霜石コンフィデンシャル131 高 瀬 霜 石
「ポールがやって来る
ヤア!ヤア!ヤア!」
行って来ましたよ。夢のポール・マッカートニー公演へ。息子と二人で。 ワーイ♪
東京まで足を運んだ弘前のファンは、一体何人くらいいたのだろう。なにせ東京公演は、十一月十八日、十九日、二十一日の三日間もあったのだから、勿論僕のように抽選に外れて涙を飲んだ人はわんさかいただろうけど、でも、運良く当たった人も、それなりにいたはずだ。
会場の「東京ドーム」は、野球の時で、5万5千人入るのだそうだ。コンサートとなると内野に―一応自分の椅子はあるけど、始まるやいなや、みんなが一斉にワァーッと立ってしまうから、椅子があってもあんまり意味がなく、ただ値段だけは張るという―「アリーナ席」なるモノを設置するから、6万人を超える観客がひしめいていたわけだ。
東京ドームに外れた僕が「京セラドーム大阪」に当たったのは、交通費が増えたが、実にラッキーだった。
入った途端、小さいと思った。大阪は野球の時で、4万8千人。コンサートでは5万5千人だとさ。
会場は、少しでも小ぶりの方がいいに決まっている。1メートルでもポールに近づきたいものさあ。
僕たちの席は、残念ながらそのアリーナ席ではなくて、3塁側の1番うしろの席。それでもS席(1万7千500円)なのですよ。ステージからは遠くて、しかも高い(値段ではなくて、空に近い)席である。
だけど、この席がよかった。野球のスタンドだから、結構勾配がキツイ。立つとアブナイくらいの急勾配なので、誰も立たないのだ。これはいい。
アリーナ席よりはそりゃあステージに遠いけれども、でもアッチからだってコッチからだって、ポール様のお姿は所詮蟻のようなもの。我々観客は、ステージの左右にドーンと置かれた巨大なスクリーンで、ポール様のお姿を拝見する仕組みになっているのだ。
ずーっと立ちっぱなしのアッチよりも、ゆっくり座って見ていられるコッチの方が、百倍もいい席。
ポールは今年七十一歳。となるとこれが最後の世界ツアーになるだろうとの噂が飛び交い、チケット争奪戦が始まったのだが、それは全くの杞憂であった。
ポールは、ぶっ通し二時間四十五分のステージで、40曲を歌いまくった。コンサートが終わって、僕たち親子は、安い屋台で、飲んで笑って、飲んで泣いた。
2014年2月号