創 作 自薦句 虎 竹 抄
「人間模様」 中田 尚 無人駅ケータイメールにぎやかし 浜 松 パチンコ屋けむりと欲がてんこ盛り 駅の隅抱き合う人と寝てる人 車内です口紅なんぞ要らないよ
「明 日 へ」 新貝 里々子 捨てても捨ててもまだがらくたの山 袋 井 紅ひいてそんな妥協は出来ませぬ フライパン時々おとこ狼煙揚げ ロスタイムおんなとどめるコンパクト
「ミドルエイジ」 毛利 由美 美しい友にも老眼の仕種 つくば いい年をしてと子供に言われた日 おばさんの強さは嘘のないところ 正直に歳を言ったらどん引かれ
「自 由 句」 山本 トラ夫 欲のないようにも見える無為無策 長 泉 ゴネ上手死んだ振りまでしてみせる ティファニーの腕時計とて同じこと 僕のせいじゃない電池が切れただけ
「 夏 」 濱山 哲也 おそるべき乳房だ三鬼夏来たる 青 森 少年と草が競って伸びていく ドラッグを売っているのはキリギリス 青いとき良いも悪いも容赦なく
「メランコリー」 あいざわひろみ 怪物のメランコリーはわかるまい 茅 野 刺抜きを持参で臨む会議室 年輪の狭い部分は倦怠期 トトロにはあった優しさ温かさ
「コンサート」 大塚 徳子 みちのくの駅に西口東口 仙 台 合挽きは内緒なんです昔から 人といういつか越えたい山がある 蝉時雨鎮守の森のコンサート
「淋しいネ!」 瀧 進 アフターファイブ着信メール読み返す 島 田 老脳の記憶気紛れ蜃気楼 留守宅の軒に風鈴泣いている 平凡に徹し切れない自尊心
「自 由 吟」 江川 ふみ子 役目終え指の渦から枯れて行く 函 南 納得のゆかない傘の半開き カチとくる一言嫁の眉動く 本当の味方は潮が引いてから
「おのぼりさん」 井口 薫 酸欠で巡る東京新名所 袋 井 モネ展を出ておもむろにさす日傘 バリウムの味にも慣れて古希の坂 全身全霊さくらんぼ狩り今最中
「逃 げ る」 戸田 美佐緒 大変だ漬物石が家出した さいたま 恋人よ嘘をついてもいいですか 条件は張り子の虎という家族 完熟のりんごあなたから逃げる
「雑 詠」 成島 静枝 押し入れを丸ごと干してティータイム 千 葉 神様に試されている葬続く 切換えが早い脳です女傘 ボランティアやりませんかと来る福祉
「電 気」 畔柳 晴康 お仕事もお遊びまでも電化され 浜 松 オール電化でも心配は原発ね からっ風活かして欲しい電力化 ロボットにまだまだ負けぬ腕自慢
「自 由 吟」 真田 義子 砂漠化が進む日本の雨事情 仙 台 運命線ゆっくり変わる夜明け前 わたくしのピンチ助けた赤い靴 ランプの宿で優しい顔になって行く
「 花 」 安田 豊子 月光へ月下美人のワンルーム 浜 松 紫の情緒に浸る藤の下 過去の花みんな愛しく胸で咲く 花道を過ぎてたおやかいるひとり
「雑 詠」 内山 敏子 涙顔大きく映すメロドラマ 浜 松 便利さに慣れて足腰弱くなり お似合いと言われネクタイ二本買う 厨の灯主役の主婦がいて平和
「言いたい放題」 増田 久子 白鳥も孔雀も美貌とはいえぬ 焼 津 のんびりの一人の夜へ蜘蛛が出た 寅さんが身内にいたら困りもの 理屈では七起きですむ七転び
「素 直」 馬渕 よし子 あの頃のわたし素直な妻だった 浜 松 素直さに欠けてレッテル変り者 余りにも素直に見える人の粗 お手本に素直で主張伝わらず
「雑 詠」 酒井 可福 大酒をやめる決意の二日酔い 北九州 カラオケのマイクはなれず終電車 一枚を閻魔に抜かれ夢が覚め 美しくやさしい顔で癌告知
「敵 味 方」 鹿野 太郎 相方に泣かされて来た名コンビ 仙 台 赤黄色決まって散歩する二人 さっそうと社保庁へ飛ぶ鬼ヤンマ 駄菓子屋で付けた抗体子が拒む
「鈍 感 力」 増田 信一 鈍感は大丈夫です生まれつき 焼 津 鈍感と言われた子供今社長 鈍感と物忘れの差紙一重 鈍感と敏感混ぜて政治家に
