創 作 自薦句 虎 竹 抄
「雑 詠」 滝田 玲子 言うまいと決めても愚痴の出る世相 浜 松 新緑に浮き足たてる万歩計 みどりの日昭和に帰りあわてだす ナンジャモンジャの花満開という便り
「諦 め る」 岡村 廣司 無位無冠妻も諦め愚痴らない 焼 津 親を見て子が将来を諦める 諦めた底辺僕の指定席 諦めてしまうと消える緊張度
「笑 う」 高橋 春江 ライバルの笑顔に負けて知らされる 袋 井 ほほえみが欲しくて扉おしてみる 高笑いきっと寂しい人なんだ 考えが浅いか笑う日が多い
「風 と 母」 成島 静枝 本当にコトリと止まる母の息 千 葉 もうなにもしないで医者へ娘の願い しぞーか弁新幹線で来る葬儀 千の風母は沼津へ行ってるら
「 旅 」 畔柳 晴康 今日だけは早起き朝湯旅の宿 浜 松 名物も好みに合わず箸を置く お土産と疲れの重いバスの旅 疲れたが次の旅はと友に問う
「旅カバン」 真田 義子 群青の空を畳んで旅カバン 仙 台 飛べないが夢は大空駆け巡る 背をたたく風に誘われ旅に出る 雑草になると決めたら軽い靴
「雑 詠」 内山 敏子 解熱剤さっぱり効かぬ恋病 浜 松 連休へ踊り疲れたふくらはぎ 取り締るはずの警官逮捕され ビルが建ち光もらえぬミニ畑
「や ば い」 毛利 由美 試着室試着途中で諦める つくば 息子からヤバい味だと誉められる 目覚めたらもう降りるべき駅は過ぎ まじヤバと呟くダブルブッキング
「安 心」 山本 野次馬 無添加の街です無防備な私 函 南 手鏡を捨てて仮想の街に住む 慣れっこでプチ家出など怖くない 安心をそっと神社に買いに行く
「ハイヒール」 松橋 帆波 テーブルを叩いてねだるハンバーグ 東 京 ゴキブリが出るのも俺のせいらしい 憎い人ねと抓れて騙されて 踏まれてる自分を思うハイヒール
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 着て脱いで又着てママのクラス会 浜 松 新調のスーツに欲しい嫁ひとり 合併はしたが市長はクビになり 古里はいいな山あり友がいて
「こんな程度で」 増田 久子 一般のメニューは安い順に書き 焼 津 同じ値で売れば大きい順に買い 捨てる気をいつか着る気が消す古着 車窓から見えて駅まで遠い家
「象の悩み」 柏屋 叶志秋 断水でようやく水の価値を知る 山 形 背伸びして届かぬ花が美しい 携帯のエリアでしょうか天国は 王者たる象の悩みはたかが刺
「雑 詠」 西垣 博司 明日行く近いうち行くいずれ又 静 岡 日記には書く程の事無いと書く 日記帳四日以降が待ちぼうけ 年寄りの冷や水少し飲んでみる
「春 祭」 鹿野 太郎 お祭りの輪投げでゲットした家内 仙 台 出目金が指二・三本出す露店 シャッター街の餅屋で昔話する 祭りの夜地上の星のクラス会
「 妻 」 藪ア 千恵子 爆竹のような妻です危険です 焼 津 ノックアウト妻が勝者の手をあげる 笛吹けど踊らぬ妻の重い尻 なにやかや言っても妻はいい女
「キ ー」 井口 薫 二十歳まで押し続けたいバックキー 袋 井 鬱の雲デリートキーで吹きとばす 削除キーもったいないがふとよぎる さあ飛ぼう変換キーに賭けてみる
「なるほど」 馬渕 よし子 母の背が教えてくれたおんな道 浜 松 嫁姑今は姑が頭下げ 先人の知恵に急場を助けられ 裏話聞いて軍配妻へ挙げ
「 雨 」 小林 ふく子 空白の午後の行方を雨は知る 袋 井 満天に落ちこぼれたか雨が降る 気が済んだように雨つぶ地に還る 台地への恵みと怖さ分ける雨
「話し相手」 石田 竹水 原稿をはみ出し本音削除され 静 岡 ジャズ・マンボ過去の楽しさ掘り起こす 刻まれた言葉の落ちにある温み 泣き笑い話し相手を座らせる
