静岡川柳たかねバックナンバー
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 平成十九年八月十八日(土)
  定例句会  於  アイセル21


▽席 題 「見直す」曽根田しげる・選
赤ペンが入るとしまる新聞紙    尚
家計見直しまずは夫のおこづかい 恭 子
今更と見直してみる妻の癖    ちえみ
見直しの下手な世渡り煮くずれて のぶえ
お宝がないか見直す家の中    ちえみ
悪餓鬼が席を譲って見直され   泰 山
生物学取り組む孫を見直した   梨 絵
ネガの裏改めてみるいい女    のぶ男
妻の顔どう見直しても齢は齢   泰 山
ギブアップしても態度は爽やかだ アキラ
古着でも百年物はとっておく   洋 未
妻家出しみじみ思う有り難さ   由利子
何回も見直した末損をする    二三子
ゆかた着た娘に父が見惚れてる  二三子
自由主義見直したいな子に悩む  輝 男
提言へ万年ヒラが見直され    輝 男
鈍いから何とか今日も生きのびる アキラ
朝帰り茶漬けの旨さ身にしみる  さとみ
見直して逆さに見てもゼロはゼロ さとみ
見直しに本音が走る母のペン   のぶえ
優しさに触れ旦つく見直した   由利子
甘く見た一撃負けるかもしれぬ  アキラ
 五 客
不器用で雑巾さえも見直され   さとみ
国家予算その前にまず領収書    洋 未
ラブレター嘘がないかと見直して  ちえみ
見直しをするのに妻は古すぎる    弘
落し穴ひそんでいます五分前     尚
 人 位
おい総理腹の太さと気の弱さ    のぶ男
地 位
見損なう表だけ見て裏もみず    のぶ男
人 位
見直しをしても偉人のない家系   ちえみ
軸 吟
コンビニで見捨てた郷の水を買う  しげる


宿 題「 生 」表現自由 佐野由利子・選
喉仏邪魔だ邪魔だと生ビール     薫
生き様を伝える父の背が頑固    俊 枝
生欠伸かみ殺し聞く武勇伝      鰹
つんと来る生姜とわさび生がいい  洋 未
少々の苦労は生きるバネとする   恭 子
生ももに指紋付けたの誰ですか   徳 子
風呂の中生きているかと覗かれる  廣 司
生き甲斐はカアチャンと飲む二人酒 泰 史
百通りの生き様がある自己カルテ  豊 子
若しかして生き恥かいているかしら  亘
八起き目の人生恐いものは無い   豊 子
芸名とおぼしき名です新生児    博 司
パソコンにお株取られた生き字引  長 仁
百年を生きて仏の顔となり     敏 子
生き地獄まぶた焼きつく原爆忌   きく子
生ビールごくっと俺の音がする   美佐緒
先生は終戦日から民主主義     びん郎
生返事のらりくらりと時稼ぐ    のぶ子
生ものも私もすごくデリケート   千恵子
親の居ぬ生家余所行き顔をする   静 枝
アイライン落ちた眼力生き返り   香 織
生ビールごくり命の音で飲む    アキラ

鉄拳の味を忘れぬ生き残り     廣 司
だんまりで夕べのけんか生乾き   まさえ
生半可鷹に育てて物笑い      しげる
美しいいきかたでした花吹雪    泰 山
正直に生きた証の平社員       弘
五  客
団塊の世代に生きたコッペパン   政次郎
お年寄り戦後処理して生殺し    のぶ男
スッピンの顔です嘘はつけません   進
生身です溶け出している夏火照り  博 司
生かされて苦い薬を飲んで居る   竹 水
人  位
生来の無口で妻に歯が立たず    可 福
    地  位
どっこいしょ漢方薬で生きのびる   尚
    天  位
生きるため以上に食べた胴回り   哲 也


