静岡川柳たかねバックナンバー
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十二月十一日  十二月句会
   (八幡・たかね・むなぎ合同句会)
於 有東公民館


席 題 「助 け 合 い」   望月 弘 選
大掃除家族総出の大晦日      二三子
歳末に百円握る助け合い      鐘 雄
雑談が心の支え日向ぼこ      泰 史
足と手になってあなたと暮らす仲  玲 子
迷い子をなめて労わる野良の猫   まさし
匿名で毎年寄附はかかさない    周 二
被災地へ国境のない義援金     輝 男
おめでとういぬどし夫婦吠える春  は る
助け合う友も今では恋敵      重 雄
アルミ玉きらり輝く年の暮れ     鰹
ゲートルでそろそろ出るぞ社会鍋  亜季浩
順番に介護の重荷背負わされ    由利子
醤油味噌貸し借りあった遠い過去  泰 史
手を貸せば笑顔が返る白い杖    時 枝
歳末にNHKがしゃしゃりでる   安 心
手を貸さぬ娘の愛を知る涙     恵美子
お笑いも神妙になる献血車     才 男
三世帯婆を労るもみじの手     時 枝
恐妻家老化で今は助け合い     びん郎
社会悪防ぐ近所の助け合い     泰 山
財産が心に積もるボランティア   鐘 雄
 五 客
共稼ぎ家事分担で旨くゆき     二三子
過疎化する村リストラの子を戻す  竹 水
おとなりへ今日は届ける煮ころがし 梨 絵
被災地でがっちり結ぶ手と手と手   鰹
クリスマスサンタもパパも助け合う 洋 未
 人 位
寒風に身を寄せ合って猿の群れ   まさし
 地 位
天災に一円玉が踊り出す      安 心
 天 位
ユニセフが私を誘う振込み書    亜季浩

宿 題 「屋  根」    遠藤 木犀 選
冴えた月屋根の瓦に照りかえる   三根子
本堂の大屋根威厳重たそう     一 路
よい疲れ屋根ふきかへの庭に立つ  歳 江
屋根裏は鋭気養う秘密基地     時 枝
父母の大きい屋根に感謝する    幸 子
息子には土台はやるが屋根は葺け  幸 子
屋根よりも大きく画いたチューリップ由利子
温暖化地球の屋根が軋みだす    由利子
屋根を越え夢も膨らむシャボン玉  二三子
寄り添って痛み分け合う低い屋根  梨 絵
低い屋根だけど笑いの絶えぬ家   輝 男
下の歯が抜けると屋根に放り投げ  びん郎
安泰で親父の屋根の住み心地    一 路
太陽の恵みを屋根で受けている   二三子
温いから気楽な屋根を巣立たない  昭 洋
茅葺きが世界遺産の貌をする     弘
カラフルな屋根がささえる町おこし 泰 山
屋根裏も住めば都の居そうろう   重 雄
屋根に敷く蒲団に書いた世界地図  亜季浩
屋根裏がパパの書斎の設計図    時 枝
屋根瓦寄進の寺の墓参り      歳 江
広島のドームが嘆く人のエゴ    安 心
寒い夜も気丈な妻は高鼾      びん郎
白旗は出さぬ素足の寒稽古     才 男
セーターの編み目を通る強い風   時 枝
三面の記事が寒さを加速させ    泰 山
おやじギャグ北風よりも寒くなる  三根子
お財布に寒くないよとささやかれ  洋 未
卵酒寒気に効いてきた夜明け    竹 水
蒲団からやっと抜け出し寒稽古   びん郎
 五 客
職安の道木枯らしが容赦なく    輝 男
始発待つ風が凍み入る旅の駅    由利子
名湯も雪に抱かれた露天風呂    一 路
初めての親に背いた日の寒さ    まさし
リストラの寒さ家族を凍えさせ   まさし
 人 位
偽造され極寒の暮れマイホーム   亜季浩
 地 位
耐え抜いた寒さへ春の花が咲く   竹 水
 天 位
寒風の中左遷地の土を踏む     由利子

