「もう少し」 中野 三根子
もう少し回り道して桜見る 静 岡
もう少し時間が欲しい二十四時
もう少し話していたい月あかり
もう少し今年の桜酔いしれる
「それでも春」 長澤 アキラ
さくら咲く一年かけたサクラ散る 静 岡
木遣り歌 のたりのたりと春を引き
閻魔様待たせて旨い酒タバコ
三月の海が忘れた顔で居る
「ラ 行」 真理 猫子
唐揚げの揚がる温度で片思い 岡 崎
突風に押し流されていく理性
さくら咲くきょうはラ行で咳をする
誘惑のちょっと向こうで飯を食う
「出会いと別れ」 栃尾 奏子
ゆっくりと等身大を受け入れる 大 阪
純白のハートがサクラ色になる
春風がそっと涙をぬぐいます
余白みなあなたがうめつくして春
「うらはら」 毛利 由美
電子辞書の中身はしょせん紙の辞書 つくば
うらはらなものに新語と死語がある
リスニングぐらいはできる若者語
得だなと思う地声のとおる人
「百 の 花」 山本 野次馬
百の花咲かせて万の種を産む 函 南
涙ならいつかは乾く雑魚の意地
遮断機が開いて見えてくる晴れ間
カプセルに風向き詰めて持ち歩く
「老 老」 中矢 長仁
僕の介護していた妻を介護する 松 山
リハビリはあなたの愛が一番よ
思い出の旅の事など話し合う
手始めに一泊旅行してみよう
「満 ち 潮」 真田 義子
ゆっくりと満ち潮を聞く誕生日 仙 台
旅に出て友達二人出来ました
ひとり旅虹を探しに行くつもり
もう一度ポッケから出す春の恋
「 春 」 石上 俊枝
花吹雪風のいたずら最後の美 静 岡
うららかにホーホケキョ聞きお茶にする
絵手紙が友も一緒に春を連れ
ランドセル小さな頭ちょっこりと
「 桜 」 藤田 武人
妻の名を付けた桜が美しい 大 阪
柿の葉を桜と思いかぶりつく
下戸のママパパと晩酌桜色
飲み助が飲みたいだけの花見です
「世界地図」 濱山 哲也
さきいかのようなところがチリの国 つがる
パン屑をこぼしたようなポリネシア
わたくしの心は日付変更線
また老母がオネショのことを妻に言う
「雑 詠」 馬渕 よし子
献体はやめよう罪が染み渡り 浜 松
髪洗うたびに記憶も流される
踏みしめた大地が鈍い音を立て
カーテンを揺らし草木がみな芽吹き
「 風 」 鈴木 千代見
おしゃべりな風が噂をまき散らす 浜 松
輪の中に風がまあるく座ってる
辿り着く頂点 風も味方する
読みかけのページをめくる春の風
「派 手」 深澤 ひろむ
朝帰り女持たせる赤い傘 甲 府
髪染めて渡る世間は鬼ばかり
老いてなお派手を装う風も春
意を決しパッとばらまくあぶく銭
「夫 婦」 松橋 帆波
ドロ舟へ妻というものありがたし 東 京
夫婦にもある靖国のようなこと
父親になった当座はマメでした
妻の留守 卵を二つ焼いてみる
「雑 詠」 内山 敏子
悩みなど誰にもあるさ青い空 浜 松
新しい発見もあるリサイクル
ショッピング目移りさせる春の彩
ありのまま写った鏡憎めない
「羨 望」 増田 久子
使用前使用後逆じゃないかしら 焼 津
シェパードをなお名犬にする躾
悪銭も身につくという地位もある
駄馬でさえ背にした人だけは見抜く
「料 理」 鈴木 恵美子
一人膳気楽にすます昼餉どき 静 岡
鍋という強い味方の冬の夜
土筆炊くほろほろ苦き春を盛る
