創作自薦句 虎竹抄 2006年8月
「コマひとつ」 高橋 春江 季節感造花の嘘にまどわされ 袋 井 均等法妻もまねたい午前様 針のない時計さがしに骨董屋 一途さへ歯どめの利かぬコマひとつ
「覗 き 窓」 金田 政次郎 きんぴらとチーズのいくさ核が跳ね 静 岡 きつね色同盟という風呂加減 親切に覗いた人に注意され 握手する濡れ手はおよしショートする
「言 葉 尻」 松橋 帆波 タウリンで日付を超える夜を数え 東 京 僕が休もうが地球は止まらない 泣いて済む話羨ましくもあり 醒めてから悔いる盗んだ言葉尻
「第四十一回県大会ボツ句供養」 中田 尚 花嫁の角がだんだん横にのび 浜 松 ブレーキを持たずにのった口車 大ジョッキ明日の活力呼び覚ます 知恵比べサルと私とばあちゃんと
「暑気払い」 井口 薫 さあ魔女になりましょ友とお茶がわり 袋 井 喉仏どけどけビールなだれ込む 発泡酒プシュッと笑い溢れ出る 生き甲斐と書いてボトルをキープする
「三角の空」 柏屋 叶志秋 縁あって一尾のさんま妻と食う 山 形 三角の空を見上げるビルの谷 いつの日か我が名を刻む墓洗う 一人飲む酒のつまみは月がいい
「威 張 る」 鈴木 恵美子 威張らせておこうわたしの掌で 静 岡 イエス・ノーはっきり言えてボク園児 二代目は宙ぶらりんで威張り出す 強がりの背に詫び状が貼ってある
「自 由 吟」 辻 葉 ためらわず直訴なされと腹の虫 大 阪 いつからですかドンキホーテになったのは 罪名はよくご存知の喫煙者 下戸などとおっしゃいますな灘育ち
「虎 竹 抄」 山本 トラ夫 都合よくボケられるよう準備する 長 泉 へろへろの老い猫と見る蝸虫 弱音さえ吐いたら楽になれるのに 冗談も通じないけど動じない
「風 の 音」 真田 義子 見上げれば星がきれいな夜でした 仙 台 雨上がり心も軽い靴の音 声かけてくれたあの日の風が好き ふるさとの何もかわらぬ風の音
「ひ か り」 安田 豊子 背信の蛍さまよう深い闇 浜 松 再開へ楚そと揺らしてイヤリング 腹割って話せば光見えてくる 願い事思う間もない流れ星
「遺 影」 横山 昌利 祭壇と五勺の酒を酌み交わす 相 馬 馴れ初めを伏せて遺影の瞳が笑う 食い合わせの悪い夫婦の後日談 雲行きが少しあやしい妻の位置
「宮 仕 え」 岡村 廣司 遮断機をくぐっても行く宮仕え 焼 津 イエスマンだけ陽の当たるいい職場 辞令には逆らえません宮仕え 会社との絆給料だけのもの
「いつものこと」 増田 久子 ジャイアンツ負けて解説まで憎い 焼 津 無人売りバイクで巡る朝七時 ボーナスが出たら息子ら寄り付かず 掃除よく行き届くのも2DK
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 ホタル見の留守はビールとW杯 浜 松 ロボットにまともな子供生ませたい 専用車退屈ですとギャルがいう 一億と書いた袋を持って逝き
「 窓 」 鈴木 澄子 片田舎人待ち顔の窓がある 浜 松 とじられた窓へ好奇の目が集う 凍て付いた心の窓が開かない フリーパス緑の風がよく通る
「 目 」 堀場 大鯉 馬の目に替りクルマの目を抜かれ 焼 津 ああ日本折り目正しい人が減り 蛇の目傘させば昔の雨の音 旅人を変な目で見る里がふえ
「雑 詠」 成島 静枝 三すくみジャンケンの手が決まらない 千 葉 ワンルーム夢も野望もある金魚 絵手紙のカボチャざっくり腹をみせ だからなに内臓脂肪たんとある
「酒いろいろ」 新貝 里々子 呑みやすい酒に油断をしてしまう 袋 井 ありがたく人間でいる酒一献 ルパン三世試飲の酒で赤くなる 花ある人としばし華やぐ食前酒
「 海 」 江川 ふみ子 荒波をぎしぎし漕いで迷いたつ 函 南 拉致の海母は涙で絶叫する 知らないで人のこころを踏んでいる 穏やかな海が散骨受け入れる
「哀 れ」 馬渕 よし子 ケア・ハウス入れて済まなく手を合わせ 浜 松 改革が老人の首締めつける 流れ行く雲よ月日よ夢もまた ボーナスはローンへ消えていく定め
