せんりゅう広場

富 岳 抄

 

「秋の入り口」             新貝 里々子

二階からロミオロミオと呼んでみる        袋 井

ティラミスの甘さに慣れて飢えている

酒の肴買いにカラカラ男下駄

涼風に敏感未病に揺れている

 

 

 

「  胸  」              馬渕 よし子

豊満な胸で若さを見せつける           浜 松

ちっぽけな胸だが夢をたんと持ち

その胸の奥に良からぬ意図が見え

告白をしたいが胸へ仕舞い込む

 

 

 

「ユーモア川柳」            岡村  廣司

少しだけぼけた様だと気付いてる         焼 津

無力だと見たか敵方俺を無視

紹介状何と都合のいい医学

人間を毀さず運べ空の便

 

 

「善意の目」              増田  久子

母さんをこんなに若くクレヨン画               焼 津

積み上げた残土の草が花を持つ

残暑でも暦通りの彼岸花

信じればどんな焦げ目も炭火焼き

 

 

「自 由 吟」               西垣  博司

マンネリの夫婦の歌にサビが無い               静 岡

後がなくなると思案の前後策

三センチヒール女へしがみつく

クレームはもうあきらめた共白髪

 

 

「自 由 吟」                  内山  敏子

傘ひとつほこりまみれに無人駅            浜 松

筋道を立てれば転ぶ人もいる

足下を見抜く商魂たくましい

トーフ屋のラッパ豆腐の味で鳴る

 

 

「夏よさらば」             奥宮  恒代

こっそりと下さいあなたの爪の垢         森 町

鬼灯をキュッと鳴らした日の昭和

スイカにも糖度厳しい夏戦

若さっていいな陽気なへそピアス

 

 

「アブナイ」             鈴木 千代見

片足で頂点の点踏んでいる            浜 松

急がねば足を引っ張る人がいる

暗闇に慣れていけないことも見え

旅に出すあなたのためと言い聞かせ

 

 

「友  達」             小林 ふく子

この線を消したら友になれるかも         袋 井

今が旬輝く君を掴まえる

友達になれてあなたもいい人ね

あなたとはお互いさまがよく似合う

 

 

「童  心」             薗田  獏沓

母の顔確とたしかめ眠り込む         本川根町

気付かない自分の癖を子に見つけ

子に目線合わせて見てる子の絵本

二学期へスキップ踏んでランドセル

 

 

「ビ ー ル」             鈴木 まつ子

一杯のビールでほぐす肩の凝り              島 田

業界も酷暑でビール売れに売れ

庶民には親しみやすい発泡酒

湯上がりのビールやれやれ今日も無事

 

 

「fall」              栃尾  奏子

虫達は暦通りに鳴きはじめ            大 阪

逆立ちで読んでもわからないゲーテ

恋に落ち十歳若くなるワタシ

届かない想いへ夜は長くなる

 

 

「  間  」              藤田  武人

人間になるのを拒む尾てい骨              大 阪

切り傷をじわじわ開く隙間風

隙間から一直線に見る希望

大阪はボケつっこみの間が楽し

 

 

「ストレス」              酒井  可福

ストレスがサラリーマンのランドセル           北九州

ストレスが消える無心に歩いてる

ストレスは今夜の酒を美味くする

ストレスと酒が交互に身に残る

 

 

「自 由 吟」              濱山  哲也

そりゃスゴイと言われる恥を持っている          つがる

フン拾う僕はペットの家来です

ポリシーが違いますよと負け惜しみ

ヘボ将棋趣味と言うには気が引ける

 

 

「やっと秋」              井口   薫

ともかくも猛暑生き延び乾杯を          袋 井

仏像と会話通じた古希の秋

ハイテクの森で触覚退化する

臆病な足が海岸から離れ

 

 

「五  輪」             毛利  由美

3年後の五輪忘れていませんか          つくば

五輪種目に野球ないけど甲子園

東京五輪報じられない休刊日

ちゃんちゃんこ着て東京五輪見に行こう

 

