自 由 吟 虎 竹 抄
「雑 詠」 滝田 玲子 学校を休み受験の塾通い 浜 松 腰痛を小走りさせる発車ベル 厚化粧落とすと皺が浮きあがる 人生の波のり越えた皺の数
「春だから」 新貝 里々子 三月のサ行さくらの糸でんわ 袋 井 火を浴びて抱き合う恋の二月堂 フィクションの多いお話春だから 本当を言えば荷崩れ大崩れ
「 春 」 藪ア 千恵子 春うらら窓開けて待つ恋の使者 焼 津 春風に自閉の殻を脱がされる 啓蟄が春の音符に踊り出す 病んでいる地球に優し春の風
「とり残された昭和」 川口 のぶ子 駆けぬけた戦中戦後母強し 藤 枝 青春を昭和と共にかき消され ひばり節共に戦後を駆けぬけた 今日と云う時は二度とはかえらない
「私の昭和」 林 二三子 五円持ち境内で待つ紙芝居 芝 川 映画看板見れば昭和にひき込まれ 映画館青春だったサユリスト 一台のテレビ家族で囲んでた
「雀百まで」 中谷 長仁 真っ先に目を向けているのは谷間 愛 媛 豊胸で重そうだなあ女子リレー 睨まれるおしり触っただけなのに このたずな緩められない飛んで行く
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 給付金で名を挙げる人下げる人 浜 松 コンビニはブランド財布の見せどころ 隣り家の梅とも知らず褒めてくれ 節くれてダイヤに向かぬ妻の指
「ha-ru」 栃尾 奏子 旅立ちの車窓見送る春霞 大 阪 師の恩に気付くのはまだ先の事 鏡よ鏡わたしは魔女になれますか まだ少女春よ春よと憧れる
「雑 詠」 石井 昇 後ろ髪ひかれたままの橋渡る 蓮 田 握り潰された卵は孵れない 何もかも受けて立ちます回遊魚 万華鏡グローバル化で狂い咲き
「自 由 吟」 西垣 博司 ガレージに若葉ともみじ同居する 静 岡 明日にでも解雇通知が来る不安 天下り族に着せたい作業服 生活の維持に自動車追いやられ
「まつりごと」 松橋 帆波 ニッポンの二択が好きな羊達 東 京 改革の約款無いのかも知れず 老人に群がる正義 偽善など 郵政の次はJAだよきっと
「自 由 吟」 ふくだ 万年 パンドラの箱を開けたがこの世情 大 阪 死に場所を探せず死期を遠くする 晴れ舞台育てた母の皺に笑み デパートで駅弁たべて旅気分
「国民の子供」 毛利 由美 成人式気ぐるみを着た子供たち つくば なま足にミニスカ 外はシャーベット スカイツリー見届けてください未来 妊婦さんその子は国民の子供
「群青の空」 真田 義子 そうは言っても許してしまう好きだから 仙 台 六十路坂宇宙に想い吐いてみる 耐えた背に優しく風が吹いてくる 群青の空を味方につける旅
「雑 詠」 山本 野次馬 海峡に沈み呼吸を整える 函 南 母の手はいつも力みのない波長 切り札はとっくに時効過ぎていた 引き出しに仕舞い切れないとげの数
「非 婚」 戸田 美佐緒 係累が重たくなってくる非婚 さいたま 人込みに紛れてしまう縁結び 守護神に集う結婚適齢期 婚活と呼び名を変えている見合い
「自 由 吟」 寺田 柳京 その道の達人というろくでなし 静 岡 血眼に集める札の薄っぺら 老妻あわれ見えない方の目を見張る 有難く今朝の命の水を飲む
「民 間 人」 石田 竹水 コーヒーの加糖は恋に甘くない 静 岡 ジャンケンの鋏で欲の絆切る 肩書きは民間人で天下り ちぐはぐな答えの味に輪が和む
「自 由 吟」 萩原 まさ子 オスカーが日本魂呼び覚まし 静 岡 支持率があんなにも差両首脳 悪夢みせ何食わぬ顔ガソリン屋 後悔も味わいながらケセラセラ
「時 事 吟」 川村 美智代 変えることオバマに期待世界の目 静 岡 日本国オスカー像が眩し過ぎ 漢検協「変」の字選び偏頭痛 悪評を背に給付金歩き出す
「自 由 吟」 提坂 まさえ 字面だけ変えて障がい軽くなり 静 岡 酩酊も低迷もありおらが国 強すぎる言葉ラップを巻いておく 心臓に妻の鼓動も入れてある
「『おくりびと』を観て」井口 薫 生きるとは死とはと虎落笛やまず 袋 井 納棺師の所作お手前の優美さで 土壇場で男泣くしか無いのかも 人生のいい位置で観た おくりびと
