創作自薦句 虎竹抄 2006年7月
「スイーツ」 谷口 智美 百パーセントじゃないからドーナツ愛される 伊 豆 イチゴショート個性出す技競ってる ないようで強い意志もつプッディング シフォンケーキ艶香漂わせる熟女
「マニキュア」 高橋 繭子 爪立てている忘れたい過去なのに 大河原 再会の席で気付いた伸びた爪 人間の背中で爪を研いでます マニキュアは花占いをするように
「花あかり」 真田 義子 荒波に今日も漂う一人旅 仙 台 ひらがなで話せば丸くなる言葉 手探りで明日を探す花灯り 迷い道ばかり歩いてしたたかに
「雑 詠」 寺田 柳京 日本語をおざなりにして英語塾 静 岡 子の恥を詫びてる眉がまっ白い 年寄りの食べ零すのを犬が待ち その内にその内にとて日が暮れる
「弱 い」 笹 美弥子 弱音吐く度にあしたが遠くなる 仙 台 上をみてあるこう気弱落ちぬよに 花活けて弱音をひとつ遠ざける 太陽にあたればひらく花ばかり
「 雨 」 鈴木 恵美子 雨の午後逢いたいと書く久し振り 静 岡 雨だれが陽気に遊ぶトタン屋根 雨よ降れ愛の炎が消えるまで 思慕しきり雨は静かに降り続く
「雑 詠」 竹内 登志 サポーターひととき夫婦敵味方 浜 松 控え目な妻が握っている火種 初夏の風新茶一服生きのびる 健康の過信検査の黄信号
「虎 竹 抄」 山本 トラ夫 百円のことで頑固が揉めている 長 泉 高原に全裸のような青い空 お互いに自慢話で笑い出す 占いを信じる日々の多くなり
「自 由 吟」 ふくだ 万年 新婦より地味な衣装で披露宴 大 阪 父と子の多数決より妻の意志 粋な父知らない女が通夜の席 口惜しいと思えば其処に知恵が湧く
「指 切 り」 松橋 帆波 赤い糸レモンで出来ているんだな 東 京 何とまあ赤裸々なんだ足裏 自転車のサドルに生まれ変わりたい 指切りをしたのは懲りていないから
「美しい花」 大塚 徳子 うんざりと内弁慶の敵が居る 仙 台 今鳴いたカラスも笑うトロロ汁 この世も捨てたものでない人間味 温度差があり美しい花が咲く
「仕 種」 石田 竹水 策の無いアドリブだから受けがいい 静 岡 冷奴食べると雨季が去って行く 梅雨空へ心を晴らす髪カット 出目金の愛は尾っぽを振る仕種
「正直なところ」 増田 久子 一円を拾い届けてみたくなる 焼 津 一つずつアルミ貨あげる六地蔵 千円の床屋諭吉でもらう釣り リッター二円安いセルフで給油する
「雑 詠」 滝田 玲子 ポケットの中で小銭が落ち着かぬ 浜 松 大正も遠く夢二も色褪せる 風呂桶に愚痴をきかせる仕舞い風呂 仏壇にお茶を忘れて咳きこまれ
「父 の 日」 横山 昌利 酒の意を借りてクジラを飼い慣らす 相 馬 サルカニ合戦呆けた親父の瞳が光る 陽の匂う布団に街の子を寝かせ 父の日に少しやつれたシャツを着る
「 時 」 芹沢 穂々美 猫ふんじゃった私時には煮えたぎる 沼 津 持て余す時間はあるが連れがない 時々はうわさ話につき合おう ランチタイム誘う友減り大あくび
「自 由 吟」 鈴木 澄子 気にさわる忠告まさにぶれてない 浜 松 こだわりが急に話の腰を折る 蝶蝶の舞いがまぶしい落ちこぼれ 消しゴムで消えたら天気晴れるのに
「時 遊 人」 新貝 里々子 もたもたと一度で開かぬルームキー 袋 井 メルヘンの世界で押したヘーボタン ホテルにもパリにも慣れて夢が醒め 修行僧飛行時間にじっと耐え
「イタリアにて」 井口 薫 今ローマ道は確かに続きおり 袋 井 芸術だ見つめていいよダビデ像 ボンジョルノだけでイタリア無事十日 コロッセオ弥生時代と聞きショック
「自 由 吟」 あいざわひろみ ひまわりはこっちを向いて微笑います 茅 野 あの猫に鈴をつけよと言うのです つついたら大きな穴になりました 途中下車それも悪くはないでしょう
「あいうえ折句附(す〜ね)」 酒井 可福 炊事から洗濯もするそれが僕 北九州 楽しくて近くの友とツイ一杯 テロの国友も正義も無くす民 睨んでる濡れた瞳の根が深い