宿 題「う、で始まる句」 加藤  鰹・選
 う〜んそこ日焼のあとが痒いのよ  野次馬
 うかうかと乗って気が付く泥の舟  玲 子
宇宙からうまい話が下りてくる   玲 子
うれしい時笑顔の母に励まされ   俊 坊
 嘘と嘘掛けて割っても嘘は嘘    信 一
 うれしくて悲しくて飲む酒の妙   豊 子
 魚心見え思いきりヨイショする   まつ子
 嘘吐かぬ爺ちゃん河童見たという  哲 也
 旨すぎる話に耳が動じない     二三子
 うますぎる話にすがるキリギリス  泰 史
 嘘をつく爪はきれいに切っておく  美佐緒
 裏木戸を開けて靴音遠くなる    のぶ男
うたた寝を家族がまたぐ兎小屋   廣 司
植えた木も曲がり始めた反抗期   梨 絵
打つ手なく仏の扉押している    アキラ
美しい心だけでは渡れない     信 一
ウララウララ甲子園が熱くなる   居久美
うまいへた誰もわからぬ抽象画   香 織
うるさいがないと淋しい蝉時雨   由 美
梅干も私も干からびています    千恵子
有頂天心の透き間のぞかれる    敏 子
うっかりとしていて鬼に踏み込まれ 敏 子
上役が替わり昇進近づいた     穂々美
浮世絵の美人はみんな下ぶくれ   洋 未
うますぎる話に乗ったやせ蛙    由利子
ウマが合う顔二次会の口軽い     尚
打ち水へ下駄のリズムが健やかに  泰 山
運のいい番号なのに又外れ     二三子
閏年やはり余計な日があった    哲 也
うまい物食って薬も飲んでいる    弘
産み出して女が強い母になる     尚
恨んでるうちは私の負けみたい   さとみ
うなぎ屋の身内がいいなこの酷暑  洋 未
ウニを買う今日は私の誕生日    居久美
後ろ髪引かれぬように禿げている  可 福
卯の刻の電話にろくなものは無し  廣 司
五  客
美しい嘘で固めたチョコレート   由利子
ウザイけどここまで来れば添い遂げる静 枝
打ち水が涼と出合いを誘い込む   さとみ
うかつにもほめて今夜もハンバーグ 恭 子
うぁ美人ボク酸欠になりそうだ    薫
人  位
売り切れる前に買い込む君の愛   竹 水
地  位
うれしくて胸の扉が閉まらない   アキラ
天  位
美しい日本に生きて苦労する    獏 沓