宿 題 「時  代」   石田 竹水 選
悲喜劇を時代が流す交差点     玲 子
夢叶い越され越してく新時代    木 犀
こだわりが有って時代と割り切れず 博 司
母の鞭尻が知ってる鯨尺      安 心
この辺で印籠が出る時代劇     亜季浩
人間の月で餅つく時代来る     重 雄
靖国が憧れだった学童期      泰 史
お先にと新婚夫婦長い風呂     一 路
 五 客
親離れ子離れ時を刻む屋根     竹 水
満天の星に抱かれて眠る屋根    恵美子
ご先祖の屋根が重たい三代目    泰 山
朝日照る屋根の舞台で獅子が舞い  玲 子
茅葺きの屋根へ栄誉の文化財    輝 男
 人 位
建て売りの屋根を揺るがす設計図  まさし
地 位
幸せをいっぱい創る屋根がある   鐘 雄
 天 位
温かなふれあい築く屋根の下    鐘 雄
 選者吟
世襲の家甍で睨む鬼瓦       木 犀


宿 題 「寒  い」   林 二三子 選
皮下脂肪しっかりためて寒くない  洋 未
癌結果待つ身を撫でる寒い風    昭 洋
侘しさに寒さ感じるネオン街    木 犀
冬の陽を拾い集めて布団干す    歳 江
新婚の亀裂が入る人の影      鐘 雄
木枯らしに落葉とびかう分譲地   は る
母さんがいないと部屋が寒くなる   弘
社会悪寒いニュースが多すぎる   泰 山
寒気団女は派手に武装する     梨 絵
失恋の夜に氷雨とセレナーデ    時 枝
嘘一つ胸にしまった日の震え    玲 子
北風に落葉と踊る散歩道      志づ江
ふところもこころも脳もおお寒い   弘
もうひとりの私を探す冬の天    恵美子
カラオケで時代が判る曲選び    周 二
時代だね犬も服着て散歩する    由利子
ほろにがい歳月きざむ日記帳    は る
今時は仕方無いかと子に合わせ   昭 洋
身の程を知らぬ時代の子の修羅場  歳 江
どん底の昭和が生死分けた頃    のぶ男
IT化凄い時代がやって来た    周 二
いつの世も友の絆に光るもの    鐘 雄
満腹で休耕田が花ざかり      しげる
視聴率バブルはじけたジャイアンツ 泰 史
早口に余生の暮らゆすぶられ    志づ江
老兵の骨にしみ込むラッパの音   重 雄
ITの時代に挑む駄馬の足     まさし
善人の顔で時代を切り抜ける    由利子
パソコンの時代読み書き変える指  木 犀
 五 客
現ナマは持たずカードでショッピング輝 男
昭和もう歴史の顔になっている    弘
日々不安嫌な時代だ登下校     亜季浩
戦争の時代へ鍵をかけ直す      弘
年輪の中に幾多の時を秘め     泰 山
 人 位
目に舌に時代のずれがやって来る  歳 江
地 位
好きだったと今は話せる長い過去  昭 洋
 天 位
いつの世も楽しい人がよくもてる  安 心
 選者吟
豊かさの傷を心に負う時世     竹 水


定例句会 | Link |
(2005/12/11(Sat) 20:06:28)

