自由吟 虎 竹 抄
「いち抜けた」 谷口 さとみ プチ整形するより字でも習おうか 伊 豆 あいうえおDNAのようにある 空気のような人で私は窒息死 だからなにダイヤが吉と書いてある
「てんつくまん」 真理 猫子 苦しくて息ができないのでしゃべる 岡 崎 笑いたいだから能面つけてみる 何を見てますか私は四角です 進めない心の中でケンケンパ
「モンスターペアレンツ」 山口 兄六 ポケットに子を入れているモンスター 足 利 両親は気付かぬうちに子の脱皮 愛情があるかが判る塩ムスビ あげは蝶びしょぬれのまま飛べないね
「テレビ局」 松橋 帆波 謝らぬものの一つにテレビ局 東 京 亀田家の味を覚えたテレビ局 パチンコと保険屋でもつテレビ局 本当は正義でいたいテレビ局
「ル ー ツ」 井口 薫 馬鈴薯のルーツ高貴であるらしい 袋 井 おいもより私の根っこ土深く 日本人のルーツに牙はない筈が エルメスを辿れば土の香に出合う
「春 の 音」 戸田 美佐緒 はひふへほ笑い袋に種を蒔く さいたま スタートの春の支度ができました ポケットにおじゃましますと夫の手 紅ひいただけです恋が噂され
「旭山動物園」 濱山 哲也 弱虫が大好きなのは動物園 つがる 明らかにオオカミウオは数合わせ 檻の外こちらは馬鹿という獣 旭山びっくらこいたバスの列
「十 二 月」 金田 政次郎 不況なぞ知らぬサンタを子が信じ 静 岡 日没に始まるイブの灯が赤い のれん押す野暮唇の寒い暮れ 十二月肩の凝らない本を買う
「雑 詠」 滝田 玲子 本心を吐けば返ってくるこだま 浜 松 大臣も博士も出ない過疎の村 自転車もライター並みで使い捨て 涙腺の弱さテレビで泣かされる
「 虫 」 藪ア 千恵子 今日も又やっきり虫が首もたげ 焼 津 宥めても言うこと聞かぬ腹の虫 生温い言葉にマッチ擦ってやり 売り言葉買い言葉にて八つ当たり
「自 由 吟」 西垣 博司 一声を云い忘れてのわだかまり 静 岡 まだ種火残って秋は紅を引く 人間をごった煮にする新聞紙 着信音乾いた街に吸い込まれ
「ボ ク」 塚本 寄道 地図のない道をボクらは生きていく 長 泉 見ていてよありのまんまのボクのこと いつだってボクの後ろにいる家族 でこぼこの道もボクなり進むのさ
「偽 装」 毛利 由美 赤福はもったいないを取り違え つくば 女心の可愛い証 胸パッド もう二つ三つのサバは誤差のうち 定価据置の中身が減っている
「雑 詠」 石井 昇 抜けたらば地の果てだった細い道 蓮 田 挫折した線香なれど灯は赤い 人間の本音聞こえる三流紙 沖縄の骨が歪んで哭いている
「雑 詠」 馬渕 よし子 松茸が薄くて味覚語れない 浜 松 陽の光浴びると疼く古い傷 二枚舌持って世間を渡りきる 入れ知恵が効いたか態度でかくなる
「自 由 吟」 御田 俊坊 生きるため時の流れに逆らえず 高 畠 隣から時計にされる靴の音 目の裏にまだある嫁ぐ娘の笑顔 子には子の目標持たせ進ませる
「 耳 」 高橋 春江 聞き直し多くなる日の自己嫌悪 袋 井 又聞きの話し大きく空に舞い 聞きながす耳の形がとてもいい 福耳と云われた耳の独り言
「 道 」 瀧 進 人間を信じ如来が見えてくる 島 田 めぐり合う喜び多き遠回り 煩悩に修行の道を教えられ 女房に余生ハンドル握られる
「 秋 」 安田 豊子 もみじほろほろ過去の痛みを連れてくる 浜 松 人を恋う女ごころに秋が溶け 紅葉の峠は雪という試練 残り火を温め合ってる湯の煙
「素 直」 小林 ふく子 生きたくて素直に医者の世話になる 袋 井 どん底で素直な丸い石に会う 喋るだけ喋り後は素直な人となる 結び目を緩め素直に生きられる
「気まぐれ」 鈴木 恵美子 気まぐれの虫が心の隅に住む 静 岡 気まぐれの言葉に揺れる毬ひとつ 気まぐれなアバンチュールへうろたえる 気まぐれがうわさの火種置いていく
「雑 詠」 寺脇 龍狂 罪悪感持って日切れのパンを食べ 浜 松 無免許がだから乗りたい走りたい お歳はと歳も聞かれぬ歳となり 大学院さり気なく言う親の見栄