「 月 」 薗田 獏沓 山の宿月と対話の窓を開け 川根本町 月へ行く兔が餅を搗く話 月明り短所ちょっぴりカバーする 水仙を黄色に見せぬ月の影
「背 伸 び」 塚本 寄道 株取引世間の風が騒いでる 長 泉 一生を合計するとゼロになる 利己的でつまらぬ嘘をつく大人 走るより歩くといいよ人生は
「わ た し」 提坂 まさえ 表裏どの顔もみな私かな 静 岡 影ならば息子のズボン穿けるかも ハードルが低くても靴ひっかける トランジット訪問国につけ加え
「百 円」 中田 尚 百均に汗が無数に積んである 浜 松 百円に夢も希望もあったころ お札からコインに変わり価値下がり 消費税百円玉の邪魔をする
「僕 と 犬」 濱山 哲也 不覚にも溜め息犬に気付かれる 青 森 「困ったら舌を出すんだ」犬が言う でも君はいつでも舌を出している そう言われ困った犬は舌を出す
「日 記 帳」 酒井 可福 思い出のページをそっと振り返る 北九州 誤字雑字誉めて貰えぬ日記帳 自分史に落丁隠す見栄はある 恋の詩書いては消した屑の跡
「雑 詠」 川口 のぶ子 ほろほろと咲けばさくらと浮かれ節 藤 枝 花水木今年はなぜか花咲かず 白酒が効いて今夜の夫婦雛 ぼんぼりに白酒の合う宵節句
「陽だまり」 大塚 徳子 陽だまりでひとり船こぐ昼下がり 仙 台 陽だまりに群れてる雑魚が恐ろしい イケメンと手を取り渡る怖い夢 昼下がりボトンと音し椿落つ
「本 音」 瀧 進 呟いた愚痴が真顔になってます 島 田 マニフェスト本音勝つ迄負ける迄 アイラブユー心が遠い時もある 内助の功感謝してます女房殿
「 孫 」 鈴木 恵美子 誉め言葉かけると弾むまり二つ 静 岡 四才の抵抗新しい風が吹く 孫というビタミン剤に春うらら 孫の絵が微笑みくれる部屋に住み
「自 由 吟」 芹沢 穂々美 手鏡に写るシミまで見栄をはる 沼 津 画仙紙の花のにじみが哀しすぎ 矢印の通りに歩く生きる道 子育てが終わったあとのいい答え
「つ ゆ」 金田 政次郎 蛇口からカルキが臭う梅雨の朝 静 岡 はっとした一瞬紫陽花彩を変え バンザイが続いた廊下朽ち果てる 雑居ビル出社も引けも雨に濡れ
「 赤 」 安田 豊子 赤い糸真っ赤な嘘でつながれる 浜 松 まだ燃える本赴帰りのちゃんちゃんこ 夕焼け小焼け鳴ってください寺の鐘 さんざめくカラス絵を描く茜雲
「うっとり」 鈴木 まつ子 幽玄の世界いざなう宵ざくら 島 田 わが娘ながら見惚れる高島田 湯あがりの白い衿あしほんのりと 映像のロマンうっとりさせるキス
「時 間」 加茂 和枝 ゆったりの時間を掴む嬉しさよ 岩 沼 お互いの元気な空を探す旅 郷に住む暮らしの命温かい 私から心通わす出会い道
「期 待」 堀場 大鯉 安売りへ軽い財布の数え唄 焼 津 バラ色の幕に期待を裏切られ 狐雨なんの期待もさせず去り 浮世絵の美女は私に古すぎる
「か な や」 川口 亘 関心はなる程やるか痩せ蛙 藤 枝 改心をなごみに見せたやらず雨 甲斐性がないと云われてやる気出し 借りなどがないとも云えずやりにくい
「自 由 吟」 御田 俊坊 表情が豊かに語り笑わせる 高 畠 百歳を越えても生きる余命表 アルバムが記録となった人生譜 まな板のくぼみに残る母の味
「川柳の輪」 中矢 長仁 手習いで川柳始め若返る 愛 媛 あちこちで元気貰って輪をつなぐ お友達随分増えて大きい輪 落ち着かぬ投句川柳まだ出来ぬ
「笑 う」 増田 信一 笑うかど福がこないでリストラに 焼 津 わっはっはお前おかめで俺布袋 脳トレも筋トレもいい笑ってりゃ 脳年齢若いですねで笑いじわ