体調が戻る途端に欲までも     澄 子
オレオレに弁護士役もついてくる  獏 沓
年齢は不詳のままで愛おわる    春 江
言い訳をあとに残して縄のれん   勝太郎
愚痴一つ気軽に今日をととのえる  虎竹堂
屑かごへ申年さらば恥さらば    よし子
昭和史の祭りを仕舞う火葬の火   昌 利
傷一つ時効を過ぎてから痛む    輝 男
湯豆腐をつつくさみしいもの同志   鰹
おごる日も病む日もバイブルは無口 奏 子
心まで痩せてしまったダイエット  獏 沓
春が来る度に膨らむ泣き黒子    我 流
妻の描く絵にへそくりを隠してる  亀 重
寝正月けんか相手をさがしてる   三根子
空っぽの脳を輪切りにして笑う   昌 利
胃袋の中で暴れている俺だ     泰 山
口紅を少し落して偽証する     獏 沓
運命線ゆっくり変わる風の音    義 子
この春のピンポイントに君を置く   鰹
休肝日今更無駄と思うけど     廣 司
この服を着たらあなたに逢えそうで 英 子
紅椿ストンと落ちていさぎよし   梨 絵
税務署のパイプの椅子の春寒し   幹 江
痛い程わかる黙っているつらさ   澄 子
お母ちゃん時にオニユリたまにバラ 一 道
負け犬の二人が光るクラス会    久 子
私と同じ愛撫をするテレビ     トラ夫
投げたいと思う小石が手に溜る   ふみ子
愚痴も無く本音も無くて逝った母  勝太郎
風に逆らう私のような花びら     葉
一瞬の迷い相手に悟られる     由利子
久し振りまだ罪積んでおりますか  茂 瑠
ぼろっと鱗おちて明日へ星が降る  泰 山
古時計人を信じる音ばかり     鐘 雄
立派だねだからあなたは損ばかり  柳 京
海鳴りをBGMに一人酒      叶志秋
とっつきの悪い人ですまん丸い   大 鯉
ぼけたくはなくて鉛筆とがらせる  ふみ子
釜ゆでにされてつぶれてあんこです 洋 未
傘くるり幸と不幸が入れ替わる   繭 子
遮断機の前で借金申し込む     トラ夫
許可証はないが長生きするつもり  廣 司
窮すればやはり踏み絵を踏むだろう 晃 授
君に会う一番ましな匿名で     兄 六
美人ですが明日の計算できません  鐘 雄
かあさんの風向き変わるお静かに  敏 子
勘違いだらけの夏が暮れてゆく   智 美
それぞれの小指の痛み風化する   痩 馬
切り替えが下手で脱線ばかりする  アキラ
ロボットに腕の呼吸を盗まれる   平四朗
この先は闇とわかっている船出   奏 子
思案するたびに二本になる道よ   ふみ子
今どきのなどと若者斬りたがる   よし子
松茸は嫌いよたぶん毒キノコ    久 子
棒読みの眼は民衆を見ていない   柳 京
ほどほどの趣味に追われてまだ呆けず登 志
生渇きだからタオルが絞れない    弘
海老天がからりと揚がる雨上がる  徳 子
マスクして恋もあなたも遠去ける  里々子
待つ事に慣れてしまった冬木立   由利子
あの人が行く二次会はパスします  洋 未
ゆっくりと解凍しますおらが春    弘
ふるさとの小川で拾う忘れ物    昌 利
人を差す指は合掌から外す     ふみ子
本当に奥さんですかとも聞けず   廣 司
日本晴 切符二枚を手の中に      薫
ゆうやけこやけいつか翼になる両手 美弥子
わたくしのパソコン認知症らしい   薫
控え目にしたら病気と間違われ   廣 司
憂き事の多さ水道全開に      政次郎


虎竹抄 | Link |
(2005/12/05(Sun) 20:06:41)

「冬きたる」            高橋  繭子
木枯らしは北から寒い心から        大河原
白い息ため息ついているのです
ポケットのぬくもり感謝したい恋
エイヤ〜ッと寒太郎へと立ち向かう


 「自 由 吟」            井口   薫
コスモスの海で鮮度を取り戻す      袋 井
焼きたてのサンマ話はあとまわし
そっくりで良かったボクとお父ちゃん
スーパーをしばし楽しむ回遊魚


「  嘘  」             戸田 美佐緒
本当のことは言わない占い師      さいたま 
種明かし無しです嘘は崩さない
どの嘘を置いて行こうか三幕目
嘘をつくときだけ話す丁寧語


「雑  詠」             田原  痩馬
裏方ではまはげになる若女将          熱 海
公園でドラマがあったコンドーム
凶暴を押えて今日も家事をする
温度差があるから仲のいい夫婦


 「自 由 吟」             寺脇  龍狂
郵政法花見気分で本会議         浜 松
議員暦前科が一つ加えられ
秋雨へ甲羅も干せぬ池の亀
守っても守らなくても事故に遭い


「自 由 句」            山本  トラ夫
密会の扉の前にある聖書            長 泉
セクハラで遊び上手が減ってきた
結婚も離婚も同じテレビ局
ロボットのスイッチはまだこちら側


「てのひら」            横山   昌利
魂をゆさぶる恋をまだ知らぬ          相 馬
すれすれの策で脱輪回避する
ひとり居の秋はわびしい風ばかり
てのひらを見せて和解の席に着く


「あの日をさがして」        新貝 里々子
あの日をさがす風の匂いと陽の匂い    袋 井
権之助坂恋のかけらも落ちていず
雅叙園のトイレおのぼりさんになる
化粧直し無駄な抵抗だと悟る


 「失  笑」             増田  久子
重ね着をすればそのままウォームビズ  焼 津
百均の店にも日本製がある
バーゲンを積んで自転車川に落ち
共学のビリは大抵男の子


