創 作 自薦句 虎 竹 抄
「雑 詠」 藪ア 千恵子 不用意に出した言葉の後遺症 焼 津 詮索をしすぎて首が回らない 負け犬の言い訳がもう負けている 幅利かす序列を蹴ってみたくなる
「 月 」 小林 ふく子 三十の顔持つ月はお人好し 袋 井 月のうさぎ丸めた餅は星になる ほどほどの幸せ月と語ります おぼろ月彼の心は月に似て
「弱 点」 薗田 獏沓 弱点があって気楽な人が寄る 川根本町 攻めて来るから弱点は見せられぬ 前科には成らぬ程度の罪重ね 完璧でないから人がついて来る
「あれには参った」 松橋 帆波 掌のアンチョコ汗で読み取れず 東 京 暴落の日にパソコンが繋がらず 混浴といえばそうだが猿と鹿 来ないのと言われて思い当たる事
「忘れんぼ」 高橋 繭子 座敷わらしが思い出させてくれる夏 大河原 最近を忘れる執念深いひと 忘れんぼ許してくれる熱帯夜 螺旋階段記憶のドアはどこにある
「言 葉」 安田 豊子 売り言葉買って空しい自己嫌悪 浜 松 失言の尻尾踏まれた酒の量 嘘も方便使い熟して生き残る 一言の重さ優しさ難しさ
「フレンチ」 成島 静枝 フレンチのランチ御招ばれ淑女めき 千 葉 フレンチに箸置き気取り要りません 彩りとソースお代りさせるパン ナプキンで内緒話の口も拭き
「白 い 歯」 中田 尚 白い歯と小指にハートくすぐられ 浜 松 糸切り歯明日に備えて研いでおく 白い歯で秋の味覚を頂こう 歯は大事いくらお腹が黒くても
「雑 詠」 ふくだ 万年 水溜り飛んで無念の老いを知る 大 阪 岩清水旅の終わりは母の海 ヘソ魅せぬ水着が走る孫つれて 年金を孫がくすねて夏を終え
「母 の 道」 真田 義子 母の道今追いかけている私 仙 台 旅の空心弾んで鳥になる おしゃべりが好きな人から長電話 いつの間に風がお供のひとり旅
「ス ー プ」 山本 野次馬 ほどほどの距離でスープの冷めぬ仲 函 南 缶きりで我が家のスープ出来上がる 二世帯で味わう二種類のスープ スープカレー今日の自分を暴露する
「結 果」 毛利 由美 平均をすれば平年並みの夏 つくば 本当に切れていたわ賞味期限 同じもの食べて相方だけ太り 早々にブートキャンプはオークション
「ライバル」 濱山 哲也 ライバルに負けじと僕も養命酒 つがる ライバルが美人と話す見る地獄 ライバルが言うライバルに僕が無い ライバルは今日もきっちり痩せていた
「記 憶」 あいざわひろみ 海鳴りは母の体内から来る 長 野 恋心風がさらっていきました 傷痕は見せない白壁の土蔵 まっさらな今日に記憶を書いていく
「 う 」 川口 亘 浮き草も終の住居を決める頃 藤 枝 浮き袋つけて泳げぬ身のあわれ 浮気でも瓢箪までにまだ遠い 運命と大袈裟が効き籤を引き
「楽 し 気」 石田 竹水 御破算で静止が出来る五つ玉 静 岡 楽し気に踊り続けて去る枯葉 乾いたら涙が甘く甘くなる 一と一足した答えが世に出ない
「愚 痴」 戸田 美佐緒 とんちゃらん今宵のカメも愚痴を言う さいたま 好きなことグチって鶴が飛んでいく 自我ばかり通すカエルの孤独癖 たまたまにヒトの顔して生きている
「やれやれ」 新貝 里々子 電池切れ警報だとは知らなんだ 袋 井 夏バテのくすり昼寝が癖になり サスペンス蝉も子供も消えました 生きるとはペットボトルのお茶を持ち
「夏 終 る」 酒井 可福 秋を呼ぶ風鈴の音に千の風 北九州 夏終りすべて絵日記でっちあげ 盆の明け線香花火だけ残り 鈴虫にステージ譲る蝉の声
「定期テスト」 塚本 寄道 突然に掃除始めるテスト前 長 泉 深呼吸ため息になるテスト中 やったのに思い出せないことばかり 勉強をやるぞと思うテスト後
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 蝉時雨止んで気がつく耳時雨 浜 松 理不尽へ自己責任がまた問われ 局長の常識クルマの二、三台 いつ見ても野球のサイン分らない