 

「竜  巻」              成島  静枝

竜巻の凄さ身近に来る怖さ            千 葉

遠方の友が知人が問う安否

有り難いことに我が家に無い被害

絆っていいなあホントありがとう

 

 

「雑  詠」              野中 とし子

ことわりはケータイメール送信で         静 岡

あっさりと出て行ったのは我が娘

握手してグッバイでした初恋は

ご挨拶あっさりすぎてどっちらけ

 

 

「愛そして雨期」           戸田 美佐緒

まやかしの愛を追いかけ雨期になる      さいたま

首輪して浮世の穴を掘っている

時間の底で眠りつく不発弾

桃太郎 鬼のその後を知りたがる

 

 

「水になる時間」           斉尾 くにこ

敗北は喜劇に変えて語りだす           鳥 取

淡天にただ待っているのは愛車

煮え立ったお湯冷ますのにいる時間

夢を見るキミの話を聴くたびに

 

 

「リハビリ」             中矢  長仁

リハビリに美女寄り添って肩寄せる            松 山

壮絶なリハビリ実り栄誉賞

もう一度旅に出たいと試歩の杖

リハビリの日々川柳で忙しい

 

 

「風立ちぬ」              岩永  圭二

半袖か長袖悩むこの季節            大 阪

涼しいなデブに嬉しいひんやりさ

ハロウィンと騒ぐのほんの一握り

イタズラとお菓子どちらも好物だ

 

 

「自 由 吟」             鈴木 恵美子

森林浴兼ねた旅路の夕茜                 静 岡

暑かった夏になまけ虫が鎮座

饒舌の好きな雀の寄る広場

テレビからもらう暮らしの知恵袋

 

 

「自 由 吟」             鹿野  太郎

父の知らない画像が増える夏休み        仙 台

山門は通らず眠る樹下の墓

朝から駆け出す高気圧の廊下

折り畳み自転車と見る地平線

 

 

「夜明け前」             真田  義子

風向きが変わる音する夜明け前          仙 台

こぼれたら拾いつ生きる夢ひとつ

夜明け前心の鍵を開けておく

迷っても歩き続ける秋の天

 

 

「秋 本 番」             畔柳  晴康

届かない柿の実鳥の餌とする           浜 松

散ってまで目を楽します色紅葉

古本と時計ながめる秋夜長

鉛筆が今日の幸せ書く日記

 

 

「ハロウィン」            外側 としみ

ハロウィンの今宵紐解くケルト暦            磐 田

トリック・オア・トリートどちら選びます

街角に魔女がときめく星月夜

見詰められジャック・オー・ランタン君だった

 

 

「窓  口」             提坂 まさえ

踏み絵かな私のミスを真似る嫁              静 岡

習いたて猫ふんじゃった 猫逃げる

優しさという窓口につい並び

ジグソーの最後の一つ開けておく

 

 

「自 由 吟」             菅原  花子

希望湧く明るい未来聞くだけで          盛 岡

叶うなら青い地球を見てみたい

節電の計画立てて乗り切るぞ

少しずつエコな生活身につける

 

 

「あっさり」             安藤 千鶴子

子の巣立ち振り向きもせず礼も無し           静 岡

あっさりと負けを受け入れ紅をさす

オレオレと泣き声信じ空財布

お別れはサヨナラだけのメールです

 

 

「自 由 吟」             野中  雅生

早々に宿題済ませ孫ニヤリ            静 岡

ジャイアンツあっさりやられ苦い酒

俺様をあっさり振った可愛い子

夏の恋終わりお茶漬けさらさらり

 

 

「自 由 吟」             川村 美智代

そうめんに豆腐じゃ気力湧いて来ぬ           静 岡

夏の膳ショウガミョウガとネギ多忙

あっさりと忘れるこれが生き上手

うきうきと飛び立ったのにもう離婚

 

 