 「自 由 吟」            中田   尚
甘栗に夢中になって乗り過ごす       浜 松
温暖化地球も熊も不機嫌で
美奈子死す白血球に問いかえす
絵ハガキが消えてメールが忙しい


 「  傷  」             鈴木  澄子
ふと触れた傷があれこれしゃべりだす      浜 松
大小の傷にあおられ人間味
お互いの傷が互いを思いやる
胸の奥痛み続ける傷一つ


「祖母の誕生日に」         塚本 小弟子
ばあちゃんの作る料理は世界一     (小6) 長 泉
これからは無理をしないでマイペース
おばあちゃん得意の趣味を楽しんで
いつの日かひ孫の子守してほしい


 「若づくり」             真理  猫子
年齢は干支でごまかすキャミソール    岡 崎
Gパンは破って脚を詰め込むの
付け爪にお値打ち品の星みっつ
ピチピチのシャツがストレス抱え込む


 「母 の 声」            真田  義子
一番の味方は母の笑顔です          仙 台
故郷はいつでも母の声がする
鉛筆がすらすら走る午前二時
あの日からずっと走っている私


 「彼女の場合@」           山口  兄六
おばさんでごめんね女性専用車        足 利
全部欲しいけど友達でもいいよ
切なさの形に沈みゆくベッド
さあ行こう信号は青目は真っ赤


「雑  詠」            江川 ふみ子
たとえばの話に伏せてある本音         函 南
老ひとりことりともなく秋夜長
いくたびも転んで己れ見え始め
助走路の距離もう少しほしい坂


 「霜  柱」            柏屋 叶志秋
紙の花きっと疲れているはずだ        山 形
裏方に徹して拍手など知らず
直線が曲がって見える千鳥足
文無しの財布の中に霜柱


 「秋 の 月」            内山  敏子
秋の月誰かに電話したくなる         浜 松
中秋の月から童話降りて来る
中秋の月と一緒にわらべ歌
里の駅満員にする秋祭り


 「雑  詠」            福田 勝太郎
左遷され復帰の夢で飲む地酒         大 阪
秘め事を作り亭主が若返る
変わりたい五キロ落せば医者いらず
死んだ後骨が綺麗と褒められる


「仕掛けに乗る余裕」         鎌田  一尾
切札を持って仕掛けに乗ってやる    山 元
磨かれて石各々に出す光
重宝なカードが首を取りに来る
頷いただけさ納得していない


 「九十二歳が翔ぶ」        金田 政次郎
一会の深さに思慕のある別れ        静 岡
拭き掃除きれいな心で明日へ向く
来る初春へ九十二歳夢があり
あすの線見事に初春へ翔んでやろ


 「眼  鏡」            成島  静枝
諳じた話さえぎる眼鏡拭き          千 葉
おこぼれの優勝セール行くメガネ
いい話眼鏡の蔓でリフレイン
バラ色の眼鏡に愚痴が似合わない


 「雑  詠」            竹内  さき
変えたくて今日の釣り銭募金箱        浜 松
人生を恋して綴るドラマかな
ふり向いて微笑の紅よ夏の日よ
妥協して白紙に戻る小さいペン


「言 の 葉」            加茂  和枝
届かない言葉の裏の夕間暮れ        岩 沼
ぽつぽつの言葉の先の思いやり
なんだろう言葉の渦に落ちていく
秋だったたっぷり言葉おいていく


まだ満ちる五感しっかり息を吸う     山田 フサ子
生かされて空の青さに酔っている    袋 井
平凡の幸せ愛の湯がたぎる
もう少し二人でともに頑張ろう
こだわりを捨てて無心の絵にとける


 「  酒  」            山本 野次馬
コップ酒おでんと涙切なさよ        函 南
寂しさをひとつ隠して屋台酒
チャンチキおけさ唄って虚勢張ってみる
生き抜けば楽しい酒も数知れず


 「リンゴ園」            川口 のぶ子
リンゴ園暫しの老いを忘れさせ        藤 枝
青空に赤いリンゴを置いて見る
色どりを添えたリンゴが卓飾る
泣く児でもカメラ見せればポーズとる

「器  量」            安田  豊子
マッサージしても器量は変わらない    浜 松
職場の花あれよあれよと器量負け
浮世絵は厚い化粧で造られる
妖艶にコロリ男が読めてくる

