創 作 自薦句 虎 竹 抄
「行 く 春」 井口 薫 リモコンだらけコックピットになる炬燵 袋 井 ラッピングしたら買手がつきました スケールを見せつけながら降る黄砂 昨日散り明日は木綿を着るさくら
「憎めない話」 増田 久子 電化したキッチン欲しいのは炎 焼 津 売り急ぐような四月の高級茶 日本語は幼児語のまま英会話 ポケットに葉書一日出し忘れ
「笑い合う」 真田 義子 信頼をされても困るなまず君 仙 台 太陽のように明るく生きていく もう一度空を見上げて笑い合う 花粉症クシャミが止まらないカラス
「楽しい家族」 金田 政次郎 食べる音みんな元気に生きている 静 岡 笑ってるキット女房が無理を言う 向き合っただけで元気を呉れる人 ちちははと居た風景を守りたい
「惜しまれて」 山本 野次馬 無情にも桜蹴散らす春の風 函 南 寂しげな父の机が語りだす 今の世に黄金バットいればいい 今日もまた脳細胞が死んでゆく
「ふ た 心」 瀧 進 バレンタイン図式の見えるラブゲーム 島 田 指切りの度に約束軽くなり 安全パイまだ握ってる見合席 あのことはもう時効ですハネムーン
「夜半の風」 江川 ふみ子 胃に残るひと言抱いて夜が白らむ 函 南 夜半の風孤独の耳を吹き抜ける 風がどう吹こうと消えぬ心の灯 溜め息で廻りたくない風車
「 桜 」 あいざわひろみ 風ひとつ桜の枝に引っかかる 茅 野 ほとばしる血潮桜は満開に 呪縛から逃れられない櫻守 さくらさくら呪文は今も解けぬまま
「頂 上」 辻 葉 湧きました燃え尽きました甲子園 大 阪 アルプス席のど真ん中は訛の渦 静商や浜商遠く新球児 郷土から日本一の風もらう
「 石 」 提坂 まさえ 石膏でかたどっておくマイハート 静 岡 団塊に当たらない石選っている 居心地がよく結石もパラサイト 石一つ握った跡がついている
「自 由 吟」 増田 信一 ストローで幸せだけを吸い分ける 焼 津 金暇がない時だけは健康で 懐メロが遠い昔とランデブー 家建てて俺の居場所がなくなった
「友 達」 塚本 寄道 落ち込んで動けぬボクに友の喝 長 泉 変わらずに遊べる友がいてくれる あったかい友がいるからがんばれる 泣いている友をなぐさめ僕も泣く
「勿体ない」 中田 尚 パンの耳焼けているのに捨てられる 浜 松 推敲もせずに消しゴム痩せてゆく 胃袋に和食の良さを忘れさせ タクシーに甘える足を持っている
「 春 」 毛利 由美 エイプリルフール嘘って難しい つくば 入学式が三つ出費の春である 四月開講の誘惑に駆られる 春休み終わり私の春が来る
「口 車」 柏屋 叶志秋 野原では分相応の花探す 山 形 金運のグッズで金を使い切る 井戸端の会議を終わす茜雲 下手すれば地獄にも行く口車
「愛してる」 戸田 美佐緒 手術後の何かにつけて愛してる さいたま 自画像が欠伸している洗面器 大福の五つもあって満ち足りる ポケットに女が残すさようなら
「自 由 吟」 御田 俊坊 耐えて来て男の流れ変り出す 高 畠 変り身が早い女の色と艶 素直さが生きる流れの重さ知る 生きるため何を食べても血が流れ
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 運賃の要らない砂が届けられ 浜 松 着て脱いで又着るママへ春の風 洗っても落ちない泥のユニフォーム 醜聞も桜の花に浄められ
「雑 詠」 西垣 博司 家中の時計はスベテ自己主張 静 岡 真面目ですズボンの裾がダブルです 一人居の夜は長くも短くも 孫帰り入れ替わり来る静寂
「役 目」 加茂 和枝 エネルギー春の力よありがとう 岩 沼 遊ぼうよみんなで元気ぶつけよう ほら泣いた隣で誰か手を貸した 誰にでも役目があって繋がって
「日 溜 り」 石田 竹水 古傷をバネに飛躍の体当たり 静 岡 要点をぼかして春の風荒れる 日溜りが好きな布団の花粉症 風通し良くて心がすき通る
