「こころの旅」            外側 としみ

プリズムの先にときめく春の色              磐 田

サイコロの目に私を遊ばせる

逆向きの列車こころの旅に出る

いにしえの卑弥呼の手には魔鏡など

 

 

 

「早  春」             奥宮  恒代

豆ひろい豆の数より人の数                森 町

三日月の顎のあたりにある微笑

忘れたいことも煮込んでおでん鍋

杉の山また矢面に立たされる

 

 

 

「春よ来い」             鈴木 恵美子

しんがりの風邪が猛威をふるい出す            静 岡

春が来てほろほろ苦きつくし煮る

いたわりあって年輪刻む鍋が煮え

居ながらに世界に触れる堀炬燵

 

 

「生 き る」             薗田  獏沓

さり気ない助言心で手を合す             川根本町

人生をゆっくり歩くだけの知恵

無印で生きて自由はそこ此処に

どうしても丸が画けないまま生きる

 

 

「人  生」             山田  浩則

人生は脇見をすると溝に落ち               島 田

人生の峠で過去を振り返る

人生をゆっくり進む歩道橋

人生をパズルのように生きて行く

 

 

「節  分」             川口 のぶ子

東北東無口になってかぶりつき              藤 枝

福は内鬼も内でと大笑い

節分の豆に足もとすくわれる

年の数とても食べれぬ八十路坂

 

 

「雑  詠」             飯塚  澄人

プーチンが大金叩きソチに呼ぶ              静 岡

今人が紫式部拝んでる

性に合う曲で点数狙う人

三保の松お陰で流行るみやげ店

 

 

「小さなでき心」           増田  久子

君が代にこぶしを付けて叱られる             焼 津

黒いからシロと名付けてみる子犬

スーパーで暗算をする持ち合わせ

留守がちのご近所の犬 手馴付ける

 

 

「カムバック」            新貝 里々子

吊るされる鮟鱇の身の前世など              袋 井

御身大事にもう齧れない草加せんべい

ユーミンを愛する群に紛れ込む

蜘蛛の子を散らす構図で恋終る

 

 

「楽しけりゃ」            石田  竹水

お喋りの中に言霊鎮座する                静 岡

ゆるぎない日の丸の旗 建国日

家系図の途切れをつなぎ合わす僕

楽しけりゃしょうがねえじゃん笑い皺

 

 

「ユーモア川柳」           岡村  廣司

すっぴんになると喜ぶつらの皮              焼 津

補聴器が帰ると我が家しんとする

貧乏神など顔馴染み怖くない

男なら咄嗟に決めるブス美人

 

 

「起承転結」             斉尾 くにこ

しあわせのカタチかみあわないカタチ          鳥 取

あるのですマザーテレサの噴火口

平成のこの世へ源氏物語

起承転最後の結でひるがえす

 

 

「自 由 吟」             内山  敏子

啓蟄へ凍土もこもこ動きだす               浜 松

ネクタイの手綱が取れて青畳

少年のブランコ宇宙まで届く

驚塾へ凍土もこもこ動きだす

 

 

「春風に…」             栃尾  奏子

私をノックするのは春ですね               大 阪

パステルで描いています片想い

告白に春一番になる心

まどろみにあなたが住んでいる未練

 

 

「笑 い 袋」             孝井   栞

笑い袋通夜の靴下から覗く                富 山

しんちゃんが笑いのツボを押しにくる

よく笑う赤ちゃん天下御免です

嫁ぐ子へ笑い袋も添えておく

 

 

「満 ち る」             鈴木 千代見

満月に軽い嘘などついてみる               浜 松

介護する 満点なんてありえない

満たされてだんだん欠ける恐さ知る

満開のさくら無言で散るを待つ

 

 

「自 由 吟」             安田  豊子

楽チンを並べ気ままな昼の膳               浜 松

さんま焼く煙 昭和の匂いする

競い合う花が春呼ぶ暮らし向き

身の丈で生きりゃ暮らしも丸くなる

 

 

「  雪  」             滝田  玲子

悲願のメダルコブの中から出られない           浜 松

積雪で足止めされる都知事選

大雪がお手上げさせた首都の足

寒さに耐え真っ赤な木瓜が目を覚ます

 

 

「自 由 吟」             馬渕 よし子

泥濘にはまり仏の手を探し                浜 松

お花見へニトロを供で弾めない

品格はともあれ女演じてる

マドンナを夢見て開く赤いバラ

 

 

「雑  詠」             井口   薫

春一番に裏返されて春色に                袋 井

新鮮に見えるリケジョの割烹着

指切りが気軽にできぬ歳の鬱

ロスタイム奇跡へ神の思し召し

 

 

「自 由 吟」             濱山  哲也

成金の趣味の悪さが恨めしい               つがる

まな板で踊る魚もパフォーマー

不幸すら他人に勝てぬ歯痒さよ

カツ丼のカロリーゼロはないものか

 

