せんりゅう広場

富 岳 抄

 

「自 由 吟」                   滝田  玲子

おしゃべりをたっぷり盛って立つ日傘       浜 松

年金の愚痴が勝手に歩き出す

考古学地下の歴史を掘り続け

過労死も無職も多い長寿国

 

 

 

「あの日をもう一度」          新貝 里々子

旨いものさがす港の旅かばん           袋 井

逢えそうな気がするコーヒーの香り

あの日をさがす風の匂いと陽の匂い

行き止まりでした風まかせの散歩

 

 

 

「ユーモア川柳」            岡村  廣司

阿呆に効く薬が有ればすぐに買う         焼 津

夕刊が朝来る村も市になった

認知した子どもの方が出来がいい

荒祭り神が神輿にしがみつき

 

 

「身近なこと」             増田  久子

お上手ねでも悪い気はしませんわ               焼 津

不束な姑ですのあしからず

百円のジョッキへ冷えた発泡酒

着メロが鳴って鳴り止む脱衣カゴ

 

 

「冗句その十一 わからない」       西垣  博司

第二位の高さの山はわからない                静 岡

化粧した妻の行き先わからない

実家から妻が戻るかわからない

ハタとヒザ打つ言葉しかわからない

 

 

「イオン行こ」                 恩田 たかし

娘っち暇さえあれば イオン行こ            静 岡

里帰りしても向こうで イオン行こ

ベランダでプールで遊ぶ子どもっち

遊びあき俺の顔見て イオン行こ

 

 

「ボンキュッポン」           森 だがやん

涼しいよアフリカよりは涼しいよ         島 田

クレームも改善できて有難い

盆休み妻を労い家事親父

年重ねボンキュッポンがボンボンボ~ン

 

 

「自 由 吟」             鈴木 まつ子

要るでもない捨てるでもない母の癖            島 田

どん底の粗食で生きた子沢山

母の日も小まめな母のおさんどん

苦労した過去は語らぬ束ね髪

 

 

「お歳ですね」            鈴木 千代見

筋力が落ちて重力逆らえず            浜 松

お若いと言われ一応否定する

満月がだんだん痩せて君想う

ポケットのマナーモードの唸り声

 

 

「初秋かしら」            小林 ふく子

母親へ不老長寿と勘違い                 袋 井

踊り場の角に宝が落ちている

夕焼けの化身となった赤トンボ

節電へ月の夜風が心地良い

 

 

「  舌  」             薗田  獏沓

年寄りに詐欺師の舌のやわらかさ       川根本町

二枚舌妻と母との使い分け

孤独死の誰も呼べない舌足らず

毒舌の小気味のよさが憎めない

 

 

「溢 れ る」              栃尾  奏子

厳選のウワサ流れる三次会            大 阪

情報が溢れ指先追いつかぬ

子への愛溢れぬように抱きしめる

幸せが溢れて愚痴に変わります

 

 

「自 由 吟」               濱山  哲也

ぼくの趣味フリマで金に換える妻         つがる

貧乏に意外と強い怠け者

「今出たよ」そば屋の電話見てしまう

男女ともバカで世の中面白い

 

 

「すっきり」               酒井  可福

腹まわりすっきりウォーク楽しんで          北九州

六四のすっきりしない示談金

迎え酒まだすっきりとせぬ頭

部屋掃除すっきり物が隠される

 

 

「抜 け る」              藤田  武人

直線で最後尾からごぼう抜き              大 阪

抜けるのにミラーを見ればパトの影

その隙間抜けるかなーと腹なでる

あと一人トンネルなんかするもんか

 

 

「軽 井 沢」              井口   薫

ゴーヤーにくるまれ軽井沢気分          袋 井

導火線着火したよう蝉時雨

とり敢えず延命処置の水をのむ

手なづかぬスマホ メールは渇水期

 

