「夏季限定」 戸田 美佐緒 夏季限定冷たい月を抱いている さいたま 仮縫いが終わったらしい少年期 心療内科ビー玉が割れている やんわりと狼煙は上がる炊飯器
「自 由 吟」 岡部 久美 砂糖菓子崩れてしまえ夏の恋 伊 豆 封印を解くには太陽まぶしすぎ 熱高しいまだこの町捨てるのは 風吹けば何時かは燃える種火持つ
「夏 休 み」 塚本 寄道 我が家では女王陛下のような母 長 泉(中一) 夏休み母指令官ボク歩兵 言わないでやってみたいよボク流で 長いはず短かかったよ夏休み
「お 役 所」 松橋 帆波 一番の番号札で待たされる 東 京 出張が机の上で済む噂 大概は謝って済むお役人 役所には実は立派な人もいる
「自 由 吟」 中田 尚 やさしくて小さくて痛い母の釘 浜 松 かごめかごめ明日はリストラかも知れぬ 皇室に無理矢理呼んだコウノトリ 再試合プロも手本になれば良い
「外 れ る」 井口 薫 何となく締まりませんねドテンカイ 袋 井 御勝手に冥王星の捨て台詞 これも武器遠視難聴物忘れ ああショック スイッチ入れるのもヨイショ
「ここだけのつもり」 増田 久子 花の名は書いたがどんな花だっけ 焼 津 飼われたくなくてすぐ死ぬカブトムシ 君が代にさえもコブシの癖が出る 紅一点なんてその気になった古希
「自 己 愛」 新貝 里々子 ディナーショーファッションチェックして遊ぶ 袋 井 京懐石 池の鯉まで美しい 使い切った明るい赤を買い足そう グルメ旅明日から粗食八分目
「シ ャ ツ」 横山 昌利 横風を受けて男の貌になる 相 馬 太陽の誘いに泡を吐く金魚 陽の匂う布団に街の子を寝せる 父の日に少しやつれたシャツを着る
「挫 折」 馬渕 よし子 清流で育ち都会ですぐ挫折 浜 松 挫折する度に血管太くなる 挫折した涙の染みの偉人伝 井の中の蛙挫折を知らず生き
「 岸 」 鈴木 恵美子 ひたむきな愛が岸辺の花となる 静 岡 向う岸逢ってはならぬ人がいる 橋のない川の向うにいるあなた 過去探る糸は岸辺をさまよえり
「雑 詠」 山田 フサ子 鈍行でいきたい老の平和旅 袋 井 躊躇して逃した夢を追いかける 逆流の世代戸惑う川の石 直感を磨く何かに出会えそう
「生きる疲れ」 堀場 大鯉 サルビアの赤 老らくへキツすぎる 焼 津 色あせた口説き文句にだるくなる ニコニコと出る杭ならば叩かれず げじげじも生きとし生きるものなのか
「雑 詠」 西垣 博司 そっとしておこうゼンマイ延びてるが 静 岡 正直な人だ わかった嘘を云う 受話器置き余韻に猪口を一つ足す 特別な困り事なし花に水
「自 由 吟」 ふくだ 万年 夢を捨て籤買う金でビール飲む 大 阪 山ふたつ乗せて嬉しい擬似の胸 昼飯は英世で釣りと決めている 玄関の靴に比例の笑い声
「隙 間 風」 川口 のぶ子 揉め事をちょいと摘まんでポイと捨て 藤 枝 云い過ぎた後に切ない隙間風 行き詰る言葉の果てが遠く見え 草臥れの相槌が効く膝がしら
「あつあつ」 阿部 闘句郎 太陽に乱反射する自殺熱 神奈川 あつあつの新婚さんがいてラッシュ カミソリを遊び道具にして不倫 あつあつの二人に朝のバイキング
「他 人」 笹 美弥子 小さなはなし他人おおきくしてくれる 仙 台 負け犬の疵に塩ふるのも他人 老いた身に他人の十指あたたかい それからのことば捜した白い夜
「将 来」 設楽 亜季浩 百年は安心ですと大臣が 静 岡 老人に大志抱けとムリ強いる 今日生れドデカイ荷物背負わされ 日々進化老いたロボットどこ行くの
「酒 よ」 柏屋 叶志秋 日本の酒には四季の色がある 山 形 ストレスを取るはずだった二日酔い 陰口を言えば空しい酒の酔い 美女の酌孫の酌では違う味
