「羽根の欠片」 長澤 アキラ
助走路に羽根の欠片が落ちている 静 岡
握力が無くてお金が掴めない
ブルースの涙を知らぬ笑い声
揺れながら考えているヤジロベエ
「花 恋 慕」 井口 薫
花だより追うパソコンの指に艶 袋 井
さあ花へ満開にするスケジュール
さくら さくら 桜へ切符あとわずか
酸欠もまた心地よし花のあと
「 春 」 成島 静枝
春風へヒートテックがまだ脱げず 千 葉
颯爽と美容院から春の野へ
食用にされると知らず土筆達
春色のパレット次の世もおんな
「雑 詠」 滝田 玲子
大根がとっぷりつかる足湯の輪 浜 松
読経中ケータイメールする僧侶
子の喧嘩親が出しゃばり輪を広げ
億の金右から左よく動く
「ハンカチ」 石井 昇
白かったはずのハンカチ染みだらけ 蓮 田
たらればを繰返してるブーメラン
どんぐりが背比べする井戸の中
退屈な今日を始める大あくび
「春ですね」 鹿野 太郎
私にも切り取らせてね春の景 仙 台
その辺にたぶん景色を変える鍵
一丁の豆腐できっと花が咲く
赤っ恥もう梅割りで流し込む
「沈 丁 花」 川村 美智代
さくら咲く病気の話 死の話 静 岡
信長に面目もない靴の紐
いぬ歩く足順孫と揉めている
内輪もめうっかりしゃべる沈丁花
「なごり雪」 高橋 繭子
いじめがいある人間に雪が降る 大河原
みぞれ雪未練みすかし降り続く
忘れもの日陰の雪がとけ残り
ポジティブな人が桜の話する
「健康志向」 松橋 帆波
体脂肪計は宿題ばかり出す 東 京
健康に良いらしいけどミドリ色
パンだけじゃ血になりません日本人
「入れます保険」に入れない持病
「四姉妹の春」 栃尾 奏子
父の庭亡母を見つけた沈丁花 大 阪
さくらさくら今日も遠くで咲いている
春よ来い咲いて見せたい人がいる
コート脱ぎ捨てれば新しい私
「春ですね」 森下 居久美
気になっているのに熟睡してしまう 掛 川
散らかった部屋に 散らばった思い出
ワイシャツの白が眩しい 春ですね
陽を浴びた洗濯物がドレミレド
「力 瘤」 加茂 和枝
風船を探し損ねて大あくび 岩 沼
ひと雨にほっとひと息明日の事
力瘤消えて素直になってゆく
幸せの種はたっぷり蒔いたはず
「雑 詠」 馬渕 よし子
降り止まぬ雨へ懺悔はもうやめた 浜 松
咲き誇る命へ詫びる花鋏
不自由ない暮らしへ愛が欠けはじめ
歳ですと言われ歩調がおぼつかず
「負け惜しみ」 増田 久子
顔写真年相応がいま恐怖 焼 津
見学を三度 最寄りのエアポート
アナログで見終りました冬五輪
年金の差で勝ち組と負け組と
「自 由 吟」 芹沢 穂々美
女です性別欄に書きました 沼 津
西暦を聞かれはてなと首かしげ
同じ血も一長一短あるんだね
草笛を吹いた相手と淡い恋
「春ですね」 小林 ふく子
コンセント抜けば吹き出す春の音 袋 井
楽しさの角度見つけて春の窓
桜咲きあの告白が実を結ぶ
次の世もさくら桜を見て過ごす
「 眼 」 岡村 廣司
初対面組し易しと読まれた眼 焼 津
反省をしてますなんて眼が笑い
ライバルと眼を合わされぬ眩しくて
眼も耳も口も悪いが肚はいい
「自 由 吟」 奥宮 恒代
雨降りはいっそ侘しいやぶ椿 森 町
こま結び愛がほどけてゆきそうで
一本の線が画帳に納まらぬ
翔べそうな気がしていつもVサイン
「 釘 」 安田 豊子
糠漬けの釘本領の茄子の色 浜 松
駄目押しの釘は錆びても曲げぬ意地
出る釘はきっと誰かが打ちに来る
プライドを傷つけぬ様釘を打つ
「春 の 川」 真田 義子
伝えたい言葉が春の川に浮く 仙 台
そういえば失ったものなにもない
交差点人間模様繰り返す
恋心秘密にしてる水中花
「文 房 具」 濱山 哲也
分度器で陳謝を測るワイドショー 青 森
政治家は修正液を持ってない
お絵かきをしてる園児はアーティスト
軸のないコンパス未来描けない
