平成二十二年 年頭吟特集 賀状より

えんじぇるの羽根が覗いているポスト  赤松ますみ

初春の夢弾む歩幅の八十路坂      秋本トヨ子

久々に書ける『年賀』のありがたさ   浅利猪一郎

本物の虎の尾踏んだぬいぐるみ     阿部闘句郎

初孫へもう無理と知る寝正月      安藤 紀楽

未だノルマ積み残してる七十五     五十嵐 修

骨を抜く女将も春の装いで       池田 茂瑠

寅の子を抱いて夢見る寝正月      石井  昇

タイガーアイの奇跡信じる初春の夢   いしがみ鉄

虎の巻次の世代に老いの役       石上 俊枝

負けん気な張り子の虎の好奇な目    石田 竹水

自堕落を虎と分けあい寝正月      石田 柊馬

夢翔るトラにも草食のすすめ      石橋 芳山

元日は歳を得る日と心得り       五十川 操

虎千里 人は何里で折り返す      板垣 孝志

躍進の千里の径を突っ走る       市川 重雄

粛々と夢の続きに手を引かれ      伊藤 我流

絵に画いた虎に目ん玉入れてやる    伊藤 泰史

虎の皮被って齢を遣り過ごす      伊藤三十六

もう一度素顔に戻りたい地球      犬塚皓すけ

虎皮のパンツが似合いそうな妻     今井卓まる

虎の縞 心のひだもかくありと     今川 乱魚

サーカスの虎は火の輪に動じない    岩田 笑酔

おずおずと蛸壺を出て陽を拝む     岩淵 黙人

ていねいに肺を洗っている淑気     梅崎 流青

虎の図に健康託し鈴を振る       遠藤みゆき

余生まだ寅にならずに屠蘇を呑み    遠藤 木犀

まどろみの中で名句を浮かばせる    近江あきら

新しいポーズで春へトライする     大石 一粋

上り坂 風を味方に男下駄       大河原信昭

夢小僧もんどりうって春が好き     大坂 斗昇

寅五頭揃えて祝う初春の膳       太田紀伊子

寅の年ホップステップジャンプする   大塚 徳子

虎の子にやさしい名前つけましょう   大野 風柳

八十坂越えて張り子の虎になる     大橋 政良

犬と僕手をとり合って年を越え     岡部 美雄

新春の決意を妻は鼻嗤い        岡村 廣司

丸い背を伸ばして初春の陽に晒す    奥田 一星

初春の空にジャンプで掴む夢      小野 修市

写真から聞こえてきそう大笑い     風間なごみ

共にある時間 輝きだす時間      勝又 恭子

オオカミの誤算 子猫はトラになり   加藤  鰹

虎になるために今夜もウォーキング   門脇かずお

虎の威を借りて一ト吠え仰臥床     金田政次郎

古里も君もぞっこん惚れている     鹿野 太郎

マニフェスト張り子の虎に見える春   鎌田 一尾

欲張らずあせらず今年また一歩     川上 大輪

酔い覚めが若水となり年も明け     川口  亘

挑戦の年で夜明けを待つ目覚め     川島 五貫

二代目を継がぬ草食系の虎       河内沙智子

日が昇る 寅の女が紅を引く      川村 洋未

うんうんと張り子の虎が運招く     川村美智代

健やかに年を重ねて初春を酌む     北村 吾朗

素手素足 大根の白 葱の白      木本 朱夏

一年の幸を願って屠蘇を汲む      葛岡ヒデ子

虎猫と温めあって夢の中        熊谷 岳朗

この瞳形状記憶して眠る        孝井  栞

此処一番虎は一喝して眠る       小島 蘭幸

迎春と書いてシアワセなんて読む    児玉ヒサト

後にも前にも妻と義母の虎       小林信二郎

響き合う和音が元気作り出す      小林ふく子

ほんすこし背中を丸くした白虎     小林満寿夫

寅年の景気浮揚を祈願する       小林 良恵

還暦の寅にもつばさ欲しくなる     駒木 一枝

初春の千両万両紅く笑む        古俣 麻子

屠蘇少し可愛い虎で猫かぶる      酒井 可福

霊長類ヒト科寅年舵を取る       提坂まさえ

もう一度花を咲かそう喜寿の春     桜井 閑山

虎の子の孫じゃれあってすくすくと   佐藤 岳俊

寅年の尻尾に餡が詰まってる      佐藤 孔亮

気っぷだけ寅に負けまい春支度     佐藤 灯人

一分を捌くみごとな牝虎羽じゃ     佐藤美枝子

気負わずに行く履き慣れた靴      佐藤 美文

春の宵ちょっと開けたい玉手箱     真田 義子

恙無く新春を迎える幸思う       佐野由利子

さくらいろの水にふやかす花ごころ   澤野優美子

生真面目でおっちょこちょいの虎である 柴崎 昭雄

正月は七福神と飲んでます       四分一周平

熟慮して農より照す初日の出      島田啓三郎

神の顔だって三度か初詣        島田 駱舟

わくわくとどきどき胸の縞模様     志村まさ尋

さあ行くぞ風神雷神位置につけ     樹萄 らき

虎の威を借りて今年も乗り切ろう    新貝里々子