「おくりびと」 成島 静枝 行列がジャスコの二階映画館 千 葉 観客が賞に納得「おくりびと」 オスカーへお目が高いとメッセージ 生ききってパッピー死出の旅切符
「時事川柳」 石上 俊枝 スーツ合う二世議員は苦を知らず 静 岡 言葉尻揚げ足とって国迷子 閑古鳥シャッター通り巣を作る かんぽの宿半端な売りに怒りの湯
「自 由 吟」 鹿野 太郎 失った十年に子ら優良児 仙 台 蛇口から嗚呼ワクチンが溢れ出る 家計図に手を加えたい時もある 挫折した手足が妙に太くなる
「近 々」 川口 亘 時々は息抜かないと貯るツケ 藤 枝 貧乏は馴れ染めからの間柄 来てますね返事の出ない独り言 書きあげて脱字違いに気が滅入る
「迷 い」 安田 豊子 生きる知恵辞書から貰う日日重ね 浜 松 決断へますます深くなる迷い 杓子定規で引いた線なら気も軽い 悔いのないドラマにしたく見栄を張る
「 父 」 酒井 可福 幸せな家庭は父の底力 北九州 おもちゃ屋に縁遠い父孫を抱き 裏も知る父は寡黙に酒を飲む お化けにも鬼にもなって機嫌とる
「早 春 賦」 増田 久子 合格に中学も沸き塾も沸き 焼 津 犬ふぐり踏んではしゃいだベビー靴 てんぷらへ丁重に掘る蕗のとう 四人寄り私のほかは花粉症
「春の訪れ」 薗田 獏沓 春なのに細めんが好き貧乏性 川根本町 菜の花の脈うつ中に実習生 心地よくそよ風浴びる春帽子 鈍行が桜吹雪の中をゆく
「手 作 り」 鈴木 千代見 火を止めて薬味を採りに行く強味 浜 松 手作りのマフラー春が来てしまい ラップして母から届く五目豆 自慢するパパの作ったお弁当
「手職人の美と楽しさ」金田 政次郎 デザインの素朴に用の面白さ 静 岡 手仕事のコレクションです竹とんぼ 陶磁器に職人名の価値を観る 自由の目権威に負けぬ美の手職
「桃の節句」 芹沢 穂々美 満月に引けをとらない紅白梅 沼 津 白酒で酔ったふりする右大臣 段飾り見栄たっぷりのすまし顔 吊し雛脇役でいる初節句
「 道 」 鈴木 まつ子 カタツムリ垣根伝いの散歩道 島 田 人の道外れた男女まだ懲りず 言い訳がのらりくらりと道にそれ まだ夢は尽きない趣味の道しるべ
「甘 い」 畔柳 晴康 失敗だまだ考えが甘かった 浜 松 お土産の饅頭甘く二度に分け 孫だけは甘い茶菓子を持つ両手 甘い水ひと滴だが溺れゆく
「春が来た」 小林 ふく子 春はまだ川の向こうで咲いている 袋 井 春がすみ鬼がうたた寝してるよな 思い出に少し泣きたいおぼろ月 桜咲き草書のような顔で散る
「賞味期限」 岡村 廣司 我が家では賞味期限を鼻で決め 焼 津 期限切れ俺が喰うのを待つ家族 美容室賞味期限を延ばすとこ 人間の賞味期限を誰決める
「徒然なるままに」 藤田 武人 一口で故郷香る贈り物 大 阪 初恋はまるで小粒なサクランボ 弁当箱主役は俺と叫ぶ梅 定年後父パソコンとにらめっこ
「風 邪」 恩田 たかし 寝込んでる私の上に子がダイブ 静 岡 熱だした私の横で添い寝する 寝込んだよ家族全員風邪ひいた 風邪治し移した風邪の後始末
「交通安全」 濱山 哲也 平成がスピード違反しています 青 森 手を挙げて間違ってると言いましょう ゆっくりと歩けば見方増えてくる 恋という出会い頭の事故もある
「 器 」 大塚 徳子 過去は過去決意新たな花咲かす 仙 台 ナックルを投げる女のど根性 茶匙一杯の余韻で今を生きている のんびりと大きな器焼いている
「春だもん」 竹内 さき やっと春私は私咲いて人 浜 松 咲いて咲く窓辺のバラよ恋だもん 対あなたコーヒー熱く春の駅 幻か味噌汁匂うワンルーム
「 風 」 瀧 進 順風に乗って大凧糸が切れ 島 田 うわさ話 路地を曲がってつむじ風 変革が浮世の風に向きを変え 逆風を受けてドロップショットする
「想 い 出」 鈴木 恵美子 想い出の一行しかと抱きしめる 静 岡 想い出はたんぽぽのよう空に舞う さみだれに花一輪が語り出す 愛の章こよなきまでに晴れわたり
「自 由 吟」 内山 敏子 新緑に昔を偲ぶ車椅子 浜 松 リハビリに憩う瞳に若葉萌え 抜歯後の涙を癒す初ツバメ 歯科治療に食の楽しみ奪われる
