「もういくつ寝ると」 松田 夕介
子鬼等が手を出し迫るお正月 牧の原
正月は俺もニートとなり過ごす
高く舞え今年の豊富のせた凧
大掃除億万長者への切符
「お 正 月」 鈴木 千代見
元旦のまぶしく光るカレンダー 浜 松
初日の出きのうが遠い過去となる
お年玉渡せばすぐに帰る子等
五十年賀状とだけのお付合い
「雑 詠」 西垣 博司
宿六と主人 稼ぎで区別され 静 岡
目立つまい蝶で翔ぶより蛾で生きる
正直に云って得したことがない
制空権奪った妻の蠅叩き
「食 べ る」 鈴木 恵美子
エコエコと言いつつ電気食べている 静 岡
もったいないを食べてメタボの戦中派
探しもの時間ばかりを食べ盡くす
ぼけ防止活字を食べる事にする
「多 忙」 岡村 廣司
家族達皆ものぐさで儂しゃ多忙 焼 津
収入にならぬ仕事で忙しい
眼が回る割にはお金回らない
正月は五臓六腑も忙しい
「新 年」 小林 ふく子
神までの縄は太めを用意する 袋 井
初春へ踏み切り線が濃く見える
新年へ夫婦の歩巾また合わせ
新風に揺れる絵馬の字うれしそう
「原 点」 酒井 可福
原点に僕の心を取りに行く 北九州
原点に戻り妻にも物申す
原点に戻りあしたの夢を見る
原点に戻れ竹馬の友が居る
「君だけを…」 栃尾 奏子
流星群見つめて二人白い息 大 阪
幸せな時間を分かち合う笑顔
君だけを愛した僕の一ページ
初恋を挟んでアルバムを綴じる
「任天堂Wii」 森 だがやん
せがまれて嫌々ながらゲームする 島 田
遊ぶうち子を押し退けて前に出る
熱くなり振ったリモコンすっぽ抜け
窓破り風が冷たく頬撫でる
「数 独」 毛利 由美
数独とパートと家事で今日を終え つくば
懐かしいサンタクロースしていた日
懸賞に応募 十歳サバを読み
当ったら連絡欲しい宝くじ
「幸 せ」 真田 義子
絵に描いたような幸せきっとある 仙 台
私の心のすき間埋めたバラ
お互いの心の角を洗う酒
ひと言で風の流れを変えた母
「雑 詠」 馬渕 よし子
目が合って心がやたら騒がしい 浜 松
恥かいた夜はシャワーを強くする
右に揺れ左に揺れて意は持たず
欲望の枝がいまにも折れそうだ
「冬 帽 子」 大塚 徳子
あの女アル中なのかわめいてる 仙 台
暗くなりとうとう女閉め出され
失敗を重ね大きな器焼く
夕焼け小焼け無事なひと日の冬帽子
「自 由 吟」 深澤 ひろむ
連れ添えばひとつふたつはある誤算 甲 府
諸事情を察して貰うのし袋
方言に触れると喋り出す昔
喜びの余韻遊ばす赤ワイン
「七福神巡り」 荒牧 やむ茶
同窓会恵比寿と布袋様ばかり 小 山
五円玉スルリと落ちた初詣
大吉で今年の運を使い切る
初夢の弁天様が色っぽい
「雑 詠」 松橋 帆波
あの人の街にも白い雪かしら 東 京
二度鳴って切れるわたしのかくれんぼ
鬼じゃないほうが楽しいラブゲーム
終電はいつもカボチャの馬車である
「フォルティシモ」 斉尾 くにこ
まだ泣くなレディースデイは水曜日 鳥 取
身奇麗にほら逃げている構えてる
認めますやきもち焼いているのです
囁きに突然恋のフォルティシモ
「自 由 吟」 滝田 玲子
上げ底に小さな嘘もつめておく 浜 松
ロボットも人間並に出す涙
聞こえない振りで聞いてる地獄耳
国会の辞書から恥の文字が消え
「ディサービス」 寺脇 龍狂
九十四が一番元気ハイタッチ 浜 松
大正の指に折紙馴染まない
男一人皺と白髪に一寸モテ
飾らないブスの言葉が美しい
「雑 詠」 萩原 まさ子
究極の笑顔誰をも倒します 静 岡
さっぱりが好きでダイエットのおまけ
流し目も手紙でも彼なびかない
二十日ぶり空恐ろしい妻の笑み
「雑 詠」 石上 俊枝
まぐれです賞に謙遜腹でV 静 岡
悪友の発破に奮起感謝する
嫉妬心女友達覗き見る
夢と友辛さを分けた釜の飯
「雑 詠」 川村 美智代
廻る寿司大トロニヤリ逃げて行く 静 岡
術仲間いっせいのせで船出する
グルメ食べ愚痴は吐いたが淋しい日
会いたいね決まり文句の年賀状
「雑 詠」 提坂 まさえ
尖閣も四島もみな妻の手に 静 岡