宿 題  「ついで」 川路  泰山・選
内科外科ついでに歯科で薬漬け    尚
お近くに御出での際はのお付合い  由 美
ついででも淑女の齢は問わぬこと  輝 男
ビジネスの通知に折り目の暑気見舞 政次郎
午後三時ついでに寄られ面食らう  穂々美
出張ととぼけついでの途中下車   まつ子
昆虫が逃げるついでに物忘れ    満 月
寝たきりの友を見舞った散歩道   ぎ ん
パレットに多感な頃の色も溶く   太 郎
離婚よりいっそ殺せば楽になる   茂 瑠
末席はついでの様に握手され    廣 司
ブティックへ寄ったついでに夫のシャツ
                 春 江
図に乗ったついでの舌は飛火する  安 心
メインより高いついでのルイ・ヴィトン
                 恭 子
煽てられものはついでと頼まれる  晴 康
立つ度に用事社長はメタボです   静 枝
世の不思議ついで話のくされ縁   重 雄
成人になったついでに嫁を持つ   安 心
草むしりついでに貰う初なすび   敏 子
ついでさと言ってわざわざ会いにゆくさとみ
骨抜きにされたついでに馬鹿踊り  草 園
お使いについでの声がついて来る  香 織
ポチの飯作るついでの僕のエサ   可 福
守備範囲せばめて用事頼まない   梨 絵
仮説から夢をついでに膨らませ   しのぶ
うま過ぎる縁談何かありそうな   輝 男
暴食後胃薬買って帰宅する     泰 史
デパ地下で涼むついでに試食する  博 司
ごみ出し日通り道ねと渡された   洋 未
神様のついでの運を借りて来る   重 雄
朝顔に水をやります朝帰り     哲 也
ココ・シャネルお釣りでパパのパンツ買う
                  鰹
佳  句
生き辛い本音も混ぜるゴミ袋    アキラ
母さんはついでついでで日が暮れる さとみ
結納の熨斗の代わりに子が二人   信 一
八起き目のついでに掴む藁二本   由利子
鎧脱ぎついでに馬鹿も見せてやる  由利子
自分史へついでの傷を深く彫る   平四朗
つまみ食いついでに女王蜂捕獲   輝 男
宿 題 「 自 由 吟 」 互 選
D顔ぶれで話の筋と色も替え    しげる
D幸せは他人の不幸を覗く時    泰 史
C仏壇で賞味期限が欠伸する     弘
C名が出ないタレント脳に三日棲む  薫
C情けない手の鳴る方へ振る尻尾  敏 子
C枝豆とビールと君と僕の夏     鰹
B疑えばカーブミラーが上を向く  竹 水
B傷つかぬためのネガティブシンキング 
                 由 美
B嫋やかに厚くなってく面の皮   まつ子
B八月忌ヒマワリ北を向きたがり  春 江
B小包のすきまに母の愛をみる   さとみ
Bかと言ってやっぱり人を信じねば 輝 男
B約束を破った小指しかりつけ   アキラ
B忙しい中で幸せかみしめる    二三子
B母の墓跳ねっ返りが泣いて詫び  泰 史
Bヒロシマの夏良心が疼きだす    尚
A考えが古過ぎるから蚊帳の外   由利子
A皺がれたえんぴつがまだ餅を描く 博 司
Aペット駄目だけどトラウマ飼っている
                 哲 也
A一人相撲していただけのライバル視恭 子
A平凡で善人でいるつまらなさ   政次郎
Aよそ行きを脱ぐと世間が褪せてくる平四朗
Aあの頃は良かったなあが多すぎる 安 心
A一気飲みなんと勿体ないことを  廣 司
@うわさ話とどのつまりは逆恨み  穂々美
@写経して急に悟った顔になる   獏 沓
@被災地のにわか票田地がすべる  草 園
@泥水も飲めて議員の箔がつく   茂 瑠
@一隅を照らすランプの灯が温い  義 子
@ぬるま湯を嫌うこの血は母ゆずり 梨 絵
@飴とムチふり子時計の父がいる  美佐緒
@産道の出口調査が元気ない    のぶ男
@加齢だけ先走りしてまだ未完   しのぶ
@つたなさに親は手を出しアシを出す可 福
@この暑さ脳味噌までも干乾びる  千恵子
@財界の御輿に乗っている総理   太 郎
@面の皮厚いお肌のコマーシャル  五 貫
@七転び八起き早起きなのは妻   兄 六
@真っ直ぐに生きて小石に蹴躓く   進
@怖いのは地震雷火事家内     信 一

 


▽参加者(敬称略)川路泰山・曽根田しげる
 堀場梨絵・高瀬輝男・川村洋未・林二三子
 勝又恭子・望月弘・佐野由利子・佐藤香織
 中田尚・藪崎千恵子・永田のぶ男・加藤鰹
 池田茂瑠・瀧進・堀内しのぶ・長澤アキラ
 森下居久美・林二三子・石田竹水・井口薫
 谷口さとみ・金田政次郎・鈴木まつ子・
 望月満月・畔柳晴康・毛利由美・堀井草園
 内山敏子・薗田獏沓・岡村廣司・高橋春江
 大塚徳子・御田俊坊・成島静枝・増田信一
 中矢長仁・酒井可福・滝田玲子・鹿野太郎
 西垣博司・安田豊子・山田ぎん・川島五貫
 伊藤泰史・芹沢穂々美・川口亘・濱山哲也
 真田義子・山口兄六・石上俊枝・市川重雄
 戸田美佐緒・山本野次馬・中安びん郎・中
 田きく子・川口のぶ子・提坂まさえ・那須
 野正明・森田安心・柳沢平四朗

