創 作 自薦句 虎 竹 抄
「雑 詠」 福田 勝太郎 美人です煮ても食えない金魚です 大 阪 替えません下取無理な嫁だから お転婆が貴婦人になるクラス会 離婚する為に結婚したのかな
「朝 茶」 大塚 徳子 我家にも少しはほしいお餅代 仙 台 会いに行く手足が退化する前に 雪国のくらしに解けるチャンチャンコ 三里戻って飲まねばならぬ朝のお茶
「五 十 年」 井口 薫 お歳はと聞いてしまったクラス会 袋 井 指紋合致ぱっと昔の顔になる クラス会みんな小鳥になっちゃった ハイビジョン仕様で今年行くつもり
「自 由 句」 山本 トラ夫 一億も居るので知恵は浮かぶはず 長 泉 寒そうな富士でわたしもなお寒い コンビニが無いと私は萎えちまう わたくしは美味しい客の一人です
「雑 詠」 田原 痩馬 なんぼやと聞かれ値札のない体 熱 海 赤い糸つもりにさせて赤い舌 減るもんじゃないけどあんただけはイヤ 義務感に妻の言葉は早くして
「歯の奥に」 羽田 共生 歯の奥にアメリカ肉がはさまった 牧之原 被爆地へ大統領は行かんぞな 頼まぬに国の借金背負わされ ひとりぐらし他人のことと思ってた
「不 透 明」 寺脇 龍狂 学校も塾も危険と不登校 浜 松 仕事イヤ親の脛嘗めニート族 子は要らぬ亭主も邪魔と物を書き 明日のこと分らぬ老いが国を病み
「あの人へ・・・・・」 尾形 奏子 卒業は間近最後の一ページ 天王寺 好きですと言えず好きでしたとつづる おもいでは美しきもの目を閉じる 桜舞う中に愛した人がいる
「晴天なり」 真田 義子 本日も晴天なりと母の声 仙 台 青空にどんどん伸びる夢の蔓 わたくしの力の秘密それは愛 ああ地球これからどんな彩になる
「笑 う」 新貝 里々子 笑いたくて今夜は寄席の客となる 袋 井 笑うにもどこかしんどいへそまがり 大笑いしたあとしみじみと帰る くたびれた笑い袋はくずかごへ
「春を待つ」 辻 葉 春の戸をソッと開けると銀世界 大 阪 待つということばを知らぬ流れ星 カンガルーの袋の中で眠りたい 如月の夕日に明日を祈ろうか
「雑 詠」 江川 ふみ子 気負わずに生きてひとりの雑煮椀 函 南 ため息へ曇りガラスとなる鏡 道草もいいな世間が見えてくる 子離れや子の足音が遠くなる
「生 き る」 高橋 春江 不器用なわたしが生きる躁と鬱 袋 井 すげ替える首が欲しくてデパ地下へ 名水の底で時代は病みはじめ 好感度ナンバーワンの友を持ち
「活字好き」 成島 静枝 愛読書眼の方が先音を上げる 千 葉 新聞の活字大中までは読み マーカーを持ってハウツー斜め読み 流行物パラパラめくり見る本屋
「ひとりごと」 増田 久子 身勝手に伸びてほどよくなる雑木 焼 津 得をした気分予報と違う晴れ 二十年経ったワープロ捨てられず 百均のアラームちゃんと朝を告げ
「ピエロの涙」 柏屋 叶志秋 ピエロでも泣きたいときは泣けばいい 山 形 短命なシャボンは夢が多過ぎる 雑草は花瓶の幸を望まない 進歩する科学も欲に追い付けず
「深くなったか?」 堀場 大鯉 隠れ蓑など面倒だ風まかせ 焼 津 風通し良すぎて寒くなった仲 泣き所知りすぎおんな遠ざかる 女運いい判断は誰がする
「雑 詠」 馬渕 よし子 強がりを言って余生へ立ち向かう 浜 松 一年がスピード違反して暮れる 寒風に干されひと味増すわたし 一輪の梅へ期待の春の彩
「笑 う」 笹 美弥子 哀しみを笑いで包む保身術 仙 台 大声で笑い治まる腹の虫 おわらいの種も入れてる福袋 オクターブ上げて笑ったサクラ咲き