 

「2014年2月9日」        毛利  由美

せっかくの雪なので観るソチ五輪             つくば

雪の日は殊勝にミシン掛けもいい

雪搔きで終わったとある日曜日

気がつけば舛添さんが知事になり

 

 

「洗  う」             藤田  武人

洗い物パパより上手いアライグマ             大 阪

腹立つな洗車次の日雨が降る

根性を洗濯板で洗います

洗髪をしては鏡を眺めてる

 

 

「お 月 様」             真田  義子

人生論答えは今も謎のまま                仙 台

笑い声包まれ続くバスの旅

絶対に疑われないお月様

まだ誰も見たことがない百年後

 

 

「無  限」             酒井  可福

僕の孫無限を秘めた可能性                北九州

よく眠る子どもの夢は無限大

母位牌無限の愛はまだ続く

明日がある子にも無限の力湧く

 

 

「自 由 吟」             成島  静枝

乗り継いで御殿場線で着く葬儀              千 葉

眼前の世界遺産に手を合わせ

解脱した蝶好きだった赤い紅

順送りお先にどうぞまだ死ねぬ

 

 

「自 由 吟」             山本 野次馬

この箱に全部詰め込む笑い声               函 南

ひと息で飲み込む水を溜めている

運という言葉が救う土砂崩れ

こわごわと春の恵みを産み落とす

 

 

「補 聴 器」             中矢  長仁

補聴器で出来なくなったボケた振り             松 山

聞こえない振りしていたがもう出来ぬ

聞いている筈よ補聴器付けている

世の中の音が聞こえて若返る

 

 

「  春  」             岩永  圭二

衣替え太ったことを自覚する               大 阪

ムダ毛処理季節逆らいツルツルに

オシャレより花粉対策優先だ

春だから心機一転すぐ挫折

 

 

「悩  み」             川口   亘

深読みをし過ぎて心見透かされ               藤 枝

年頭に懸けた想いは持ち続け

先読みの出来ないことに来る悩み

試練とも言葉変えてはまずやる気

 

 

「免 許 証」             山本 ますゑ

ゴールドを逃がすベルトの締め忘れ            磐 田

書き換えの日まで不安な視力表

事故違反ブルーで通す気の緩み

新免許車社会をひた走り

 

 

「大  寒」             畔柳  晴康

大寒は名ばかり明けて続く冬               浜 松

木枯しや虎落りの笛を今日も吹く

空っ風 風紋描く砂浜辺

何時止むの地球も病むか寒い風

 

 

「チャージ」             小林 ふく子

カードへのチャージに残る疑問文             袋 井

半熟の夢へチャージを届けたい

休めない身体へチャージ繰り返す

チャージして身体すみずみ晴れ渡る

 

 

「たかね新年句会参加」        西垣  博司

柳友はすぐ十年の知己になる               静 岡

若者の酌で老骨もてなされ

新進と技巧に耳を欹てる

二人選お一人分を出し忘れ

 

 

「さまざま」             鈴木 まつ子

方言を拾い集めた土地なまり               島 田

無造作に吊り下げてある絵馬の数

生きてゆくヒントひと声かけて売り

古希間近わたし独身です如何

 

 

「自 由 吟」             菅原  花子

気が重い天気予報の雪マーク               盛 岡

寒くても自分のペース守りたい

雪解けて花の芽見えて春間近

雛祭りようやく春が来たみたい

 

 

「自 由 吟」             竹内 みどり

おだやかな家族の顔が福を呼ぶ            さいたま

飽きるほど温泉巡り夢だけど

旅に出て落ちつきどころ探してる

天然が三代続く乱れ髪

 

 

「自 由 吟」             南   天子

多忙だとイライラ虫が文句言う              焼 津

一年で冬が嫌いとしみじみと

うそをつく頬がピクピク面白い

赤ワイン味を聞かれて手で丸を

 

 

「  虫  」             戸田 美佐緒

あきらかな殺意だ虫が鳴いている       さいたま

卑怯です一目散に逃げる愛

どっこいしょ涙を売りに行く時刻

沈黙という安定剤をのんでいる

 

 

「自 由 吟」             提坂 まさえ

楽屋から洩れたピエロの笑い声              静 岡

三冊目十年日記終えました

イミテーション本物顔で五十年

父と母胸深くいて今を生き

 

 

「本  物」             萩原 まさ子

鑑定に出そうかもめている家宝              静 岡

本物を食べられるって奇跡だね

本物にオレオレ言わせシュミレーション

偽物が本物以上恐れ入る

 

 

「自 由 吟」             安藤 千鶴子

虚偽表示グルメの舌が試される              静 岡

可愛がるだけではなくて叱る愛

恩返ししたら即行返された

夢でしたコンビニで菓子大人買い

 

 