「経年変化」 毛利 由美
マグカップにお茶を注いで長丁場 つくば
こめかみを押さえて耐える偏頭痛
夫婦にもそれなりの経年変化
油断していると二月はすぐ終わり
「 爪 」 森 だがやん
言い訳を疑問符付きで返す妻 島 田
最初から嘘と決めつけ吠える妻
爪磨き遅い夫を妻が待つ
爪の跡 事情聴取に懺悔する
「爆 発」 酒井 可福
沈黙の不満が刻む導火線 北九州
秒読みに三猿になりやり過ごす
点火したマッチは僕が持っていた
爆発の前に説いてる平和論
「サプライズ」 新貝 里々子
目印のコンビニ消えてここはどこ 袋 井
骨年齢だけは米寿に近くなる
骨密度上げてわたしの耐震化
どっこいしょ温湿布から冷湿布
「後期高齢」 畔柳 晴康
ご都合で後期高齢使い分け 浜 松
高齢で口だけ動き手は出ない
自己紹介歳の話は遠慮する
嫌だねえ何処へ行くにも補聴器よ
「 列 」 山本 野次馬
整列を離れて鳥になりすます 函 南
順番を待つ葬列の最後尾
陳列棚に鎮座している平和論
父の無位無冠蟻の列かも知れぬ
「自 由 吟」 萩原 まさ子
津波来る地球が丸いからだって 静 岡
受験生母が代わりに見る月九
義理チョコの功息子より数で勝つ
手をかけずオーガニックになる野菜
「話 題」 石上 俊枝
期待して期待通りに夢はずれ 静 岡
四年の苦 満面の笑みメダリスト
疎ましい亭主の話題盛り上がる
リストラにトヨタリコールカタカナ苦
「春 の 猫」 提坂 まさえ
やけ喰いをしたくなりそう話題作 静 岡
代役で婚活に行く過保護ママ
外泊も自己責任で春の猫
あとあとを託し婿殿刀置く
「 影 」 藤田 武人
また明日名残惜しそう子等の影 大 阪
障子越し影絵操ってる十指
正直な影でそっぽを向いている
かくれんぼ影が最初にみつかった
「鳩 時 計」 内山 敏子
子の生長年月刻む鳩時計 浜 松
鳩時計 昔話は終らない
狂っても愛着が有る鳩時計
ポッポポッポー家族見守る鳩時計
「雑魚の意地」 瀧 進
稚魚のうち未だ流れには逆らわず 島 田
川底の石しがみつく雑魚の群れ
雑魚の意地せめては魚道上るまい
見栄張らず気張らず雑魚のサバイバル
「花 便 り」 大塚 徳子
爪痕の消えぬ背中にある想い 仙 台
ちゃんちゃんこおこたで向い合う無口
カランコエ手塩にかけた花が咲く
沈丁花香り漂う花便り
「力 む」 薗田 獏沓
北のアナ大本営の声で吠え 川根本町
サミットで笑顔の裏を読む力
魂胆があり大巾な教育費
正義感採算があり出す極意
「惚け上手」 鈴木 まつ子
核心を衝かれ返答はぐらかす 島 田
お惚けがうまいご都合主義でいる
どこまでもしらばくれてる言い逃れ
蜂の巣のごとくつつかれても惚け
「水 仙」 鈴木 千代見
唇を奪われそうな花が咲く 浜 松
岸壁の水仙共に凛と咲く
水仙の香りをのせて春の風
水仙のささやき胸を温くする
「強 妻」 中矢 長仁
まだいける自信を持って化粧する 松 山
通帳と財布のひもは離さない
古希過ぎて老後の為と貯金する
粗大ごみでも年金の為に置く
「自 由 吟」 川口 亘
暫くはそっとしてねが性に合い 藤 枝
お目当が遠のいて知る飾り窓
気懸りは伏せても直ぐに頭挙げ
誤認して思わぬ方に気が走り
「雑 詠」 川口 のぶ子
不機嫌を顔に出している二日酔い 藤 枝
苦しんだ揚句に出したグーチョキパー
失敗があって人間味が出る
ぐずついた天気に似せる世の不況
「信じない」 恩田 たかし
信じない信じたくない信じなよ 静 岡
信じない楽し儲けは自爆する
爪痕を癒して残り成長す
爪隠し才能出さず時過ぎる
「雑 詠」 飯塚 すみと
チューリップ可愛い鉢が待っていた 静 岡
表面を繕いどこまで保つ経理
内気性十人ほどで喋れない
ほころびの我が家修理へキリがない
「バンクーバー冬季五輪」 尾崎 好子