糸車母から子へとよく回る 山田 フサ子 初春に心の窓をよく磨く 袋 井 幸せの糸をたぐった母の指 一條の光信じて生きてゆく 愛し合う同志いたわりひたすらに
「 色 」 山本 野次馬 白と黒デジタル色の中にいる 函 南 今日の顔ルージュは赤と決めている 完結はピンクの色で送り出す 眼を閉じて右脳が描く十二色
「雑 詠」 滝田 玲子 平安のシュートが決まる蹴鞠会 浜 松 ロボットも節ぶし痛むこの寒さ 二枚目が自慢の地蔵欠けた鼻 ドカ雪が高齢世帯のしかかる
「眠 る」 薗田 獏沓 三才が飯をくわえて眠りだす 川根本町 説教がやっと終わった眠かった 眠たくて当選番号聞き漏らす 里帰り真綿の様に眠りこけ
「雑 詠」 芹沢 穂々美 蒲鉾の板までブランド志向です 沼 津 大鍋で昆布巻を煮る年の暮れ 老夫婦イヴの残りのチキン食べ 取られずに鈴なりの柿年を越す
「 冬 」 鹿野 太郎 イヴの夜砂消しゴムが暖める 仙 台 スキウタという新しい猫だまし つい羽目を外したまんま年を越す カマクラで餅の代わりにゴマを焚く
「女 鬼」 金田 政次郎 幸福の豆撒き鬼と手を組んで 静 岡 女ではトップ蔭から鬼は外 雄叫びをあげる娘は鬼を打つ 痣だらけ今宵は此れでと逃げる鬼
「自 由 吟」 鈴木 まつ子 すんなりとハチの一刺し容赦せず 島 田 雲つかむ話ばかりでバカな見栄 過信したばかり思わぬ落し穴 届かない高根の花がこぢんまり
「 道 」 岡村 廣司 生き残る為だ泥道厭わない 焼 津 転んだら起きればいいさ僕の道 修羅の道だけど避けない意地がある 迷路から抜け出す道がきっとある
「雑 詠」 安田 豊子 愚かさをしみじみと知る左ネジ 浜 松 耳鳴りが増長させる肩の凝り 捨て切れぬこだわり鍋にごたまぜる 古い絵にたっぷり漬かる夢の中
「まだ若い」 川口 亘 明るさで年令少しさばを読み 藤 枝 日に数度来ない文待つPST番 ざわざわと空耳を聴く夢うつつ シルバーの席を目が追う杖と友
「雑 詠」 川口 のぶ子 冬枯れの道われに似て淋しかり 藤 枝 姫りんご十粒残し冬の朝 回転の遅い頭のネジを締め 靴の中悲鳴をあげる指の先
「雑 詠」 西垣 博司 とんがった靴先で書く楷書文字 静 岡 欠伸する所在の無さを懺悔する 矢印の先が縒れてる道しるべ 整えた衣裳に明日を近寄せる
「こよみの春」 中田 尚 こよみ春まだまだコート離せない 浜 松 立春はこよみ通帳大あらし 立春にシモヤケの数増えはじめ 草も木も体操はじめ春を待つ
「初 春」 内山 敏子 終章の夢を書きたす八十路の絵 浜 松 元朝も昨日と同じ髭を剃る 戌年の幕開け告げる初太鼓 ひらがなが踊って孫の初便り
「 命 」 森島 寿恵 焼芋をわれ先に取る小さな手 浜 松 まだ老けぬ八十路の命つきるまで 何事も返事一つで輪がなごみ 一生を土と生き抜く老い二人
「自 由 吟」 竹内 登志 半世紀新春の遊びを巻き戻す 浜 松 適齢期よろしくと言う親ごごろ 交友をつなぐ敷紙の犬が吠え 初春の静かな刻へ無の祈り
「自 由 吟」 御田 俊坊 酒煙草今更止めず威張ってる 高 畠 小児マヒ福祉のお陰今も生き 古希の坂越えて生かされ続く幸 気さくなナースの言葉に癒される
「コーヒーとわたし」 竹内 さき コーヒーにわたしの冬を別れして 浜 松 コーヒーの湯気に誘われ新世界 コーヒーの良さんと無になるわたし 夕暮れてコーヒー深むシャイな年
