創 作 自薦句 虎 竹 抄
「魅惑のタンゴ」 新貝 里々子 ドレスアップ淡水パール光らせて 袋 井 バンドネオンと流れつくのはあの岸辺 ふつふつと嵐子よこれはタンゲーラ このひと皿がブエノスアイレスの悲哀
「雑 詠」 内山 敏子 スタミナの切れ目をつなぐ缶ビール 浜 松 見る人が見れば背伸びとわかる見栄 忘れよう昨日の苦い話など 飽食の口にやさしい梅茶漬
「しあわせ」 鈴木 恵美子 喜怒哀楽積んで夫婦の第二章 静 岡 倖せを掴むと翔んでみたくなる 愛かしら身近な人が優し過ぎ しあわせな道だゆっくり歩きたい
「た ま に」 濱山 哲也 山へ行きたまに人間放棄する 青 森 歓楽街男をたまに取り戻す マジ顔でたまに経済など語る 怒られる「たまにはちゃんとしろ」等と
「美しい国」 松橋 帆波 年寄りに美しくない事ばかり 東 京 「美しい星」とは何とお気楽な クールビズ四十九日はまだ済まず 九条の他も変えたいようですな
「思 春 期」 塚本 寄道 なぜだろういつも気になる隣の子 長 泉 試験中あの子のうなじチラリ見る 好きなのに話したいのに知らんぷり 徹夜して初めて渡すラブレター
「近 況」 川口 亘 多数決なんて言葉に追われる身 藤 枝 大方は知らない事に押し切られ 落ち着いて考えて知る怖い罠 横柄な割りに態度が細か過ぎ
「こ と ば」 毛利 由美 今時の言葉を知らぬ広辞苑 つくば 外国人力士の美しい言葉 お母さんナウイだなんて古過ぎる この頃は日本語にまで字幕入り
「十人十色」 中田 尚 志をもって開店の日の落し穴 浜 松 辞職より自殺を選ぶおろか者 「負けないで」さけんだ人が負けちゃった 星空をピストルが刺すナイフ刺す
「ハードル」 真田 義子 ハードルが高くて水を飲んでいる 仙 台 条件は揃っているがまだ一人 深い傷閉じ込めてます古日記 深い訳隠して旅に出る私
「時 代」 山本 野次馬 ソフト麺ばかり食い散らかしていた 函 南 日本万歳と言っては死ねません 糸電話なんかは無いと諭される 親父の威厳など綿菓子に消える
「雑 詠」 滝田 玲子 目の保養だけでは済まぬデパめぐり 浜 松 楢山も定員ですと帰される 待合室愚痴を言い合い姦しい 紫陽花が見事梅雨空ぱっと映え
「口惜しかったこと」 増田 久子 はじめからチビへ二センチ背の縮み 焼 津 山道で展げた地図は別の山 バーゲンを積んで自転車川に落ち バラ買いのジャンボ末尾で逃げた億
「蟻 の 性」 柏屋 叶志秋 バラの花自分の刺に気が付かず 山 形 職退けど蟻は定時に目を覚ます 近未来地球眺めて酒を飲む 温室で咲いた花にも悩みあり
「ほくそ笑む」 西垣 博司 泣きごとを云えば誰かがほくそ笑む 静 岡 同情の背中でほくそ笑んでいる ほくそ笑む腹で金持ち口で泣き ほくそ笑む事だってある人だもの
「 手 」 馬渕 よし子 もみじの手いつかこの手で介護受け 浜 松 差し延べた手を疑いの目で見られ 幸運を逃がした手だがよく動く 触れた手を握り返して日日平和
「恋 色 々」 瀧 進 初恋の思い出花の一行詩 島 田 多情仏心恋が狭間に苦悩する 恋一途お七命を燃え尽くす 失恋の心あざみを摘んでます
「雑 詠」 寺田 柳京 手掴みの火傷の痕がなつかしい 静 岡 蜘蛛生まれさわやかに散る娑婆の風 長生きの約束があるクラス会 揺籃の我家は遠い虹の中
「雑 詠」 藪ア 千恵子 札束の舞い散る先は闇の中 焼 津 実像と虚像が絡む政治の場 少子化に永代供養予約する 長いものに巻かれて閉じる日記帳
「ゴミの山」 芹沢 穂々美 エンゲル係数知られてしまうゴミ出し日 沼 津 ゴミの山欲の深さでまだ呆けず 人生の山場はとうに越えたはず クモの巣を作ったクモの誤算の日
「出 る」 薗田 獏沓 筍の尖がり大地を割って出る 川根本町 森深く童話次々生れ出る 虫も出た姉も連れ出す車椅子 合併に出張った処削られる
