「介護の現場」            恩田 たかし

人事異動下から上へ参ります               静 岡

明るくて暖かくいい環境だ

可愛いと言うと喜ぶおばあちゃん

前任者やり残した事請け負って

 

 

 

「桜 満 開」             山田  浩則

満開の桜に春を教えられ                 島 田

杉花粉まゆ毛がかゆくなる季節

お花見を待ってくれない雨が降る

夜桜のライトアップにブーラブラ

 

 

 

「ゆっくり生きよう」         飯塚  澄人

敵じゃないペテルブルグはいい夏だ            静 岡

雪柳かように咲けと白が言う

千円の弁当活きる古希の会

御利益の基準で決める並の人

 

 

「春 よ 春」             奥宮  恒代

プランター花のマーチでお出迎え            森 町

太っちょのノラよ稼ぎがいいんだね

落ちている答捜しをするネット

酸化してしまわぬうちに食べる恋

 

 

「こんなこともあった」        鈴木 千代見

真っ赤な陽うっかり抱いて焦がす胸             浜 松

靴箱に眠ったままの赤い靴

歯桜もひとつやふたつ浮く話

お祝いの花もいつかは枯れる時

 

 

「  桜  」             鈴木 まつ子

はにかんで花ほころびる子の巣立ち            島 田

満ち足りて桜天上つくりだす

花よりもはち切れそうな娘に見とれ

さくら花散るよ散る散るいのちかな

 

 

「雑  詠」             西垣  博司

栄養を摂れと昔は言ったのに               静 岡

数々のサプリ仕上げに泡が出る

診察券に優先順位がある

言い訳の手間を省いてシラを切る

 

 

「  歪  」             新貝 里々子

ヤジロベーの習性吐息にも揺れる             袋 井

強くなるためのくすりがまだ利かぬ

南瓜切る菜切り包丁のけなげ

ロボットの派遣を願います 至急

 

 

「仕 合 せ」             石田  竹水

お互いが仕合せだから言える愚痴             静 岡

春の女性はみんな奇麗に見える

将来の夢はと問えば正社員

これきしの事を加齢が邪魔をする

 

 

「雑  詠」             成島  静枝

アメーバの如き人脈趣味の会               千 葉

羨まし大王イカの長い脚

買い溜めへ食指動かぬ苦い過去

文字化けのメールスマホが絡んでる

 

 

「ユーモア川柳」           岡村  廣司

学歴をせせら笑って歯が立たず              焼 津

労働の時間は一緒手当て別

身についたケチで何とか世を渡る

診察券六枚有ると忙しい

 

 

「ケースバイケース」         毛利  由美

増税という出会いあり春四月              つくば

雨宿りそしてビニール傘を買う

原発の疑似餌になっている日本

都合よく生きますケースバイケース

 

 

「雑  詠」             井口   薫

筍の皮剥ぐように聞いてくる             袋 井

青空へ集大成のネギ坊主

草抜きの指が無心に辿り着く

指揮棒を置くと脊中が丸くなる

 

 

「学ぶこと」             栃尾  奏子

倒れこみ地球とキスをする花野              大 阪

側溝にたんぽぽ僕も頑張るぞ

虫けらも人も還ってゆく大地

たくましい命の音がする大樹

 

 

「自 由 吟」             濱山  哲也

命日も黄泉の国では誕生日                つがる

才能が眠ったままで起きません

「万が一」を「万が三」にする努力

ちょい悪じゃなくて私はチョイ真面目

 

 

「水 の 嵩」             斉尾 くにこ

世間さま欺いているおじぎ草               鳥 取

世を泳ぐ尾鰭のあたり羞恥心

じわじわと世間の水の嵩が増す

説明のつかぬ涙が涙が止められず

 

 

「  毒  」             戸田 美佐緒

毒持てばアナタは魔女の顔になる       さいたま

埋み火を殺さぬように火吹き竹

三途まで妻に惚れてるふりをする

某日のワタシは骨になりたがる

 

 

「まさか…」             外側 としみ

割愛をされて以下同文の列                磐 田

ありのままの部屋に突然お姑様

抵抗をしたらガラスの天井が

家康くんまさか出家をするなんて

 

 

「この頃思う」            山本 ますゑ

大成はしなくていいと二枚舌               磐 田

政治家が金で足元掬われる

聞き役でじっとチャンスを狙ってる

電子機器ペンだこ知らぬ子が育つ

 

 

「しずかなお話」           増田  久子

楽しいね楽しいわねと手話同士               焼 津

年金の暮しにもあるピンとキリ

ぽんぽんが痛いのかなと小児科医

奥さんの声だけ聞こえてるケンカ

 

 

「自 由 吟」             馬渕 よし子

それなりの痛み親子の膿を出し              浜 松

ご機嫌は如何と鏡今朝も問い

高齢で片付けられてああ無情

肩の荷を降ろせば迫る認知症

 