▼三島から勝又恭子さんが初参加して下さった。また掛川の森下居久美さんも久々の参加。ここ数ヶ月珍しいお客様の句会参加が続いて嬉しい限り。投句だけでまだ出席参加したことの無い方もぜひ気軽に遊びに来て下さい。楽しいですよ♪(たぶん)笑


定例句会 | Link |
(2007/10/26(Thu) 08:47:12)

ちゃっきり し ぞ 〜 か 弁 川 柳

しぞ〜か弁入れとくんないお仲間に     井口  薫
強欲は僅かなほったーひし隠し       柳沢平四朗
いばらしょー偶にはえーら里帰り      瀧   進
天気ええいやんばいだよ良くひるよ     山田 ぎん
お世辞たらたらふんとに厭んなっちゃうに〜 高橋 春江
独りもんも慣れてくりゃーゴセッポイだに  高橋 春江
千枚田オヒツの下あかぜーたか       堀井 草園
せんころの残り秋刀魚を猫跨ぎ       堀井 草園
ぞんぜえでぶしょってえずらあんてえは   岡村 廣司
そんなこたあやくてえもねえやだこんだ   岡村 廣司
ぶそってももうひとちきりで好きな酒    鈴木まつ子
何だけえがわしんこんもかんがいてくりょう 鈴木まつ子
おらーあすこちょっくら寄るでじゃまたな  畔柳 晴康
てぃーへんだあの嘘っこきがだまくらす   畔柳 晴康
かんだりいけど炎天をやんで来た      西垣 博司
俺の足踏んずびゃあてるやあがいる     西垣 博司
欲ばりん野良へいかにゃーこの暑さ     中安びん郎
 おだくって稼ぐな年をかんぎゃーよ     中安びん郎

▽こないだ句会ん時「しらっくら」って言ったら他県出身の谷口さとみさんに「何それ」って言われちまったっけや〜(笑)やっぱ、ついつい出ちまうよね〜。またしぞ〜か弁川柳寄せてくりょうや。
〒421‐2106 (受付随時、投句料もいらにゃあでね〜)
しぞーか市葵区牛妻2095の13  加藤 鰹あて



ちゃっきり しぞ〜か弁川柳 | Link |
(2007/10/26(Thu) 08:37:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「雑  詠」            藪ア 千恵子
不用意に出した言葉の後遺症          焼 津
詮索をしすぎて首が回らない
負け犬の言い訳がもう負けている
幅利かす序列を蹴ってみたくなる



 「  月  」            小林 ふく子
三十の顔持つ月はお人好し           袋 井
月のうさぎ丸めた餅は星になる
ほどほどの幸せ月と語ります
おぼろ月彼の心は月に似て



「弱  点」            薗田  獏沓
弱点があって気楽な人が寄る      川根本町
攻めて来るから弱点は見せられぬ
前科には成らぬ程度の罪重ね
完璧でないから人がついて来る


「あれには参った」         松橋   帆波
掌のアンチョコ汗で読み取れず         東 京
暴落の日にパソコンが繋がらず
混浴といえばそうだが猿と鹿
来ないのと言われて思い当たる事


「忘れんぼ」            高橋   繭子
座敷わらしが思い出させてくれる夏       大河原
最近を忘れる執念深いひと
忘れんぼ許してくれる熱帯夜
螺旋階段記憶のドアはどこにある


「言  葉」            安田   豊子
売り言葉買って空しい自己嫌悪          浜 松
失言の尻尾踏まれた酒の量
嘘も方便使い熟して生き残る
一言の重さ優しさ難しさ


「フレンチ」             成島   静枝
フレンチのランチ御招ばれ淑女めき       千 葉
フレンチに箸置き気取り要りません
彩りとソースお代りさせるパン
ナプキンで内緒話の口も拭き


「白 い 歯」           中田   尚
白い歯と小指にハートくすぐられ       浜 松
糸切り歯明日に備えて研いでおく
白い歯で秋の味覚を頂こう
歯は大事いくらお腹が黒くても


「雑  詠」            ふくだ 万年
水溜り飛んで無念の老いを知る        大 阪
岩清水旅の終わりは母の海
ヘソ魅せぬ水着が走る孫つれて
年金を孫がくすねて夏を終え


