静岡川柳たかねバックナンバー
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入  選
生きている小鍋を洗う音させて    横山キミヱ
雨の日は雨のやさしさ確かめる    中野三根子
とりあえず来たバスに乗る寂しい日  宮前 秀子
ツユクサの告発忘れてはいない    山田ゆみ葉
美しく生きるって辛いね柘榴     内山 孤遊
雨が止むまでに答えは出るだろう   吉野 和夫
惜しみなく父と母の手柔らかい    岩松 紀子
恋人が鳩の目をして逢いにくる    山倉 洋子
ずん胴になっていないか砂時計    ひとり 静
吉備団子貰ったらしい転びかた    杉浦 宏子
約束の小指ときどき獣めく      八木田幸子
一度だけ風に抱かれた吾亦紅     石沢 久子
人を恋うかたちで廻る洗濯機     中野 敦子
決断へ天地無用の荷が届く      上村  脩
なんということだ仮面のまま帰宅   菅沼 道雄
涙腺も男結びもゆるくなる      嶋澤喜八郎
傘差して大好きな木に逢いにゆく   赤松ますみ
液晶の画面あんたも薄っぺら     水品 団石
迂闊にも他人のしっぽ踏んだ夜    笹 美弥子
吊り革に笑い袋がぶら下がり     中田  尚
手になにも持たなくなって満たされる  やまぐち珠美
お祭りの餅はやっぱり父が搗く    森野 政利
老いたくはないので追肥しています  丸山 健三
ささやかな暮し眩しい天がある    北山 絹子
片道切符こんな愉快な旅なのに    岡村 千鳥
かくれんぼ呼びにも来ない花畑    石田 竹水
靴下がくたびれているワンコイン    西端 康孝
鶴を折る指で数える鬼の首       石川 重尾
両の手を抱きしめている嬉しい日    岩松 紀子
座布団が正座している無人駅      中沢まつえ
少しずつ海へ転がる泣きながら     板垣 孝志
運命の日が前触れも無く来たる     吉村小名樹
きみの手をとる飛びきりの微笑で  あいざわひろみ
老いの靴銀河までなら歩けます     中道 文子
朝の水一杯今日のプロローグ      金原 忠枝
いい日だな時計も脈もリズミカル    中田  尚
飽食の貘よ星ふる夜は眠れ       板垣 孝志
明日に向く靴なら僕も持っている    櫛引あやの
シュレッダー孤独を理解してくれる   中島 久光
この先の時間造花はどう過ごす     高橋 杏仁


  秀  句
ゆっくりになったね僕の走馬灯     小林信二郎  
四捨五入すれば骨壷残るのみ       石井  昇
ブランコを漕ぐにんげんになれるまで  小野 清秋

 特  選
旗たたむ指の海鳴りには触れず     荻原 鹿声


選後感 ▽皆様のすばらしい感性が十七文字の中で躍動していました。特に、特選句の適度な抽象性は、限りなく広い詩的空間へと導いてくれ、短詩型の妙味を存分に味合わせていただくことができました。

 大西  泰世(おおにし・やすよ)
 関西学院大学、兵庫県立大学講師
 NHK大阪、NHK神戸など川柳講師
 句集「椿事」「世紀末の小町」ほか


[42] (2006/09/25(Sun) 20:56:41)



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