元旦凛と来るきまり 大 阪 抱負だけ馬鹿にでっかい三が日 雪の日は雪の日なりの過ごし方 うっとりとコタツ爪先から入る
「前期高齢だから・・・」 増田 久子 駐車場もみじマークとして並ぶ 焼 津 どこで出てどこで終るか今の歌 マラソンの中継で知る町の位置 文庫本東野圭吾だけ探す
「人 間」 大塚 徳子 ゆうやけこやけいつか羽ばたく鶴を折る 仙 台 カマキリのことを想いて日が暮れる 人間が好きで人間らしくする ゼロから人間やり直す牛の年
「家 族」 薗田 獏沓 背もたれに家族みんながなってくれ 川根本町 農耕の血はネクタイを羨やまず 嬉しい時悲しい時も抱く家族 枯野だが家族楽しく握り飯
「ぱぴぷぺぽ」 戸田 美佐緒 ぱぴぷぺぽ軽い話に油断する さいたま 前略と書くと無沙汰が畏まる 窓際の古い机が歌い出す 雪おんな前後不覚の酒になる
「復 活 祭」 新貝 里々子 淋しくていつもポコポコ湧いている 袋 井 愛は錯覚わたしを縛る長い紐 球根に聴かせるピアノコンチェルト 焦るまいゆっくり人間として生きる
「夕 焼 け」 安田 豊子 惚れられて煩わしくて怖くなる 浜 松 大らかに笑い哀しい演技する 何回も転び得難いコツ拾う 夕焼け小焼け自分還る里のいろ
「年 寄 り」 西垣 博司 私よりそろそろワシが似合うかな 静 岡 今の世を生きてこの世の憂さを食い 風切って歩めばきっと風邪を引く 年寄りの話日向で笑い合い
「道 草」 真田 義子 あの時に光をくれた三分粥 仙 台 スパイスをかけ間違った人といる 道草をしながら恋の二つ三つ ゆっくりと雲が流れるうれしい日
「自 由 吟」 中田 きく子 満足の度合いに揺れている私 静 岡 お茶をたてひとり静かな刻を持ち 節くれの指が過ぎし日ものがたり 指先が恋しき人の名を拾う
「 鼻 」 馬渕 よし子 上向きの鼻で宝を嗅ぎ当てる 浜 松 何も彼も許してくれた団子鼻 褒められて鼻の回りがこそばゆい 鼻息が荒くて誰も寄り付かず
「み が く」 井口 薫 平穏な日です包丁研ぐことに 袋 井 刃こぼれの目立つ五感を磨いてる 床もみじ修行の汗を光らせる 終点へ磨き足りないままの旅
「めでたし」 提坂 まさえ お話の通り帰ったかぐや姫 静 岡 物忘れこれでいいのだ我が海馬 古炬燵ぽっと赤らむ使い初め 旅終えて妻の小言は元通り
「嬉しいな」 川村 美智代 太陽が笑えば花も子も笑う 静 岡 極楽ぞ赤黄のもみじ露天風呂 春さくら秋はコスモス四季嬉し ピアノ弾く孫の指からちさい秋
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 死んでまで会社につくすことはない 浜 松 建売りが売れ残っている幟 新総理出足ほどにはパっとせず 使う日を夢に仕える政治秘書
「スケジュール」 加茂 和枝 丁寧に私を試す風が吹く 岩 沼 風呂敷に包んだ愛が重たくて 崖っ淵空が青くて救われる 膨らんだ夢が後押す予定表
「雑 詠」 寺田 柳京 捨てられた男の様な昼の月 静 岡 野良犬を見下している昼の月 掌の畑に伸びる葱其の他 まほろぼの地球を人が何故こわす
「家 族」 藪ア 千恵子 遠く住む家族と話す趣味のこと 焼 津 アメリカと通話料金気にしない 少しずつ英語身につく五年生 帰国するまでがんばって待ってます
「雑 詠」 成島 静枝 やすくてもホテルのバーはちと行けぬ 千 葉 円高のメリットワイン飲めぬ口 霜月と師走を残すカレンダー Qちゃんの引退己を知っている
「別 れ」 石井 昇 愛が終ったか氷柱も溶けてゆく 蓮 田 流氷と歌うわたしの別れ唄 消えてゆく霧笛が夢も連れてゆく ふと想う雲になりたい流れたい
「後期高齢」 畔柳 晴康 失敗も高齢ゆえと演技する 浜 松 便利だよ後期高齢使い分け 出し渋る年金暮し口にする まだ呼ぶな必ず逝くが急がない