 「雑  魚」          岡村  廣司
自尊心まだ微か有り定年後           焼 津
老いたから細工をしない顔で居る
騒ぐ血が有る内ぼけは来やしない
雑魚だって見栄も張ります夢もある


 「未  来」            馬渕 よし子
父母を看て我が身重ねている未来       浜 松
九条が子等の未来を握ってる
バラ色の未来信じている愚か
宇宙への旅立ち星になる未来


 「点  火」            高橋  春江
パーツだけ換えても若さ戻らない       袋 井
病あと人間を求めてちと疲れ
厨房へ自由になった男達
未だ燃える火種点火をしてみたい


「雑  詠」            竹内  登志
誘われた招待券に愛芽生え        浜 松
カード手に暗号忘れうろたえる
敬老会十人十色の今日の幸
祖母の数珠朝の日課にある平和


 「翔  ぶ」             笹  美弥子
肩の力抜いて気負わぬ鳥になる     仙 台
もたついたこころひとつに躓く日
老父母も子孫もおもう秋夜中
明日光ることばを溜めて小休止


 「雑  詠」            滝田  玲子
少子化であしたが怖い都市砂漠        浜 松
本堂の敷居が高く立ちくらみ
石蹴って今日の運勢ためしてる
マンションでロボット犬が後ずさり


 「事  件」            薗田  獏沓
神聖とされる学校荒れている         川根本町
スクープのペンが事件を誇張する
犯人の様に呼び出す目撃者
人の世の事件で学ぶ強さ得る

「雑  詠」            設楽 亜季浩
やり直す気持ちがあれば大丈夫      静 岡
途中から病気自慢のクラス会
ケータイが鳴らし続ける黒電話
趣味生かしホームを見舞う腹話術


 「生きがい」           鈴木 まつ子
ゆったりとライフスタイル自分なり      島 田
真心にひかれ一肌脱ぐつもり
培った昔の勘を呼び戻す
生きていること最高に愉しませ


 「無  題」            鹿野  太郎
草笛が羽化を促す赤トンボ          仙 台
運動神経が茶道部に入る
冬が来る前に胃袋扱き使う
凍て付いた北の悲しい風物詩


 「  道  」            山田  光男
不運では済まぬ歩道の事故悲劇        静 岡
介護して散歩の道は焦らずに
筋道を通す頑固は親ゆずり
道を説く人と思えぬ欲の顔


「こ の 頃」            川口   亘
つい気合い若気になれず老に馴れ     藤 枝
回転が速すぎるのか足おくれ
昨日見た年寄役を試しみる
歳という重荷を軽くする化粧


 「写  生」            大塚  徳子
のっぺらぼう貧相な山描くなかれ    仙 台
写生するならば腰据え四方山
描いても描いても山また山の山の中
カルチャーショック迫り来るよう山を描く


 「雑  詠」            森島  寿恵
熱気球色取り取りで競い合い         浜 松
張り子の犬千両箱を負う縁起
十三夜世の中乱れ月も泣く
豊作で小鳥喜び落穂食べ


 「寒くなったネ」          堀場  大鯉
詩も忘れバカになってる日向ぼこ       焼 津
少しずつ数が減ってく賀状書く
古株の理屈も多くなって冬
玉子酒のんでも皺は減ってこず


「呼  吸」            升  ますや
吐く息が揃いのれんを子に譲る      気仙沼
小刻みに吸ったり吐いたり受験票
涙腺に盗まれている息づかい
いい夢にタクト振られて寝る呼吸


 「自 由 吟」            御田  俊坊
児も家事も母を頼りに共稼ぎ      高 畠
ヘルパーを頼り任せて世話を受け
無邪気で慌て躓き怪我をする
無邪気で明るく親を助ける子


 「自 由 吟」            山田  ぎん
とうがんが畑に幾つもころがって       静 岡
彼岸花お墓参りを知らせてる
秋知らす彼岸花咲き白も咲き
スズメ集団稲穂を食べて脅し無く


「勇 み 足」            堀井  草園
気の合える町を根城の灯へいそぐ       静 岡
崖っぷち五指で救った名キャッチャー
盗まれた話に刺が味方する
馬鹿受けの隅で逆立ちして受ける

「雑  詠」            西垣  博司
百円で消費は美徳リバイバル         静 岡
親よりもお金手厚くもてなされ
ここだけの話背中の孫も聞き
リフォームで出費生活ガタが来た