「万 華 鏡」 石田 竹水 薄切りのレモン真実語り出す 静 岡 エラーして女神の美技に助けられ 悲しみの過去は見えない万華鏡 熊胆を噛んで悲しい日を笑う
「雑 詠」 森島 寿恵 脱け殻に今日一日の喝を入れ 浜 松 あどけない孫の歌から夢いくつ 検査表持てば足元重くなり 思い出の愛の山河を渡る風
「雑 詠」 竹内 登志 万葉歌三十一文字に托す恋 浜 松 美しい未来信じて種を播く 声大に久しい友とする会話 梅雨半ば瑞穂の国の風青し
「トコトン節」 大塚 徳子 とこねえがトコトン注ぐ発泡酒 仙 台 グミ成るあたり鳥の声さわがしい テポドン発射蟻はせっせと穴を掘る ゼンマイもたんと食べれば癌になる
「生 き る」 田原 痩馬 傷のある人生だから愛おしい 熱 海 涙腺の蛇口緩めて楽になる ストレスへスローライフと尻まくる 旅立ちへ清算してる認知症
「 雨 」 川口 亘 出を阻む雨がゴロ寝の性に合い 藤 枝 雨音に心地よいとも寝息たて 雨の間の日差しに傘を置き忘れ 濡れないと風勢いにならぬ春の雨
「希 望」 加茂 和枝 辛い日は私を待ってる人がいる 岩 沼 どんどんとお話しすれば気は晴れる 辛い時みんなで笑う約束を 希望とやみんなでつくる虹の色
「雑 詠」 山本 野次馬 ポーカーフェイスイチローだから許される 函 南 紫陽花は真実だけを語りだす メール打ち食事の中へまぎれ込む 下町の人情ハイテクを笑う
「感 動」 鹿野 太郎 躓きを予測しているにぎり飯 仙 台 メッセージ深く刻んだリボンちゃん 借りた傘濡らさぬ様に差している エレベーターガールはプロの中のプロ
「あいうえお折句附(の〜や)」 酒井 可福 のんびりと浜辺で蟹と暇つぶし 北九州 二日酔いへこまぬ僕に惚れている 間が抜けた見栄っ張りの子息子です 目印のモチベーションが闇に消え
「楽 し い」 薗田 獏沓 マイビデオ主役の孫の泣き笑い 川根本町 三世代いつも誰かが食って居る 曾孫連れ愚痴を言いつつ目が笑い マジシャンがネタを見せると笑いだす
「 夜 」 増田 信一 朝来ない夜もあるのか今の世は 焼 津 夜明けまで働けどなお我下流 夜動き昼は寝ているわが息子 闇夜でも心に蛍持ちたいな
「冒 険」 竹内 さき 省エネよふる里を恋う夕涼み 浜 松 しっとりと夢路に誘う恋ぼたる こんな時占うカード裏表 打てば響く花に実になる美女の森
「雑 詠」 内山 敏子 家事育児ママにあげたい二連休 浜 松 蟷螂のきょうだい生まれぞろぞろと 宅地なみ課税は知らぬ芋かぼちゃ 譲られてゆずって降りる満員車
「 知 」 鈴木 まつ子 電算機指一本が駆けめぐる 島 田 人づてに見知る聞き知る追い求め 浅学で知恵の泉もすぐ渇き 知の悟りだんだん歩幅狭くなる
「自 由」 滝田 玲子 ストレスをビールの泡で吹きとばす 浜 松 省エネに風呂敷の知恵生かされる ITの波に乗れない老いの指 リストラでブレーキ利かぬ火の車
「自 由 吟」 山田 フサ子 視野深く新緑心はればれと 袋 井 夜の雨一陣の風戸を叩く 我の強さ一皮ずつをはがす老い 愛と炎を煮つめて今朝も庫裏に立つ
「もう一息」 設楽 亜季浩 次点でも自信になった百票差 静 岡 支持者から慰められる紙一重 胸の差でメダルを逃すゴールイン 発車ベル一歩およばず戸が閉まる
「虎 竹 抄」 山田 ぎん あじさいが雨がほしいと空にむけ 静 岡 あじさいの色が変るとふしぎがり 裏の花仏に上げて和む老い 裏で採るナス糠味噌で旨く食べ
「夏みかん」 川口 のぶ子 夏みかん甘酸っぱさがたまらない 藤 枝 皆の顔片目つぶっておおすっぱ 運動会無心に走るカメラ追う 朝にみた職場の夢の懐かしく
「嫁 ぐ」 西垣 博司 日焼顔父は無口で嫁に出す 静 岡 酌をする娘明日は嫁に行く 子供部屋灯り朝迄点いたまま 皺の手が白毛混じりの鬚を剃る
「自 由 吟」 御田 俊坊 喝采を博す町長初登庁 高 畠 何事も夢中にさせて怖くない 三界と繋いで生きる皆味方 貪欲が過ぎる皆に嫌われる