「笑  う」             中野 三根子

エッヘッヘ笑ってごまかすヘマばかり          静 岡

あの人の笑顔に逢いに行く私

にっこりと笑って見てる人のくせ

ほっこりと笑った顔が大好きよ

 

 

「いとこ会」             薮﨑 千恵子

いとこ会忘れられないよう出かけ             焼 津

それぞれに個性引っ提げ来るいとこ

ひとしきり花を咲かせる写真帳

成功をしたなと思ういとこ達

 

 

「きっぱり」             谷口 さとみ

くち三つ描くと壁から耳がくる            伊 豆

枕元整えて良い夢を待つ

ゼロだから可能性も無限大

手と首を納得がゆくまで洗う

 

 

「自 由 吟」             林  二三子

ストレスを飛ばし右脳を肥やす旅             富士宮

不便さが目新しく見える秘湯

若者に合わす暮らしに無理がある

付き合いを言い訳にしてはしご酒

 

 

「  冬  」             増田  信一

寒い夜は太った妻を抱いて寝る              焼 津

冬の星何故だか昔思い出す

大陽を受けて輝く雪の富士

霜柱踏めば聞こえる春の音

 

 

「自 由 吟」             佐野 由利子

銀世界街も心も洗われる                 静 岡

バランスが足から崩れ歳を知る

急ぐのに待って待ってと待たされる

青い空あしたへ歩く一万歩

 

 

「春の足音」             石上  俊枝

風邪なのか花粉か春の音がする              静 岡

ねこやなぎ銀色の穂が春間近

お雛様早めに飾る親心

うきうきと陽気誘われ梅まつり

 

 

「自 由 吟」             荒牧 やむ茶

底辺に立つと世界がよく見える              小 山

さくら咲く世界を抱きしめるように

玉手箱開けると夢は空へ消え

愚痴ばかり言っても月は笑うだけ

 

 

「自 由 吟」             森下 居久美

正座する膝が痛くて悟れない               掛 川

梅の枝お借りしてますホーホケキョ

見栄張ったヒールでまさか肉離れ

すっきりと諦めました藪椿

 

 

「夕  陽」             多田  幹江

年金にすがれば転ける以後の坂              静 岡

音痴とは知らず音痴に道を訊く

おかげさんを何処吹く風の手前味噌

いい顔になって沈んで行く夕陽

 

 

「一 押 し」             池田  茂瑠

人間の沼で育ちの悪い鮒                 静 岡

着飾って隠す私が抱く魔性

一押しがいつも足りない痩せた身に

生命線不安な曲がり方をする

 

 

「見 通 し」             永田 のぶ男

新春を清き心の募金箱                  静 岡

見通しは足腰軋む消費税

実力はないが喋れば立て板に

明日は雪 心カラリと蒼い空

 

 

「いつの日か」            川村  洋未

ありがとう言えるようにと練習を             静 岡

海ばかり見てるといつか青い目に

ほっとかれいつかじゃが芋の芽が出る

千羽鶴まだ数えてはないけれど

 

 

「お・と・も・だ・ち」        尾崎  好子

六十年来いいさ良い年バレバレで             藤 枝

お互いに口は悪いが聞き上手

貸借がゼロというのも胸が張れ

金持ちもいるがけじめの四で割り

 

 

「  朝  」             真理  猫子

新聞はまだか今のは牛乳屋                岡 崎

思いっきり霜柱踏むハイヒール

卒業祝いたっぷり貰う問題児

ひな壇の官女が持っていたメガネ

 

 

「自 由 吟」             松田  夕介

恋かしら違ったただの静電気               静 岡

本物を知らない舌がグルメぶる

傷心に追い討ちかけるおやじギャグ

がんばれとアンパンマンの歌が言う

 

 

「昨日・今日」            渥美 さと子

由来など知らぬ花また告げる春              静 岡

汚れても鏡は拭かぬことにする

さざ波も糧に二人の昨日今日

目覚めれば今日も確かな脈の音

 

 

「  箱  」              勝又  恭子

空っぽの箱にもリボンかけておく        三 島

いったんはしまいそれから捨てる箱

そっとふた開けると次の箱がある

本箱を開くと見えてくる地層

 

 

「雑  詠」             長澤 アキラ

ケータイの中で秘密がごろ寝する             静 岡

魂の形 三面鏡で見る

せりなずな有象無象の厄落とし

8パーが待ち伏せている春うらら

 

 

「あやふや」                 望月    弘

一応というあやふやと茹で卵              静 岡

褒められているんだ嚔胸を張れ

戦争は雪合戦で幕を引く

だとしても夕日引き留めてはならぬ

 

 

「自 由 吟」              加藤    鰹

トラトラトラあの子を堕とすなら今だ          静 岡

雪五尺ロマンチックに遠く降る

花祭りに浮かれて鬼の児を宿す

マキシム・ド・パリ監修の非常食