「 風 」 小林 ふく子 涼風に会うから身なり整えて 袋 井 熱風もグチの一言漏らしてる 夕凪に血圧上る音を聴く 病名は問わず医者の風を観る
「叩 く」 鈴木 恵美子 生真面目へ母の太鼓が小さく鳴る 静 岡 しずしずと叩く老境の扉 青春の扉は思い切り叩く 路地裏に昔ながらの子等がいる
「 乱 」 鈴木 まつ子 どちらにも言い分あった風の乱 島 田 冷えきった飽き風が立つ乱れ髪 感情のもつれで弦が乱れだす 突っ張って不平を鳴らす乱気流
「少・青・凡・老」 金田 政次郎 水脈の彼方にもがく青リンゴ 静 岡 好奇心斜に構えている不遜 野次馬で良し主義の無いプログラム 磨かれぬ三面鏡は痴呆症
「理 想」 山本 野次馬 ほどほどの息で余生をながらえる 函 南 精一杯描いた夢が終わりそう アンモナイト前頭葉に残す夢 理想論おって迷路の中にいる
「自 由 吟」 ふくだ 万年 孫つれて笑顔背負って嫁が来る 大 阪 亭主好き使い勝手がいいのです 砂浜の挑発目線につい会釈 新しい水着で走る美女とトド
「曇 り 空」 加茂 和枝 どかあーんと一発雷鳴り雲になる 岩 沼 長雨にめんこい顔が曇り出す 何事もなかったように梅雨になる 痒い痒いマイナスイオン求め行く
「反 省」 岡村 廣司 ばれたなら反省ポーズとれば済む 焼 津 反省をしても目覚めりゃもう忘れ 反省もせずに弁解うまくなり それ以上申すな反省しとるから
「優しさごっこ」 高橋 春江 わっと夏優しさごっこもう限度 袋 井 涙腺が弱いかなみだすぐこぼれ 善人の顔して弾を打つスリル 許す日の室には花があふれてる
「あ る 日」 川口 のぶ子 点滴のぽとぽと落ちるもどかしさ 藤 枝 病棟を行き交う人の足のあと リハビリに痛さこらえて生きる道 歩けない杖がたよりになる私
「雑 詠」 寺脇 龍狂 メイファーズ通じる戦友も居なくなり 浜 松 銭踏むな本を蹴るなは死語となり 放言は親任式の時に言え 政令市に住ませてもらう市民税
「暮 れ る」 薗田 獏沓 恙なく今日も暮れます夏の月 川根本町 計画が計画のまま今日が暮れ 日が暮れて一歩動いた石地蔵 矢車が鳴りっぱなしで今日が暮れ
「 無 」 堀場 大鯉 偉い子をまぐれ当りと見る夫婦 焼 津 反逆のできぬ豚児も可哀相 待つこころ薄れ季節の早回り 無に帰る石へ彫ること多すぎる
「万 華 鏡」 山田 フサ子 万華鏡楽しい夢を授けてね 袋 井 どの指も無言で役目果たしてる 何事もなかった様にチャイム鳴る ささやかに生きて月日が早過ぎる
「自 由 吟」 御田 俊坊 ヤマザワの安いチラシを漁り出し 高 畠 胸張って悠々生きる発破かけ 子の自立母の任務が軽くなる 結び合い絆の太さ血が通う
「レストラン」 西垣 博司 横文字のメニューに財布怖気付く 静 岡 伝票の数字はこわいもの見たさ 支払いを済ませたあとの沈みよう こんなにも軽い財布で店を出る
「めのこころ」 川口 亘 明言を吐く程もない勇み足 藤 枝 名案が浮かばぬ儘に四苦八苦 面々の出席投句に目を見張り 名勝も歩けぬ足に云うつらさ
「努力をすれば」 中矢 長仁 頑張っている人 運も味方する 愛 媛 努力する持てる男もそれなりに 取り戻す努力実ってホタル飛ぶ 暮らし良さ身の程知って背伸びせず
「雑 詠」 滝田 玲子 湿った心太陽に干す梅雨晴れ間 浜 松 躓いた石に生き方教えられ リフォームをしたい私の錆びた脳 ひまわりも暑い暑いとうなだれる
「雑 詠」 山田 ぎん 裏の畑なすと卯とトマト植え 静 岡 裏の道大きな蛇で怖くなり パチンコの灯が「入るぞ」と呼んでいる 満車です儲かるのかなパチンコは
「鮎三昧・・・其の十」 永田 のぶ男 雨上がり柳色には追いがよい 静 岡 ポイントで違わずグンといい当り 落着けと外さぬ様に辺りみる よく見られ周囲の数も術のうち
「ひとりっ子」 堀井 草園 八起目に非常電池が切れていた 静 岡 浮動票蒔かない種が喧しい 生かされて子のひと声が杖となり 聞き下手で早合点の三叉路