「母 の 道」            真田  義子
母の道今追いかけている私         仙 台
旅の空心弾んで鳥になる
おしゃべりが好きな人から長電話
いつの間に風がお供のひとり旅


「ス ー プ」             山本 野次馬
ほどほどの距離でスープの冷めぬ仲       函 南
缶きりで我が家のスープ出来上がる
二世帯で味わう二種類のスープ
スープカレー今日の自分を暴露する


「結  果」           毛利   由美
平均をすれば平年並みの夏          つくば
本当に切れていたわ賞味期限
同じもの食べて相方だけ太り
早々にブートキャンプはオークション


 「ライバル」            濱山   哲也
ライバルに負けじと僕も養命酒         つがる
ライバルが美人と話す見る地獄
ライバルが言うライバルに僕が無い
ライバルは今日もきっちり痩せていた


「記  憶」           あいざわひろみ
海鳴りは母の体内から来る       長 野
恋心風がさらっていきました
傷痕は見せない白壁の土蔵
まっさらな今日に記憶を書いていく


  「  う  」            川口    亘
浮き草も終の住居を決める頃        藤 枝
浮き袋つけて泳げぬ身のあわれ
浮気でも瓢箪までにまだ遠い
運命と大袈裟が効き籤を引き


「楽 し 気」            石田  竹水
御破算で静止が出来る五つ玉         静 岡
楽し気に踊り続けて去る枯葉
乾いたら涙が甘く甘くなる
一と一足した答えが世に出ない


「愚  痴」            戸田 美佐緒
とんちゃらん今宵のカメも愚痴を言う    さいたま
好きなことグチって鶴が飛んでいく
自我ばかり通すカエルの孤独癖
たまたまにヒトの顔して生きている


「やれやれ」            新貝 里々子
電池切れ警報だとは知らなんだ        袋 井
夏バテのくすり昼寝が癖になり
サスペンス蝉も子供も消えました
生きるとはペットボトルのお茶を持ち


「夏 終 る」             酒井  可福
秋を呼ぶ風鈴の音に千の風          北九州
夏終りすべて絵日記でっちあげ
盆の明け線香花火だけ残り
鈴虫にステージ譲る蝉の声


「定期テスト」           塚本  寄道
突然に掃除始めるテスト前          長 泉
深呼吸ため息になるテスト中
やったのに思い出せないことばかり
勉強をやるぞと思うテスト後


「自 由 吟」            寺脇  龍狂
蝉時雨止んで気がつく耳時雨         浜 松
理不尽へ自己責任がまた問われ
局長の常識クルマの二、三台
いつ見ても野球のサイン分らない


「花の東京」            増田  久子
上京は青春キップ五人連れ          焼 津
デパ地下でいつもながらの荷が増える
鳩居堂一筆箋を買いに寄る
五人とも巣鴨が似合うけどやめる


「雑  詠」             馬渕 よし子
媚びた日のメーク落としは手間かかる      浜 松
裏窓を開けて息抜きしています
幸せになろう苦労の中で聞く
夫にも渡せぬ鍵を一つ持つ


「豆 台 風」             加茂  和枝
これでもかこれでもかあと雨は秋        岩 沼
ビニールの弱点だけが目立つ傘
湿っぽくならないように泣いておく
豆台風おねだり何かあったはず


 「花を買う日」           提坂 まさえ
明日使う笑顔いくつか用意する       静 岡
コンタクト外して生の君を見る
撥ねと留めいまだに迷う私です
笑い方忘れたのです花を買う


 「  !  」             井口   薫
感嘆符押してメールが様になり        袋 井
背を押してくれた赤ペン感嘆符
老い止めの秘薬疑問符感嘆符
あら綺麗おいしい凄い旅切符


 「想  い」             鈴木 恵美子
かすり傷ひとつふたつはあって老春       静 岡
泥舟に乗ろうあなたと一緒なら
断ち切れぬ想いは遠くちぎれ雲
本当の愛は自然の彩で溶く