「雑 詠」 藪ア 千恵子 人間の醜さをみる捨て台詞 焼 津 末席にいれば突っ張ることもない 意地悪なもぐら叩きに悩まされ 通せんぼされて逃げ道みつからず
「余 韻」 鈴木 まつ子 つかの間の癒しあなたを好きになる 島 田 サクラ、サク、夜のゆりかご憂さ忘れ 逢ってきた余韻にひたる終い風呂 玉手箱甘い思い出開けずおく
「雑 詠」 ふくだ 万年 タミフルを飲ませてみたがチト恐い 大 阪 あれも好きこれもイイナのバイキング たべたいが金魚のフライ作れない 恋をする蛙の群れに石投げる
「巣 立 ち」 芹沢 穂々美 舞うように行ってしまった子の巣立ち 沼 津 隈取りの化粧の下で湧く闘志 週休二日本も虫干しされている あまりにも平和で本を読んでいる
「迷 惑」 岡村 廣司 迷惑でしょうか私の片思い 焼 津 多数決善悪問わず決まってく 仲裁人やがて喧嘩に巻き込まれ もしかして迷惑だろか長生きで
「雑 詠」 成島 静枝 青畳猫と孫には目をつぶる 千 葉 熱意ほどチーズケーキは膨らまず お裾分け生きがい畑の野菜達 本当の肥やしになれず出る着物
「太 陽」 安田 豊子 寄せ植えの背伸びへ注ぐ陽の恵み 浜 松 涸れる程泣いた笑顔へ陽が庇う 布団干す夕べの悪夢叩き出す 太陽の加護へ鍬振る定年後
「歯 痛」 酒井 可福 痛む歯をそーっと指で触れてみる 北九州 枕抱き口おさえ込む歯の痛み 痛いのは右と左と上と下 痛む歯に肴は要らぬコップ酒
「春うらら」 大塚 徳子 遊ぶ金あって払わぬ給食費 仙 台 不規則に年輪刻む温暖化 皺深く刻み喜劇を演じ切る 春うららひたすら歩く脱介護
「バンザイ」 内山 敏子 青空へいつもバンザイしたくなる 浜 松 転移なし伝える電話嬉し泣き トンネルを抜けて昔の風に逢う 恐くない命をつなぐ癌切除
「 春 」 馬渕 よし子 外に出て春を両手で掬い上げ 浜 松 食卓へ春たけなわの彩を盛り ストレスを一気にさらう春の風 温暖化春の未来が危ぶまれ
「雑 草」 畔柳 晴康 雑草で名前は要らぬでも生きる 浜 松 木枯しに堪えて春の芽出す元気 踏まれても俺は雑草強く生き 花も実もつけて雑草種残す
「仲 良 し」 鹿野 太郎 トイレから客間へ凛と通る声 仙 台 挙式前袋小路に入り浸り 春を呼ぶ行事にくしゃみ止まらない 鉛筆と消しゴム調和崩さない
「新 茶」 小林 ふく子 天と地に初夏の香りをもらいます 袋 井 今年又新茶に会えた甲斐がある 新茶飲む心を清く正座して 茶柱がなくても縁起担ぎたい
「ゼロの日」 高橋 春江 プラスマイナスゼロでいいのよ生きすぎて 袋 井 ずれた日の仮面へ本音大あわて 気負いすぎたたらを踏んで歳のかべ 満開のさくらへ笑みのありったけ
「 桜 」 滝田 玲子 杖突いてへっぴり腰でゆく花見 浜 松 はらはらとブルーのシート散るさくら 青い空黄砂も混じん花の下 花よりも子等かけ回るスベリ台
「近 況」 川口 亘 嘘も良い真出る間の刻稼ぎ 藤 枝 大事にとしすぎで逆に根を拡げ 見忘れがこころにきつい責めを負い 八十路見てやっと節目とする気分
「あ る 日」 堀場 大鯉 血を分けた子とも思える嫁も老け 焼 津 そむかれた怒りなだめる春の雨 米を磨ぐやもめを覗き猫の去り 吊革に白髪頭を乗せて混み
「春のウツ」 新貝 里々子 ソメイヨシノとばったり出遭う神経科 袋 井 眠れないわたしが言えばさくらも言う 異常体質とカルテに書いてある 葉桜になれば落ち着くかも知れぬ
「黄 砂」 佐藤 香織 大陸よ飛ばす砂塵も程々に 福 岡 春がすみほんのり色の程がいい 花粉症・砂塵症にも泣かされつ 密毛まつ毛鼻腔閉開進化しよう
「虎 竹 抄」 山田 ぎん 水仙が見事思わず足を止め 静 岡 桜花ヒラヒラそっと手に受ける 滝の音星を数える山の家 湯に浸かり友あり春の梅が島
「 足 」 川口 のぶ子 歩くのに杖を欲しがる足叱る 藤 枝 痛む足嘲るように膝笑う 足に気を注意し過ぎて頭打ち 難聴を気にして老いること多き
