「幸 せ」 望月 弘
幸せな人だ妻より先に逝く 静 岡
毎日が極楽なんて痴呆症
洗っても拭いても白に戻れない
万物がやさしすぎては物足りぬ
「薫 風」 新貝 里々子
家中をマーマレードにして煮込む 袋 井
ジャラジャラとシャネルが通る風通る
連休をうおー うおーとする欠伸
たらりたらりと今日もわたしを甘やかす
「薫製の鰯」 斉尾 くにこ
菜の花の海辺ではクマノミになる 鳥 取
薫製の鰯 翁の味がする
網は手にありライオンは爆睡中
射貫かれてしまった君のピューマの眼
「五月五日」 奥宮 恒代
伝統はなくてドンチャン騒ぎ好き 森 町
ジャンケンに強いかわりに試合負け
いい時代足のもつれが酷くなる
颯爽と歩こう膝は笑っても
「ま る」 藤田 武人
曲線のボディ今ではゆでたまご 大 阪
円陣の掛け声砂に染みる汗
似顔絵は五つの丸で出来上がり
フラフープ回す姿は腹踊り
「自 由 吟」 南 天子
いやですか私とワルツ踊るのは 焼 津
気がつけば私の人生針茨
チクリさす毒の言葉の傷のあと
私など煮ても焼いても鉄みたい
「自 由 吟」 滝田 玲子
茶柱も暗いニュースでなげく朝 浜 松
愚痴ひとつ言わずに咲いたチューリップ
五月晴れ風をはらんで泳ぐ鯉
腹の虫までは写らぬレントゲン
「自 由 吟」 戸田 美佐緒
糸でんわ詐欺師の深い罠がある さいたま
気に入った男に逢ったことがない
見限った男がなにをしたとても
ふくらはぎ噂の恋が立ち上がる
「雑 詠」 寺田 柳京
しこたまに殺して食って謝肉祭 静 岡
悪口は聞こえているが知らぬ振り
糠雨に降られて猫の濡れ鼠
眼帯がとれて眩しい花水木
「空 一 枚」 真田 義子
あの時の恋の話をしましょうか 仙 台
褒められて声もだんだん丸くなる
旅に出て空一枚を持ち帰る
正直を絵に描いたよなチューリップ
「踊 る」 宮浦 勝登志
酒好きの桜グラスに舞い踊り 静 岡
花吹雪音痴も浮かれ手にマイク
いの一に乗せられて書く奉加帳
字が踊る読めぬ字の山書道展
「自 由 吟」 野中 雅生
美しい衣を着けた人に会い 静 岡
ふくれてもすました顔の野田総理
ふくれてもいつもニコニコ山の神
頼もしい三才の押す車椅子
「女 友 達」 栃尾 奏子
ごめんねと歩幅合わせて散歩道 大 阪
ちちんぷいぷいぷいほうら泣かないで
大丈夫魔法の言葉効いてくる
切なさが恋という字を書き上げる
「こ な」 濱山 哲也
噂にもたっぷり入れる膨らし粉 つがる
粉飾に必死会社の台所
こねられて心のコシも強くなる
若者の夢の話が粉っぽい
「雑 詠」 鈴木 恵美子
個性かな大らか過ぎて乗り遅れ 静 岡
雑草の茂り我が家の自然体
庶民の財布貧乏神が来て座り
年金の目減りつましきかな老後
「雑 詠」 内山 敏子
商魂に売り切れ御免急かされる 浜 松
校訓を終えて社訓にしぼられる
鈍行で見えた隠れた富士の山
へそくりで合わすと家計簿が笑う
「自 由 吟」 川村 美智代
機関銃うわさ話がふくれ出す 静 岡
やりたい事ふくらんでいる十五才
焼きうどん残るは食い気胃が踊る
ぞうの鼻お尻向けたりゆーらゆら
「生きてゆく」 提坂 まさえ
春爛漫踊り疲れた桜たち 静 岡
ガラスの靴ようく磨いて舞い納め
不眠症ひつじ十万運が尽き
付箋つきメールやっぱり消しました
「雑 詠」 成島 静枝
ガタゴトと生きてる音を立てている 千 葉
他人事じゃない孤立死はしたくない
五月病飢えた時代に無い病
最近の俄雨には出ない虹
「帰 省」 松橋 帆波
呑んできた夫ばかりが蚊に食われ 東 京
幾らって聞く癖姉も所帯じみ
姑もパトリオットを持っている
盆の灯へ話せぬこともあり帰省
「新 東 名」 井口 薫
新東名のツアーへ踊る好奇心 袋 井
新東名眠れる町が跳ね起きる
ハンドルを紳士にさせた新道路
すまし過ぎ新東名のトイレット
「初 夏」 石上 俊枝
節電にギラギラの陽が近い夏 静 岡
帯を解くように泳いで鮎がいる
ステテコで夏場所を観る亡父いる
夕立に恵みの野菜青く冴え
「 水 」 山本 野次馬
水を得た魚でござるよく跳ねる 函 南