「寝 正 月」 中安 びん郎 朔日は野良へ行かずに寝正月 静 岡 美味しくて餅を食べ過ぎ寝正月 老妻もお節料理で寝正月 達筆の年賀状読み寝正月
「冬 眠」 柴田 亀重 闘魂へ陽の加護欲しい寒の冷え 沼 津 眩暈する脳へ気合を入れる声 初春の鍋浮き世の波へ弾む酒 寒風へさらして花の命張る
「お 正 月」 谷口 智美 餅よりもでかいダイダイ横に置く 伊 豆 不景気で休み増えても寝正月 嫌なこと忘れたふりで松飾り 昆布より喜んぶのはピザ、カレー
「つっかい棒」 堀場 梨絵 風と共に私のゆく末を見たい 静 岡 一日病み豪華版でくる夕餉 A面もB面もない皺の顔 駒下駄がもうすり切れた働く手
「豪 雪」 林 二三子 車窓から見る豪雪に大歓声 芝 川 雪国の冬お隣が遠くなる 雪解けるまではバレずに済みそうだ 見てるだけなら素晴らしい雪景色
「火 種」 堀井 草園 手の平で踊った火種すぐ消える 静 岡 念押して痛い出臍がまだ痛い 心念の修羅場で拾った白い杖 賛成の片棒芯を抜いて置く
「雑 詠」 多田 幹江 背伸びせず気を抜くこともなくオカラ 静 岡 歩いて歩いて涙のないあした 風強しノーと言えない人ばかり 固定電話はずむ話に遠くいる
「雪 の 道」 佐野 由利子 目標はたくさん有るが黄昏期 静 岡 日が過ぎて書きにくくなるお礼状 くねくねと曲がりくねった女坂 尻餅をパチり撮られた雪の道
「雪 女」 真理 猫子 本性は雪の深みに埋めておく 岡 崎 大根のしっぽのような足でいい 泡銭夢の中でも紙吹雪 雪女の臍は零度で茶を沸かす
「ファンタの歌@」 山口 兄六 バイキングまた胃袋に裏切られ 足 利 シケモクで税の部分を吸っている 年収が足りず悪女に出会えない 受信中天使か鬼かメルマガか
目玉焼きこんな愛でもいいですか 池田 茂瑠 嘘に手を加えて夜の町に向く 静 岡 手の海の干潟に水を与えねば 独りでは淋しい線の中にいる どう繋ぐ脆い縁の紙こより
「自 由 吟」 高瀬 輝男 仕合せの風景偽卵抱いたまま 焼 津 雪虫の乱舞よボクは居酒屋へ 振り返るから弱点を掴まれる 鈍感でまた情報に追い越され
「風 の 邑」 川路 泰山 一桁の昭和が枯れてゆく荒野 島 田 山里にダムが歯を剥くピアニシモ 落人よ鄙びたあたり語り部と 風縒れてひなびた邑を吹き尽す
「春の訪れ」 望月 鐘雄 ふっ切れて嫌な酸素が旨くなる 静 岡 座禅組む今日の命を塗りながら 良いことはドッと来るよりパラパラと 五分だけ待って下さい風が来る
「乾燥注意報」 望月 弘 軽快に生きて若さをほめられる 静 岡 人情の機微に乾燥注意報 内心が薄着になると風邪をひく 風向きでボケのスイッチONにする
「カルシファー」 加藤 鰹 蒼い火が揺れるみだらな夜になる 静 岡 秩父路へ今年も酒を手に提げて こんな筈じゃなかった鉛色の空 雪しんしん今夜は抱き合って寝よう
顧 問 吟 「拾 い 物」 柳沢 平四朗 追憶が正座をさせる流れ星 静 岡 想定外の顔へシナリオ無垢にする 初詣で喜寿の傘寿も拾い物 頬杖の窓へ微光が覗きこむ
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[68] (2007/02/26(Sun) 17:41:12) |
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