庭で摘むのびるタラの芽ふきのとう
「 春 」 滝田 玲子
ピッカピカ花の下ゆくランドセル 浜 松
レンゲ田で蟻とたわむれ走る子等
スカイツリー春の小川を飛び越える
青シートさくら吹雪の花の宴
「自 由 吟」 川村 美智代
摩訶不思議ケータイ電話うすっぺら 静 岡
きみまろのカツラが飛んだ夢をみた
チューリップ頭揃えてリズミカル
同じ屋根それぞれ暮す赤い糸
「こ の 頃」 安田 豊子
天災人災地球が軋む音がする 浜 松
散歩道石蹴りながら老いも蹴り
長生きはいいのに今日も医者通い
たんたんと生きてひとり芝居終る
「有 効」 石田 竹水
勝ち気です言い負けたって笑えます 静 岡
萎んだら惨めな毬は飛び跳ねる
御守りの有効期限表示せよ
ホチキスに出会い愉快になる絆
「 月 」 宮浦 勝登志
活力へ暦を埋める行事メモ 静 岡
満月に素直になれぬ腹の虫
もう一度やり直せるか月に問い
音もせず月日は走り老いの影
「気ままに冗句 その2」 西垣 博司
喋らせておけ妻は黙ると恐い 静 岡
二世帯の境界にある地雷源
大金の単位がちがうお金持ち
足袋を脱ぐ妻にもあった白い足
「赤 味 噌」 森 だがやん
赤味噌に別れを告げて新天地 島 田
目に涙 赤の味噌汁母の味
ふらふらとネオン戯れオケラちゃん
いつの日か波平さんも年下に
「誕 生 日」 井口 薫
誕生日いやなシールを国が貼り 袋 井
おめでとう素直に受けて明日へ向く
エンストへ不安がよぎる独り旅
ジグザグに辿り今年を膨らます
「 風 」 畔柳 晴康
油断する心の透き間抜ける風 浜 松
負け犬が遠吠えしてる朝の風
この努力試されている向い風
春風が今年の寒さ忘れさせ
「個人情報」 成島 静枝
名簿には白寿で姑が生きている 千 葉
七回忌白寿の祝い貰えそう
現住所「あの世」訂正願います
必要な名簿もらえぬボランティア
「驚 い た」 萩原 まさ子
合格の受験番号五回見る 静 岡
誕生日祝いはじけるクラッカー
驚いたふりをしないでカツラ見る
なでしこがカルビを食べて逆ナンパ
「根 性」 岡村 廣司
貧しさに耐える根性身についた 焼 津
挫折する度に根性鍛えられ
見栄を張る根性有ればぼけは来ぬ
八起き目は気力根性だけのもの
「サプライズ」 提坂 まさえ
春がすみ鏡に映る下心 静 岡
美しい人のクシャミよ杉花粉
心臓も薄毛ケアをとレントゲン
想定内とても言えないサプライズ
「踊 る」 野中 とし子
お花見にほろ酔いかげん踊りだす 静 岡
踊りたい気持はあれど七十路
東北の復興願い盆踊り
由紀さおり世界舞台に踊り出る
「三月の躁鬱」 奥宮 恒代
まだ炬燵こびりついてる寒気団 森 町
庭に鳥 私は湿布春だよー
三月の穴ぼこ舗装なんでかな
開通のお披露目ウォークトイレ列
「トホホの春」 新貝 里々子
サスペンスわたしの背骨折れました 袋 井
ししやも噛むわたしの骨もこんなもの
ナースにも京都病あり盛りあがる
はらりはらりわたしの春が壊れゆく
「リフレッシュ」 大塚 徳子
海原に霞か雲かセシウムか 仙 台
嘆かない半凶だってあるチャンス
海原へいつか飛び立つ鶴を折る
図書館で心も脳もリフレッシュ
「水槽のシャチ」 斉尾 くにこ
空っぽのままで時間の無駄使い 鳥 取