どうせまた空白多い手帳買う
あちらでも友百人と謳いたい
級長は今も級長クラス会
「自 由 吟」 野中 とし子
ポチ袋のぞき見してる孫の顔 静 岡
台所ママはキッチンドリンカー
新婚の日記開いてにやりする
サンタから思いがけないプレゼント
「自 由 吟」 野中 雅生
民主党はじめにやりで今ひやり 静 岡
尖閣に国を支える友もなし
古里の友達はみな土の下
この俺でよかったのかとニヤリする
「十 二 月」 奥宮 恒代
透き通る子供の声に元気づく 森 町
ゆったりと雲と流れている時間
十二月跳ばして来年考える
紅葉の果ての冬ざれ十二月
「皇帝ダリア」 成島 静枝
秋冷へ凛と皇帝ダリア咲き 千 葉
ダイアナ妃彷彿させるお嫁さん
皇室の薔薇へと嫉妬するダリア
枯れるよりダリアも惚けるのが怖い
「雑 詠」 井口 薫
受け入れてだんだん丸くなる背中 袋 井
鈍感で良かった深手負わず済み
舵取りが下手で尻尾は泣かされる
疑いもなくカイワレは競い合い
「 友 」 安田 豊子
輪の中に生きる目当ての友がいる 浜 松
人生の余白でまるい友ができ
ほろ酔いの友と合わせる里心
ありがとう友の一言身に沁みる
「う わ さ」 瀧 進
風に乗る噂話とシャボン玉 島 田
艶っぽい話巷の風に乗り
艶聞を乗せて千里の馬がゆく
遠聞の流れ果てなき偏西風
「師 走」 畔柳 晴康
師といわず木偶も走らす年の暮 浜 松
悲喜交る数え年だがまた増える
年の瀬を越すに苦労の荷が重い
お年玉孫と曾孫の数をする
「 暮 」 川口 のぶ子
刻の経つ速さが急に身にしみる 藤 枝
暮という言葉にいつか気をゆだね
年越しに年金すべて使いきり
将来と思えば不安つのる日々
「若 さ」 薗田 獏沓
年とった証拠に若さ自慢する 川根本町
控えめのセンス若さが溢れ出る
怖いもの知らずの若さ好奇心
笑い声散らしてさっと駈けて行き
「時 の 運」 鈴木 まつ子
また欲が湧いてきました時の運 島 田
福の神来たかも知れぬ独りの灯
よく撮れるピントも合ってみな美人
欲ひとつ捨ててあしたの風をよむ
「自 由 吟」 内山 敏子
一年の重みどっしり年を越す 浜 松
年金の新春可もなく不可もなく
伝統の味へいまいち匙加減
夫の留守ネジがゆるんだままで居る
「雑 詠」 山本 野次馬
その先をうっかり笑う年の暮れ 函 南
仕方なく生かされている午後の風
さりげない言葉になみだする殺意
保護色になるまで夕陽の赤でいる
「自 由 吟」 鹿野 太郎
カーテンを替えて昨日の傷が消え 仙 台
周遊券種まき終えて買いに行く
ハンターが食物連鎖見て回る
爽やかな水を本屋で流し込む
「雑 詠」 川口 亘
まだ見えぬ見果てぬ夢に追い込まれ 藤 枝
辛抱に堪えて希望を明日に継ぐ
体力を取り戻しつ有り今日を生き
やり場ない落ち込んだ気の救う道
「雑 詠」 飯塚 すみと
継承の山里神楽夜はふける 静 岡
大道芸早いな今年も見る人も
一言がこわい法相追い出され
余暇もいい富士川楽座富士きれい
「2011」 高橋 繭子
定期券切れていないか十二月 大河原
青空に続いて2011年
フニフニの鼻も大事にうさぎ年
毛づくろいうさぎ願掛けしてくれる
「等 身 大」 新貝 里々子
シルバーの席でケータイ注意され 袋 井
うっかりと自動ドアだと思い込み
等身大の鏡はお世辞など言わぬ
何事もなく日が暮れる感謝する
「感 謝」 森下 居久美
ステージの君が眩しい誇らしい 掛 川
卒業のあなたへ贈る努力賞
手拍子のスパカリ、テキーラ焼き付ける
ゆるぎない絆仲間にありがとう
「お 正 月」 藤田 武人
プレステで負けた父勝つコマ回し 大 阪
上がりまであと一コマで六が出た
凧凧上がれビルの谷間を走る子等
パパの顔アイドルになる福笑い
「チャリ通」 恩田 たかし
寒い朝バイク通勤めちゃ寒い 静 岡
チャリ通で健康診断基準内
約一年チャリ通勤の成果あり
気を付けて油断をするとリバウンド
「師 走」 小野 修市
一年のつけを延ばして師走かな 静 岡
餅買っておせち作って歳かさね
一年を勘に頼って寒い暮れ
