静岡川柳たかねバックナンバー
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平成二十年 十一月十五日
定 例 句 会
於 静岡市アイセル21


席 題  「 絆 」 小野 修市 選
兄弟の絆は今も強いまま      三根子
立候補細い絆も頼られる      輝 男
赤い糸今では太い腐れ縁      信 一
落選が決まれば絆なんてパー     鰹
菊人形並んだ美しい絆       茂 瑠
オレオレも天涯孤独掛からない   信 一
保証人断りきれぬ絆あり      由利子
絆っていいな心があったかい    由利子
阿吽でも女遍歴墓場まで      信 一
学校と職場が結ぶ良い絆      好 子
金名誉此の頃絆負けている     信 一
お早うが輝くただいまが紡ぐ    珠 美
絡まって恋の絆が解けない     由利子
秘密基地大人になれど思い出す   信 一
時々は引っ張ってみる確かめる   好 子
笑わない人のほっぺをまず突いて  珠 美
今朝はもう別れの時と知る二人   アキラ
大切な絆赤いと思い込む      茂 瑠
空と海絆を結ぶ地平線       のぶ男
コンビニの弁当で済む母の愛     尚
無口でも夜の絆がきつ過ぎる    のぶ男
崖っぷち掴んだ絆切れないね    しげる
重婚が罪にならなきゃあと二人   信 一
同窓会見形変われど気は同じ    信 一
赤紙で絆切られて山を越え     しげる
遺言に財産無いが仲良くと     信 一
年賀状だけの無色の絆です     茂 瑠
親子でも甘えて絆たしかめる    三根子
美女の椅子据える絆の輪の芯に   茂 瑠
枯れてない絆喪中のハガキ来る   茂 瑠
 五 客
金婚式までは新婚だと思う     珠 美
叱られている嫌われたわけじゃない 珠 美
切れそうな絆をつなぐ子の寝顔    鰹
いつだって母娘の絆堅むすび    由利子
金婚を羨む絆くされ縁       好 子
 人 位
ふっつりと切れて絆は義を試す   珠 美
 地 位
小うるさい絆の端も手の中に    茂 瑠
 天 位
冷えた手で古い絆の縒り戻す    茂 瑠


宿 題  「昭和回顧」 増田 信一 選
戦争と平和選べぬ罪と罰      のぶ男
鍵っ子が母の帰りをブランコで   しげる
竹槍に黄色い気合い入れた喉    茂 瑠
駄菓子屋でおでん海つぼプロマイド 好 子
裕ちゃんにすっぽり染まる映画館  由利子
車ある家目印に案内図       さとみ
赤紙で行きし夫の身を案じ     ぎ ん
我武者羅にただ働いたよき時代   晴 康
祝日に日の丸を出すああ昭和    洋 未
物売りの声ひびく路地今は消え   修 市
晩酌を子供が買いに出す親父    安 心
焼けトタン集め凌いだ風と雨    茂 瑠
町工場機械油に注ぐ夢       さとみ
アナログで生きていました日本中  まさえ
東洋に魔女がいましたオリンピア  泰 史
ツイギーの小枝が太い幹になる   まさ子
飽食はダメと昭和の風が吹く    まさ子
百円のお札で夢が買えた頃      鰹
おしょうゆを借りたり貸した隣組  卓まる
空襲を母の強さに守られる     可 福
昭和史の八月やけに焦げ臭い     弘
ダイヤルの間もときめいた黒電話  由 美
豆がすの中に埋もれた米チラリ   のぶ子
またオヤジ卓袱台飛ばし憂さ晴らす 可 福
ミスターの一挙一動あすの糧    太 郎
海水を汲んで沸かした調味料    のぶ子
コロッケを食べると鼻がたれてくる 哲 也
勲章は戦後を生きた深い皺     豊 子
縁台のステテコが指すへぼ将棋   アキラ
カラコロと浴衣が歩く風呂帰り   アキラ
店先のテレビ観戦野次が飛び     進
卓袱台に家族の絆盛り合わせ    ふく子
飴を買い食べながら見た紙芝居   長 仁
平成を走る心臓昭和製       静 枝
銭湯で世間を学ぶ青い尻      五 貫
駄菓子屋に入るといつも子にもどる たかし
軍神と祀られ還る冬蛍       敏 子
寝押しした襞スカートの畳あと   穂々美
お隣の暮らしが見えていた昭和   二三子
一ダース産んで銃後を守りきり    弘
 五 客
カラフルになってラムネも生き残る 哲 也
屋久杉の葉っぱの裏にある昭和   野次馬
落ち葉焚き見知らぬ顔も暖まり   ふく子
天国も地獄も垣間見た昭和     きく子
負け戦はだか電球眩しすぎ     しげる
 人 位
老兵が除州除州と酔うている    獏 沓
 地 位
どんぐりが屋根を叩いた里の秋   五 貫
 天 位
鬼畜から恩人になる星条旗     泰 史
 軸 吟
卓袱台を囲みチャンネル親も子も  信 一