「自分探しの旅」           萩原 まさ子

初出社切符と夢を握りしめ            静 岡

片道で自分探しの旅に出る

顔パスが困るデジタル無人駅

車窓越し口パクを見るアイシテル

 

 

「猛  暑」                  滝田  玲子

蝉時雨働き蟻が夏休み             浜 松

団塊の世代が熱中症に泣く

台風のみやげ竜巻大暴れ

異常気象豪雨小雨と挟みうち

 

 

「自 由 吟」              南   天子

心だけあせって何も進まない            焼 津

人混みの中に入れぬ弱虫に

腹が立つ修業修業と流し耳

肝心な話になると空気逃げ

 

 

「反  省」              山本 ますゑ

甘い詰め標的になる言葉尻                  磐 田

片われとなる日がいつかペアカップ

裏道をゆっくり辿る帰省の子

クラクション拍車をかけるストレス度

 

 

「雑  感」                川口   亘

青春を賭けて歩いた伊豆の山             藤 枝

歩かない事には所詮望み失せ

乗り越えて行かねばならぬ時がある

まだまだの気力を襲う歳が邪魔

 

 

「自 由 吟」              川口 のぶ子

今日もまた雲のじゅうたん空覆う          藤 枝

買い出しに車を引いて老いの足

夏野菜終わりを告げて取りはらう

突然の雨に庭木も息をつく

 

 

「猛暑来て」                飯塚  澄人

逃げられぬ南無あみだぶつ生きてゆく             静 岡

カラオケ屋稼ぎ時だね中高生

水瓶に豪雨が来たと安ラジオ

選者さん苦労見せずに雲流す

 

 

「本  能」              安田  豊子

本能と理性が絡み動けない             浜 松

世渡りが下手か本能見透かされ

本能に振り回されて読めぬ風

三叉路に立って本能見極める

 

 

「  北  」              山本 野次馬

北風よ負けるが勝ちを知ってるか         函 南

別れましょ磁石は北を指したまま

北風よ許してあげる出ておいで

謎めいた娘がねむる北枕

 

 

「自 由 吟」              竹内 みどり

湯上がりに美味しいビール心地よい           さいたま

ブツブツの南瓜だけれど味はよい

エアコンに感謝しながら日々暮らす

汚染水ちょっとだけよは困ります

 

 

「自 由 吟」              山田  浩則

プロ野球テレビ見ながらラジオ聴く            島 田

朝鮮にバカにされてるイプシロン

ひまわりが枯れて疲れを見せている

秋来るが飽きが来ないね映画館

 

 

「自 由 吟」              中田   尚

歯医者からお得意様と肩抱かれ          浜 松

増税へ迷った振りをして上げる

税金のおかげでパンがまた痩せる

日本中アベノミクスに呑みこまれ

 

 

「す す き」              尾崎  好子

すすきという漢字に心通わせる             藤 枝

芒でさえ群れてこんもり風に酔い

此の世では咲かない恋を獏が食べ

十五夜は大事な壷に活けてやる

 

 

「うちのパパ」                 永田 のぶ男

日曜日おらが味噌汁パパの味              静 岡

秋刀魚焼け大根おろしパパの役

拭き掃除 運動不足パパになし

蟹は横 人は真っ直ぐうちのパパ

 

 

「雑  詠」              寺田  柳京

断捨離で捨てたか財布見付からず              静 岡

時化を待つ屋根へ丸太や石を乗せ

寡婦叫ぶ このけものめがけものめが

雨しぶく長屋の罵声つん抜ける

 

 

「家庭菜園」              森下 居久美

豊作のゴーヤ手を変え品を変え               掛 川

ねばねばで元気さオクラモロヘイヤ

調理法模索中ですズッキーニ

虫の声畑も秋に衣更え

 

 

「スパイス」              中野 三根子

暑いからスパイスきかせ汗をかく         静 岡

ビールならチキンもカツもスパイシー

カレーにもクミンを入れてかくし味

人生を時々欲しいかくし味

 