「生きるパートU」 山本 野次馬 生きるってこんなに辛い涙雨 函 南 青春は裏切る事と信じてた 諭されて生きる喜び母に知る 親父ってなんて事ない伝書鳩
「入 院」 酒井 可福 胆嚢に岩をとなりてサザレ石 北九州 点滴の刻む時間がもどかしい 甲高いナースの声で朝が来る 四つ足の点滴連れてご挨拶
「思いやり」 岡村 廣司 初耳の様に聴いてる思いやり 焼 津 どこの子か知らぬが注意してあげる 穏やかな心で愚痴を聞いてやる 愛のむちきっと生涯役に立つ
「チルドレン」 増田 久子 先生に批判する子をほめる親 焼 津 ケータイがポケットで鳴ってた小五 遊ぶ子を見たことがないすべり台 イベントの風船欲しくない子供
「 柿 」 芹沢 穂々美 柿の実が恋だ愛だと赤くなる 沼 津 熟柿に隠しきれない一大事 自己主張して渋柿の内緒事 干し柿の中味ずしんと肝を入れ
「老 境」 中矢 長仁 歳の数重ねて妻は強くなる 愛 媛 麗しく才たけて今老いたけて もめ事はボケの振りする年の功 楽隠居させて呉れない孫が来る
「自 由 吟」 鹿野 太郎 授業中ゆめばかり見てこの通り 仙 台 小商い確かに売っていた希望 火遊びを監視している腹の虫 駄菓子屋で暇を潰して生き返る
「 駅 」 成島 静枝 快速が降りたい駅を通過する 千 葉 SUIKAでピッ顔パスの頃懐しむ エスカレーター息切れ予防膝の保護 うろうろと出口を探すコンコース
「足 元」 加茂 和枝 弱点で呼ばれています長いこと 岩 沼 天高く自分の道は迷路です 立ち止まる勇気が持てた丸い背な 足元のざわつききっと喜びに
「空 気」 薗田 獏沓 合併の議場の空気真ッ二つ 川根本町 医者よりも山の空気で病癒え 再審に異様な空気弁護団 感謝して空気を吸ったことがない
「 愛 」 川口 のぶ子 いじめっ児「そうねあったわ」思い出ね 藤 枝 人生はいじめを捨てて良き仲間 目に見えぬ処に愛は育まれ 寄り添った年月ほどに愛を積み
「自 由 吟」 ふくだ 万年 百まではよろけないよう穿くズボン 大 阪 ビリだって孫は我が家のヒーローさ ひと周り遅れて走る孫が好き まだ早い洗濯してから衣替え
「自 由 吟」 真田 義子 何もない一日でしたポップコーン 仙 台 何があっても夜が明けてくるこの平和 まっすぐに立っているのは父の木だ 一本杉で今も待ってる母がいる
「枯 落 葉」 寺田 柳京 秋刀魚焼く煙は小路の藪へ向け 静 岡 降るならばいっそ地球の丸洗い 団塊の奇麗な羽化へ風光る 老兵のコーラスへ舞う枯落葉
「過 渡 期」 川口 亘 自転車のサドルを下げて足に変え 藤 枝 抜け穴を知って自分を元気づけ 気心を知られ世辞でも云う気なり 情けない捨てる気も有る風よ吹け
「ファッション」 鈴木 まつ子 居るだけで引く手数多なトレンディー 島 田 可憐さで大正ロマン見直され 競い合うモデル彩る国際化 秋晴れやファッショナブルで若返り
「自 由 吟」 内山 敏子 間違へペロリと出した長い舌 浜 松 冷蔵庫も空っぽ明日は年金日 わら草履布に変わってアンコール ギャンブルへ無限に伸びる欲の皮
「画 像」 畔柳 晴康 似顔絵はびっくりする程若い顔 浜 松 写真より可愛い笑顔照れている 自画像は強く優しい顔にする 煽てるなその画は五年前のだよ
「ミッキーマウス」 大塚 徳子 新しく一歩踏み出す日の別れ 仙 台 もう一つ確かなものに農作業 偽善者がもっともらしいことを言い 賀状からミッキーマウスの声がする
「 秋 」 山田 ぎん 手を掛けず菊がつぼみを持っている 静 岡 古里のみかんが届く幸を受け 山紅葉秋深みゆく肌寒さ さつまいもつる毎抜いて児がはしゃぎ
「脳 老 化」 山田 フサ子 脳老化等圧線が込んでいる 袋 井 四季を知る双葉あしたへ背伸びする 夢の間秋の夕陽が早すぎて お賽銭に一時の安らぎをもらう