人間の匂いのようなカルキ臭
葉脈の雫は涙かもしれぬ
死に水は是非とも酒と言っておく
「夏 一 番」 恩田 たかし
夏一番竜巻雨氷強風雨 静 岡
寝る時は暑いと寝るが朝寒い
梅雨なのに主役になれぬかたつむり
天を観る日食めがねどこで買う
「出 す」 森 だがやん
大泣きし娘旅立ち幼稚園 島 田
長居せず旅立ち消える諭吉くん
裏側を見ても恨みっこなしだよ
裏側を知らなきゃずっと愛せたの
「自 由 吟」 野中 とし子
なつかしい火鉢の上の焼きおもち 静 岡
バーゲンの買い物袋パンパンだ
衣装箱昔の服であふれそう
ネグリジェか若者達の夏衣装
「ありがとう」 増田 久子
この町の文化支える気の句会 焼 津
切り分けたピザを小さい順に取る
小さめの花に小さな蝶が寄る
大雨を来た夕刊にただ感謝
「 樹 」 鹿野 太郎
大木へなんと寄り添うやわらちゃん 仙 台
行き詰まる先で樹海が手を広げ
あの頃に帰る大きな樹の下で
木造のがれききっちり刻む恩
「ふっくら」 薗田 獏沓
叩かれて布団ふっくら春の空 川根本町
習いたて男料理のパンを焼く
麗しく生きる余生に徳を積む
踏ん切りがついて枕をふっくらと
「自 由 吟」 川口 のぶ子
裏側を表にかえる意志一つ 藤 枝
雷が吠えて轟く午後三時
渋滞を覚悟のうえで旅に出る
連休が家族揃って食事会
「自 由 吟」 萩原 まさ子
まっしぐら破竹の意志がつきを呼ぶ 静 岡
おしろいのつきを鏡にほめられる
見栄張ってパイを積み過ぎつき逃がす
一生分つきを集めたプロポーズ
「銭 湯」 深澤 ひろむ
まだ女そっと沈める片乳房 甲 府
銭湯へ都会の垢を置いて行く
洗い場に女の愚痴が捨てられる
番台のバイトなら今すぐしたい
「ず ぼ ら」 大塚 徳子
雪の化身か一輪草が楚々と咲く 仙 台
お小言を演歌かと聞く雨の午後
春うららおうなの野生踊りだす
生真面目とずぼらが馴染む五十年
「あじさいの雨」 小林 ふく子
降り出した雨に心が結ばれる 袋 井
雨上がり土もひと息ついている
あじさいの誘いにうっかりする返事
あじさいの青さに心澄んでくる
「ダ ン ス」 安藤 千鶴子
評価する中学ダンスつまらない 静 岡
情報に踊らされ過ぎ動けない
誘われて胸躍りつい鼻歌も
ディスコからマハラジャクラブ今路上
「陽だまり」 安田 豊子
少しずつ愚痴が抜けてく紙風船 浜 松
陽だまりで巡る想い出追いかける
コツコツとモチーフつなぐ老いの日々
残り火をそれなり揺らすほろ苦さ
「態 度」 岡村 廣司
風向きを見てから態度決めるとす 焼 津
見ぬ振りをしても態度ですぐばれる
謝罪馴れしているらしいあの態度
本当に懺悔してるかその態度
「雑 詠」 川口 亘
ねぎらいの言葉空虚に響き居り 藤 枝
褒められて昔言葉につい嵌る
五管から缺け始め知る梅雨の月
耳栓と云われ淋しやどじを踏む
「肩パッド」 鈴木 千代見
肩パッド外して皆の輪にとける 浜 松
肩の重み肩パッドが乗っている
肩パッド外してホッとする六時
美しく肩補正する肩パッド
「ほどほど」 酒井 可福
ほどほどが似合う男にある本音 北九州
ほどほどの酒が呼び出す左利き
無二の友酒はほどほど語り合う
抵抗のほどほど今は負け勝負
「 風 」 畔柳 晴康
油断する心の透き間抜ける風 浜 松
負け犬が遠吠えしてる朝の風
この努力試されている向い風
春風が今年の寒さ忘れさせ
「雑 詠」 飯塚 すみと
国境がほしいほしい くれないぞ 静 岡
ウグイスの鳴けない声に励まされ
なるほどね孫は優しい栄養素
偉いなあ高僧坐るだけなのに
「花だより」 鈴木 まつ子
あの時の小声で言ったあなた好き 島 田
たっぷりと甘え上手になりました
ウツ一つ消え去り春の陽へ乱舞
もしかしてきっと彼からくるコール
「リハビリセンター」 中矢 長仁
リハビリで集う婆ちゃんよく喋る 松 山
集まってよく喋るから気も晴れる
婆さん等に混じる爺さん喋れない
爺さんを預けて後はのんびりと
「 旅 」 山田 浩則
新しい道路旅行をしたくなる 島 田
草木生え旅に行きたくなる気分
新緑が旅行に誘い遠出する