「  女  」              馬渕 よし子

私にもあった女の底力              浜 松

頼られて男のような顔になり

母親になって夫へ会いに行く

泣かないと決めた女の泣きぼくろ

 

 

「緊急地震速報」            毛利  由美

緊急地震速報 風呂に水を張る           つくば

地震速報にもプレイ続ける甲子園

速報がはずれ安堵と拍子抜け

狼少年になりませんよう気象庁

 

「自 由 吟」              成島  静枝

鬼灯が人恋しさに赤くなる            千 葉

その目つき怒っているね鬼ヤンマ

御霊前優しい貌になる柩

代替わり相続税は範囲内

 

 

「女と死神」             戸田 美佐緒

マグマ抱く女が風邪をひいている       さいたま

居酒屋の前で別れる上戸下戸

微笑する魔女に男の矢が折れる

死神が俺のパジャマを裏返す

 

 

「夜と朝のはざま」          斉尾 くにこ

いつわりの優しさごっこ鬼ごっこ         鳥 取

逢いに来て閉店の紙貼ってあり

鍵は開く夜と朝とのはざまから

他人ごとのように語る失敗談

 

 

「没句供養」             中矢  長仁

母ちゃんは手綱締めたり緩めたり         愛 媛

父ちゃんのように成ったら困るでしょ

夏バテは何だったのか腹が減る

没句でも分身なんだ供養する

 

 

「初 投 句」              岩永  圭二

猛暑日やビールがすすむ言い訳に        大 阪

この秋はどんな色が彩るか

水着跡 夏満喫の証やね

25メートル泳げていたのは遠い夏

 

 

「ハッピー」             真田  義子

ハッピーな気持にさせているドラマ       仙 台

味付けをされた男の横歩き

窓の椅子私のことを聞きたがる

掛け違いボタンを直すフルムーン

 

 

「自 由 吟」             鹿野  太郎

どこにある子どもの頃に見えたもの            仙 台

違うなあ二年前から波の音

まだあるなディスコティックな台所

大鉈を振るえば大半が地獄

 

 

「平  凡」             畔柳  晴康

人並と言われ悔しきほぞを噛む           浜 松

振り返りあそこの手立矢張り駄目

米寿ですほたる火程の夢を持つ

同窓会幸せ演じ痩せ我慢

 

 

「  夏  」              鈴木 恵美子

白球を追って死闘の甲子園             静 岡

反抗期小五のぼくの一文字

境内に百人揃う夏休み

地の恵み有機に励むなすきゅうり

 

 

「どうかなりそう」          奥宮  恒代

めくるめく暑さ露出度も限界           森 町

油蝉違う耳鳴り進行形

耳もとでネエネエ媚を売るヤブ蚊

ゴキブリがちょびちょび口を出し暑い

 

 

「星 祭 り」             外側 としみ

逢うまでの時の流れに身をまかせ            磐 田

オルガンの音が聞こえる星祭り

異次元の世界に心遊ばせる

ケンタウル露を降らせよ諸共に

 

 

「自 由 吟」             宮浦 勝登志

窓際も多年の功で利用され                静 岡

逆転に泣いた涙は塩辛い

人生へ片道切符終列車

候補みな信じられぬと白い票

 

 

「梅  雨」             菅原  花子

あじさいがひときわ目立つ梅雨の日々      盛 岡

夏祭り梅雨明け前で気分出ず

梅雨明けが待ちどおしいが怖くなる

梅雨明けにお布団干してさっぱりと

 

 

「雑  詠」             野中 とし子

窓近く蛍飛び交う故郷は            静 岡

夢語る後期高齢まだ若い

塩害に被災地の米可哀想

おばあちゃん青春切符で夏休み

 

 

「自 由 吟」             野中  雅生

人生は踏んづけられて立ちあがれ         静 岡

味見してまた間違えて塩加え

駅前で切符売る奴ダフ屋です

一人旅汗でぐっしゃり我が切符

 

 