「希 望」 中安 びん郎 長雨も今まで止まぬことは無い 静 岡 全没も努力をすれば止められる 戦争のあとは平和が訪れる 老化しても名句を出せば名は残る
「カゼをひき・・・」 中田 尚 こらあかん三十九度にのぼりつめ 浜 松 点滴が体温計を無視してる ああうまいいつもはまずい水なのに 生きている三食無事に食べている
「雑 詠」 堀井 草園 順風に吹かれ爽やか赤い羽根 静 岡 生煮えのサンバが憎いシンドローム 真っ先に齢の差比べ訃報欄 チャッカリが隣の席で待ちぼうけ
「雑 詠」 林 二三子 身の丈に合ったところに予防線 芝 川 節制しメタボ知らずのスリム体 昨秋のパンツが入りひとまずホッ プチ旅行主婦の不満をやわらげる
「落 ち 葉」 提坂 まさえ 忘れても困りはしない過去ばかり 静 岡 ネット漬け指先にある好奇心 顔ぶれは揃った知恵はいま一つ 風の先選んでみたい落ち葉たち
「自 由 吟」 海野 満 つくり顔企みすぐに見透かされ 静 岡 人知れずたまには弱音吐いてみる 普通だよ普通がつらい人生は わかってる眼差しという君の口
「鮎三昧・・・其の十四」 永田 のぶ男 炎天に苔の色よく水飛沫 静 岡 口紅をつけた囮をそっと入れ 立てた竿ワン・ツー・スリーどんと来る 全身が天にも昇る血が踊る
「喉 仏」 長澤 アキラ 恥さらし後悔を積み生きている 静 岡 見せられぬ背を子供が見てしまう 寂しくは無いがとポツリ喉仏 もう少し良い目みたくて背伸びする
「羅 針 盤」 増田 信一 行き先は海に出てから風に聞く 静 岡 羅針盤私の未来こっそりと 頭右 体は左 足後ろ 真っ直ぐに歩いていても落とし穴
「雑 詠」 川村 洋未 今だって言えない事がビンの中 静 岡 行っちゃった時間通りに終電が ハイヒール重さに耐えてなお細く 土産物不要な化粧ほどこされ
「 答 」 石田 竹水 ハードルはそのままにして今日も飛ぶ 静 岡 ハイと言う返事を聞いて胸がすく 外野席言い放題が宙に舞う 答えんでいいよ旅の流れ星
「青い果実」 池田 茂瑠 こだわりも一緒に髪を染めました 静 岡 純情が過ぎる果実で青いまま この柵がなければ堕落する私 ゆっくりと眠る右脳が軋むから
「 石 」 多田 幹江 捨てたはずの処に石の影がない 静 岡 ビギナーズラックそこから堕ちた石 おサルさん反省なんかしていない 万感を晒して白い滝落ちる
「秋 の 月」 中野 三根子 人生をみつめてしまう秋の月 静 岡 目をとじて月夜の中に母と居る さみしくてそっと見上げた細い月 これだけは言っておきたい今日の月
「万 歩 計」 佐野 由利子 年金をもらって秋の小旅行 静 岡 屁理屈がやたらと多いコップ酒 転た寝をしながらテレビ聞いている 回り道して吠えられる万歩計
「十 二 月」 川路 泰山 暮れの街浮世の垢を鷲掴み 島 田 一人酌この一年を呑みおさめ 挨拶も杓子定規の大晦日 腰抜けた蕎麦で今年の除夜を聴く
「自 由 吟」 高瀬 輝男 今日の事忘れろという夕陽かな 焼 津 聞き飽きた台詞だ首を賭けるとか 日常的事象で妻と囲む膳 分け合えぬ貧富いくさの火種かも
「このごろ」 望月 弘 特措法地球の止まるほど騒ぎ 静 岡 偽装偽装 性善説の崩れる日 病院の予約がほしい救急車 目が覚めるさあノリシロと格闘だ
「優しい夜の過ごし方」 加藤 鰹 シャガールが見守る二人だけの刻 静 岡 カンパリにソーダ貴女と過ごす夜 スコッチと薪ストーブとヴェルレーヌ ビバライフ君と奏でるシンフォニー
顧 問 吟 「往 く 年」 柳沢 平四朗 残り火を煽る加齢の坂を往く 静 岡 良心という後悔が背に抜ける すり減った言葉繕う歳の夜 猫も噛む窮鼠で道をこじあける
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[98] (2007/12/26(Tue) 08:17:12) |
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