「辞 任 劇」 中安 びん郎 太平を何で乱すか辞任劇 静 岡 後釜は元チルドレン辞任劇 秀才が引き際悪き辞任劇 安倍総理しどろもどろの辞任劇
「雑 詠」 芹沢 穂々美 てっぺんの枝は敵から身を守る 沼 津 バイキング腹八目までにする 朝ドラが終わり掃除機かけ始め せっつかれ特濃ソース時間切れ
「雑 詠」 林 二三子 それなりに写る鏡が疎ましい 芝 川 期限なく続く介護の細い綱 めっちゃくちゃ旨い話に騙される ゴーヤ食べる猛暑乗り切る策として
「 雨 」 中野 三根子 小雨ならあなたの傘に入りたい 静 岡 雨の夜そっと聞いてるセレナーデ 二人なら雨もうれしい傘ひとつ 雨の夜心ゆったり休ませる
「真 面 目」 薮ア 千恵子 真面目だと言われ脱線できずいる 焼 津 待たせるも待つのも嫌な几帳面 見えすいた世辞に疲れて貝になる 要領の悪さいつでも馬鹿をみる
「花 嫁」 川村 洋未 嫁に出す母もいっしょについて行く 静 岡 婿が来た満点つける親心 結婚式何が何でも雨降るな 花嫁の次にうれしい老いた母
「雑 詠」 堀場 梨絵 生れきて中途半端なニート族 静 岡 時間切れ僕の真実届かない 荒れ模様中途半端でさじ投げる 運のいい馬車に乗りたい夢女
「上 げ 底」 池田 茂瑠 限界の腰であること内緒です 静 岡 渇いてる命と追った愛でした 上げ底の底に女の舌が棲む 妥協点重く一段下げました
「 輪 」 多田 幹江 美しい国輪になって語ろうよ 静 岡 歩け歩けの輪唱は耳にタコ 山枯れてサルもヒト科の輪に入る 知恵の輪と辛抱でした共白髪
「分 岐 点」 真理 猫子 本能があなたを尾行し始める 岡 崎 この次の交差点まで手をつなぐ 上段の構えで君を待っている 幻想に手招きされて秋葉原
「道具立て」 山口 兄六 謙譲語腹に納める朝ごはん 足 利 終電で電車男は売れ残る ジャングルへ潜るベッドは宝島 携帯があれば戻れる俗世界
「真 意」 石田 竹水 晴れになり傘は浮気をして不明 静 岡 百歳の表彰がある其の真意 手短に話せば歯磨で離婚 貫禄に見える脂肪の太っ腹
「マイライフ」 谷口 さとみ いびつでも旬の露地もの大御馳走 伊 豆 一聞いて十を忘れる生き上手 何もないそれも幸せかもしれぬ 北国の春夏秋は冬支度
「話し合い」 佐野 由利子 てっぺんと根元の話噛み合わず 静 岡 口裏を合わせた事の自己嫌悪 底辺でやっと分った裏表 話し合い納得をしてまあるい輪
「流 れ る」 長澤 アキラ 本流になると正義が沈みだす 静 岡 酸欠の川を流れる雑魚の群れ 激流で掴んだ藁が敵の足 悠久の河は本音を明かさない
「アゲンスト」 川路 泰山 遊行期の旅も恋路を泡沫と 島 田 美人なら魔女でも良いさ恋時雨 恋風か魔風か臍をえぐられる アゲンスト男泰然自若たり
「自 由 吟」 高瀬 輝男 平身低頭 靴のサイズへ合わす靴 焼 津 考慮中なのに時計は止まらない 日々平穏カバン一つの旅思う 無視された主張よ今は耐えてくれ
「 汗 」 望月 弘 いい汗を絞ると精製された塩 静 岡 コーヒーもテレビも薄くアメリカン 戦争を知らない子らは宝物 年金がブランコしてる青い空
「自 由 吟」 加藤 鰹 オッサンと呼ばれた 僕のことだった 静 岡 ほふく前進 妻に見つからないように セクシーな女コーラをラッパ飲み どん底にセミの大合唱響く
顧 問 吟 「か べ」 柳沢 平四朗 光る風ひそかに五感研ぎすます 静 岡 部屋じゅうの壁松坂が投げている 鍾乳洞の怪筍のあごたたき 腕組を解かねばならぬ人と逢う
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[85] (2007/08/26(Sat) 18:32:12) |
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