「生 気」 柴田 亀重 傘寿坂二人三脚続く妻 沼 津 筒抜けの長屋暮らしもなつかしい ありがたく生きて花咲く終の家 アジサイに元気をもらう梅雨晴れ間
「世 渡 り」 堀井 草園 郷土愛どこを変えても負担増 静 岡 躓いて悟った石に褒められる せっかちが自分の影を踏んでいる だし抜けに落ちた仮面が笑ってる
「仏 心」 永田 のぶ男 善業を説いて坊主に虚実あり 静 岡 名僧も弔辞の数を少なくし 和尚さま味方の筈が敵となり ご先祖は無口何でも知っている
「サッカー」 中安 びん郎 サッカーで愛国者だと気が付いた 静 岡 サッカーでまた新しい国を知る ブラジルの世界制覇は早とちり ヘディングは無手勝ち流と同じこと
「 没 」 芹沢 穂々美 全没を覚悟の句でも情は濃い 沼 津 没にした選者に礼を言う余裕 沈没船うわさも沈め泡になる 没だった句の調味料入れかえる
「雑 詠」 林 二三子 時代の波に勝てず老舗の灯が消える 芝 川 知っている筈の母から記憶失せ 認知症ちゃんと受け止め介護する 梅漬けが済んでノルマが一つ消え
「愛 の 扉」 池田 茂瑠 濃く生きる年金だけの暮らしでも 静 岡 追想の舟あの人へ漕ぎ続け 開けてみて愛が始まる扉です ロマンの手祈る形に変る日も
「 夢 」 堀場 梨絵 会者定離人の情けよありがとう 静 岡 無人駅の投句箱には夢を投げ トントントン余生の夢の十七字 われは旅人詩の宝庫に逢いたいね
「赤 い 風」 多田 幹江 主張するルージュ赤々と点して 静 岡 触れなば落ちる赤い実を抱いたまま 手鏡の外側あたり風ざわわ とまり木の話も雨の愚痴ばかり
「まだら模様」 真理 猫子 留守電を消したくなくて鰯雲 岡 崎 揺れる日は洗濯物がよく乾く 恋愛とドリームジャンボ宝くじ 五センチのヒールで虹を渡りきる
「自 由 吟」 谷口 智美 片仮名で語りわかりにくい社会 伊 豆 入道に勇気を借りてプロポーズ さみしいをバラバラにしてほしくなる 嘘をつくための唇赤く塗る
「 雅 」 川村 洋未 カーナビで恋の相手を探してる 静 岡 細胞はダイエットなどしたくない 身体に良い全て食べれば肥満体 別れた日キャベツをきざむただきざむ
「おとこU」 長澤 アキラ 良いことは数える程の細い月 静 岡 失意の日一点をみる明日を見る 夢を追うときには有った血の鼓動 酒とつく名前で飲まぬものは無い
「良い仲間」 佐野 由利子 折角の余生が狂う低金利 静 岡 本当の事が知りたいそんな夜 これ以上言うまい口にチャックする 適当な距離を保って良い仲間
「自 由 吟」 高瀬 輝男 底辺の声雑音にまた消され 焼 津 突風が運んでくれた天の声 合理的生き方サンソが足りません 用捨ない時間プライドは捨て去ろう
「古 傷」 川路 泰山 幼日の生傷は笑って晒す 島 田 火の酒で癒す男の向う傷 うたかたの様に古傷水に浮く オークションへかけたい程に傷の山
「神保町ブルース」 山口 兄六 オチのある怪奇話は聞き飽きた 足 利 デジタルの時計妥協は許さない 遅刻してごめん差し入れ食べますか ヒマワリが枯れて自由になれる夏
「時 事 吟」 望月 弘 W杯フラストレーションだけ残り 静 岡 補聴器が不足している北の国 一億は三途の川の渡船料 日の丸のシャッポを選び出す九月
「夏彩熱風」 加藤 鰹 スターマイン夏限定の恋もよし 静 岡 シリアスな話は似合わないスイカ パピコ分け合って土方の昼休み 解り合うならばすっぽんぽんがよい
顧 問 吟 「ささくれ」 柳沢 平四朗 錬金術社会の埃吸い上げる 静 岡 人生の蛇行は駅を見失う 染めあげた色へ妥協は混らない 敗因をつまむ酒席がささくれる
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[32] (2006/08/06(Sat) 20:13:27) |
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