 

「自 由 吟」             内山  敏子

消費税あがらぬうちと長電話               浜 松

介護する人からもらう思いやり

ほっこりと春と対話のふきのとう

ふる里の香りを包む春の風

 

 

「り ん ご」             安田  豊子

甘く蜜抱いたりんごが愛おしい              浜 松

徘徊と似てるわたしの散歩道

過去の絵が巡るひとりの日向ぼこ

様変りしても恋しい里の駅

 

 

「ありがとう」            小林 ふく子

花が咲くただそれだけでありがとう            袋 井

向き合って話せる君へありがとう

とっておきの顔で言いますありがとう

救われて受けた命へありがとう

 

 

「自 由 吟」             南   天子

花よりも野菜を植える決心を               焼 津

百年後今の日本を見てみたい

歩かない笑わない今井戸蛙

誤解され生きて来たけど悔いはない

 

 

「自 由 吟」             竹内 みどり

山里のしだれ桜がまた見たい             さいたま

生きるとは許し許され丸くなる

増税で節約一筋裏技で

知能線とぎれとぎれで物忘れ

 

 

「僕は恐妻家」            森 だがやん

嫁笑顔何だが怖い後退り               島 田

笑顔から般若に変わる怖い嫁

天命に誓って僕はしていない

君だけと望み薄だが嘘重ね

 

 

「ポンコツ」             中矢  長仁

古い家せめてカーテン変えてみる              松 山

良いじゃない杖を突いても歩けたら

ポンコツがポンコツに乗りのろのろと

終活は僕の物だけしてる妻

 

 

「春 の 中」             真田  義子

生き生きとコートを脱いで春の中             仙 台

まず一歩進めばなんとかなるだろう

わが胸を川はゆっくり流れてる

あのページ今も心の隅にある

 

 

「夏を待つ」             酒井  可福

庭の花妻の機嫌を採っている               北九州

風鈴を軒に吊して夏を待つ

紫陽花が小雨に濡れて待つ垣根

縁日へ浴衣に靴で飛び出す子

 

 

「  暇  」             山本 野次馬

あくび癖猫と似ている日向ぼこ              函 南

真っ白な画布が夕陽に染められる

蟻たちが誘う就職斡旋所

誘いのメールかため息が聞こえる

 

 

「雑  詠」             寺田  柳京

敦盛の咽びかポタリ赤椿                 静 岡

早蕨の拳で好きな鼻を撫で

うれしいネ桜が散れば次の花

松籟の中に聞えた父母の声

 

 

「  春  」             川口 のぶ子

辛夷咲く空の青さにピンク映え              藤 枝

春彼岸団子まるめておいしいね

雛飾り今年も無事にすみました

甘夏の甘酸っぱさが刺激する

 

 

「  春  」             鈴木 恵美子

満開の桜にこころ癒されて                静 岡

久々に友とやすらぐ花の下

菜の花の黄に染められてひと休み

薫風を蹴ってマフラー街に出る

 

 

「桜  花」             畔柳  晴康

上着脱ぎ孫らとはしゃぐ桜狩り              浜 松

老い二人桜並木を万歩計

短冊が枝に揺れてる桜花

花見上げ足湯に時を忘れてる

 

 

「踏  む」             藤田  武人

ミスターの伝説ベース踏み忘れ              大 阪

かかと踏む子どもなんかにならないで

場数踏む数だけ人を飲む仕草

影を踏み新たなページ捲ります

 

 

「自 由 吟」             岩永  圭二

だぼついた肉を晒してすんません            大 阪

花粉さん来年こそは絶交や

じわじわと近寄らんといて青虫はん

街並みの変化に気づく陽気かな

 

 

「こ わ い」             川口   亘

泳げない恐くて泣いた海びらき             藤 枝

運転の恐さを知った歳になり

連日の恐い記事には目をそむけ

吠えるより噛まれる方が恐い犬

 

 

「自 由 吟」             菅原  花子

楽しみだ桜の開花早く来て           盛 岡

隣人の笑みをもらって元気出る

夕御飯悩む献立マンネリ化

挨拶でぱっと明るくなる私

 

 

「自 由 吟」             薗田  獏沓

稍の寒に僧は素足で足早に          川根本町

北の窓塞ぎ一景失えうも

見た目程優しくはない富士の白

枯紅葉一葉遊べる谷の底

 

 

「X  P」             高橋  繭子

サポート終了ですパソコンも女子力も            仙 台

万能と過信しているXP

廃棄対象ですパソコンも残業も

強制終了のように突然消えたひと

 

 

「津  波」             多田  幹江

侮ると牙むく津波注意報                 静 岡

はるばるとチリから来たと言う津波

三陸の春を逆撫でした津波

津波ねんころ防潮堤ができるまで

 