宿 題  「いい女」 佐野 由利子 選
日本のクレオパトラは私です    竹 水
湯上りに後れ毛という艶な女    まつ子
いい女声をかけたらニューハーフ  三根子
私はね小野小町というアダ名    竹 水
都合いい女だいたい風見鶏     卓まる
美人とは言えぬが妻はいい女    哲 也
いい女だよね私のことかしら    穂々美
顔ですかスタイルですかいや気立て 信 一
子育てに燃える素顔のいい女    ふく子
スッピンの肌がまばゆいいい女   二三子
いい女ぶるから笑う種にされ     亘
あの時は菩薩に見えた美女ナース  輝 男
ハイハイといつも笑っていてくれる  尚
うっとりとさせる美貌の目鼻立ち  まつ子
いい女化粧を落とす迄ですよ    博 司
いい女矢張り三日で飽きがきた   博 司
黒を着て並居る男振り向かせ     弘
雨宿りだって美人の側が良い    しげる
美人だが乳房は作り物らしい    茂 瑠
深入りしやつれるほどに惚れた女  修 市
黒が好き黒を着こなすいい女    獏 沓
火傷する事が怖くて手が出せぬ   野次馬
ホットミルク冷めても僕を待ち続け ふく子
男には不自由しないいい女     徳 子
夢二の絵一寸太らせ片えくぼ    重 雄
さりげなく心引かれるいい女    敏 子
訪ねるとまず酒を出す友の妻    五 貫
これ男?ニューハーフほど演じてる たかし
8センチヒールですぐに来る女   さとみ
振り返るやっぱりとてもいい女   三根子
 五 客
いい女演じて仮面はずせない    敏 子
出るとこが出てくびれてるいい女  獏 沓
いい女が連れた子犬をほめておく  長 仁
遺伝子が改良されて美女ばかり   のぶ男
日本語をきれいに話すいい女    安 心
 人 位
楊貴妃とパーツの数は同じです    薫
 地 位
一度でも言われてみたい いい女  千代見
 天 位
女よりいい女ですニューハーフ   哲 也


宿 題 「笑いのある句」加藤  鰹 選
犬とする連れ小便が情けない    アキラ
朝帰り猫が三つ指ついていた    信 一
ダイエットしたら夕方目がくらむ  修 市
袋とじよだれたらたら見る男    安 心
三億円事件も小室には負ける    好 子
ユルさがいいの女がはくトランクス 珠 美
けんかの夜妻にウインク手を伸ばす 修 市
へそくりがここだここだと吠えている しげる
増毛かかつらか迷う髪となり    博 司
生まれた子整形前の妻に似る    二三子
ダイエットしてます甘い菓子かかえ のぶ子
ウインクを嫁が金棒打ち返す    卓まる
汽車ぽっぽだけは煙を褒められる  さとみ
外人と見るや逃げ出す父である   可 福
株価より大根の値が気にかかり   博 司
焦ります賞味期限が過ぎそうだ   長 仁
ラッシュアワー透かすおならの澄し顔 進
頭陀袋生臭いのが掛けている    政次郎
回覧板ハダカでいると持ってくる  すみと
年とった私も服を裏に着て     さ き
ダイエット失敗続きスリーL    和 枝
軽いけど年金だけは旦那様      亘
にらめっこ笑い我慢し鼻噴射    たかし
宇宙にもしぞーかおでんあるのかな 穂々美
歯を抜かれ笑顔が神に近づいた   獏 沓
爪ヤスリ使うと男摑めない     茂 瑠
さよならをしたのに未だ発車せず  由 美
すぐやめる総理にみんななりたがる 三根子
形相が変わってしまう糸通し    野次馬
明日には禿げる化粧に金を捨て    尚
永遠は胡散臭いぞ白髪染め     珠 美
天人のような美人が河童の屁    のぶ男
お似合いの一言高い服が売れ    輝 男
美女横目社会の窓の閉め忘れ    重 雄
高らかに笑い元気になる笑拠    安 心
 五 客
妻はよく犬と名前を間違える    千代見
徘徊のコースを探す散歩道     アキラ
百均の傘にしてから忘れない    廣 司
消えたメガネ捜しさがして冷蔵庫  由利子
口説くとき誠心誠意ウソを吐く   哲 也
人 位
もう少し痩せれば着れる服ばかり  由利子
 地 位
大切な妻で触診欠かさない      弘
 天 位
考えて考えぬいてババを引く    信 一