「オーバーヒート」 宮野 たきこ 税税税 喘息列島死者多数 岩 手 そんなにも栄養とってどーするの 捨て場所に困るアンタの意地の花 とんちんかんそれも癒しという哀れ
「雑 詠」 岡村 廣司 丁重に詫びてはいるが眼が笑い 焼 津 過労死をする程真面目にもなれず 逗留が嫌いか諭吉一葉も 後悔を皆がしている大渋滞
「自 由」 滝田 玲子 ブランドの海でカードが溺れそう 浜 松 昭和史の戦後を語り継いで生き ロボットもリズムに乗って腰を振る 転げゆく毬がひとりで走り去る
「人間模様U」 山本 野次馬 欲望の影がやたらに前を行く 函 南 足し算も引き算もして輪が出来る 歯車がロボットだからホッとする 安売りの返事があとでボロを出す
「くつろぎの森」 真田 義子 くつろぎの森から消えた青い鳥 仙 台 潮の香にふと目覚めたる旅の夜 椰子の実が流れ着いてる島の朝 平凡な暮らし夢見るレモンティー
「冒 険」 竹内 さき わたくしを保つため朱の汗を積む 浜 松 君しきりひっそりと添う秋暮色 心降る私の雨にうす化粧 他人には見えぬ内内舞い終えて
「雑 詠」 寺脇 龍狂 夢ファンド嗚呼玉杯が玉砕し 浜 松 靖国が独立国を疑わせ 共通の貧血症に泣く親子 親も子も何か忘れたツケに泣き
「自 由 吟」 竹内 登志 雑草という名で強く生きのびる 浜 松 雑魚という老に貴重な生き字引き 秘めごとの一つや二つ抱いて老い 病院行き人みな下りる無料バス
「美しい国 日本」 大塚 徳子 温暖化ドウモイ酸が泳ぐ海 仙 台 寂しくて琴線高くかき鳴らす 空高くやがて羽ばたく鶴を折る 美しい国 日本を目指す秋
「タイ料理」 成島 静枝 愛情はたっぷり惜しい料理ベタ 千 葉 黒胡椒渋いおとこのほくそ笑み パクチーの個性はみ出すタイ料理 ココナッツミルクおんなは翔びたがる
「古 都」 金田 政次郎 薬師寺の塔西京の景に溶け 静 岡 東大寺日光菩薩闇に浮き のどかです斑鳩の里の仁王像 古都を行く尊皇攘夷夢の街
「カルチャー」 薮ア 千恵子 カルチャーへ私は鳥になって行く 焼 津 カルチャーで右脳左脳が握手する 時々ねカルチャーショック受けてます カルチャーに私の席が出来ました
「秋 味」 酒井 可福 独り焼くサンマの煙が胸に沁み 北九州 松茸の薄さに惚れて妻となる くりよ栗お前はウニを真似たのか 八年目渋さも甘い父の柿
「雑 詠」 内山 敏子 いつまでも里の母親当てにする 浜 松 夫婦げんか子等を味方に妻の勝ち 松茸は横目にしめじ市場篭 預かった孫が発熱どうしよう
「妻 思 う」 山田 光男 妻遺影あまりの笑顔胸つまり 静 岡 あの世でも夫婦でいようと手を合せ ありし日の妻を思いし枕ぬれ 退院を信じて去った妻あわれ
「雑 詠」 森島 寿恵 捨てた石唯だまってるこれからも 浜 松 笑っても泣いても今日は一日と 年寄りは金持ちと言ういやがらせ 急き立てる蝉の合唄セクシーで
「お 見 事」 薗田 獏沓 百人一首ならばと母も気合入れ 川根本町 アラー説く髭面流暢日本語 骨のある弟子を内心嬉しがり 少女とは思えぬ生きた書道展
「たかねしょう」 山田 ぎん 残暑道蝉の死骸が転がって 静 岡 朝顔が今が盛りと咲き競う 大輪のふよう綺麗に咲いている 川風が涼をくれてる娘の家
「 男 」 芹沢 穂々美 物干しのつっかい棒に止まる君 沼 津 サングラス外した男見栄を張る 外された出世街道横切った ネクタイを外す男のいかり肩
(他32人 投句は本誌を参照してください)
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[52] (2006/10/25(Tue) 22:23:41) |
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