せんりゅう広場
富 岳 抄
「追憶 その一」 渥美 さと子
鰯二匹教育勅語聞いていた 静 岡
袖口に鼻水の透けた屍
麦の穂に住まい明かさぬ揚げ雲雀
じいちゃんと刻み煙草と長火鉢
「エ リ ア」 新貝 里々子
百花繚乱そのひと花に紛れ込む 袋 井
おんなというエリアを消してゆく月日
あれ以来想い出しては満たされる
くずかごに放る年寄りの冷や水
「恋のコンシェルジュ」 斉尾 くにこ
風向きでナイフにもなる笑い声 鳥 取
花束をもらう柩にいるように
やわらかな両手は恋のコンシェルジュ
ひらがなをいっぱい遺しキミ泣かす
「ユーモア川柳」 岡村 廣司
無駄省け言ったら最初外された 焼 津
電話では美人かブスか解らない
お見合いの写真その日に返された
私より相手の嘘は格が上
「冗句 その十」 西垣 博司
付け睫 視力改善とはならず 静 岡
紙一重よりイマイチと言っとくれ
全ボツで行く気になった脳ドック
万札の皺にドラマの跡がある
「花いろいろ」 増田 久子
切り花にすると哀れなチューリップ 焼 津
当人は花の気でいる葱坊主
茄子の花どこにも無駄な子はいない
誕生日彼女に花輪担いでく
「自 由 吟」 菅原 花子
ソヨソヨと葉っぱが揺れるソヨゴの木 盛 岡
クヨクヨを捨てたら楽になるだろう
ビタミンで心身ともに癒される
跳ねて飛ぶウサギのようになりたいな
「このごろ」 横田 輪加造
色の名は戦隊モノに教えられ 東 京
のりピーも聖子も女優だなやはり
道真がここにもおわす総選挙
ソーハラのソーには遠く日記書く
「大 小」 藤田 武人
蚊や蚤もでかい命を持っている 大 阪
愛という小さじひとつの味を付け
初顔の小兵が綱を寄り切った
隠し味決め手は愛を小サジ1
「二丁目の近況」 栃尾 奏子
気の弱い僕も図太い君となら 大 阪
無添加の証にカビが生えてきた
元嫁に今カレ世間ややこしい
政治家は約束守りはれへんし
「自 由 吟」 鹿野 太郎
出世する給湯室が太鼓判 仙 台
忘れてた傷をラジオが抉り出す
浜から浜へ探し続けている五体
有り難い話を聞いた耳を拭く
「弁 当」 酒井 可福
褒めなけりゃ次が無くなるお弁当 北九州
蓋にのり付いておかずはどこへやら
手を抜いた弁当箱に500円
夕食の残りおかずで色を添え
「拝啓 奥津軽より」 濱山 哲也
犬までも訛っていると笑われる つがる
バスじゃない証拠2両で走ってく
外人もここいら辺じゃ芸能人
「また来る」と言っていたけどまだ来ない
「 旅 」 成島 静枝
お土産は買わないつもり旅鞄 千 葉
軽装で二泊三日翔ぶ熟女
作り置き箇条書き貼る冷蔵庫
夫婦して元気今でしょ旅の空
「自 由 人」 山本 野次馬
外枠を外してみれば自由人 函 南
居酒屋の暖簾に吊るす雑学書
小骨まで丸くして行く喉仏
酸欠で話した嘘が途切れ出す
「自 由 吟」 内山 敏子
国訛り人それぞれの味に逢う 浜 松
さよならの残る未練に雨しとど
新人レジ苺パックを下に入れ
母を恋うベビーポストの涙つぶ
「片 思 い」 薗田 獏沓
好きなんて言えぬ素朴な野のすみれ 本川根町
花買っただけで終った春の恋
片恋の想い溢れている日記
どうしても真正面には座れない
「意 外」 鈴木 千代見
MRI過去の傷など消えている 浜 松
人生のドラマを秘めたロスタイム
ノンアルの勢い借りてプロポーズ
ハードルを下げて私は空を翔け
「 忘 」 宮浦 勝登志
度忘れという手を使いいつも逃げ 静 岡
置き場所を変えるとなぜかすぐ忘れ
忘れても困ることない情報化
おぼえる気さらさらなくてすぐ忘れ
「自 由 吟」 滝田 玲子
聞こえない振りで聞いてた地獄耳 浜 松
被災地の絆をつなぐ夏祭り
漢字のパズル鉛筆なぞるボケ防止
清水の舞台で打った猿芝居
「自 由 吟」 松橋 帆波
減りそうで金歯はそっと磨きます 東 京
胃袋とウエストだけはエコじゃない
血糖値にも偏差値があるらしい
脇腹をつまむとラード出てきそう
「梅 雨」 川口 のぶ子
梅雨なのに雨が何処かへ旅行中 藤 枝
稲作に雨が欲しいと空あおぐ
紫陽花が梅雨を待たずに咲き始め
今年また菜園作り腕ふるう
「翔びたくて」 井口 薫