宿 題 「自 由 吟」  互 選
Dダイエット秋の味覚にうっちゃられ 信 一
Cとんがった心がなごむ朝の虹   修 市
C人並の基準は誰が決めるのさ   洋 未
Cポイ捨ての場所にお地蔵置いてみる 安 心
Cそんな日もあった私のドラムソロ アキラ
Bもたもたを支えてくれる手が温い 由利子
B大空が罪を知らずに青すぎる    尚
B舞落ちる枯葉あしたの我が身かも よし子
A鮮やかな女の武器で勝ち戦    のぶ男
Aジャンボくじ当たらぬ方が幸せよ しげる
A暑がりのあなたに三度惚れました 珠 美
Aイヤリング愛語をいくつ殺したか 輝 男
A愛と金ダブルスチールされた秋   鰹
Aゴッホにもシャガールにもなる美術展 進
Aごった煮に混ぜた愛なら保証済み 穂々美
A寝たきりの窓へ満月語りかけ   敏 子
A一人きり出たとこ勝負風を読む  さ き
Aハイエナと言えなくもない形見分け博 司


参加者(順不同)佐野由利子、長澤アキラ
やまぐち珠美、曽根田しげる、中野三根子
増田信一、池田茂瑠、尾崎好子、高瀬輝男
永田のぶ男、加藤鰹、小野修市、森田安心
市川重雄、金田政次郎、瀧進、鈴木まつ子
山田ぎん、畔柳晴康、中谷長仁、成島静枝
真田義子、大塚徳子、内山敏子、川島五貫
薗田獏沓、岡村廣司、酒井可福、鹿野太郎
小林ふく子、井口薫、石田竹水、川村洋未
望月弘、芹沢穂々美、西垣博司、林二三子
安田豊子、毛利由美、竹内さき、加茂和枝
川口亘、鈴木千代見、濱山哲也、伊藤泰史
石上俊枝、馬渕よし子、飯塚すみと、中川
司、恩田たかし、山本野次馬、川口のぶ子
萩原まさ子、提坂まさえ、川村美智代、那
須野正明、谷口さとみ、今井卓まる、中田
きく子、柳沢平四朗、中田尚
定例句会 | Link |
(2009/01/26(Sun) 10:58:39)

ちゃっきりしぞ〜か弁川柳


 しょんない事こいて大将クビ切られ    寺脇 龍狂
 おじゃみ飽き黄いないミカンしょずむ孫  今井卓まる
 わしゃーらからどいのかして働かにゃ   小林ふく子
 せんげんさん百段登りひゃあエレエ    加藤  鰹
 ぞんざいなことばっかゆう麻生さん    中川  司
 あいつぁーねえたらくわずほっぽかせ   鈴木まつ子
 家の中ふんだらごーで踏み場ない     鈴木まつ子
 ぶそくっていちゃあ話になんねえな    岡村 廣司
 歯が悪りいだであんもうが喰われねえ   岡村 廣司
 ゾングリだタバコ片手のメンチャーに   長谷川寅吉
 お御輿も信号守りアンエットン      長谷川寅吉
 飲みすぎて朝げえりしてどやされた    畔柳 晴康
 柿喰うかまだみりいからやだよなあ    畔柳 晴康
 マネキンと見くらんべしてちみくられ   瀧   進
 ぶそくってちんぷりかくのも惚れたうち  瀧   進
 五七五せせくりすぎてボツになる     西垣 博司
 吊るくったわらんじょうりがなつかしい  西垣 博司
 飯茶碗割った がらいかはだってか    中安びん郎
 干し柿を食いはにゃーると止まんにゃー  中安びん郎

ちゃっきり しぞ〜か弁川柳 | Link |
(2009/01/26(Sun) 10:51:50)

自 由 吟
  虎 竹 抄


「お 正 月」        谷口 さとみ
賽銭は増えずお願い事は増え      伊 豆
雑煮食べママはパートへ子は塾へ
もういいかい今日はひとりだカップ麺
明日もまた笑いたいから豆浸す


「新  年」        岡村  廣司
どの神にしようか迷う初詣で       焼 津
忘れては居なかったんだ賀状来る
おだやかな顔していよう松の内
鼻唄のゆとりを持とう今年こそ


「元旦に思う」       金田 政次郎
八度目の丑ですドーモ済みません    静 岡
元旦の採光老いを引き締める
天寿とや加齢の芯の先細り
夢多く盛って描いた初春の空