「  風  」            瀧    進
たんぽぽと噂の種が風に乗り         島 田
忍耐の手綱さばきが風を呼び
風見鶏読めぬ明日の風を待つ
諍いの心に風が吹き抜ける


  「裏 の 裏」            岡村  廣司
裏の裏読むと疑心が眼を覚ます         焼 津
裏の裏読んだら裏がもう一つ
裏の裏知ると生真面目あほ臭い
裏の裏読み過ぎ霞す右の脳


「処 方 箋」            鈴木 まつ子
てにをはが乱れて話噛み合わず        島 田
朝ドラに今日も明日もと見逃せず
都合よく惚けてみるのも処方箋
兎に角も今の元気がありがたい


  「迷  路」            海野   満
みだれ咲くおいらの時季はいつなのか      静 岡
朝おきていつも同じだそれでいい
パパ臭いおまえも臭いわが家内
人生のどこにいるのかわからない


「雑  詠」             西垣  博司
オントシと云われ半分悄気ている        静 岡
謹しめば何やらそんな顔になる
末席で金持ちの愚痴聞いている
軽く受け流したあとの立ち眩み


  「老 い る」              金田 政次郎
トンネルを数えいつしかお爺さん        静 岡
ベートーベン程よく聞いているつんぼ
翁媼無慚オチンチンは要らない
明日老いる今日一日を若く居る


  「自 由 吟」            川口 のぶ子
幸せを庭のトマトと分かち合い          藤 枝
枝はらい汗がポトポトもう暑い
三十五度パタッと止んで蝉しぐれ
風鈴の音色夕べの風に酔い


  「逃 げ る」            高橋  春江
しつような影にわたしは逃げきれず       袋 井
逃げ回る猫を相手に織るドラマ
立ち向う歳へ最後のガッツポーズ
自己逃避なんと静かな海だろう


「  愛  」              鹿野  太郎
チョイ悪の美学に妻の眩しい瞳      仙 台
微笑んでいる父の星母の星
古里の友と紐解く語り種
足元に一等星が光ってる


  「自 由 吟」             山田  ぎん
此の暑さ子等はプールへまっしぐら     静 岡
朝早く咲く朝顔が彩をくれ
海は今人が集まり波の音
月を見て夫を思い妻は老い


  「自 由 吟」            御田  俊坊
世の動き雲の流れに逆らえず          高 畠
悠々と雲が地球を掻き回す
ばりばりと思い出消して反古される
ばりばりと働く父の背が温い


  「家族しり取り」           中矢  長仁
五時が来た少し早いが縄のれん(夫)      愛 媛
縄のれんなんて小遣い有ったわね(妻)
有ったのに宿題誰か見て欲しい(子)
見て欲しい子の面倒を私寝る(妻)


「  雨  」              畔柳  晴康
長雨に句作のペンも湿りがち       浜 松
老い耄れて晴耕雨読洒落てみる
雑草が生気満々雨の庭
被災地の雨に我が身の心濡れ


  「雑  詠」              内山  敏子
月並な謝罪が続く記者会見        浜 松
口実は脚の痛みにした胡坐
混浴は男が恥じる野天風呂
もう一本ビールをねだる父の指


  「稲  光」             大塚  徳子
ショウゴイン大根おろし暑気払い        仙 台
大ジョッキゴクンと飲んで暑気払い
虫も殺さぬ顔で疝気の虫を飼う
社保庁のあたりで光る稲光


  「雑  詠」             滝田  玲子
コスモスの揺れに迷った赤トンボ        浜 松
古希と書く馴染まぬ筆に手が震え
頼られるうちが花だと諭される
マラソンの元気をもらう暑い朝


「誕 生 祝」              山田 フサ子
落し穴の近くで止まる年の数        袋 井
平坦な道ばかりない土になる
実らない多趣味たのしみ生きている
喜寿過ぎて孫から届く誕生祝


  「雑  吟」             堀井  草園
くじ運の悪い翼が糞おとす           静 岡
優しさに馴れた敷いで脛を打ち
人生に筋書はなく小石積む
ふて寝して細目で俎音を読む