「見 舞 い」 鈴木 千代見 病室を出るタイミングつかめない 浜 松 表札を見つけて呼吸整える その程度でよかったネェと見舞い客 病名に触れず世間の話する
「寒 い」 藤田 武人 帰り道湯気の向こうに縄暖簾 大 阪 春を待つ窓辺に飾る寒桜 クルクルと回れ寒鰤冬が来た 懐は紙切れだけのボーナス日
「昼 休 み」 恩田 たかし 昼休み句にははまりすぎさぼりすぎ 静 岡 くつろぎの昼休みには缶コーヒー 秋風に揺れる木々の葉紅葉中 心地いい風と日射しに踊る木々
「自 由 吟」 石上 俊枝 家事放棄してざんぶりと露天風呂 静 岡 上を見て下を眺めてよしとする ピースしてプラス思考の運を呼び ひと指でドミノ倒しに風が起き
「自 由 吟」 萩原 まさ子 寒いから帰る家族という温み 静 岡 槽糟の妻が入れたるお茶を飲む 薬指見てまだチャンスありと知る 母の苦を節くれの指知っている
「貴 方 へ」 芹沢 穂々美 赤い傘貴方のために買いました 沼 津 五色豆貴方の背中押している 丸テーブル貴方の愛を一人占め 秋霖や貴方の誘い待っている
「 夫 」 内山 敏子 定年へ夫の口座妻の名に 浜 松 亭主づら威張ってみても粗大ゴミ お留守番夫へひとつ地酒買う 忘れたふり上手になった処世術
「暖 と 寒」 小林 ふく子 湯豆腐が土鍋で独り言を言う 袋 井 冬の窓明かりに愛が溢れてる 例えばの話自分が寒くなる 絹手袋時々人を騙してる
「雑 詠」 滝田 玲子 逆風に押され出口が見えてこぬ 浜 松 苦労した人生皺が物語る 一粒の涙を武器の娘に敗ける それぞれの顔に明日の夢が待つ
「コ タ ツ」 酒井 可福 コタツにはお茶とみかんがよく似合う 北九州 独り身のコタツ万能家具となる コタツから首だけ出して空返事 コタツなら指でコチョコチョ触れてみる
「抜かりなし」 毛利 由美 交渉難航クリスマスプレゼント つくば 年賀状素材をパソコンで模索 共有の場所はみんなで大掃除 新札の準備抜かりがないように
「老 老」 中矢 長仁 今平和ただ平凡に日が過ぎる 松 山 微笑んで平和に暮らす老夫婦 始まるか心配し合う物忘れ 楽しもう後の人生二人旅
「椅 子」 濱山 哲也 床屋さん椅子を誉めると話し出す つがる お好みの男だな座り直してる きっちりと仕事をこなすパイプ椅子 公園のベンチ枯葉が座ってる
「自 由 吟」 山田 ぎん 月見酒すすきと萩が縁側に 静 岡 月を見て戦時の夫忍ばれる 草餅を見れば古里思い出す 新米が松茸が出る秋を食べ
「雑 詠」 ふくだ 万年 暖房を弱めジャケット着るエコー 大 阪 ダイエット決め手ないから本売れる 笑い顔おのれの皺に懺悔する 気にするな一人で育つ子もいるさ
「 暮 」 川口 亘 チラシ見て今日も特価の綱渡り 藤 枝 北風が急に邪魔するトイレ立ち 予算繰り段々堰が高くなり 老化込むは明日は話の妻と云い
「印 象 派」 鈴木 まつ子 礼儀作法印象深い茶懐石 島 田 背信の胸に眩しい弥陀の影 しみじみと生まれ育った家ながめ 格調も主義も問わない印象派
「 絵 」 川口 のぶ子 荒海のうねりの中から拾う絵図 藤 枝 一本の絹糸に見る穴かがり 絵に画いたようにいかない世の動き 思い出を絵にしているはまだ未熟
「 男 」 瀧 進 愛妻に惚れた弱味を握られる 島 田 ファイティングポーズに男見栄を張り 女房に糸引かれてる出世凧 大老と持ち上げられて煙たがれ
「雑 詠」 飯塚 すみと 妻コタツまずは手に取る旅チラシ 静 岡 引き込もりさせぬバーゲン五割引 歯ブラシをてんでに置いて洗面所 休みの日雨音しずか起きられず
「湧 く」 鈴木 恵美子 宴会のしめは音痴の大爆笑 静 岡 上り坂愛の鼓動が鳴り響く しなやかに八十路詩情をたぎらせる 年末に湧く『運命』の大合唱
「お金のあれこれ」 小野 修市 税金で議員は野次に磨きかけ 静 岡 煙にまきふところさぐる二枚舌 退職金みていた夢が消えてゆき 年金の額が趣味を決めている