「自 由 吟」        竹内  さき
初雪よ一直線なプロポーズ       浜 松
寄り添うて短き命願をかけ
恋と米両手でこなすいい女
さらさらと私を写す水鏡


「外  圧」        鹿野  太郎
夕張のメロン北への使者にする     仙 台
忙しい顔、貌、面の伏魔殿
アマチュアをごぼう抜きする大リーグ
日の丸のスピーチ耳の掃除する


「雪 の 日」        栃尾  奏子
神代から元旦凛と来るきまり      大 阪
抱負だけ馬鹿にでっかい三が日
雪の日は雪の日なりの過ごし方
うっとりとコタツ爪先から入る


「前期高齢だから・・・」  増田  久子
駐車場もみじマークとして並ぶ     焼 津
どこで出てどこで終るか今の歌
マラソンの中継で知る町の位置
文庫本東野圭吾だけ探す


「人  間」        大塚  徳子
ゆうやけこやけいつか羽ばたく鶴を折る 仙 台
カマキリのことを想いて日が暮れる
人間が好きで人間らしくする
ゼロから人間やり直す牛の年


「家  族」        薗田  獏沓
背もたれに家族みんながなってくれ   川根本町
農耕の血はネクタイを羨やまず
嬉しい時悲しい時も抱く家族
枯野だが家族楽しく握り飯


「ぱぴぷぺぽ」       戸田 美佐緒
ぱぴぷぺぽ軽い話に油断する      さいたま
前略と書くと無沙汰が畏まる
窓際の古い机が歌い出す
雪おんな前後不覚の酒になる


「復 活 祭」        新貝 里々子
淋しくていつもポコポコ湧いている   袋 井
愛は錯覚わたしを縛る長い紐
球根に聴かせるピアノコンチェルト
焦るまいゆっくり人間として生きる


「夕 焼 け」        安田  豊子
惚れられて煩わしくて怖くなる     浜 松
大らかに笑い哀しい演技する
何回も転び得難いコツ拾う
夕焼け小焼け自分還る里のいろ


「年 寄 り」        西垣  博司
私よりそろそろワシが似合うかな    静 岡
今の世を生きてこの世の憂さを食い
風切って歩めばきっと風邪を引く
年寄りの話日向で笑い合い


「道  草」        真田  義子
あの時に光をくれた三分粥       仙 台
スパイスをかけ間違った人といる
道草をしながら恋の二つ三つ
ゆっくりと雲が流れるうれしい日


「自 由 吟」        中田 きく子
満足の度合いに揺れている私      静 岡
お茶をたてひとり静かな刻を持ち
節くれの指が過ぎし日ものがたり
指先が恋しき人の名を拾う


「  鼻  」        馬渕 よし子
上向きの鼻で宝を嗅ぎ当てる      浜 松
何も彼も許してくれた団子鼻
褒められて鼻の回りがこそばゆい
鼻息が荒くて誰も寄り付かず


「み が く」        井口   薫
平穏な日です包丁研ぐことに      袋 井
刃こぼれの目立つ五感を磨いてる
床もみじ修行の汗を光らせる
終点へ磨き足りないままの旅


「めでたし」        提坂 まさえ
お話の通り帰ったかぐや姫       静 岡
物忘れこれでいいのだ我が海馬
古炬燵ぽっと赤らむ使い初め
旅終えて妻の小言は元通り


「嬉しいな」        川村 美智代
太陽が笑えば花も子も笑う       静 岡
極楽ぞ赤黄のもみじ露天風呂
春さくら秋はコスモス四季嬉し
ピアノ弾く孫の指からちさい秋


「自 由 吟」        寺脇  龍狂
死んでまで会社につくすことはない   浜 松
建売りが売れ残っている幟
新総理出足ほどにはパっとせず
使う日を夢に仕える政治秘書


「スケジュール」      加茂  和枝
丁寧に私を試す風が吹く        岩 沼
風呂敷に包んだ愛が重たくて
崖っ淵空が青くて救われる
膨らんだ夢が後押す予定表


「雑   詠」        寺田  柳京
捨てられた男の様な昼の月       静 岡
野良犬を見下している昼の月
掌の畑に伸びる葱其の他
まほろぼの地球を人が何故こわす


「家  族」        藪ア 千恵子
遠く住む家族と話す趣味のこと     焼 津
アメリカと通話料金気にしない
少しずつ英語身につく五年生
帰国するまでがんばって待ってます


「雑  詠」        成島  静枝
やすくてもホテルのバーはちと行けぬ 千 葉
円高のメリットワイン飲めぬ口
霜月と師走を残すカレンダー
Qちゃんの引退己を知っている