感嘆符いっぱい盛って鮮度保持 袋 井
好奇心絶やさぬように水をやる
脳味噌の打音検査にある不安
翔ぼう翔ぼうとカウントダウン繰り返す
「水 無 月」 奥宮 恒代
お嬢さん若さアピールミニパンツ 森 町
一族の笑顔 百五で大往生
ミスマッチなんて気にせず手を繋ぐ
水無月の女心に咲くあやめ
「たなばた」 小林 ふく子
たなばたへ希望を託す平和の字 袋 井
たなばたを川に流してどこ行った
ミルキーウェイ悲しい恋の物語
笹が揺れ赤子も何か言いたげに
「シーズンイン」 毛利 由美
足さばきも軽くマーメイドスカート つくば
就活に汗するウォッシャブルスーツ
汗吸ってくれそうなコルクサンダル
番組改編 浮気するのもこの季節
「ゆっくりと」 真田 義子
道草をしながらゴール目差します 仙 台
ゆっくりと自分の道を行く六十路
海見えて坂道歩くゆっくりと
ゆっくりと夢を繋いで生きていく
「重 い」 安田 豊子
いつまでも母という荷が背に重い 浜 松
身内事大事小事に抱く絆
重い口開く男が度肝抜く
双肩へ世間ばなしがしつっこい
「星めぐり」 外側 としみ
さんざめく星に願いを掛けてみる 磐 田
カシオペア娘自慢が踏む蹉跌
メドゥーサの首をかかげるペルセウス
迷宮のアンドロメダを救い出す
「自 由 吟」 提坂 まさえ
赤い糸未来永劫たて結び 静 岡
ガラス靴大きめにするシンデレラ
歯医者さん少しいじってまた明日
待ち疲れうたた寝をする砂時計
「雨のポスト」 戸田 美佐緒
燃えやすい影絵が夜を邪推する さいたま
冬イチゴ古い言葉を捨てに行く
ふしあわせ雨のポストを覗き込む
マッチ擦る夜の童話があかあかと
「自 由 吟」 鈴木 恵美子
さらけ出す勇気八十路のスタートだ 静 岡
行き詰まると集中力が目を覚ます
再会の笑顔が運を連れてくる
母の膝愛の躾の予約席
「雑 念」 川口 亘
動くのに意識見せない風まかせ 藤 枝
落度にはしたくないけど気が抜ける
知ったふり見せて笑うも芸の内
行きずりを存念と見るかくす芸
「犬と散歩」 山本 ますゑ
散歩道かわいい犬に吠えられる 磐 田
向こうから犬が来たので遠回り
犬友が増えて弾んだ立ち話
引き算で犬と暮らしの設計図
「熱 意」 鈴木 まつ子
新作にあふれる熱意句も熟れる 島 田
灼熱とした論争人を吸い寄せる
一筋を貫き通す寡婦の意地
ありふれた幸せ花の育てがい
「海 と 空」 南 天子
空と海 心を手本吉日に 焼 津
つり人に語りかければ風流に
焼津港私の願い一つだけ
水の神手を合わせたら心晴れ
「自 由 吟」 竹内 みどり
来年も咲いてくださいサクラソウ さいたま
川柳を詠んで笑って日が暮れる
趣味あれば老後の日々が楽しけり
生かされているこの命感謝する
「希 望」 飯塚 澄人
肩凝りになるまであんたやりはんな 静 岡
模型ショー若い親子が空を飛び
売れ筋の豆腐屋桶を五つ置く
えごの葉よ無事に過ぎればそれでいい
「夏 来 る」 畔柳 晴康
薄ざくら消えて葉緑色を増す 浜 松
紫外線避けて緑の森散歩
空眺め家庭菜園種を播く
帰り来た軒のつばめに声かける
「日々平和」 中矢 長仁
断捨離にでも捨てきれぬ物ばかり 松 山
褒め言葉使えば返る有り難う
フェチなのか夫婦互いにもたれ合い
弾けたかポップコーンの焼け具合
「 命 」 恩田 たかし
初めての心拍蘇生無我夢中 静 岡
肋骨を二本折っても尚続け
病院に担ぎ込まれて無事祈る
儚くも尊い命燃え尽きる
「自 由 吟」 山田 浩則
火の玉がお化け屋敷を取り囲む 島 田
下手くそな僕はピカソの絵を描いた
神様に願いを込めてお札買う
金が減り代わりに増える体脂肪
「見 栄」 森 だがやん
見栄を張り見えるとこだけデコレート 島 田
クラス会些細な見栄が見え隠れ
何だっけふと口ずさむこの歌は
流行歌覚えた頃は早すたれ
「お い」 川村 美智代
前の席怖い人乗り眠る振り 静 岡
褒美なきゃ犬は芸せず知らん振り
おいと呼ぶおいじゃないから知らんぷり
疾うに散り残るは食い気かしわ餅
「自 由 吟」 萩原 まさ子
宇宙へと回数券で行く時代 静 岡
よもぎ餅共に丸めた母の顔