「自 由 吟」               柳澤  猛郎
もつれ糸解く母さんの深い胸       袋 井
リタイヤの椅子には名刺などはない
エアロビへ賭けた女の持つ色香
失敗を明日へのバネにする奮起


 「緩  む」 芹沢 穂々美
つんと出た胸の高さの若いころ     沼 津
コンパスで描いた円が緩みだす
タテのものヨコにもしない男伊達
一本のネジが緩んで内緒ごと


 「雑  詠」            川村  洋未
赤ちゃんも涙と笑顔使いわけ         静 岡
がんばりも息を抜かなきゃただの意地
今時の子供とんがる靴をはく
正札のゼロに思わず指を折る


「自 由 吟」            安本  晃授
君が代は日本の国歌で有難い         静 岡
ああそうだ渡る世間は鬼と住む
文化の日流石美人の勢揃い
ねぎらいの言葉ふくらむ凡夫婦


「参   拝」               中安 びん郎
参拝を非難する国褒める国        静 岡
参拝に紋付き着たり服着たり
参拝は適切な時適当に
参拝は私心の発意他意は無し


 「卒  寿」 林  二三子
病癒えいつもの席に母がいる      芝 川
卒寿まだ生きるつもりの策を練る
ワタクシの行く末母を見て悟る
元気かの電話に卒寿今日も無事


 「皮 談 義」            永田 のぶ男
踠いても死んでも皮は残せない        静 岡
病院へ入ると悪くなるムード
名宛なき手紙を持った面皰猿
蛇の皮財布の中で働かず


「自 由 吟」         谷口  智美
タネ無しじゃやっぱ淋しいサクランボ     伊 豆
もう一度ストレートな恋してみたい
「捨て方」の本が書棚にあふれ出る
泣きそうで煙の下へすすすすす


「ピ エ ロ」            中野 三根子
おどけても涙のあともピエロです       静 岡
富士山ものぞいています大道芸
青空とピエロの顔にいやされる
赤い鼻つけてピエロになってみる


「思うまま」           堀場  梨絵
セリフもう忘れて匂う沈丁花       静 岡
行き詰まるときは神さま仏さま
ブランコが風に押されている孤独
自分史にけし粒ほどのメロドラマ


橋いつも越せばこの罪消えるのか    池田  茂瑠
束ね髪キャベツで包む愛がある      静 岡
逢える日の胸底罪の泡が立つ
無理をして出向いた赤い靴の哀
煮詰めたい愛へ足りない身の火種


「美 術 館」             佐野 由利子
回れ右しても抜け道見付からず        静 岡
油切れしないよう行く美術館
首縦に振ってしまってからの鬱
おだやかな笑顔にまたも騙される


「駄目な男と恐いばあさん」       多田  幹江
駄目な男がブルガリア食べている     静 岡
安安と踏み台になるパイプ椅子
触れずおくキレると恐いアスベスト
迷惑な私はきっとアスベスト


 「獺  祭」         川路  泰山
獺祭と決めて六畳の主さ        島 田
時間は霧となって遠のいてゆく
暫くを昔に帰る麦ご飯
さよならがしにくくなった小糠雨


 「自 由 吟」            高瀬  輝男
あまりにも空が静かでファイト消え     焼 津
進化した猿の哲学論に凝り
トイレ出ると勢力圏が変わってた
策一つ極彩色の皿に盛る


「春から秋へ」               望月  鐘雄
夫婦とはこんなものです味噌ワサビ    静 岡
シンプルな女に惚れているわたし
真っ直ぐに生きて拳に光る汗
切り株の芯父がいて母がいて


 「日々好日」         望月   弘
いろいろな大義を聞いてよく眠る    静 岡
米を研ぐことが辞書から落ちている
老衰にほっとしている訃報欄
マニュアルの通りに老いてすみません


 「冬の日の幻想U」         加藤   鰹
冬の僕たちとLEDの青          静 岡
雪が降る 音という音消し去って
バッテリー切れですケイタイも僕も
冬銀河 愛のセリフが見つからぬ


   顧  問  吟 
熟年の暮色へ黒いわだかまり      柳沢 平四朗
年波へ憑かれた自負が浚われる         静 岡
アスベスト闇の悪魔の白い牙
団塊が踊り場で待つニート族
秋そぞろ歳はもしもを抱いて生き

虎竹抄 | Link |
(2005/12/05(Sun) 19:45:38)

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