「別  れ」        石井   昇
愛が終ったか氷柱も溶けてゆく     蓮 田
流氷と歌うわたしの別れ唄
消えてゆく霧笛が夢も連れてゆく
ふと想う雲になりたい流れたい


「後期高齢」        畔柳  晴康
失敗も高齢ゆえと演技する       浜 松
便利だよ後期高齢使い分け
出し渋る年金暮し口にする
まだ呼ぶな必ず逝くが急がない


「見 舞 い」        鈴木 千代見
病室を出るタイミングつかめない    浜 松
表札を見つけて呼吸整える
その程度でよかったネェと見舞い客
病名に触れず世間の話する


「寒  い」        藤田  武人
帰り道湯気の向こうに縄暖簾      大 阪
春を待つ窓辺に飾る寒桜
クルクルと回れ寒鰤冬が来た
懐は紙切れだけのボーナス日


「昼 休 み」        恩田 たかし
昼休み句にははまりすぎさぼりすぎ   静 岡
くつろぎの昼休みには缶コーヒー
秋風に揺れる木々の葉紅葉中
心地いい風と日射しに踊る木々


「自 由 吟」        石上  俊枝
家事放棄してざんぶりと露天風呂 静 岡
上を見て下を眺めてよしとする
ピースしてプラス思考の運を呼び
ひと指でドミノ倒しに風が起き


「自 由 吟」        萩原 まさ子
寒いから帰る家族という温み     静 岡
槽糟の妻が入れたるお茶を飲む
薬指見てまだチャンスありと知る
母の苦を節くれの指知っている


「貴 方 へ」        芹沢 穂々美
赤い傘貴方のために買いました 沼 津
五色豆貴方の背中押している
丸テーブル貴方の愛を一人占め
秋霖や貴方の誘い待っている


「  夫  」        内山  敏子
定年へ夫の口座妻の名に    浜 松
亭主づら威張ってみても粗大ゴミ
お留守番夫へひとつ地酒買う
忘れたふり上手になった処世術


「暖 と 寒」        小林 ふく子
湯豆腐が土鍋で独り言を言う   袋 井
冬の窓明かりに愛が溢れてる
例えばの話自分が寒くなる
絹手袋時々人を騙してる


「雑  詠」        滝田  玲子
逆風に押され出口が見えてこぬ  浜 松
苦労した人生皺が物語る
一粒の涙を武器の娘に敗ける
それぞれの顔に明日の夢が待つ


「コ タ ツ」        酒井  可福
コタツにはお茶とみかんがよく似合う 北九州
独り身のコタツ万能家具となる
コタツから首だけ出して空返事
コタツなら指でコチョコチョ触れてみる


「抜かりなし」       毛利  由美
交渉難航クリスマスプレゼント     つくば
年賀状素材をパソコンで模索
共有の場所はみんなで大掃除
新札の準備抜かりがないように


「老  老」        中矢  長仁
今平和ただ平凡に日が過ぎる    松 山
微笑んで平和に暮らす老夫婦
始まるか心配し合う物忘れ
楽しもう後の人生二人旅


「椅  子」        濱山  哲也
床屋さん椅子を誉めると話し出す   つがる
お好みの男だな座り直してる
きっちりと仕事をこなすパイプ椅子
公園のベンチ枯葉が座ってる


「自 由 吟」        山田  ぎん
月見酒すすきと萩が縁側に     静 岡
月を見て戦時の夫忍ばれる
草餅を見れば古里思い出す
新米が松茸が出る秋を食べ


「雑  詠」        ふくだ 万年
暖房を弱めジャケット着るエコー    大 阪
ダイエット決め手ないから本売れる
笑い顔おのれの皺に懺悔する
気にするな一人で育つ子もいるさ


「  暮  」        川口   亘
チラシ見て今日も特価の綱渡り  藤 枝
北風が急に邪魔するトイレ立ち
予算繰り段々堰が高くなり
老化込むは明日は話の妻と云い


「印 象 派」        鈴木 まつ子
礼儀作法印象深い茶懐石    島 田
背信の胸に眩しい弥陀の影
しみじみと生まれ育った家ながめ
格調も主義も問わない印象派


「  絵  」        川口 のぶ子
荒海のうねりの中から拾う絵図  藤 枝
一本の絹糸に見る穴かがり
絵に画いたようにいかない世の動き
思い出を絵にしているはまだ未熟


「  男  」        瀧    進
愛妻に惚れた弱味を握られる    島 田
ファイティングポーズに男見栄を張り
女房に糸引かれてる出世凧
大老と持ち上げられて煙たがれ


「雑  詠」        飯塚 すみと
妻コタツまずは手に取る旅チラシ    静 岡
引き込もりさせぬバーゲン五割引
歯ブラシをてんでに置いて洗面所
休みの日雨音しずか起きられず