水槽の中だと気付いているシャチ
これあれそれもビールしゅわ~と泡にする
風を待つ今は人生休暇中
「春 に」 鹿野 太郎
退院をして心にもメス入れる 仙 台
生き抜いて生き抜いて見る予定表
春の風吹いて決意に梃子を入れ
飲む前に緩いカーブをチェックする
「母 の 日」 小林 ふく子
新緑が弱い命にカツを入れ 袋 井
君が起こす風には彩がある
年の差肥しに出向く趣味の会
母の日を待つふりをせず待っている
「 春 」 川口 のぶ子
とんでもない列島おそう春一番 藤 枝
春一番桜並木をそうなめに
春なのに冷たい風が吹きあれる
親元をはなれて暮らす孫娘
「自 由 吟」 村越 精也
誕生日ケーキ自前で妻気付く 静 岡
孫達が来ると粗食が弱上に
淋しいな旅番組でよしとする
横槍は議員に習え突き躱す
「入 学 式」 山田 浩則
入学式桜バックにハイポーズ 島 田
小学生黄色一色ピッカピカ
入学前試しに背負うランドセル
入学で潜り抜けたよ桜門
「 桜 」 恩田 たかし
蓮花寺の淡いピンクの華やかさ 静 岡
癒される歩く気分も夢気分
いるだけで自然な笑顔咲きほこる
満開の短い時が愛おしい
「ビックリ」 安藤 千鶴子
高飛車に出る人の手が震えてる 静 岡
驚きをスリルで遊ぶ肝だめし
想定は心配症にしてほしい
サプライズあると期待をされてもね
「踊 る」 野中 雅生
この政治踊る会議でまとまらず 静 岡
民意から離れているぞ踊るよう
民自とも踊る阿呆だやれ会議
阿波の夜踊る阿呆に見る阿呆
「自 由 吟」 南 天子
私など取るに足らない枯ススキ 焼 津
悩む人此の世に多し助けたい
ストレスに負けない意地を持っている
海近し津波が来たら押し戻す
「雑 詠」 川口 亘
出来ないと言いたくないよやせ我慢 藤 枝
悪びれもしなくなったか歳にされ
浮き沈み有って人生甲斐を見る
見た目だけ追って見えないもどかしさ
「自 由 吟」 飯塚 すみと
外見を気にして靴も家を出る 静 岡
感動をする側しかし絵は描けず
ムームーに生き甲斐見つけ姉向かう
キスをするしつこい犬が離れない
「握 る」 酒井 可福
もう二度と逢わぬ決意の手を握る 北九州
拳骨の指がタバコを持って笑み
手を握り委ねる議員見あたらず
病床の母が握った手が別れ
「 絆 」 薗田 獏沓
喧嘩する双児同時に風邪をひき 川根本町
孫ふたり嫁との絆深くする
ご近所と絆の太さ被災から
地球とは深い絆の津波災
「チャンス」 鈴木 まつ子
ふと触れた肩イケメンと撮る写真 島 田
絶好のチャンス絆はつなぎとめ
まだ若さ残って励む習いごと
縋る目に慕情を誘う電話口
「自 由 吟」 増田 信一
角が取れ丸くなってもまだ楕円 焼 津
隅突き過ぎて余計なものを出し
ごつい石 川で揉まれて海で砂
直球の取りえ崩さず後ろ見ず
「雨の匂い」 池田 茂瑠
疑いが解けたら尻尾振ってみる 静 岡
駅で会う雨の匂いが身に残る
壁の染み以上に夫婦仲汚れ
世渡りの舌を一枚酒へ足す
「茂 林 寺」 山口 兄六
ガチャピンに抱かれた朝のポンキッキ 足 利
好きな鳥遊び相手のピーコック
小魚を父が夜中に掻き回す
エビ取りが得意な息子そんな人
「尻 尾」 渥美 さと子
何となく振った尻尾でした火傷 静 岡
お人好しポチの尻尾に騙される