 

「うろうろ」             谷口 さとみ

おどり場で8%がゆれている              伊 豆

躓いた方が答えてくれたナゾ

期間内ノルマなかなか埋まらない

字をじっと見つめ混乱する自信

 

 

「ぶつぶつ」             中野 三根子

なんとなく目や鼻がダメ花粉症              静 岡

マスクして文句ぶつぶつ言ってみる

春だからなぜだかニキビあちこちに

灰汁を取るおいしいカレー楽しみだ

 

 

「華道展 その1」          永田 のぶ男

不可もなく自由に差され動かない            静 岡

両足を開いた花が天を突く

三色の花と器が調和よい

華道展約半分は陶器展

 

 

「自 由 吟」             林  二三子

春の陽が伸びする猫の背に当たる             富士宮

杉だけじゃなくヒノキにも苛められ

思う事旨くいかずに気が晴れぬ

リハビリが進み笑顔が見えてきた

 

 

「  桜  」             増田  信一

散り際も潔くないわる桜                 焼 津

前線も桜ならいい雨はいや

パッと咲きパッと散らない花もある

桜より団子ですよという娘

 

 

「さ く ら」             渥美 さと子

夜桜に舞を急かせる踟囃子                静 岡

窓開けて味わう孫のサクラサク

潔さ桜に真似て捨てる憂さ

改めて虜になりました桜

 

 

「怠 け る」             尾崎  好子

独り居で怠け出したら止らない              藤 枝

コンビニに行けば野菜も切ってある

怠けても口は可愛い可愛がり

怠けるを経済的に鑑みる

 

 

「  旅  」             薮﨑 千恵子

お膳立てできた旅への誘いくる              焼 津

誘われる時が花よと旅に出る

名目をつけては決める次の旅

一回が二回に増える旅プラン

 

 

「春なのに」             森下 居久美

記念樹が春だ春だと騒ぎだす               掛 川

満開に見とれ階段踏み外す

猫の手も借りたい春に医者通い

チチンプイ明日は治ります様に

 

 

「日常の事」             川村  洋未

大根を丸まる使いほくそ笑む               静 岡

台所磨いた今日は外食し

クラシックなぜか聞きたい年になる

手の届く範囲が城と決めて楽

 

 

「自 由 吟」             滝田  玲子

演技かも知れないボケに要注意              浜 松

次世代に残す地球が欠けはじめ

目も耳もしっかり見ている明日の風

冬枯れに一つ残ったカラスウリ

 

 

「  春  」             石上  俊枝

東風が吹く人も猫も背伸びする              静 岡

ピカピカと光が跳ねる春の海

冬眠の右脳起きだす春日差し

桜餅先ず仏壇へ春をあげ

 

 

「自 由 吟」             荒牧 やむ茶

そもさんが挑むせっぱの高い壁              小 山

肩の荷を降ろすと飛べる空がある

僕はまだ当年とって青二才

天高く投げたコインの裏表

 

 

「モザイク」             池田  茂瑠

モザイクを掛けた秘密を甘く抱く            静 岡

悪い知恵私に呉れる狐面

禁断の実をまた口にして堕ちる

追伸に引く許せない一線を

 

 

「自 由 吟」             松田  夕介

あみだくじみたいに歩く田舎もの             静 岡

深呼吸このまま空を飛べたなら

天国にいますうたた寝中の僕

夕焼けに癒されていく今日のミス

 

 

「自 由 吟」             真理  猫子

リフォームでどうにか着てねアルマーニ         岡 崎

野菜室証券類が冷えてます

母の血を強く受け継ぎ太っ腹

勇気湧くたったひとつのおにぎりで

 

 

「春  霞」             佐野 由利子

お答えももらえぬうちに春が去り             静 岡

街の美を損ねるビルがまたひとつ

韓ドラが好きな夫を持て余す

医者通い続き気分は春霞

 

 

「日  常」              勝又  恭子

朝ドラが終わる主婦業始動する         三 島

主婦ランチした日の夕食は質素

家計簿は無駄を確認してるだけ

でこぼこを均せばゼロで終わる今日

 

 

「雑  詠」             長澤 アキラ

赤ワイン一本飲めば立ち直る               静 岡

頼みごとする日は上げるお線香

通帳にこづかれながら酒タバコ

遅刻して自治会長にノミネート

 

 

「  嘘  」                  望月   弘

消費税から嗤われた四月馬鹿             静 岡

一杯の水で消したい嘘を吐く

ウソ一つ思いつかずにもう三日

不真面目な神へ付箋をつけてある

 

 

「五月の風」             加藤   鰹

友の死にもう親指は隠さない             静 岡

椅子を蹴り紙クズになる名刺たち

派手な音立てて崩れる自尊心

パクチーの香が忘れたい人を呼ぶ