静岡川柳たかねバックナンバー
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「夜の虹&月」           金田 政次郎
夜の虹月に仄かな輪をかける       静 岡
外光に円形ドームある祈り
強烈な月の打球が目に痛い
幸福を月が注いだいい眠り



 「座 右 銘」            岡村  廣司
法話聴く度に変わった座右銘      焼 津
この皺の中へ隠そう忍の文字
絞ったらまだ少し出る正義感
敵だって頑張ったんだ讃えよう



 「雑  詠」            馬渕 よし子
険悪な空気追い出す換気扇       浜 松
勿体をつけて噂へ価値をつけ
種蒔いて実った頃に邪魔にされ
建前と本音掴めぬヤジロベー



「秋 の 月」             真田  義子
虫の音にいやされている秋の月         仙 台
花一輪人恋しくて秋の月
旅に来てまた懐かしむ秋の月
もう一度心を許す秋の月


 「自 由 句」             山本 トラ夫
退院後好きなものから食べる癖     長 泉
一人泣きはやばや終わる肝試し
振袖は嫌だと言うが嬉しそう
今生の別れを告げに着るスーツ


「雑  詠」            江川 ふみ子
思案するたびに二本になる道よ         函 南
飛び出してみようか心晴れるかも
健康法どれもためして病んでいる
行き止まり戻れぬ足を考える


 「雑  詠」             鈴木  澄子
手がかりを求めてのびる豆のつる    浜 松
リサイクル出来たらいいと願う骨
オブラート承知している嘘を呑む
住所変更気分もチラと改まる


「自 由 吟」            寺脇  龍狂
災害が苦手らしいなブッシュさん     浜 松
投票日お選挙という氏育ち
いま頃になって汗かくジャイアンツ
誘われて義理で並んだ地球博


 「遠 い 夏」             鹿野  太郎
おんぶして腰が抜けそう台所      仙 台
チューニングまごつく思春期の鼓膜
西瓜切る祖母に合わせる蝉しぐれ
ウォッチング僕らは竜田揚げに見え


 「舶 来 品」           薗田  獏沓
夏草に何種か混る外来種           中川根
外出はシャネル パジャマはバレンチノ
隣の娘迎えベンツの側で撮り
韓国の海苔で巻く寿司シャリが見え


 「飲  む」            西垣  博司
四季と喜怒哀楽酒がついてくる        静 岡
大吟醸よりも財布がパック酒
憂さ一つ舌で溶かして胃に流し
酔うほどに本音を出して後で悔い


「夏 の 夜」            成島  静枝 
イジメかも知れない真夜中の吐気     千 葉
溜め込んだ毒気を散らす水枕
地球博行かずに終る月見草
月見草ちょっとクールな人が好き


 「  秋  」             山本 野次馬
秋の海思い出だけが転げ落ち      函 南
ダイエット終わりを告げる秋の風
秋の空大きく開く深呼吸
秋型に胃袋変える微調整


 「  秋 」            中田   尚
サンマ焼く煙にこめる恨み節         浜 松
秋風がさむい小泉も清原も
秋の空台風君に蹴とばされ
ヒゲのびて食欲も出て秋が来た


 「  秋 」             内山  敏子
胸のうちすっきり洗う秋祭り         浜 松
秋風へ心の窓を広く開け
垣根から声かけられて秋の風
ETが降りて来そうな月明り


「邪  心」            尾形  奏子
禁断の果実私もイヴになる        天王寺
この先は闇とわかっている船出
凛としてすじの通った刺がある
振り向けば愛されてこそ女


 「ボ ニ ー」             山口  兄六
君の名も今では海の彼方だね      足 利
猿二匹もうすぐ愛がやってくる
目指すのは甘いお菓子の待つゴール
生と死の境界線でかくれんぼ


 「夢のあと」            井口   薫
夏おわる蝉はお腹を空に向け         袋 井
揺れてます今朝みた夢がリアル過ぎ
掴み損ねたゆめの尻尾が手に残る
押入れで邪魔にされてる旅カバン


 「自 由 吟」            鈴木  智美
言い訳はどんどん作る不精者         伊 豆
胸を張るためだ暑いが化粧する
少しだけ尾ひれをつけて盛り上げる
黄金虫蔵など建てず金貯める

「蝉 時 雨」            鎌田  一尾
味噌汁の香り平和な朝を呼ぶ       山 元
しがらみと義理には勝てぬ熨斗袋
縺れては解ける夫婦の綾の糸
ケロイドが疼くあの日の蝉時雨


 「残  暑」            横山  昌利  
音だけで夢が膨らむ花火好き        相 馬
どんぶりを叩き思想のない残暑
生きること死ぬことガンを告知する
素っ気ない妻の返事に身構える