これからの地球のためにトラになる   杉山 太郎

花も実も詰めるこよみの年始め     鈴木恵美子

新しい出逢いに夢と希望盛る      鈴木千代見

こぼれ陽にこぼれ咲くなり室の花    鈴木まつ子

トラ年の夫へ走り易い靴        妹尾 安子

交代の時期だと寅が威張りだす     芹澤穂々美

阪神ファン屏風の虎も連れて行く    薗田 獏沓

初詣でYES、WE CANと唱えけり 高瀬 霜石

新春へ先ず革袋買っとこか       高瀬 輝男

阿呆の見る夢もまだまだありそうで   高橋はじめ

屋根上で火伏せの虎が躍り出す     高橋 朗風

もう檻を破ってもよい老いの虎     瀧  正治

健やかな平和を願う初日の出      滝田 玲子

やわらかな色で初春やってくる     竹内ゆみこ

余生とや時代おくれも悪くない     田制 圀彦

裾野ゆく目ぐすり注して紅点して    多田 幹江

あれこれを胸に刻んでいる誇り     田中 新一

五たす五で無限の夢をつかみとる    谷口さとみ

一月一日の漬け物石が置いてある    千島 鉄男

種の中ボク色の芽を出す準備      塚本 寄道

生きるって恥の上塗り重ね塗り     塚本 純子

さあどんな年になるのか楽しみだ    辻   葉

万歩計千里の虎を視野に置く      津田  暹

天体の実話が屈く虎の初春       土屋 渓水

男の子吠えない虎になっちゃ駄目    てじま晩秋

初空へ老の拳を突き挙げる       寺田 柳京

ラブレターそっと挟んだ切手帖     寺脇 龍狂

一本の線をずうーっと引いている    徳永 政二

魂の港 絆をもやう舟         栃尾 奏子

虎の威を借りたいトラはすでに酔い   中島 久光

シワよりもお金が増えてほしいもの   中曽根恭子

とらどしの絵馬にあやかるはるの酒   中田たつお

トラよりも弱い身体になやまされ    中田  尚

腐葉土に貰った愛を赤にする      長澤アキラ

自分史にタイガーマスク抜けたまま   浪越 靖政

従順な杖と人生折り返す        成田 孤舟

初春三日ピンクの虎になってます    西 恵美子

ゴロ寝したトラは箒であしらわれ    西垣 博司

生きてゆく弱さを捨てる虎描いて    西潟賢一郎

チェンジするつもりで春の滑走路    西端 康孝

虎の尾を踏まない道を模索する     西來 みわ

婚カツの猫トラになる初春の酒     萩原 典呼

年が明け頼みのトラの網をとく     萩原まさ子

エコエコと正論かかげられてもなあ   畠山 軍子

虎であることをも一度おもいだす    濱山 哲也

虎の皮借りて強気に生きてみる     林 二三子

翔ぶ跳ねるパワー寅年から貰う     樋口 一杯

吠えていた頃のあんあたは光ってた   菱木  誠

この上のしあわせはなし顔五つ     尾藤 三柳

迷うのはわたしの海の部分です     ひとり 静

飄々と米寿の旅にあたたまる      藤沢 岳豊

寅年で吠えてみたって平は平      増田 信一

庚寅お坊ちゃまには荷が重い      松橋 帆波

千里翔ぶ寅よ良い春つれてこい     真弓 明子

電柱は精神力で立っている       丸山  進

積み上げた石から初春が巡り来る    丸山 健三

神様にワイロを贈り生き延びる     松尾 冬彦

山一つ越えて迎える初日の出      松川多賀男

寅さんに会いたくなってビデオ見る   松田 順久

米寿なお駄馬を走らす趣味を持ち    増田まさし

だれよりも優しい虎になるつもり    宮村 典子

虎の威で福を呼び込む初日の出     御田 俊坊

バカと寅 観光バスに乗っている    水品 団石

盃に若き翁の顔浮かぶ         村井 規子

古里に仕来りがある初春三日      村松はじむ

虎河童仲良くやろうよ楽しい是     望月 邦昭

電磁波に土鍋の尻がくすぐられ     望月  弘

お二階へ父は小さな旅に出る      本村 靖弘

初乗りのアクセルふかし寅が吠え    森田 安心

賀状手にあんな空こんな空 笑う    山口 早苗

霧晴れて虎は新天地を目指す      吉道航太郎

迎春を一句に託す道の華        柳澤平四郎

白鳥の夫婦に新春の雪優し       山崎 蒼平

寅年に運を委ねる初詣         薮﨑千恵子

君だから時間を積んだ意味がある    山下 和一

初春の鐘撞いて夢追い人になる     八木田幸子

俺千円ペットは総合美容室       山田 迷泡

打たれ強い釘で野心は捨ててない    横山 昌利

今年また真っすぐの道踏み固め     若山 大介

七色に爪染め上げて年女        渡辺  梢

老虎悠々風刺の的を見逃さず      渡辺 貞勇

通過する車窓のように年が明け     渡辺 松風

★そのほか、たくさんの賀状ありがとうございました。