開幕も閉幕も見た居座った 藤 枝
練習のリュージュに散った選手の死
靴の紐 織田信長のDNA
真央ちゃんの悔し涙がにじむ銀
「健 康」 林 二三子
青竹踏み痛みで健康チェックする 芝 川
取り柄など無いが健康褒められる
舞う花粉鬼集団に見えてくる
生きている今日も美味しく食べられる
「自 由 吟」 今井 卓まる
親友じゃんすべてをチャラにする言葉 浜 松
今日もまた埴輪の機微を解せぬまま
嘘ついた小指を洗う念入りに
三つ目に大事なものは日々変わる
「 桜 」 増田 信一
散る桜杯に受け天仰ぐ 焼 津
山桜誰も見ないで散っていく
桜咲き鳥囀れど心冬
桜色に輝く君に乾杯
「ボイコット」 佐野 由利子
春先の街はピンクで沸きあがり 静 岡
音程も外れてしまうボイコット
口も手も出さぬ狸が焦れったい
以下同文ではお気の毒感謝状
「父の椅子」 戸田 美佐緒
ifなんてない青春の1ページ さいたま
葡萄の房のひとつとなって起立する
昼の月母の記憶が欠けていく
余命表父の座椅子が深くなる
「再 生」 勝又 恭子
一本の傘寄り添って雨も好き 三 島
言い訳は下手なんだけど嘘もない
ご褒美を決めて能率増す仕事
神様がくれた忘れるという知恵
「四 次 元」 真理 猫子
ドラえもんどこでもドアを貸し渋り 岡 崎
体脂肪 景気の波をひとり勝ち
こんな日はわたしの時計不整脈
太陽に近いところにへそがある
「ほ っ」 山下 和一
陰口を励ましと聴く土手柳 伊豆の国
ふわふわの脳みそはまだ床の中
普段着のおいらの空に深呼吸
散る桜心の隅を掃除する
「感 受 性」 薮﨑 千恵子
例えばの話わたしが出汁にされ 焼 津
信用をしない彼女の誘い水
感受性強く人の気すぐ解る
チャックした口あげまんが開けたがる
「久し振りの休日」 小野 修市
ゆっくりは出来ずに妻に使われる 静 岡
妻といるたまの休みがぎこちない
半日もすれば仕事が気に掛かる
休みだと自分に言って聞かせてる
「近 況」 多田 幹江
風上の煙たい人になりました 静 岡
にんげんに会いたくて行く水呑み場
古里の水はピロリを眠らせる
ストップウォッチを捨てて夕陽の丘に立つ
「 水 」 谷口 さとみ
贅沢を言えれば酔える水がいい 伊 豆
孫ができポッチャン便所さようなら
真夜中の排水口の聞き上手
水以外許さぬカレー屋の親父
「春を待つ」 中野 三根子
桜もちうぐいすもちに春の色 静 岡
ピンクにはほんわか心ゆるませる
マニキュアもちょっぴりピンク春を待つ
窓からの心地良い風 夢の中
「自 由 吟」 稲森 ユタカ
関白な亭主迎える離婚印 静 岡
何もせず口は達者な主がいる
見栄を張り嘘で固めたこの社会
結局は嘘をつけない下半身
「無 題」 西垣 博司
見当たらぬ茶柱討ち死にでござる 静 岡
走り書きヒミツと思うふしがある
再検査処分して来た雑記帳
影でいいあなたのそばに居れるなら
「春よこい」 永田 のぶ男
生涯に喝采をする春目覚め 静 岡
抉じ開けた扉の先に春うらら
桜満開 声を張り上げ春の市
待っていた大人の春が心地よい
「不 思 議」 石田 竹水
叩かれた背なから脱皮してた僕 静 岡
膳に盛る愛は滋養にきっとなる
体験談 味は好みで賞味する
絵に描いた不思議な餅の味を知る
「自 由 吟」 中田 尚
身の丈に合わせた花を買ってくる 浜 松
罠だとは知らずに渡る虹の橋
吉日に結んだ糸は強かった
森に来てサプリメントを飲んでます
「時 間 差」 川村 洋未
さそわない人が時間を聞きにくる 静 岡
あしたまで待てば私が化けてみる
もう一度すすめられたら食べたのに
ぶらり出て丸く太ってもどる猫
「狭 い 穴」 池田 茂瑠
カルチャーの隅で私の錆落とす 静 岡
お返事は待ってこの傘乾くまで
二人なら入れる狭い穴だけど
甘いけど軽く乗れない話だな