 「自 由 句」            竹内  さき
橋渡るわたしの心風にのせ          浜 松
秋茄子と命の話したりして
埋もれ木の森わたくしを脱ぎ捨てて
泉の森コインドラマの中で遇う


 「  雲  」            升  ますや
雨雲に包まれ妥協案消える          気仙沼
薄雲になって結論見えてくる
話し合いまとまりそうな雲の色
秋空の四隅へ響く応援歌

年寄りの暑い寒いと閉じこもり     寺田  柳京
髭剃って外を歩いて来なさいよ      静 岡
慾で抱く石の重さにさいなまれ
桜散り只の雑木になりました
老いらくの魚籠を持たない魚釣り


 「雑  詠」         滝田  玲子
運動会ビリでゴールに湧く拍手     浜 松
国技館モンゴル熱がでかい顔
ライバルの風で止まったかざぐるま
さわやかな風がむかえる無人駅


 「シナリオ」            高橋  春江
窓際で正論はけど届かない           袋 井
二番手につけて勝算腹の中
フリーター意味の割にはゴロがいい
シナリオも少し狂ったメス騒ぎ


 「雑  詠」            竹内  登志
茶摘み歌消え開発の多数決          浜 松
人並に肩書貰う診断書
失意の日酒で逃げてる仮の刻
若人の夢一杯の好奇心

「胸  中」            安田  豊子
過去の絵が戻る町なら歩きたい      浜 松
他人ごとの様に時効の話する
里の駅会える筈ない人想う
ありがとうその一言に癒される


 「ちょっとしたこと」      増田  久子
ヘアカラーからすの濡れ羽色はイヤ   焼 津
プレハブに欠ける木の香と畳の香
退庁は五時きっかりという冥利
頼まれて犬と散歩の道で蛇


 「こぼれる」            大塚  徳子
鈴虫の本音が響くラブコール         仙 台
白紙撤回余白に涙のあとがある
放漫な乳房こぼれる風呂上がり
嬉しくて涙をこぼす笑みこぼす


 「新 し い」            設楽 亜季浩
新しい恋でコロッと古い傷          静 岡
新しい風を待ってる総選挙
ITの先生になる新社員
新札が勿体なくて使えない

「こ の 頃」            堀場  大鯉
よろずやのビルが栄えて街が寂      焼 津
リハーサルしてない今日の朝を起き
豚箱も満員だとさ世も末か
へらへらとラッキーボーイ歳をとり


 「  風  」             加茂  和枝
今日も風素直に受ける乗り切って    岩 沼
強い風耐えた根っ子に感謝して
耐え抜いてほしいと思う支えです
前・後・風は大樹を試したく


 「木馬の旅」            柏屋 叶志秋
進めないけれど木馬は休めない        山 形
終点は晴れと信じて旅をする
幸せな一日だった温め酒
単身が夢路で辿る里の道


 「宵 の 盆」            川口 のぶ子
迎え火が揺れて今年も母がくる        藤 枝
遠花火音だけ聞こえる宵の盆
宵盆に踊る子等たち輪になって
盆見舞終りをつげて秋が見え

「互  角」            鈴木 まつ子
たじろがずおっつかっつの土俵ぎわ    島 田
郵政案一歩も引かず乱気流
手の内を知り尽くしてる今日の敵
見る限り互角の勝負痛み分け


 「疑  問」           柳澤  猛郎
人間ってなんで生きてにゃならないか     袋 井
夫婦って最終的になんだろか
リフォームの詐欺の次の手なんだろか
刺客政治の次に打つ手はなんだろか


 「自 由 吟」            福田 勝太郎
なぜ生きる只漫然と趣味してる        大 阪
分からないけれど従う母の檄
抱きつかれ勘違いした震度6
老いの人黙して語り独り呑む


 「雑  詠」            森島  寿恵
黄金波刈り取る鎌に喜びを          浜 松
金魚売り祭の夜店繁盛し
台風も無事に済み一安心
露草も踏まれて起きて立ち直る
  
「これも人生」           川口   亘
何もかもつもりで損をする芝居      藤 枝
若しこれが続く文字では書き忘れ
この手管既に知られて迎え撃ち
追われてはしぼりたい智恵枯れはじめ


ちょっぴりと軽くて明るい君が好き   笹  美弥子
骨っぽいはなしデフォルメにして聞く  仙 台
魂を洗ってつけよ金バッチ
ゆっくりと涙を拭い立ち上がる
秋風におしゃれごころが花ひらく