「自 由 吟」             川村 美智代

スマホから出るに出られぬ依存症            静 岡

法事の座自分の時を重ね見る

しおれ花ママの一言水を得る

猛暑日はシニア切符で映画見る

 

 

「切  符」             安藤 千鶴子

プチ家出青春切符謳歌する               静 岡

大切にされ過ぎ切符かくれんぼ

片道の切符で生きる手漕ぎ舟

幸福へ切符買ったがまだ着かぬ

 

 

「自 由 吟」             南   天子

お風呂場を一日かけて掃除する           焼 津

暑いとか今日は100回言いました

水やめてむぎ茶ガブガブ胃にごめん

チャングムのような女になる努力

 

 

「夕  立」             川口 のぶ子

夕立ちに慌てふためくふくらはぎ        藤 枝

俄雨思わず頭かかえ込む

水滴がきゅうりの葉からすべり落ち

ナツメロに耳をかたむけ好きだった

 

 

「雑  詠」             川口   亘

これからが勝負どころと腰を据え         藤 枝

兎もすれば頼りたい気に一寸待て

自分しか出来ないことの有るを知る

宛のない旅路の果は先にある

 

 

「  犬  」              山本 ますゑ

忠犬の教え忘れた人の道                  磐 田

身勝手を見抜いた犬の横座り

犬に愚痴言ってストレス溜めている

裏切らぬ犬の看取りに手を合わす

 

 

「癒やしゆく」               飯塚  澄人

招待で原監督の内野席                    静 岡

富裕層赤旗見ずに秋葉原

カセットで高原の宿風流し

ウラ道を涼しく進む角が好き

 

 

「包  む」              安田  豊子

カプセルの中味読んでも判らない          浜 松

痛み耐え平生包む空元気

中流のつもりで包むのし袋

晩鐘の余韻が包む古い傷

 

 

「自 由 吟」              山本 野次馬

チャンスまでなりすまそうか深海魚        函 南

目立つのはやめたと決めたダンゴ虫

潜ることやめて都会の風になる

半骨へどん底だった日を笑う

 

 

「自 由 吟」                 竹内 みどり

ラベンダー香りに誘われハチが飛ぶ          さいたま

諦めて心の曇りとけていく

家計簿は家族の歴史知っている

再稼働黄門様に聞いてみる

 

 

「男 と 女」              山田  浩則

男性に女の技で勝つ女将                島 田

女房にうちわで扇いでもらいたい

女には弱い男と呼ばれてる

嘘つきの男なんか大嫌い

 

 

「自 由 吟」              中田   尚

平成はクリームパンがああこわい            浜 松

震度4ペットボトルを抱き締める

大陽にソフトクリーム負けている

ワルガキにいつもスイカは叩かれる

 

 

「立  話」              尾崎  好子

立話みてみぬ振りでやりすごす             藤 枝

立話うさんくさくて近寄らず

立話行きも帰りも立話

立話なぜか車の曲り角

 

 

「雑  詠」                 永田 のぶ男

みぎひだり交互にだして目的地             静 岡

走るより早く着くには空を飛ぶ

解らない事を聞くから耳を掘る

よく喋る話の種は尽きぬもの

 

 

「  旅  」              渥美 さと子

ありふれた主婦へ謀叛の小旅行              静 岡

古希辺り何とも薄い旅の味

葉から葉へてんとう虫の旅は謎

未だ母から届かぬ黄泉の紀行文

 

 

「夕  立」              森下 居久美

南北の通りを分けている雷雨                掛 川

面倒なことを背負い込む雨宿り

渋滞のテールランプを濡らす雨

雨上がり虹を探して仰ぐ空

 

 

「暑  い」              中野 三根子

もういやだあせもができた久しぶり        静 岡

一日にシャワーを浴びる三回目

かき氷今日はバケツか洗面器

こっそりと水着で一人部屋の中

 

 