「ノーベル賞」 尾崎 好子 同時であノーベル賞で飛び上がり 藤 枝 親戚でないのにこうも喜べる 無限大この頭ではどの頭 おきかえて思うに素手で手宙つかむ
「見えない努力」 今井 卓まる 良い柿は嫁ぎ先でも愚図らない 浜 松 三日前仕掛けたエクボ蟻地獄 三面鏡ボクの知らない顔がある ぼろぼろと流す涙でウソ洗う
「自 由 吟」 林 二三子 意地は捨て子らの意見を受け入れる 芝 川 頑固などもう消えている老いた父 足腰の小言にも慣れ共に生き 笑いじわ増えて病気を忘れさす
「 虹 」 中野 三根子 良いことがあったよ今日は虹ふたつ 静 岡 決めている心の中の虹の色 クレヨンで書いた今日の虹の空 心から笑ったあなたへ虹あげる
「自 由 吟」 川村 洋未 さりげなくゼロを数えてもとへ置く 静 岡 バーゲンを待たず自分にプレゼント 財布手に予算と見栄がゆずり合う ブランドで固めた人が寒そうだ
「 私 」 多田 幹江 どうでもいいのに私の誕生日 静 岡 わたくしを差し置き我雨ざんざ 私って鰑のような人だとさ ネオンテトラも私も夜の川が合う
「 糧 」 石田 竹水 御破算を願って一歩整える 静 岡 痛かった言葉の棘も糧に成る 好き放題言って去ってく第三者 神さまを二股掛ける罰当り
「春 の 色」 真 理 猫 子 元旦はクラゲの色になる私 岡 崎 雷に運ばれてくる天の声 ゴキブリもきっと平和を祈ってる 正月は「賀正」「賀正」と鳴くカラス
「アルパカ」 山口 兄六 少子化の波でキャベツが育たない 足 利 芳醇なワインは挫折してできる 乱獲で消えてしまった清純派 オヤジ狩りされて三十路のボンバイエ
「師 走」 増田 信一 師走でも正月来てもマイペース 焼 津 師走でも関係ねーと定年じゃ クリスマスおもちゃケーキの要らぬ家 師走でも不景気風が静けさを
「スーパー」 佐野 由利子 スーパーが意地を賭けてるこの景気 静 岡 挨拶がすらすら言えた日の安堵 膝割って話せば分かる縺れ合い 単純という美しさ富士の山
「 道 」 長澤 アキラ 不器用で尻尾の振れぬ犬である 静 岡 悔恨の形に歪む靴の跡 なあ妻よ長い道程だったナア 灰汁を抜きだんだん帰る海の道
「鮎友釣り三昧・・・其の二十七」永田 のぶ男 コップ酒釣り業論じ飲み潰れ 静 岡 鮎釣りで三途の川の優勝者 補償終えダムと消えゆく鮎の川 冬の日も川原を覗く御仁たち
「哀 楽」 川路 泰山 風紋の如移りゆく覇者王者 島 田 アルバムの汚れとなったバラの花 煮詰めれば渋み辛みも甘くなり 羽根布団かけふんわりと生きてます
「海峡の帆」 池田 茂瑠 団塊の端の固まり悪い芯 静 岡 下駄箱に目的果たせない靴が 深追いへ織ろう海峡越える帆を 売れ残る私値切っていいのです
「自 由 吟」 高瀬 輝男 情と理の狭間丁半で決めようや 焼 津 鏡台でいざ出陣の顔が出来 人間の奢り責めるか温暖化 新任地は宇宙だなんて夢だった
「歳末風景」 望月 弘 夢はジャンボに宝くじ依存症 静 岡 クリスマスせめてケーキのいいはなし ワクチンに見放されてる不況風 酒屋からまだ届かないカレンダー
「ノスタルジア」 加藤 鰹 ロックオンもう後戻り出来ぬ恋 静 岡 アラフォーの風が首から肩へ抜け 柴又へ行く寅さんに逢いたくて くるみもち遠い汽笛を聞いている
「無 為」 柳沢 平四朗 等身大に生きた骸はのっぺらぼう 静 岡 帳尻は天へ預けた四面楚歌 背伸びした位置で心のかくれんぼ 歳月に無為を食わせた自己嫌悪
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[141] (2009/01/26(Sun) 10:23:05) |
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