「湧  く」        鈴木 恵美子
宴会のしめは音痴の大爆笑     静 岡
上り坂愛の鼓動が鳴り響く
しなやかに八十路詩情をたぎらせる
年末に湧く『運命』の大合唱


「お金のあれこれ」     小野  修市
税金で議員は野次に磨きかけ    静 岡
煙にまきふところさぐる二枚舌
退職金みていた夢が消えてゆき
年金の額が趣味を決めている


「ノーベル賞」       尾崎  好子
同時であノーベル賞で飛び上がり   藤 枝
親戚でないのにこうも喜べる
無限大この頭ではどの頭
おきかえて思うに素手で手宙つかむ


「見えない努力」      今井 卓まる
良い柿は嫁ぎ先でも愚図らない    浜 松
三日前仕掛けたエクボ蟻地獄
三面鏡ボクの知らない顔がある
ぼろぼろと流す涙でウソ洗う


「自 由 吟」        林  二三子
意地は捨て子らの意見を受け入れる  芝 川
頑固などもう消えている老いた父
足腰の小言にも慣れ共に生き
笑いじわ増えて病気を忘れさす


「  虹  」        中野 三根子
良いことがあったよ今日は虹ふたつ   静 岡
決めている心の中の虹の色
クレヨンで書いた今日の虹の空
心から笑ったあなたへ虹あげる


「自 由 吟」        川村  洋未
さりげなくゼロを数えてもとへ置く 静 岡
バーゲンを待たず自分にプレゼント
財布手に予算と見栄がゆずり合う
ブランドで固めた人が寒そうだ


「  私  」        多田  幹江
どうでもいいのに私の誕生日    静 岡
わたくしを差し置き我雨ざんざ
私って鰑のような人だとさ
ネオンテトラも私も夜の川が合う


「  糧  」        石田  竹水
御破算を願って一歩整える     静 岡
痛かった言葉の棘も糧に成る
好き放題言って去ってく第三者
神さまを二股掛ける罰当り


「春 の 色」        真 理 猫 子
元旦はクラゲの色になる私       岡 崎
雷に運ばれてくる天の声
ゴキブリもきっと平和を祈ってる
正月は「賀正」「賀正」と鳴くカラス


「アルパカ」        山口  兄六
少子化の波でキャベツが育たない  足 利
芳醇なワインは挫折してできる
乱獲で消えてしまった清純派
オヤジ狩りされて三十路のボンバイエ


「師  走」        増田  信一
師走でも正月来てもマイペース   焼 津
師走でも関係ねーと定年じゃ
クリスマスおもちゃケーキの要らぬ家
師走でも不景気風が静けさを


「スーパー」        佐野 由利子
スーパーが意地を賭けてるこの景気 静 岡
挨拶がすらすら言えた日の安堵
膝割って話せば分かる縺れ合い
単純という美しさ富士の山


「  道  」        長澤 アキラ
不器用で尻尾の振れぬ犬である     静 岡
悔恨の形に歪む靴の跡
なあ妻よ長い道程だったナア
灰汁を抜きだんだん帰る海の道


「鮎友釣り三昧・・・其の二十七」永田 のぶ男
コップ酒釣り業論じ飲み潰れ     静 岡
鮎釣りで三途の川の優勝者
補償終えダムと消えゆく鮎の川
冬の日も川原を覗く御仁たち


「哀  楽」        川路  泰山
風紋の如移りゆく覇者王者     島 田
アルバムの汚れとなったバラの花
煮詰めれば渋み辛みも甘くなり
羽根布団かけふんわりと生きてます


「海峡の帆」        池田  茂瑠
団塊の端の固まり悪い芯       静 岡
下駄箱に目的果たせない靴が
深追いへ織ろう海峡越える帆を
売れ残る私値切っていいのです


「自 由 吟」        高瀬   輝男
情と理の狭間丁半で決めようや   焼 津
鏡台でいざ出陣の顔が出来
人間の奢り責めるか温暖化
新任地は宇宙だなんて夢だった


「歳末風景」        望月   弘
夢はジャンボに宝くじ依存症      静 岡
クリスマスせめてケーキのいいはなし
ワクチンに見放されてる不況風
酒屋からまだ届かないカレンダー


「ノスタルジア」      加藤   鰹
ロックオンもう後戻り出来ぬ恋 静 岡
アラフォーの風が首から肩へ抜け
柴又へ行く寅さんに逢いたくて
くるみもち遠い汽笛を聞いている