「事なかれ」 岡村 廣司 事なかれ主義でいつでも後部席 焼 津 縺れ糸解く迄遠くで眺めてる 反論はせずに世の中丸く住み 事なかれ主義にも敵はきっと居る
「隣 組」 成島 静枝 表札へ班長の札寄りかかる 千 葉 集金でちょっぴりのぞく舞台裏 庭の花回覧板が誉めて来る 奥さんの声が大きい隣組
「夕 隣」 鈴木 まつ子 水打って声をかけあう夕隣 島 田 ゆきずりの香水美人見返りて 六十路すぎ世間見なおすサングラス 平凡に生きて悔いなし花鋏
「雑 詠」 馬渕 よし子 労りの言葉すんなり出ず悔いる 浜 松 マニュアルにとらわれ個性伸び悩み 老いの脳鍛えるドリル持て余し ストレスが溜り心がついとがる
「か さ」 中田 尚 カラフルで使用期限が来てしまう 浜 松 かさの下小さな恋が出来消える 雨を待つ傘がコンビニてんこもり あじさいに小さな傘を差してやる
「冒険の二」 竹内 さき 夕明かりほむらの恋か冒険か 浜 松 青春よ真っ赤な恋が駆けて行く つまづいて研ぐ明日の米むずかしい 口紅もしぶく嵯峨野を手織りして
「年 金」 金田 政次郎 締めないで年金枠が壊れそう 静 岡 桁違い悔しいあなたは天下り 年金が語るむかしの山高帽 年金を恨めしそうにはぐれ鳥
「新 緑」 加茂 和枝 のんびりと過ごした春に落雷が 岩 沼 だんだんとゴールラインが見え隠れ たっぷりの時間は私の宝物 いつだって私のハートピンク色
「 数 」 安田 豊子 落札へうなぎが昇る桁外れ 浜 松 ケチじゃない身に沁み込んだやりくりよ 少子化へ栓ない憂いどうしよう 若づくり裏で頑張る歳の数
「夢おわる!」 高橋 春江 老いては子に車の免許あきらめる 袋 井 ハンドルへ未練ぬぐえぬ虚脱感 遠ざかる愛車なみだに立ちつくす ありがとうポンコツ同志夢おわる
「ゆっくり」 薗田 獏沓 ご詠歌のテンポゆっくり時が過ぎ 川根本町 早起きはしたがのろのろ朝支度 時間かけトロッコ列車峡を行く たまに出て大渋滞のド真ン中
「雑 詠」 森島 寿恵 敬礼もして挨拶の蟻の列 浜 松 糸電話孫の弾んだ笑い声 さつき晴れ桔梗の花がパッと咲き 路地裏に見事に咲いた花菖蒲
「好きなひらがな」 堀場 大鯉 ころんだネくよくよせずにサアお立ち 焼 津 LLのママへはMのパパやさし がみがみと言う声萎えた父哀れ くたくたになるまでバラの香が誘い
「手 形」 山本 野次馬 引き出しにいつも置きたい空手形 函 南 約束手形割り引くたびに元の鞘 約束を紙切れだけが支配する 時効など無かった手形持って逝く
「 旅 」 内山 敏子 れんげ草減って淋しいはちの旅 浜 松 のんびりと鈍行で聞く国訛 五月晴れ空気が旅に誘い出す ふれあった温みの残る旅日記
「怒 怒」 鹿野 太郎 火の海に夕日静かに降りて行く 仙 台 たれ流し塗して黄砂攻めて来る 韓流に上手く乗ったな受信料 列島と言う偉大なる太っ腹
「湿 る」 設楽 亜季浩 タオル蒸し跳ね毛を直す三姉妹 静 岡 襞つきの顔にもパックまだ女 ユーモアに乾いた心湿りっ気 指なめるオバちゃん達のレジ袋
「投句〆切迫る」 西垣 博司 ひと口の酒で今夜は四つに組む 静 岡 五七五が自己主張して繋がらぬ 自分でも理解不能になっちゃった 五七五 下五がダダをこねている
「不 調」 川口 亘 願わくば廻れ右して俺一位 藤 枝 どう見ても負けは云わずにビリを褒め ラストにはびっこを引けど拍手され 出す文に誤字の混じるを指摘され
「 食 」 川口 のぶ子 食彩が花を添えてか春の宵 藤 枝 和に重き食に通ずる笑い声 気配りが和食と云う名味を変え 彩りに春を楽しむうすあかり
「自 由 吟」 御田 俊坊 骨格も衰えはじめ椅子頼る 高 畠 カルシューム不足に魚骨がらみ 太り過ぎ重い体を持て余す 父の跡継いだ責任重さ知る
「キリタンポ」 堀井 草園 勝つ方へ変わる風向き掴めない 静 岡 帳尻が合うと矛楯切り刻む 素焼きから幸せ伝う風の音 屋根遠くなるほど匂うキリタンポ