「自 由 吟」 ふくだ 万年 衝動買いシャネルの袋お蔵入り 大 阪 白旗を胸に押し込めさぁ電話 休診日たらい回しの救急車 根回しはすべて無駄です家の嫁
「 嘘 」 中安 びん郎 貧乏は死より辛いと嘘を言い 静 岡 養毛剤嘘で無ければボサ頭 女房が俺にほの字は嘘だった 私は嘘を言わぬと嘘を言い
「エコライフ」 林 二三子 エコしてと地球が痛烈に叫ぶ 芝 川 マイバック持参でエコなお買物 愛読書これもそろそろリサイクル 着物からリサイクルした服が映え
「本当の嘘」 堀井 草園 凡人で過ぎた夕日がまん丸い 静 岡 トンネルの出口で本音踏みずし 無いはずが見えて脳みそ軽くなり 後一歩舌三寸に邪魔をされ
「鮎三昧・・・其の八」 永田 のぶ男 岩影に鮎のきらめき独り占め 静 岡 竿先の微かな動き胸騒ぐ 待っていた瞬間頭白くなる 百の神すべて集めてタモの中
「 母 」 中野 三根子 かあさんと呼んでやさしさとりもどす 静 岡 帰るとこ私にもある母のひざ 心にもないことを言う母の前 母の前少し弱みをさらけ出す
「雑 詠」 川村 洋未 一人だけ空気読めないおせっかい 静 岡 活字では全て美人に化けている わけもなく食事さそわれひょっとして せいいっぱい砂糖まぶして高く売る
「てんやわんや」 谷口 さとみ 元とれる話に出せる元がない 伊 豆 初恋の真空パックも期限つき 禁断の恋にも似てる生しらす 初キスの記憶がズレて大ゲンカ
「 足 」 真理 猫子 大根のような足にも憧れる 岡 崎 足しげく通う喫煙コーナーへ 振り向けば足元をみる人だらけ この夢もひとに頼れば足が出る
「表裏一体」 山口 兄六 商談に同じ訛りの人がいる 足 利 駅までの道は追い風空っ風 危険だと思った席を譲り合う 天国か地獄か一夫多妻制
「絵 画 展」 佐野 由利子 BSで世界の絵画展を見る 静 岡 うちの子と言わせる猫の贅沢さ アイデアがパッと浮かんだ青い空 コツコツと努力したのに運が逃げ 「温 海」 多田 幹江 海凪いで骨の無い魚よく育つ 静 岡 養殖の鯛虹色に染め上げる 周りみな陸に上ったカッパなり 泡立器君はホントにせっかちだ
「つれづれに」 堀場 梨絵 見聞を広めまだまだ生きたいね 静 岡 晩学という人生のきわまれり これからもまだまだ根気植えつける 針一本置いて蜜蜂死の抗議
「多弁な旗」 池田 茂瑠 染めむらが多弁な赤い旗にある 静 岡 酒くさい稼ぎで育て背かれる いじらしい挑みか変えた髪型よ 注ぎ足したワイン魔性の泡が立つ
「ついてない男U」 長澤 アキラ 女神には去られ金運に逃げられ 静 岡 外れくじだけはしっかり手に残り 着地点探しあぐねている枯れ葉 風の日に落葉のように酔っぱらい
「花 冷 え」 川路 泰山 衣被き女に白い風の道 島 田 さよならをすると稀なる美女となり 首筋へひんやり残る花の冷え 地平線望み遥けし漢の絵
「受信メール」 望月 弘 クリックをされたい胸を持っている 静 岡 チョキチョキと受信メールを切っている 二階から居間へ出張して家族 桜咲く方程式は明かせない
「難 破 船」 加藤 鰹 難破船を母の港は待ち続け 静 岡 なあカモメ兄貴の船を知らないか 海は凪そして還らぬ船の数 大都会木の葉の舟は今いずこ
顧 問 吟 「ひこばえ」 柳沢 平四朗 思い出が濃すぎて時効なんて無い 静 岡 古日記父の火の劇風の劇 ひこばえにメンパを開ける風も春 招かない客が不遜の靴を脱ぐ
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[79] (2007/05/26(Fri) 18:07:12) |
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