「無  為」        柳沢 平四朗
等身大に生きた骸はのっぺらぼう    静 岡
帳尻は天へ預けた四面楚歌
背伸びした位置で心のかくれんぼ
歳月に無為を食わせた自己嫌悪


虎竹抄 | Link |
(2009/01/26(Sun) 10:23:05)

 た か ね 川 柳 会  過 去 の 年 間 賞 受 賞 作 品

平成十一年 
昭和史に忘れたままの傘がある     真田 義子
選者 飯尾麻佐子、石田一郎、川上富湖、柴崎昭雄、太田紀伊子、熊谷岳朗、奥田一星、平山虎竹堂 

平成十二年 
シアワセって退屈ですねお月さま    多田 幹江
選者 復本一郎、赤松ますみ、近江あきら、いとう岬、川上大輪、西恵美子、高瀬霜石、平山虎竹堂 

平成十三年 
好きだ好きだと男を騙す発泡酒     新貝里々子
選者 児玉ヒサト、中田たつお、遠藤みゆき、柳沢花王子、藤沢岳豊、酒井路也、斉藤由紀子、平山虎竹堂 

平成十四年 
抱きしめてやりたい真夜中のポスト   寺田 柳京
選者 辻 晩穂、真弓明子、鈴木柳太郎、江畑哲男、松岡恵美子、長谷川冬樹、筒井祥文、平山虎竹堂 

平成十五年 
風に逢うまだたてがみのあるうちに   新貝里々子
選者 浪越靖政、猿田寒坊、太田紀伊子、山倉洋子、成田孤舟、川上大輪、竹下勲二朗、森中惠美子


平成十六年 
穴堀りをするには少し陽が高い   川路 泰山
選者 板垣孝志、宮村典子、門脇かずお、長谷川酔月、津田暹、雫石隆子、大木俊秀、大野風柳

平成十七年 
傷一つ時効を過ぎてから痛む    高瀬 輝男
選者 佐藤美文、米島暁子、熊谷岳朗、菅原孝之助、小島蘭幸、浅野滋子、大橋政良、徳永政二

平成十八年 
一冊の本一本の藁になる      池田 茂瑠
選者 佐藤岳俊、国吉司図子、川俣秀夫、久保田元紀、桜井閑山、木本朱夏、大木俊秀、新家完司

平成十九年 
団塊のこれから角のない切符    柳沢平四朗
選者 千島鉄男、渡辺松風、山ア蒼平、宮村典子、浅利猪一郎、板垣孝志、川上大輪、赤松ますみ
おめでとう♪ | Link |
(2009/01/26(Sun) 10:16:37)

平成二十年度 たかね年間賞受賞作品 

   正 賞
母さんが教えてくれた非常口     井口  薫

準 賞
  ストライクゾーンがぶれてくる野心  戸田美佐緒
  玄関の前に消えない水溜り      鹿野 太郎
  ひとり酒この平凡は捨てられぬ    高瀬 輝男
  人を読むお世辞の中の照り返し    柳沢平四朗
  花の雨少しほとぼりさめるまで    鈴木まつ子



いわて紫波川柳社主幹    岩手県   熊谷 岳朗 選
  特 選
 母さんが教えてくれた非常口      井口  薫
  佳 作
 幸運な朝だ卵に黄身二つ        増田 久子
 苦しくて息ができなのでしゃべる    真理 猫子
 恥かいてかいて林檎が熟れてくる    戸田美佐緒
 自画像は強く優しい顔にする      畔柳 晴康
 
▽風土性によるものでしょうが、岩手と違って明るく温かな句が多いと思いました。心温められました。

熊谷 岳朗(くまがい がくろう)
いわて紫波川柳社主幹
全日本川柳協会常任幹事
句集「風はうたう」



川柳宮城野社主幹      宮城県   雫石 隆子 選
  特 選
 母さんが教えてくれた非常口      井口  薫
  佳 作
ストライクゾーンがぶれてくる野心   戸田美佐緒
 出直しの敵に自分の影もいる      柳沢平四朗
 薄墨の心に白い月が出る        石井  昇
 もう一つ確かなものに農作業      大塚 徳子
 
▽「たかね川柳会」の意欲的な作品拝見致しました。静岡の風土性はあまり感じることもなく、関西、関東風でもないのが「たかね川柳」なのかも知れません。特選句は常套的ではありますが「母」と「非常口」に現代性と愛を読みました。

雫石 隆子(しずくいし りゅうこ)
川柳宮城野社主幹、宮城県川柳連盟理事長
句集「樹下のまつり」
「浜夢助の川柳と独語」編者



 「風」主宰           埼玉県    佐藤 美文 選
  特 選
 花の雨少しほとぼりさめるまで     鈴木まつ子
  佳 作
 風袋を引けばふわりと浮く命      石井  昇
 ストライクゾーンがぶれてくる野心   戸田美佐緒
 人を読むお世辞の中の照り返し     柳沢平四朗
 出直しの敵に自分の影もいる      柳沢平四朗
 