「農 繁 期」 中安 びん郎 すれ違い手挨拶する農繁期 静 岡 髭剃りが疎かになる農繁期 牛が居ず気楽になった農繁期 雨具着てむすびを食べる農繁期
「徒 然 に」 永田 のぶ男 ひら仮名は言葉の肌に柔らかく 静 岡 カタカナが舶来産の真似っこき 漢字とは中国産の由来もの 太平の国語の乱れどこへいく
「雑 詠」 林 二三子 梅雨前の夏日に子らが川を埋め 芝 川 自家菜園五感を癒す土いじり 草むしり雨を理由に伸び放題 DIY愛着のある出来具合
「幸 せ よ」 柴田 亀重 豊か見せ渡る世間の鬼増やす 沼 津 終良しと笑って逝った亡父だった 華やかな一刻の花雨が降る テレビから真似たオシャレか無精髭
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 三畳に金の匂いと血の臭い 浜 松 少子化で徴兵論の影うすれ 少しずつ少しずつ良くなる楽天 高すぎることはない利息と理想
「笑 う」 田原 痩馬 笑えないことが多過ぎ笑ってる 熱 海 腹抱え笑い転げて死ねたらなあ 絶対に笑っていたいご臨終 よく笑う妻も子供が出来るまで
「自 由 吟」 山田 ぎん 雨降りは洗濯物と同居して 静 岡 空の雲ふわりふわりと散歩する おれおれと騙す世の中こわい老い 世の中は平和で生きて行きたいと
「自 由 吟」 真理 猫子 純情を誓えば恋が発芽する 岡 崎 感情線アイロンかけてみるのだが 武勇伝だけは語れる認知症 解決は亀の前頭前野から
「本 当 ?」 川村 洋未 空想できらいなあいつ切腹に 静 岡 書いてみる自分に贈るほめ言葉 メール打ち着いたかどうか電話する 夢の中女スパイは私です
「自 由 吟」 長澤 アキラ 次の手を考え過ぎて間違える 静 岡 ライバルが各駅停車抜いていく 舌の根が乾かぬうちにほめまくる ブレーキを踏んで本音の軋む音
「アドバイス」 佐野 由利子 舌先で転がしてみるアドバイス 静 岡 ゴロゴロとスーツケースが旅の友 悪い方悪い方へと逸れる口 口堅い男で本音聞き取れず
「未 練 花」 多田 幹江 いつかいつかを貯めている小抽出し 静 岡 哀しくて花はホロホロ散るのです さりながら返信無用には迷う 廃校の庭にホタルは戻らない
「近 況」 堀場 梨絵 さて今日は何をやろうか一ページ 静 岡 ほんの少しの情けに泣ける老いの酒 梅雨入りへ私も少し湿りがち 紋付きを縫って駄賃は三万円
「湿った糸」 池田 茂瑠 道多くつけてく悔いのないように 静 岡 枠内に理性とどめて狂えない 溺愛の糸が湿って結べない 朗らかなえくぼ蒙古の斑も消え
「自 由 吟」 高瀬 輝男 科学的結論雑魚は迷うのみ 焼 津 その他大勢の意志に従う抽象画 人間の欠点敵の数知れぬ 亀の背に俺の行き先張っておく
「獺 祭 図」 川路 泰山 天真爛漫幼児に帰る独居房 島 田 六帖の器にはめる獺祭図 閑居して男やもめの米を研ぐ 豆腐噛む脳が荷崩れせぬ様に
「ほ た る」 山口 兄六 蛍池きっと寂しい者同士 足 利 雨蛙ケロリステレオタイプだな 辛い水妻帯者へと飛ぶ蛍 紫陽花が色変わりする巡り会う
「尊 厳 死」 望月 弘 医療費に仕組まれている尊厳死 静 岡 マニュアルの通りに逝こう尊厳死 乾電池切れてロボット尊厳死 麻酔した時間享年から引かれ
「全日本没句供養」 加藤 鰹 生と死を見つめた南十字星 静 岡 高原で少年になる風になる 食うために鬼と握手をしたあの日 堅苦しい挨拶抜きにして飲むべ
顧 問 吟 「お 世 辞」 柳沢 平四朗 ぎこちない笑いも流行だよきっと 静 岡 安っぽいお世辞だったね其れっきり 尻馬に乗せた鏡も共犯者 満たされぬ卦は生涯のクエスチョン
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[29] (2006/07/06(Wed) 00:13:27) |
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