走っても重ねた月日追いつかぬ
「ノーベル科学賞」 尾崎 好子
日本のお家芸二氏科学賞 藤 枝
ノミネートから長かった一昔
脈々と今を世の為人の為
スクラップして語部に孫曾孫
「丸 亀」 山口 兄六
ぷっぷっぷオナラが出たねいい夫婦 足 利
ラフランスあの日どっちにくびれたの
秋をむくどんな味かは知らぬまま
秋の山もみじ饅頭じゃったのぉ
「勇 気」 中野 三根子
少しだけ勇気を持って言ってみる 静 岡
イブの夜舞い散る雪が味方する
今夜こそ今日こそ告白してくれる
月あかりひとりで回り道をする
「扶養家族」 多田 幹江
キッチンで冷や汗をかく肝っ玉 静 岡
わたくしに蓋をして出すアンケート
何を着てもお似合いねとはビミョウ
扶養家族でカリスマ主婦でいい女
「 絆 」 石田 竹水
花言葉ドライフラワーにも有るよ 静 岡
我儘な友へ時々灸を据え
生命の予備が買えないので修理
自然解凍夫婦の絆は常温
「無 題」 長澤 アキラ
輪郭の薄い絵だった落葉舞う 静 岡
乱れてもいいよと酒が腑に落ちる
鈍行の貨車でも妻はよく笑う
ありがとう最後にきっと言うつもり
「 犬 」 増田 信一
犬猿の仲よりちょっと良い夫婦 焼 津
吼えるだけ危ないところ行かぬ犬
忠犬が満月見ると狼に
荒海を犬掻きで行く変わり者
「こ た つ」 濱山 哲也
世帯主のタマによく似てみな猫背 つがる
みの虫の顔で見ている梨園劇
職安にサンダル履きの長い列
ふるさとで私を待っていたおこた
「ゆく年くる年」 谷口 さとみ
ちょっと待て使ったことがないゲゲゲ 伊豆市
海老蔵の臨時興行「記者会見」
歳重ね欲が磨ぎ清まされてゆく
湯の中に喜怒哀楽を混ぜる旅
「自 由 吟」 林 二三子
富士山の雄姿に元気もらう朝 富士宮
子らの絵の展示で和む無人駅
同じ趣味持つ友がいて和ができる
女子会の半端ではない盛り上がり
「 罠 」 稲森 ユタカ
時間かけ男を騙す化粧する 静 岡
雨に濡れ全て剥がれた化けの皮
売り上げを延ばすフレーズ3D
落とし穴掘りすぎ自分出られない
「自 由 吟」 勝又 恭子
友と飲む美酒がさらなる美酒となる 三 島
今もまだ風を待ってる風車
ライバルはいつも自分の中にいる
すぐとれるように接着剤を塗る
「賭 け」 真 理 猫 子
探し物無くてサイコロ振ってみる 岡 崎
深呼吸して網に載る鏡餅
恋人は入ってないが福袋
じゃんけんに勝ったらあげるうろこ雲
「 夢 」 佐野 由利子
バラ色の夢は誰にも話さない 静 岡
友人は借りを忘れる癖がある
病院の待合室で友となる
あらダンナまだ元気なのお気の毒
「霧より虹」 池田 茂瑠
間違いと知っても赤く抱く炎 静 岡
八起き目のためにスタミナ付けてます
霧よりも私は虹が欲しかった
私の火受けて下さい熱いうち
「 箸 」 永田 のぶ男
身内でも色とりどりの箸がある 静 岡
子や孫を鮨で集めて祖父の笑み
似てきたか親爺の背中ここにあり
長男は試作品なりいかがです
「雑 詠」 川村 洋未
道を聞く犬を抱いてるおばさんに 静 岡
お化粧は保湿クリームチョンとつけ
すき焼きをたべさせてよとネギが来る
地下街の雨いつやむか待ちぼうけ
「雑 詠」 薮﨑 千恵子
一人旅こぼれ話を聞きながら 焼 津
恋心そっと背を押す風優し
友情の美名の上にかく胡座
友情もガラス細工に似た脆さ
「振り向いて」 望月 弘
大海の波に国境洗われる 静 岡
九条へじわりじわりと休火山
紅白はトイレ掃除が済んでから
哲学へイチローとルビ振ってある
「雑 詠」 加藤 鰹
マンモスよ第二の氷河期は今だ 静 岡
レトルトのモチと会話のない夫婦
酒の香に集まってくるキリギリス
躊躇した途端に消えた冬の虹
顧 問 吟
「雑 詠」 柳沢 平四朗
ビル街の蟻を落葉が尾行する 静 岡
雪だより山の仮面は錦脱ぐ
問い詰めてみたら善意も縫いぐるみ
偽物の真珠が重い妻の首
「雑 詠」 高瀬 輝男
時効待つ話も持って日を送る 焼 津
生き方が上手だったか丸い石
笑う声叱る声やら生きて行く
太陽にまだしばらくは世話になろ