▽年間賞であるからある程度の風格(品格ではない)と物語性がほしい。テクニックも裏へ隠れたほうがいいのだが、これは騙されたかもしれない。特選句、きれいごとに流されていない。

佐藤 美文(さとう よしふみ)
「風」主宰。柳都川柳社同人。
「佐藤美文句集」「川柳文学史」
「風 佐藤美文句集」ほか。



白帆川柳社主幹       東京都   成田 孤舟 選
  特 選
 人を読むお世辞の中の照り返し     柳沢平四朗
  佳 作
 各論も総論もないトコロテン      戸田美佐緒
 ひとり酒この平凡は捨てられぬ     高瀬 輝男
 断崖の渕を歩いているカルテ      安田 豊子
 生ビール進行形の恋がある       望月  弘
 
▽全体に理解し易い句で納得出来たが、反面いま一歩突っ込みが足りない気がした。特選句・人を読むは下の句の「照り返し」で句全体が引き締まっていると思う。

成田 孤舟(なりた こしゅう)
川柳白帆吟社主幹
全日本川柳協会理事
句集「風の四季」「氏す姓」



石川県川柳協会会長     石川県   酒井 路也 選
  特 選
 ストライクゾーンがぶれてくる野心   戸田美佐緒
  佳 作
 断崖の渕を歩いているカルテ      安田 豊子
 超後期 霞食っても生きてやる     寺脇 龍狂
 気がつくと空っぽの舟漕いでいた    多田 幹江
 ネジをまくでも私は私で        中田  尚
 
▽六十三句どの句も佳吟で一理ありました。その中でも自分の意思、主観がはっきり出ている句に私は高い点を入れました。感服でした。

酒井 路也(さかい みちや)
石川県川柳協会会長、日川協常任幹事
石川県芸文協理事
句集「家路」「路」「十字路」「路也」「白山」



川柳研究社幹事        埼玉県   渡辺  梢 選
  特 選
 玄関の前に消えない水溜り       鹿野 太郎
  佳 作
 葛根湯やさしく嘘を吐いている     濱山 哲也
 ひとり酒この平凡は捨てられぬ     高瀬 輝男
 花の雨少しほとぼりさめるまで     鈴木まつ子
 各論も総論もないトコロテン      戸田美佐緒
 
▽粒揃いの作品からの選句に悩みました。特選句は玄関先で何が起きるか分からない現代の不安感を「水溜り」の比喩で表現。佳1の可笑しさ、佳2の平凡が平凡でない自負、佳3のドラマ性、佳4は今の政治にぴったり。何れも心に響く作品でした。

渡辺  梢(わたなべ こずえ)
1938年宮城県生まれ
川柳研究社幹事
全日本川柳協会常任幹事



番傘川柳本社        大阪府   森中惠美子 選
  特 選
 太陽が大きく見えた旅立つ日      真田 義子
  佳 作
 ひとり酒この平凡は捨てられぬ     高瀬 輝男
 母さんが教えてくれた非常口      井口  薫
 幸運な朝だ卵に黄身二つ        増田 久子
 生ビール進行形の恋がある       望月  弘
 
▽年間賞候補作品の句群にそれぞれの表現と存在感はある。旅立つ日の太陽の大きくすばらしいロケーションを特選とした。ひとり酒、非常口、幸運な朝、進行形の恋等、ことばに無駄がなく明るい。

森中 惠美子(もりなか えみこ)
番傘川柳本社副幹事長(同人歴五十年)
句集「水たまり」「水たまり今昔」
「仁王の口」



川柳塔社理事        鳥取県    新家 完司 選
  特 選
 玄関の前に消えない水溜り       鹿野 太郎
  佳 作
 調律の日だけピアノの蓋が開く     増田 久子
 週刊誌俺の病気が載っている      金田政次郎
 プチ整形するより字でも習おうか    谷口さとみ
 雨の日は間違い電話さえ来ない     芹沢穂々美
 
▽ベスト10は簡単に選ぶことができたが、そこから絞り込むのに苦労した。特選の句は、誰もが抱えている不快な気分や状況を「玄関先の水溜り」に抽象化したのが手柄。

新家 完司(しんけ かんじ)
川柳塔社理事、川柳展望社会員
新家完司川柳集「平成元年」「平成五年」
「平成十年」「平成十五年」「平成二十年」
おめでとう♪ | Link |
(2009/01/26(Sun) 10:01:18)

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