「テロチェック」 井口 薫 一歩目のハワイ指紋と顔写真 袋 井 脱け殻が無様ファーストクラス席 ワイキキの波ブランドの顔でくる 折角の英語出番のないハワイ
「やれやれ」 鈴木 まつ子 披露宴美辞がえんえんまだ続く 島 田 申告書ぴったりしないにらみ合い 相槌も打たねばならぬ痴話げんか 先ず細く長ーく生きて良しとする
「暑 い」 小林 ふく子 スパイスを効かせて夏に立ち向かう 袋 井 決断を迫るひまわりこっち向き 陽が落ちた山の向こうは熱かろう 暑い日の番茶に涼を見つけてる
「梅 雨」 酒井 可福 梅雨入りにお印程の雨の粒 北九州 チビリ下駄梅雨であろうが呑みに出る 紫陽花も顔色変えず水化粧 梅雨入りにおんぶ蛙の笑みを見る
「散 歩」 岡村 廣司 散歩する度健康というおまけ 焼 津 お若いと言うのを期待する散歩 散歩道肥満の人に追い越され 平和だね犬の散歩に人が供
「サラリーマン」 増田 信一 合併しまた合併しあなた誰 焼 津 専業の主婦の予定が今夫 見込ある言ってた上司左遷され 定年後妻の御抱え運転手
「ラッパ吹く」 山田 フサ子 美しく老いる火種を埋めておく 袋 井 ウォーキング頭上に鳥の声ひびく 平穏に生きて青葉の一しずく 美しい國へとラッパ吹いている
「貴様と俺」 金田 政次郎 ファンファーレ貴様と俺がすれ違う 静 岡 見せたがる貴様の小指はブスだろう 鼻白む貴様が見てる泣くもんか キリストも釈迦も縁ない無垢な俺
「 腕 」 堀場 大鯉 いい腕と言われてモテた頃もあり 焼 津 片腕がまた出来ました我が句会 腕組みが固すぎいい句浮かばない 腕まくりしても所詮は空元気
「拘 来」 成島 静枝 点滴優先黙る拘来帯 千 葉 ぷくぷくと酸素マスクへ続く泡 束の間の自由頭も顔も掻く 切なくて止むなし紐はゆるくつけ
「 鬼 」 高橋 春江 鬼は留守いのちの洗濯しておこう 袋 井 鬼さんこちら鬼の貴方はもういない 佛とも鬼とも出合う回り途 身の内の鬼一匹がまだ騒ぐ
「約 束」 安田 豊子 ひとりでに時効になったいいなずけ 浜 松 義理立ての約束だから破れない のろまになって約束なんてできません 美しい公約なんて信じません
「混 沌」 鹿野 太郎 じっくりとおさらいをして深呼吸 仙 台 ねんねこがポストの中で呼んでいる 島国で良かった好きな色一つ 五月病一番多い自衛官
「勲 八 等」 寺脇 龍狂 勲八等二十の汗がしみている 浜 松 桐ッ葉にわが青春が凝縮し 粗末にはできぬ五年の重き日々 勲八等吊って二度めへ胸を張り
「雑 詠」 山田 ぎん あじさいが色取りどりに競い咲く 静 岡 あやめ咲き見事に咲いて足を止め 曾孫笑み老いと遊ぶよ華を受け 衣替え薄着に成って風邪を引き
「山 吹 草」 大塚 徳子 山奥で山吹草が生れてる 仙 台 木漏れ日に山吹草が揺れている 清楚な貌で山吹草が咲いている 山越えて山吹草の花畑
「 風 」 畔柳 晴康 気弱だなひとり眠れぬ夜の風 浜 松 ビル風にセットした髪また乱れ 凧祭り吹いて欲しいよ春の風 元気ないそよそよ風の鯉のぼり
「北海道ドライブ」 中矢 長仁 気持ちよく走る道ならデッカイド 愛 媛 広い道一直線で何処までも 一日中走って居ても疲れない お土産が一杯になり帰ろうか
「元 気」 加茂 和枝 あなたから元気を貰うありがとう 岩 沼 ゆったりの若葉の森の深呼吸 鯉のぼり空を見たので帰ります 少しだけ雨を下さい休みます
「自 由 吟」 川口 のぶ子 久々の雨に草木も若返り 藤 枝 おだやかな日々を送りて喜寿祝う 喜寿迎え今日で最後の同窓会 背を丸め辞典をのぞく虫めがね
「自 由 吟」 御田 俊坊 透析で血液洗い生きる人 高 畠 地球ごと洗い汚れを落としたい 献血は命を救うと待っている 古里の墓に参拝出来ぬ罪
「雑 詠」 堀井 草園 欠点が邪魔で逃げ道掃いておく 静 岡 耳栓で傷なめ合って黄昏れる 投げ槍を束ねた紐が伸びて行く 憎いまで上向く花に目が触れる