「春の気配」 加茂 和枝 始めての道を見つける目は踊り 岩 沼 腕まくり裾をたぐって深みなど 手を握る幼子春を大股に もう一度良く見る春の気配など
「雑 詠」 飯塚 すみと 十階のクレーンで二階の家造る 静 岡 衝動買いあの人同じ袋さげ 少しだけ恥をかきかき道そうじ 年の差をつくづく感じる子の食事
「静岡弁川柳」 中安 びん郎 固資税が上がり畑を持てにゃあよ 静 岡 生きてさえいれば留守番ぐりゃあ出来 おまっちゃーまだ若きゃあだでヘチこくな 食いっぷりえーけんそけ〜ら汚すなよ
「W B C」 尾崎 好子 いい響き侍ジャパン原の陣 藤 枝 衿正し正座して見るWBC イチローの凄さ見事さ堪らない 世界一孫らとしたいハイタッチ
「雑 詠」 多田 幹江 都わすれふと君の名を想い出す 静 岡 木に登るまでは大事なおサルさん ヒト科こぞってネットの餌つつく この先をどこへ流れる川の鯉
「固めた襟」 池田 茂瑠 私の噂を乗せたゆがむ風 静 岡 泡ばかり預る胸のポケットに 貞女への挑み固めた襟に持つ ブラジャーのサイズも母を越えていた
「自 由 吟」 川村 洋未 帰り際にっこり笑う運の良さ 静 岡 パーティの平服という落し穴 通販の健康器具で家メタボ 特効薬忘れる事さすぐできる
「何んとなく」 永田 のぶ男 今日もまた画鋲二つに支えられ 静 岡 酢味噌あえ愛は精算出来ぬまま 雨降れば帰ってしまう風の神 顔のない人が私を呼んでいる
「自 由 吟」 中田 尚 マヨネーズしぼってみたら春の色 浜 松 人生は死ぬ時もまた金がいる 口ぐるま上手に春をのせてくる 本当にシワがきえたら信じよう
「やさしさ」 中野 三根子 雪の夜笑った父の声がする 静 岡 半天が母の手作り暖かさ よろけたらあなたがそっと手をつなぐ 振り向けばいつも笑った母が居た
「わが秩父」 山口 兄六 駅までの道は追い風空っ風 足 利 虹ひとつもう結論が出せそうだ 幸せな老後の話 妻と猫 危険だと思うこの席譲ります
「自 由 吟」 真 理 猫 子 一階の妻と遠距離恋愛だ 岡 崎 雪は降る おでんの具にも塩胡椒 在りし日の母が歌っている土鍋 笑いたくなった 河童に会いに行く
「しっかり生きる」 小野 修市 気が多くきれいな花を追いかける 静 岡 核心をつかれて胸がおどってる 出会い系振り込め生きる隙つかれ 総選挙したら戻れる椅子がない
「拝復、いち様」 今井 卓まる 痛いことにっこり笑い妻は言う 浜 松 肩揉んでやるよと淡い下心 禁煙が太る理由と妻なだめ 愚痴る僕 赤ベコのよう笑う君
「雑 詠」 長澤 アキラ 不景気に絵馬の背広がよく笑う 静 岡 サクラ咲くサイフが軽くなって行く 石塊を拾うと投げてみたくなる 後ろから石を投げてはいけません
「ちょっとだけ淋しい日 Part2」 谷口 さとみ ただいまを機嫌伺うように言う 伊 豆 あかぎれの時に手相をほめられた 家が建つお米の家が減ってゆく 誕生日だけどやっぱり生たまご
「 風 」 増田 信一 我が家では不景気の風慣れてます 焼 津 千の風次の話題は納棺師 吹きまくるリストラの風かいくぐり 春の風ひらりと降りた梅桜
「絵 手 紙」 佐野 由利子 絵手紙の桜吹雪に誘われる 静 岡 娘より嫁が頼りと八十路母 試着室値札見てから試着する 輪の中に空気読めない人がいる
「無為徒食」 高瀬 輝男 フクロウは百年先も視野に入れ 焼 津 奔放な雲に国境無視される 我ながら天に恥じてる無為徒食 完璧な土手が流れの自由消す
「くるま社会」 望月 弘 軽い舌乗せてリムジン突っ走る 静 岡 助手席のナビは方向音痴だな 言の葉へ放水をする消防車 天寿だなゆっくり走る霊柩車
「琥珀の刻」 加藤 鰹 艶っぽい話ゆらりとブランデー 静 岡 客席で観る心中の美しさ 君を恋う僕は琥珀の中の蟻 冗談がキツイよお別れだなんて
「 錆 」 柳沢 平四朗 妥協した喉の小骨に疼かれる 静 岡 臆病な釘で錆つく脳軟化 手枷足枷渡る余命へ屯する 子が三人明日の杖は探すまい
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