春風にニートの子らも背を押され
褒める時浮かれぬように塩を入れ
「賞味期限」 安藤 千鶴子
話しても知らんぷり医者検査だけ 静 岡
言い訳をしたい私に知らんぷり
我慢して知らんぷりした子が自立
人生の賞味期限は永遠さ
「初 夏」 林 二三子
余裕なく五感も鈍る梅雨のウツ 富士宮
紫陽花満開気分は晴れている
初夏の香り満喫してる小梅漬け
夏に向け風船かづらのエコカーテン
「世界農業遺産」 森下 居久美
茶草場の伝統守る掛川茶 掛 川
世界遺産急拵えの案内板
ユリ、アザミ夏を彩る草刈り場
他人事の様に聞こえる世界遺産
「神様の気まぐれ」 荒牧 やむ茶
神様は見ていた母についた嘘 小 山
神様を騙る愛想笑いして
神様は見ていてくれるゴミ拾い
神様の気まぐれ今日はツイている
「 旅 」 増田 信一
旅先に思い出残し切り替える 焼 津
名所より家がやっぱり良い年に
旅先の恋の期限は我が家まで
地球発宇宙の旅は夢でする
「自 由 吟」 石上 俊枝
母の日が過ぎて普通のカーネーション 静 岡
元気にと菖蒲湯の中初節句
五月晴れ空にツバメが地につつじ
雨似合う心変わりか七変化
「雑 感」 尾崎 好子
維新の会ネームバリューに踊らされ 藤 枝
出来た人だけに引き際見失い
橋下の器レンジでチン出来ず
大阪のおかんにバトンタッチする
「雰 囲 気」 薮﨑 千恵子
雰囲気に流されていく自己嫌悪 焼 津
雰囲気に口のチャックが開いてくる
やなこともにこにこ顔で頷いて
雰囲気に押され気分がハイになる
「アマリリス」 中野 三根子
美しい花をたずねてアマリリス 静 岡
たて笛で何度も吹いたアマリリス
花の名がなかなか出ないアマリリス
大輪の鉢に見事なアマリリス
「目 覚 め」 石田 竹水
親切を歪んで受けた日の憂い 静 岡
負けまいと笑いの渦に紛れ込む
競りの声寝ていたマグロ目覚めさせ
骨拾う箸は無駄口たたかない
「二重の影」 池田 茂瑠
赤い紐揃えた愛が崩れ出す 静 岡
本棚に私の狭い海がある
愛憎の二重の影が灯に伸びる
落とされて赤は危ない色と知る
「ボ ト ル」 多田 幹江
わが道の無風地帯に置くボトル 静 岡
酒場の棚の亡夫のボトル浮いている
空き瓶が欲しかっただけ貴腐ワイン
嘘つきのボトルを空にして帰る
「雑 詠」 川村 洋未
掃除機にルンバと名付け踊らせる 静 岡
チャリンコが未来を乗せて風を切る
映画館一人ぼっちの仲間いて
一人でも行ってみようかバス旅行
「裏 表」 永田 のぶ男
金持ちが地獄を覗き金次第 静 岡
極楽の様子よく見てメールする
不景気を缶詰めにして寄せ付けず
共産はいいとこだとは墓の中
「誰にでもあること」 長澤 アキラ
飲み屋の付けとゼブラゾーンで鉢合せ 静 岡
飼い馴らす鬼が覗きに来る介護
遊園地も真っ青になる兜町
死ぬほどの快感もなく生きている
「キャミソール」 佐野 由利子
損得を教え理想は教えない 静 岡
ころころと変わるわたしの腹の虫
冷やかしと見抜かれている植木市
キャミソール似合う真っ赤なサクランボ
「 席 」 勝又 恭子
空いている席に緊張強いられる 三 島
大当たりでした私の指定席
欠席をしても気づいてもらえない
ジグゾーのピースが余る席次表
「供 養」 谷口 さとみ
幻を夢の形にして掴む 伊 豆
ジェネレーション海峡潔く渡る
意地を張る私を笑う擦り林檎
行間に想いを托す北便り
「自 由 吟」 真理 猫子
何十年ぶりかにアイツやってきた 岡 崎
私がモデル体型だった頃
幸せな時も掘り出される遺跡
方言がきつい妻から空メール
「ダンゴムシの詩」 松田 夕介
バラの刺見たくないよとダンゴムシ 静 岡
ジョーカーを手にした妻の薄笑い
はにわの眼むかしむかしと語り出す
何故だろう遺跡の風が懐かしい
「どうしよう」 望月 弘
未来から切手剝れた文届く 静 岡
にんげんのままで読経が聞けそうだ
どうしよう術後十年生きちゃった
あとがきが書けないうちはまだ逝けぬ
「道頓堀川」 加藤 鰹
手荷物と子どもは網棚にどうぞ 静 岡
弟はあの頃ヌンチャクの餌食
大袈裟な名前ですよね魔法びん
卑弥呼ならうちの茶の間にいますけど