「濃い脇役」              池田  茂瑠

綾取りの橋を巧みに渡れたか           静 岡

妥協点下げよう雨が止む前に

かすみ草よりは脇役濃く待とう

コンビニの味で夜勤へ送り出す

 

 

「昔 の 夏」              石上  俊枝

夕立に臍を押さえて蚊帳の中           静 岡

遠花火プスンと微か聞く田舎

川泳ぎ石を飛び飛び河童いた

ジャガイモの塩茹でおやつ美味かった

 

 

「夏の一日」              勝又  恭子

ハンモック今日も迷いの森にいる          三 島

平凡な一日過ごし月見草

夏座敷こたえは風が連れてくる

夕立がやめばさよなら言うつもり

 

 

「燃え盛る」               石田  竹水

お色気が健康づくりに効く秘薬          静 岡

残り火が燃え盛ってる恋心

四捨五入出来る暮らしが有り難い

愛情を坂手に詐欺の口車

 

 

「  蝉  」              長澤 アキラ

夏休み親をしっかりこき使う           静 岡

油蝉葬式もなく死んでいる

遺伝子よあなたが悪い訳じゃない

爪楊枝終電までの計を練る

 

 

「軸  足」                    薮﨑 千恵子

うっかりとする口出しが疎なまれ             焼 津

消えるまで待っていましょうこの噂

大の字になってやれやれ生き延びる

ヨイショしてから軸足がずれ始め

 

 

「  夏  」              増田  信一

心頭を滅却しても暑い夏             焼 津

暑くても暑くなくても夏が好き

夏なのにすでに初冬になる我が身

エアコンを止めてやり抜くダイエット

 

 

「自 由 吟」              林  二三子

名ばかりの立秋暑さはこれから              富士宮

暑すぎて献立決めるのも苦痛

手抜きしたメニューやっぱり残される

旨いもの食べてみんなが笑ってる

 

 

「自 由 吟」                谷口 さとみ

ひまわりが咲いて気後れする私              伊 豆

かき氷だって作るのは暑いんだ

悔しいを書いて丸めて 飲んで寝る

無くさなきゃ 子どもが平和祈る日を

 

 

「花火大会」              真理  猫子

かっぱえびせん空に散らばる あっ花火       岡 崎

スターマイン空を踊って駆け抜ける

飛行機の行く手 花火のど真ん中

個人的事情は空へ打ち上げる

 

 

「雑  詠」                 多田  幹江

わが道を行く肉太のアマリリス              静 岡

別姓の夫婦の絆蝶結び

汗かき恥かきおいしい人になりました

塩ひとつまみ俯く人に振ったとこ

 

 

「  夏  」              佐野 由利子

腰曲がるキューリへ塩のマッサージ           静 岡

ソーメンが続くつづくよ夏の膳

材料が無いならないで主婦の知恵

窓開けて玄関も開け風の道

 

 

「雑  詠」              荒牧 やむ茶

ソーダーの夢がシュワッと消える秋            小 山

山びこはやっぱり美人なんだろう

真夏日が思考回路をショートさせ

遠い日の恋にばったり出会う街

 

 

「サマータイム」           松田   夕介

カブトムシと西瓜真夏のサスペンス        静 岡

情けない顔にもなるよこの暑さ

夏休み蛍の光流れ出す

通学路夏のぬけがら達が行く

 

 

「一人ぼっち」            川村   洋未

雷が落ちると知らず高笑い            静 岡

重箱の隅見ただけで大嵐

曲り角きのうは猫が待っていた

新しい靴この夏も日に焼けず

 

 

「早 起 き」                  望月    弘

砂時計汗もかかずに落ちている             静 岡

消費税どんと上がってねじれない

影のないボクは踏まれたことがない

アサガオの花より早く起きている

 

 

「残  暑」             加藤    鰹

貯水量ピンチあなたが来ない部屋             静 岡

君が来るゲリラ豪雨の如き夜

富士山にタンクトップで登るアホ

渋滞を横目に走る小気味良さ