「分 水 嶺」             中安 びん郎
分水嶺桜散る川暴れ川              静 岡
分水嶺場所は日本の中央部
母が生む優秀な子と平凡児
分水嶺綺麗な水が南北に


「シルバー」             中野 三根子
席ゆずるつもりがそっとゆずられる       静 岡
やさしさがシルバーシート暖める
シルバーで何度も映画みてしまう
年金とシルバーシートお出迎え


 「中  国」              増田  信一
中国は昔の日本そのまんま           焼 津
チャイナ服似合ったあなた過去の人
少子化を推進しても増える国
前食べた中国産にゃノー天気


  「鮎三昧・・・其の十二」       永田 のぶ男
雨風よ自然壊すな神頼み            静 岡
来年の遡上状況気にかかる
自然体荒れる枯れるも恵む雨
雨やどり五体真まで冷えてくる


「生き下手」            長澤 アキラ
生き下手で白と黒とがよく見える       静 岡
返り血の後が読めない血のめぐり
血止めするように時時座禅する
血の色の混じる小説書き終える


「  秋  」              林  二三子
店先を秋の果物が陣取り            芝 川
芋掘りの園児満面の笑顔
店頭でサンマに秋を告げられる
サンマ焼く七輪未だ捨てられず


「愚  妻」             多田  幹江
保険証愚妻しっかり付いている         静 岡
お叱りを自分のメタボ棚に上げ
アンチエイジングだとさ都合のいいマイク
着物を着ると動かなくなる愚妻


  「母 の 海」             池田  茂瑠
中立の軍手が白いまま乾く           静 岡
大らかに凪いだ肥満の母の海
未来図の裏にナダレの音消えぬ
疑いも少し入れてく袖だたみ


「つ  め」            川村  洋未
つめに書く愛していると風呂あがり      静 岡
さよならねマニキュア落し右左
マニキュアで染めてつぶした本音ある
つめみがくケータイボタン押しながら


「Eメール」              佐野 由利子
この角を曲り切ったら抜きん出る        静 岡
Eメール届きましたか茜雲
奥さんは節約ばかり言っている
砂浜に恋の抜け殻落ちている


「シマドジョウ」          山口  兄六
天国で妻に会ってもシカトする        足 利
ケータイ族を振り返らせた美人
ウォシュレット父さんそれはエシャロット
渋滞を抜けたらそこは青い空


  「自 由 吟」            真理  猫子
年金を運ぶカボチャの馬車がある      岡 崎
上流の魚には解けぬ化学式
加齢臭まだ熟成が終わらない
警報に勝負を挑む雨の音


「空  漠」       谷口 さとみ
飽きちゃったダメと言わないやさしさに  伊 豆
捕り方を猫に教えているねずみ
ケンカするほうが淋しいよりマシよ
終電が出るまで空車来なきゃいい


  「日 和 見」            川路  泰山
優柔不断なにをするにも出遅れる      島 田
真鍮のラッパへ誰も振り向かぬ
肩書きを担いだだけの猿芝居
日和見が好きでお山の上に立つ


「自 由 吟」                高瀬   輝男   
諸事万端あなたに任す理髪店         焼 津
とどのつまりは常識論で片がつき
サア墓は買った長生きしてやるぞ
大変だ俺の提言シュレッダー


「目のうろこ」               望月   弘
目ん玉の洗濯をする青い空         静 岡
目の鱗いちども落ちたことがない
貼り替えた賞味期限で夫婦する
今日もまた買ってしまった売り言葉


 「バイバイサマー」         加藤   鰹
言うべきを言って煙たがられている    静 岡
夏の恋終わり秋刀魚がほろ苦い
キャッチ&リリース恋はゲームだな
失意の日セミの大合唱を聴く


   顧  問  吟 
 「軈  て」             柳沢 平四朗
おおっぴらに晒す仲なら臭わない        静 岡
まだまだの軈てを責めぬ自由形
老人力の自惚れ返り討ちに会う
ビー球の向うに駄菓子屋が見える




虎竹抄 | Link |
(2007/10/26(Thu) 08:27:12)

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