生きる気を大地にもらううまい水    山田 フサ子
ジョギングの一汗かいて鍛え合う       袋 井
こぼれ種雑草の強さを学びたい
でこぼこ道を必死で走った泣き笑い
幸せは畠に泳ぐ海がある


 「自 由 吟」            御田  俊坊
限りある余生楽しく生き延びる        高 畠
米寿過ぎ命は宝と祝う幸
子は宝尽くす愛情よく育て
百歳で元気は宝とよく動く


「自 由 吟」            安本  晃授
振り向けば母の迎えは僕ひとり      静 岡
今日がきて明日をのぞく美の光
わだかまりゆっくりほぐす足の平
日曜日朝の空気で運が向き


 「総 選 挙」            中安 びん郎
備蓄した声を出しきる総選挙      静 岡
才嬢と握手が出来る総選挙
郵政が回り回って総選挙
杖を突き義務を果たした総選挙


 「初  秋」            林  二三子
秋明菊咲いてそろそろ秋かしら        芝 川
南天の葉早くも染まりかけている
炎天で疲れましたとヘボキュウリ
残暑じりじり秋ナスがぶら下がる


「雑  詠」            長澤 アキラ
万両の木も辛かろう子沢山          静 岡
男には背中に文字があるらしい
切り替えが下手で脱線ばかりする
ごり押しに押された振りし引き落す

「時  間」            川村  洋未
もどりたいリセットボタン押してみる     静 岡
うそをつくいつか本当になればいい
流行にやっと乗ったよバーゲンで
マニキュアがばりばりはがれ秋になる


「秋の気配」             中野 三根子
ポケットに夏の思い出ためておく     静 岡
次のバスいっしょに待ってる赤トンボ
亡き友のメールアドレス押してみる
コーヒーもホットにします秋の風


 「自 由 吟」             佐野 由利子
眉毛書く優しく見えるように書く    静 岡
パソコンが友達となる定年後
紅葉とゆっくり浸かる露天風呂
プライドを傷つけられた日の焦り


 「わがこころ」           堀場  梨絵
どこまでが幸せ相の手を打とう        静 岡
趣味の友あなたのバネを食べてます
ホイサッサ二人三脚だったころ
個性ゆたかに走る自分であるように


「父母の声」            堀井  草園
大胆に生きろと愛の敗戦日          静 岡
一つ釜食った貴様の太い骨
欲の無い顔の仮面が息苦し
核脅し替えてほしいか猪威し


騙し舟赤い袋に溜めてます       池田  茂瑠
この愛に鬼が残した黒い点          静 岡
花束に咲いても入れて貰えない
北国の駅から発てぬ父の貨車
平均点以下の妻です八重歯です


「されど情報」          多田  幹江
情報に埋もれて仕事するエンマ      静 岡
情報操作刑量は島流し
どこを切ってもおサルの噂ばかりです
音の市場から深夜便が届く


何処へ行くバスかいまだに聞いてない  高瀬  輝男
正体は僕もわからぬワタシです      焼 津
休火山期限はとうに切れてるよ
石百ケ投げても誰もふり向かぬ
折に触れ人間たるを自覚する


「暁(あかとき)」          川路  泰山
闇法師月はすっかり色あせた         島 田
群棲に晒し背骨を研いでます
造反ひねりつぶす厚い胸板
美女軍団を従えて暁へ


「選   挙」             望月  鐘雄
おお風だ古い衣を脱ぎ捨てる       静 岡
幸せになるには汗が軽すぎる
なにもかも反対してれば銭になる
国のため散って下さい小野党


 「  秋  」         望月   弘
ケーキ屋も女も秋も肥りだす      静 岡
マンホール落ちると恐いから踏まぬ
バカの壁茗荷のことが知りたくて
紙コップ置くと聞える「おだいじに」


 「ラ・ヴァルス」          加藤   鰹
あったらヤダ鰹風味のバスクリン      静 岡
あったらヤダししゃもの卵入りケーキ
あったらヤダ噛むと悲鳴を上げるガム
募集中ゴロニャンさせてくれるひと


 顧  問  吟 

孤高とは淋しいものよ葱坊主         平山 虎竹堂
清貧のふところ見ないで呉れたまえ        静 岡
本当の美人ほのかに愛こぼる
心だけこんな豊かよ涼しい瞳
一合の余韻楽しみ噛みしめる


父の自負湿った花火持て余す         柳沢 平四朗
ロボットに腕の呼吸を盗まれる          静 岡
なにもかも四角にたたむ鬱を飼う
ディスカバリー空の上にも空がある
濁流は愚直な櫂へまだ澄まぬ
[2] (2005/10/16(Sun) 14:45:23)



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