「傘寿過ぎ」 中安 びん郎 四つん這いして草を取る傘寿過ぎ 静 岡 恋文は最早書けない傘寿過ぎ 足腰が言うこと聞かぬ傘寿過ぎ 老妻に世話を焼かれる傘寿過ぎ
「ウォーキング」 林 二三子 箱根路を歩く杉林に魅了 芝 川 登り切り旨い空気と達成感 ここかしこ湧き出る水に癒される 遊覧船横目に湖畔ウォーキング
「十 六 夜」 萩原 まさ子 写メールで旅の醍醐味持ち帰る 静 岡 嫁ぐ日は格差社会の出発日 嫁姑戦いすんでお茶を飲む 確かかと聞く移り気な十六夜
「自 由 吟」 提坂 まさえ 顔洗うゆうべの喧嘩流れない 静 岡 日当たりがよすぎたのかも萎む恋 名刺出す鈍感力も載せておく メリケン粉クッキーにする母遠忌
「必 常 食」 石田 竹水 楽しんだ思い出だけの必常食 静 岡 食料と寝袋持って行く樹海 片足を笑顔で入れた蟻地獄 面白のツボを知ってる好奇心
「口 下 手」 堀内 しのぶ 口下手の絵文字メールがよく喋り 焼 津 口下手のパントマイムに花ひらく 口下手な夫の汗知る靴の減り 口下手を愚直に守り難を避け
「近 詠」 多田 幹江 アメリカンブルーに染まる美し国 静 岡 キャラ脱ぎ捨ててにんげんを捲き戻す 切り口上の中身竹光ではないか 輪の中に鎮座ましますクラスター
「現実逃避」 真理 猫子 厄介なメール読まずに食べました 岡 崎 やる気ない時の人気はパンダ並み 見ない振りしても三つ目がやってくる 特急で現実逃避して帰る
「自 由 吟」 谷口 さとみ 永遠を願うものほど消えてゆく 伊 豆 ギプスとれ用は無いけど遠まわり 不意に干支聞かれてサバが読みきれず 新聞に仲直りのタネ探してる
「鮎三昧・・・其の九」 永田 のぶ男 一に針 二にはオトリで 三に場所 静 岡 雨降って想いは川原 鮎の苔 殺生の好きな輩が友を呼ぶ まだ早い苔は乗らずにまた雨か
「波 紋」 池田 茂瑠 波紋ほど私広がれない女 静 岡 円満の柄ハンカチの狭さにも 触れさせぬ過去を港の女将持つ 揺さぶりを罪な笑顔とかけてきた
「 父 」 中野 三根子 父は今 私の中に生きている 静 岡 メロドラマ父からそっと下を向く いつだって弱音をはかぬ父が好き 父からの小言数えてなつかしむ
「ひ と り」 川村 洋未 缶ビールわびしく冷やす冷凍庫 静 岡 お手上げさ誰かタオルを投げてくれ 一人勝あとからつけがどっと来る 三面鏡知らない顔が笑ってる
「友 情」 佐野 由利子 友情は果敢なきものよ女達 静 岡 若いねと互い心に無いお世辞 正論も馬耳東風の天の邪鬼 一日の反省をする床の中
「もういいか」 長澤 アキラ ライバルと言われ養毛剤を買う 静 岡 スタートの一歩手前で嫌になり 並行線手を握り合う時もある 各停で気負いの抜けた本籍地
「西 東」 川路 泰山 光琳図京に咲かせて美を競い 島 田 京の美を舞って扇に紅九段 枕絵師情話の紐を江戸に解く 浮世美を粋に流した江戸気質
「自 由 吟」 高瀬 輝男 わたくしの自慢ずーっと貧乏で 焼 津 深海魚たまには戦見においで 百グラム程だが俺もゴミは出す 豊かさがまた一つ消す里の森
「愛する地球」 望月 弘 愛掛ける円周率で生きていく 静 岡 原発の町に漂う白い嘘 九条に蔦の吊り橋渡らせる 人が住む地球だ油差してやる
「自 由 吟」 加藤 鰹 キャンパスで伝染るはしかと恋病 静 岡 向日葵が揺れる逢いたい人がいる カーボンの如く薄っぺらな持論 朝もやの中酔いどれが待つ始発
顧 問 吟 「たかが・されど」 柳沢 平四朗 昔日をピエロに塗った異聞録 静 岡 耐えて来た唇だから歌がある 年輪へたかが・されどの世の斜面 古疵を乾いた風が触れたがる
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[82] (2007/07/26(Wed) 18:27:12) |
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