「花の東京」 増田 久子 上京は青春キップ五人連れ 焼 津 デパ地下でいつもながらの荷が増える 鳩居堂一筆箋を買いに寄る 五人とも巣鴨が似合うけどやめる
「雑 詠」 馬渕 よし子 媚びた日のメーク落としは手間かかる 浜 松 裏窓を開けて息抜きしています 幸せになろう苦労の中で聞く 夫にも渡せぬ鍵を一つ持つ
「豆 台 風」 加茂 和枝 これでもかこれでもかあと雨は秋 岩 沼 ビニールの弱点だけが目立つ傘 湿っぽくならないように泣いておく 豆台風おねだり何かあったはず
「花を買う日」 提坂 まさえ 明日使う笑顔いくつか用意する 静 岡 コンタクト外して生の君を見る 撥ねと留めいまだに迷う私です 笑い方忘れたのです花を買う
「 ! 」 井口 薫 感嘆符押してメールが様になり 袋 井 背を押してくれた赤ペン感嘆符 老い止めの秘薬疑問符感嘆符 あら綺麗おいしい凄い旅切符
「想 い」 鈴木 恵美子 かすり傷ひとつふたつはあって老春 静 岡 泥舟に乗ろうあなたと一緒なら 断ち切れぬ想いは遠くちぎれ雲 本当の愛は自然の彩で溶く
「 風 」 瀧 進 たんぽぽと噂の種が風に乗り 島 田 忍耐の手綱さばきが風を呼び 風見鶏読めぬ明日の風を待つ 諍いの心に風が吹き抜ける
「裏 の 裏」 岡村 廣司 裏の裏読むと疑心が眼を覚ます 焼 津 裏の裏読んだら裏がもう一つ 裏の裏知ると生真面目あほ臭い 裏の裏読み過ぎ霞す右の脳
「処 方 箋」 鈴木 まつ子 てにをはが乱れて話噛み合わず 島 田 朝ドラに今日も明日もと見逃せず 都合よく惚けてみるのも処方箋 兎に角も今の元気がありがたい
「迷 路」 海野 満 みだれ咲くおいらの時季はいつなのか 静 岡 朝おきていつも同じだそれでいい パパ臭いおまえも臭いわが家内 人生のどこにいるのかわからない
「雑 詠」 西垣 博司 オントシと云われ半分悄気ている 静 岡 謹しめば何やらそんな顔になる 末席で金持ちの愚痴聞いている 軽く受け流したあとの立ち眩み
「老 い る」 金田 政次郎 トンネルを数えいつしかお爺さん 静 岡 ベートーベン程よく聞いているつんぼ 翁媼無慚オチンチンは要らない 明日老いる今日一日を若く居る
「自 由 吟」 川口 のぶ子 幸せを庭のトマトと分かち合い 藤 枝 枝はらい汗がポトポトもう暑い 三十五度パタッと止んで蝉しぐれ 風鈴の音色夕べの風に酔い
「逃 げ る」 高橋 春江 しつような影にわたしは逃げきれず 袋 井 逃げ回る猫を相手に織るドラマ 立ち向う歳へ最後のガッツポーズ 自己逃避なんと静かな海だろう
「 愛 」 鹿野 太郎 チョイ悪の美学に妻の眩しい瞳 仙 台 微笑んでいる父の星母の星 古里の友と紐解く語り種 足元に一等星が光ってる
「自 由 吟」 山田 ぎん 此の暑さ子等はプールへまっしぐら 静 岡 朝早く咲く朝顔が彩をくれ 海は今人が集まり波の音 月を見て夫を思い妻は老い
「自 由 吟」 御田 俊坊 世の動き雲の流れに逆らえず 高 畠 悠々と雲が地球を掻き回す ばりばりと思い出消して反古される ばりばりと働く父の背が温い
「家族しり取り」 中矢 長仁 五時が来た少し早いが縄のれん(夫) 愛 媛 縄のれんなんて小遣い有ったわね(妻) 有ったのに宿題誰か見て欲しい(子) 見て欲しい子の面倒を私寝る(妻)
「 雨 」 畔柳 晴康 長雨に句作のペンも湿りがち 浜 松 老い耄れて晴耕雨読洒落てみる 雑草が生気満々雨の庭 被災地の雨に我が身の心濡れ
「雑 詠」 内山 敏子 月並な謝罪が続く記者会見 浜 松 口実は脚の痛みにした胡坐 混浴は男が恥じる野天風呂 もう一本ビールをねだる父の指
「稲 光」 大塚 徳子 ショウゴイン大根おろし暑気払い 仙 台 大ジョッキゴクンと飲んで暑気払い 虫も殺さぬ顔で疝気の虫を飼う 社保庁のあたりで光る稲光
「雑 詠」 滝田 玲子 コスモスの揺れに迷った赤トンボ 浜 松 古希と書く馴染まぬ筆に手が震え 頼られるうちが花だと諭される マラソンの元気をもらう暑い朝