「孫の進学」 中矢 長仁 取り上げる話題は桜咲く便り 愛 媛 もう一度やっと納得合格だ 喜びが桜咲いたと湧き上がる 我が家にも明るい知らせ桜咲く
「仇 名」 薗田 獏沓 新入生の愛子から仇名つけ 川根本町 唄う時眼鏡をかけて歌手に似る 受付嬢聖子に似てるいい笑顔 赴任した先生早くも仇名つけ
「春 場 所」 中安 びん郎 春場所で大阪美妓と目線合い 静 岡 春場所に横綱負けてフトン飛ぶ 来場所も大関勝てば横綱に 春場所も郷土力士は勝越しに
「戦死の兄」 堀井 草園 居心地が良すぎて石に潰される 静 岡 純粋に捨てた証の白い雲 捨て石に気付いた欲で得をする 不揃いの透き間に自信見のがさず
「風去りぬ」 多田 幹江 春の夜を影もおぼろの雑魚一尾 静 岡 軟弱な骨シルバーバンクにも出せぬ 掟破って滝に打たれている男 風去りぬ戦闘服をなびかせて
「鮎三昧・・・其の七」 永田 のぶ男 よそ者を睨みつけてる鮎の面 静 岡 競技会負けてなるかと脚競う 釣りキチさん懐かしい名だ元気かい 仕掛け見せ根性みせてうまさみせ
「雑 詠」 林 二三子 張り詰めた空気和らぐいい知らせ 芝 川 親を看る命の重さしみじみと 子育てにこれが一番なんてない 夢見つけ飛び立って行く子にエール
「 桜 」 中野 三根子 ポケットに花びらそっとためておく 静 岡 夢にみたヨイドの桜君を待つ 花びらを集めて散らす春の風 花吹雪君にみせたい夢ごこち 「独 り 恋」 谷口 智美 あげるもの何もないから会いに来た 伊 豆 花柄で浮き足立って春を舞う ひと電車ズラして彼を待つホーム リフォームをしてもあなたでうまる部屋
「 玉 」 真理 猫子 やめようと思えばタバコ数珠つなぎ 岡 崎 核心にわたしを映すしゃぼん玉 朝帰り妻はこんがり玉子焼き 玉手箱Windowsが起動する
「ゴールデン」 山口 兄六 アラームで覚める夢など惜しくない 足 利 正論が負ける人生経験値 おはようのメールで終わる誘い下手 遊園地少し大人を辞めてみる
「雑 詠」 川村 洋未 がんばれと言われたくない時もある 静 岡 真実は食事すませてうちあける 人生の荷物はいつもちいさめに 口だけは置いてかないでもめるから
「花 の 道」 佐野 由利子 困っちゃう国語辞典にない新語 静 岡 隠し事絶対出来ぬお人好し 花の道赤いスカーフ蝶むすび 目が素敵やっぱり鼻は低すぎる
「ついてない男」 長澤 アキラ 妻とする花見に惜しい良い天気 静 岡 幸運がこの世にあると思えない 百均の絆創膏でする血止め この橋を渡った先にある地獄
「老 幹」 川路 泰山 首筋へ花を散らして風淡し 島 田 老幹の小粋に飄と蕨狩り 老いゆけば鄙びた邑が背にぬくい 一本の杉と社と過疎に老ゆ
「絵 の 中」 池田 茂瑠 このケーキ食べれば治る頭痛です 静 岡 薄味になります愛を深めると 青い絵の中に詰まっていた答え 爪尖る甘える心ない私
「雑 詠」 高瀬 輝男 晩鐘の余韻こだわり忘れさせ 焼 津 生きている証しか今日も手が汚れ ロスタイム春は酩酊許されよ 誘われた笑い主義などありません
「ウイルス」 望月 弘 ウイルスとマスクの中でキスをする 静 岡 井の中の蛙になると恐くない 夢なんて宝くじしか出てこない 出なくても出ても所詮は杭である
「春 爛 漫」 加藤 鰹 岩清水僕は汚れてゆくばかり 静 岡 田にレンゲ僕には君がいてくれる 笑わねばならぬこの坂越えるまで 酔いどれも躁鬱病も花の下
顧 問 吟 「 的 」 柳沢 平四朗 トラウマが叩く石橋疵だらけ 静 岡 呑みこんだ言葉の疼く不眠症 腹を立て笑うという字書けますか 真っ直な的が迷路になる自嘲
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[76] (2007/05/26(Fri) 17:52:12) |
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