自己嫌悪尻尾切りたい時がある
長くって重くって恋の尻尾
「カラオケ」 荒牧 やむ茶
AKB一人練習するオヤジ 小 山
年代を超えてアニソン盛り上げる
失恋ソング歌って一人泣きじゃくる
春を待つ桜も凍るなごり雪
「雑 詠」 多田 幹江
診察券束ねてアンチエイジング 静 岡
連敗の言訳ですかテイピング
これでもネ苦労したんだミニトマト
たそがれのイントロかもねドッコイショ
「さび抜き」 永田 のぶ男
無罪だと言いきる影に色がつき 静 岡
世の中に悪が居るから面白い
シャトルから地球は欲がありすぎる
さびぬきで通な顔した伊達男
「生 き 物」 尾崎 好子
ライオンのたてがみだけでうまく生き 藤 枝
見渡すに女の偉い独り者
鳥類の何とも雄のまあ奇麗
此処までを来れば婆さん屁の河童
「春 の 靴」 薮﨑 千恵子
ウインドー覗けば春の靴が呼ぶ 焼 津
春よ春靴も浮かれて踊り出す
ハイヒール気取って歩く春の街
春色の靴で若さを取り戻す
「ま だ」 高橋 繭子
ツボミ何個落とし白木蓮が咲く 仙 台
福島の甘えてこない被災猫
「だいぶ慣れましたか?」「いいえ、それはまだ」
仮設住宅建つ公園も花吹雪
「春うらら」 森下 居久美
春うららブロッコリーに花が咲く 掛 川
春うらら色とりどりのランドセル
春うらら風が運んだ沈丁花
一人来て思い巡らす花吹雪
「割 り 勘」 佐野 由利子
目立つのが好きな女でよく笑う 静 岡
絵手紙に春の花たち踊ってる
一言を譲れば波も凪いで来る
割り勘で友情という線を引き
「 春 」 林 二三子
春の主役さくら 菜の花 杉花粉 富士宮
春の旅誘う旅行社のチラシ
桜満開思わず有難うが出る
春風に急かされ軽い靴を履く
「 花 」 谷口 さとみ
ブーケトス五回目なのにまだ独り 伊 豆
何処が先?なんて言うまいちゃんと咲く
オオイヌノフグリとはまたすごすぎる
ここだけの話が土手で満開だ
「春よ来い」 稲森 ユタカ
満開の桜の下で散った恋 静 岡
桜散る 僕には未だ咲かぬ花
ひらひらと舞い散る花と酔いも舞う
残された空いたコップに散る桜
「ミツバチ行進曲」 松田 夕介
花花花 ヨーデリヒッと歌う春 静 岡
花占いしよう奇数の花びらで
今もまだ花いちもんめ君が好き
春だもんミツバチだって踊りたい
「バ ザ ー」 川村 洋未
バザーまで待ってられない鍋を買う 静 岡
ブランドのタオルバザーで買いだめる
夫婦茶碗バザーでみつけ母にやり
おとうさんチョッとバザーに出してみる
「雑 感」 勝又 恭子
フィットしてしまった色つきのメガネ 三 島
思い出を泣いて笑って整理する
秘密みな見ているように青い月
春だから開花宣言してみます
「春の風邪」 望月 弘
三錠のルルとマスクで立ち向う 静 岡
休肝日くしゃみ一つで玉子酒
コマーシャル通りに風邪を引いてくる
仲のいい家族で風邪を貰い合う
「ムカつく~」 加藤 鰹
家族自慢 笑顔で聞いてムカついて 静 岡
○○風つまり偽物なんだよね
尖閣は都が買う 静岡はハワイ
ゴメンゴメンと遅刻して来るアルマーニ
顧 問 吟
「言 葉」 高瀬 輝男
多色刷りの言葉 濁点句読点 焼 津
かかる時言葉は無力茜空
来し方のもう戻れない持ち時間
意地張ってみても言葉は野晒しに