 

「人生の戦い」             池田  茂瑠

人生は戦い銃は構えぬが             静 岡

この事になると右脳が軋み出す

地図にない川が二人の邪魔をする

和解する女将の赤い策が効く

 

 

「  秋  」              石上  俊枝

鈴虫のビブラート酔う秋の夜           静 岡

テーブルに茄子とサンマが秋を連れ

情念を競って咲くか彼岸花

受け継がれピイヒャラドンと秋祭り

 

 

「文  字」              勝又  恭子

暗号のような絵文字だけのメール          三 島

文字だけできっと美人と思わせる

本心を映しています鏡文字

よくできた亀という字が歩きそう

 

 

「  酒  」              長澤 アキラ

何時だって右手はコップ持つ形          静 岡

良心に従い休肝日無くす

命満開大ジョッキ追加する

女運つきて女房と酒を酌む

 

 

「余  裕」              石田  竹水

飾らない会話に花を咲かす笑み              静 岡

前向きに日々を楽しくする元気

若者の意見も聞いてやる余裕

神様の素顔を僕は見ていない

 

 

「自 由 吟」             林  二三子

若い日が見えてこの服捨てられず             富士宮

バーゲンで要らぬ物まで買ってくる

よく慣れた道で小石に蹴躓く

秋の味覚新さんま焼く夕の膳

 

 

「限  界」             薮﨑 千恵子

限界を知って明日の風を待つ           焼 津

ときめきを忘れてからの句が不味い

コンベアで流されていく無表情

剥き出しの若さに押され後ずさり

 

 

「  秋  」             谷口 さとみ

原石でサファイアくれたままの彼         伊 豆

ろうそくをおはぎに立てて誕生日

摘み取って君にあげよう彼岸花

満月を猪口で掬って飲む冷酒

 

 

「倍 返 し」             増田  信一

妻に言う少しの苦情倍返し           焼 津

倍返し見栄を切ります夢の中

義理チョコに倍返しても無反応

倍返ししても足りない親の恩

 

 

「  米  」                 多田  幹江

平和とやセレブ挙って麦の飯               静 岡

三十回噛まれおいしい糊になり

スーパーではしゃぐ御当地コシヒカリ

ひとり酒一合炊きも順れました

 

 

「チョコレート」            佐野 由利子

馬が合う筈と思った仲違い               静 岡

薬局に新米入荷ビラ下がる

ダイエット拒食過食の繰り返し

健診を済ませた後のチョコレート

 

 

「雑  詠」              荒牧 やむ茶

緊張がプツリと切れたパピプペポ             小 山

一片の曇りもなくて僕の空

浮かれてる五輪ムードに喝を入れ

さよならも言わずに逝った蒼い風

 

 

「自 由 吟」              真理  猫子

年齢と気温はサバを読むものだ          岡 崎

隊列を離れ喫煙所に行くな

前世はまっくろくろすけだった父

ボンキュッポンそして人間丸くなる

 

 

「ギブアップ」            松田   夕介

目覚ましが喧嘩を売ってくる夜明け        静 岡

星の数ほど言い訳を持っている

さくらんぼみたいな仲にギブアップ

コケコッコーもう慣れっこだ片思い

 

 

「自 由 吟」             川村   洋未

新しい時計のくせにもう休む           静 岡

切り札を持ってはいるが出しおしみ

オシャレする諭吉五枚と取り替えて

冷房をガツンと下げて鍋を食う

 

 

「路  地」                  望月    弘

ようこそというパソコンが故障する           静 岡

その先で聞いても路地はややこしい

カーナビにすぐ本道へ戻される

宛でくる記念切手は淋しそう

 

 

「自 由 吟」             加藤    鰹

振り向かず行こう水がめ溢れそう             静 岡

乾杯の数だけ幸せになれる

青空が一番似合ういなり寿司

日陰干ししておく敗けた日のタオル