渋滞をしても皆さん旅行する
「ニッポニアニッポン」 尾崎 好子
膝を打つニッポニアニッポンの妙 藤 枝
国宝の刀を飾る鴇の羽根
千年も前の人らの目線追う
鴇までも中国産に依存する
「春 眠」 永田 のぶ男
シャネル5で柔い老いの日噛みしめる 静 岡
ただ今と言えるところをここにする
針の山郵便番号伏せておく
足の底逃げどき夢で考える
「第八十三回京浜川柳大会没句供養」 中田 尚
地球から七十億の深呼吸 浜 松
サクラ散る今年も母のスネが痩せ
広告の品へ何度もレジに着く
豆つくり豆をつぶして逆上がり
「家 族」 川村 洋未
せいせいと一人で寝たい冬越した 静 岡
美人かと聞かれて違うとは言わず
ロードショウこれから二人シニアでね
チャイム鳴るうちの人なら鍵はある
「非 常 識」 佐野 由利子
年齢をごまかす化粧上手くなり 静 岡
久しぶりお茶で乾杯三姉妹
逆転を練る企みは慾だろう
責任は大人にもある非常識
「一 流」 薮﨑 千恵子
名人の道に叙勲の花が咲く 焼 津
アスリート足に保険を掛けている
一流というレッテルに客の列
一流と名の付くものに縁が無い
「 力 」 増田 信一
縁の下支え続けて定年に 焼 津
力んでも開かぬ扉が抜けば開く
近づくと遠心力で飛ばされる
力瘤つくって見せて後ずさり
「ア 行」 中野 三根子
朝が好き今日も元気な朝が好き 静 岡
今が良いゆったりとした時が好き
嬉しいな新茶がうまい良い季節
エンドレス幸せな時エンドレス
「雑 詠」 多田 幹江
パワハラも頑と動かぬ棒グラフ 静 岡
人徳かまだどしゃ降りに遇ってない
風港別れ上手なゆりかもめ
お通しの小鉢に逢ってゆく酒場
「自 由 吟」 林 二三子
存在感見せる桜島の煙 富士宮
絶景に気持ち広がり鬱も消え
幼い日が懐かしいSLの旅
富士山を美人に見せる芝桜
「ユタカの初夏」 稲森 ユタカ
窓からの夏の陽ざしが俺を呼ぶ 静 岡
用もなく涼みたいだけデパートへ
新緑の並木通りが似合う俺
海歩く眩しいビキニに目が泳ぐ
「春 の 風」 谷口 さとみ
バクだって寿司もケーキも食べたかろ 伊 豆
どくだみを踏まないように逃避行
天婦羅にしてあげましょう春の風
花に水あげて美人になる私
「自 由 吟」 森下 居久美
云うことを聞かない人もお天気も 掛 川
手伝いの家族が揃う農繁期
団欒の会話が凍るおやじギャグ
カーネーション母が元気で居てくれる
「アラウンド日本」 毛利 由美
社説から読める右向き左向き つくば
きな臭い国がアジアに多すぎる
人間は白黒そして小沢色
原発は停まっていても危険物
「軽 ― い」 荒牧 やむ茶
ポチまで軽く見られている威厳 小 山
軽く見た奴に手柄を浚われる
ハイハイと相槌愛も軽かった
故郷へ帰るスキップして帰る
「自 由 吟」 勝又 恭子
B型で自由気ままと括られる 三 島
部屋丸くすれば小さな丸で掃く
英文があみだに見える眠い午後
自信あることは小さな声で言う
「母 の 日」 松田 夕介
母だけは信じてくれるデクノボー 静 岡
母の日とぶっきらぼうに花贈る
悩んだら占い師よりお母さん
母ちゃんに言えぬ感謝の赤い花
「鷹 の 爪」 真理 猫子
プライバシー保護で芝生の無い隣 岡 崎
遺伝子のところどころに鷹の爪
他人より遅い時計で生きてます
万病の薬を四つ葉のクローバー
「石 積 み」 池田 茂瑠
再起する机の向きを先ず変えて 静 岡
丸い月軽い財布と眺めます
まだ足りぬ母の喪中の石積みが
微笑みの効き目も薄くなり独り
「雑 詠」 長澤 アキラ
便座の上でひねった一句とはとても 静 岡
来たバスに乗ってしまったオフロード
極東で火力強める中華鍋
焼酎に溺れる夢を休肝日
「時 事 吟」 加藤 鰹
尖閣と千島に基地を移したら 静 岡
しずちゃんも猫も議員の道がある
亀井さん下の名前がイヤですね
トキの羽根めくればメイド・イン・チャイナ
顧 問 吟
「言 葉」 高瀬 輝男
思いっきり叫んでみたいバカヤロー 焼 津
雲も浮く空だ親しみ持てそうだ
思いやりならばわたしも持っている
景色良し空気もうまいが貧乏だ