「誕 生 祝」 山田 フサ子 落し穴の近くで止まる年の数 袋 井 平坦な道ばかりない土になる 実らない多趣味たのしみ生きている 喜寿過ぎて孫から届く誕生祝
「雑 吟」 堀井 草園 くじ運の悪い翼が糞おとす 静 岡 優しさに馴れた敷いで脛を打ち 人生に筋書はなく小石積む ふて寝して細目で俎音を読む
「分 水 嶺」 中安 びん郎 分水嶺桜散る川暴れ川 静 岡 分水嶺場所は日本の中央部 母が生む優秀な子と平凡児 分水嶺綺麗な水が南北に
「シルバー」 中野 三根子 席ゆずるつもりがそっとゆずられる 静 岡 やさしさがシルバーシート暖める シルバーで何度も映画みてしまう 年金とシルバーシートお出迎え
「中 国」 増田 信一 中国は昔の日本そのまんま 焼 津 チャイナ服似合ったあなた過去の人 少子化を推進しても増える国 前食べた中国産にゃノー天気
「鮎三昧・・・其の十二」 永田 のぶ男 雨風よ自然壊すな神頼み 静 岡 来年の遡上状況気にかかる 自然体荒れる枯れるも恵む雨 雨やどり五体真まで冷えてくる
「生き下手」 長澤 アキラ 生き下手で白と黒とがよく見える 静 岡 返り血の後が読めない血のめぐり 血止めするように時時座禅する 血の色の混じる小説書き終える
「 秋 」 林 二三子 店先を秋の果物が陣取り 芝 川 芋掘りの園児満面の笑顔 店頭でサンマに秋を告げられる サンマ焼く七輪未だ捨てられず
「愚 妻」 多田 幹江 保険証愚妻しっかり付いている 静 岡 お叱りを自分のメタボ棚に上げ アンチエイジングだとさ都合のいいマイク 着物を着ると動かなくなる愚妻
「母 の 海」 池田 茂瑠 中立の軍手が白いまま乾く 静 岡 大らかに凪いだ肥満の母の海 未来図の裏にナダレの音消えぬ 疑いも少し入れてく袖だたみ
「つ め」 川村 洋未 つめに書く愛していると風呂あがり 静 岡 さよならねマニキュア落し右左 マニキュアで染めてつぶした本音ある つめみがくケータイボタン押しながら
「Eメール」 佐野 由利子 この角を曲り切ったら抜きん出る 静 岡 Eメール届きましたか茜雲 奥さんは節約ばかり言っている 砂浜に恋の抜け殻落ちている
「シマドジョウ」 山口 兄六 天国で妻に会ってもシカトする 足 利 ケータイ族を振り返らせた美人 ウォシュレット父さんそれはエシャロット 渋滞を抜けたらそこは青い空
「自 由 吟」 真理 猫子 年金を運ぶカボチャの馬車がある 岡 崎 上流の魚には解けぬ化学式 加齢臭まだ熟成が終わらない 警報に勝負を挑む雨の音
「空 漠」 谷口 さとみ 飽きちゃったダメと言わないやさしさに 伊 豆 捕り方を猫に教えているねずみ ケンカするほうが淋しいよりマシよ 終電が出るまで空車来なきゃいい
「日 和 見」 川路 泰山 優柔不断なにをするにも出遅れる 島 田 真鍮のラッパへ誰も振り向かぬ 肩書きを担いだだけの猿芝居 日和見が好きでお山の上に立つ
「自 由 吟」 高瀬 輝男 諸事万端あなたに任す理髪店 焼 津 とどのつまりは常識論で片がつき サア墓は買った長生きしてやるぞ 大変だ俺の提言シュレッダー
「目のうろこ」 望月 弘 目ん玉の洗濯をする青い空 静 岡 目の鱗いちども落ちたことがない 貼り替えた賞味期限で夫婦する 今日もまた買ってしまった売り言葉
「バイバイサマー」 加藤 鰹 言うべきを言って煙たがられている 静 岡 夏の恋終わり秋刀魚がほろ苦い キャッチ&リリース恋はゲームだな 失意の日セミの大合唱を聴く
顧 問 吟 「軈 て」 柳沢 平四朗 おおっぴらに晒す仲なら臭わない 静 岡 まだまだの軈てを責めぬ自由形 老人力の自惚れ返り討ちに会う ビー球の向うに駄菓子屋が見える
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[91] (2007/10/26(Thu) 08:27:12) |
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