2023年4月号

参加者(順不同、敬称略)柳谷益弘、森田安心、石神紅雀、髙瀨霜石、恵利菊江、竹島晃、やまぐち珠美、山本泉、澁谷さくら、風間なごみ青木公輔、土田欣之、大黒谷サチエ、谷口修平、山田浩則、山田恭正、瀧尻善英、小林ふく子、遠藤そら小林牧代、大畑文子、松浦陽子、垣屋ひろみ、川井ふみ、横山かしこ、岡山義朗、池谷ゆき、柗本けい子、迫寛之、小澤恵津子、小澤康郎、岩城干城、平井正俊小川一郎、阿部和己、高浜広川、中前棋人、山田とく子、阿部治幸、鈴木千代見、勝又康之、外園ピアノ、勝田晶子、杉山柳雪、句ノ一、北出来朗、羽城裕子、坂本加代、岩崎光子、黒岩博美、小野澄子、畑山忠志、柴田昭三郎、米山明日歌、小笠原正花、多田教子、池田茂、小原金吾、住田勢津子、織田和子、青砥たかこ、服部茂、石谷英雄、大村利朗、石田孝純、澤田徳芳、前田哲志、山本ますゑ、久世高鷲、奥山京、山本勝治、中野三根子、山本智子、八木益代、澤井敏夫、宿島健男、渥美さと子、澤崎ひらめ、増田信一窪田里、新貝里々子、山田こいし、上原稔、斉藤敏男、山野寿之、青木博子、松永澄江、吉田節分、高橋みっちょ、佐藤よしき、福多あられ、山本野次馬、橋爪光子、浜井尚子佐藤雅秀、奥宮恒代、大久保真澄、平井美智子、高橋くるみ、川村洋未、倉繁勝信奥林五津夫、橋倉久美子、吉崎柳歩、竹島典子、川島五貫、水品団石、遠藤まつゑ、志村康江、宮崎三千代、本山千代子、石田哲夫、鮎川弘子、森嬉美惠、半田市子、長谷川崇明、竹内はるえ、小林信二郎、長谷川百合子、峰本邦子、宮崎和子、池田稔、油谷克己、熊谷岳朗、望月弘、載けい子、小暮風六、成島静枝、鈴木敏幸、上村夢香、松岡弘子、柴本ミチコ、杉浦実子、山田勝笑、岩崎裏風、田中恵子、藤田盛雄、千葉盛子、岩田明美、石田竹水、富永恭子、松谷由夏、鶴見美佐子、工藤エミ湖、佐佐木雀区、古谷龍太郎、宇都満知子、井口薫、小林祥司、金城風見子、佐野由利子、小俣まちこ、提坂まさえ、鈴木かおる西浦小鹿、荒牧やむ茶、藤田武人、栃尾奏子、三浦幸子、府金節子、竹平和枝、佐藤まき、永見心咲、井澤壽峰、五十川千賀子、萩原まさ子、菅野とみ子、村野あかり、居谷真理子、川本信子、八甲田さゆり、渡邊幸子、石澤はる子、富岡敦子、竹内禮治、西山竹里、安西廣恭、中村恵、真理猫子、鏡味しょう子、松ちづ子、中村鈴子、吉田耕一、須藤しんのすけ、新家完司、今田久帆、外側としみ、沢田百合子、関口行雲、山口忠一、勝又恭子、森下居久美、渡辺遊石、山田美鈴、漆沢サダ、河瀬風子、鷹觜閲雄、佐々木多美子、芳賀健一、石川柳寿、菊池京、毛利由美、北山まみどり、中西余人、三上武彦、織田順子、伊藤豊志、真島久美子、饗庭風鈴、八木五十八、村井規子、真島美智子、赤松ますみ、山下和一

課 題 「タイミング」 髙瀨 霜石 

600号おめでとうさん鰹ちゃん     石神紅雀

見ものですWBCその結果        小澤康郎

人類の危機停戦のタイミング       河瀬風子

タイミング逃して今も一人者      菅野とみ子

聞き上手合いの手入れる北酒場    長谷川百合子

以心伝心カレー食べたいタイミング   宇都満知子

私にとってはバッドタイミング      毛利由美

雑炊の蓋をお奉行様が開け       真島久美子

タイミング合って恋した君と僕      松谷由夏

蝶になる夕陽と酒のタイミング    北山まみどり

彼のこと切り出す父の機嫌みて      北出来朗

うなぎ屋で借金取りに会うなんて    荒牧やむ茶

百億の奇跡であった薬指         栃尾奏子

迷ってるうちに失うタイミング      竹島典子

ミルクティーあと十秒で飲みごろよ   柴本ミチコ

プロポーズなさいと粉雪が舞った    居谷真理子

待っていたくせに「偶然でしたねえ」   織田和子

あしたがやってくる窓を開けていく   福多あられ

詫び入れる頃合いじっと待っている   佐藤よしき

母さんってタイミングよく現れる    澤崎ひらめ

逆上がりやっと掴んだタイミング    鈴木かおる

淑女から悪女に変わるのよ今夜     小林信二郎

ゴメンネといつも私が先に言う     中野三根子

改札で君に会えるか急ぎ足        小林牧代

陣痛が来るまではする野良仕事      山田美鈴

いつだって妻のヒットに救われる     安西廣恭

ごめんねと一言手紙いつ書こう      織田順子

親離れ子離れにあるタイミング       竹島晃

タイミングあって逆点ホームラン     川村洋未

嘘を吐くタイミングなら知っている 須藤しんのすけ

再会はきっと桜のタイミング      澁谷さくら

甘い物食べたい時に友が来る       森嬉美惠

タイミングのがし未開封のポルノ    米山明日歌

星屑のふりかけを出すタイミング      菊池京

ちょうど今お茶にしようとしてたのよ  住田勢津子

つまずいた転んだ終活始めるか     森下居久美

神さまが背中を押してくれたから     柳谷益弘

沸点で印籠を出すタイミング     大黒田サチエ

絶好の間合で振っておく尻尾       三浦幸子

カルメラがふくれた春がやって来た   真島美智子

五 客

タイミング外す巧みなタイミング    青砥たかこ

出来ちゃった結婚タイムリーヒット    奥宮恒代

肉ジャガは炊けたしビール冷えてるし  平井美智子

満月にきれいな疵をお見せする       句ノ一

どうしても大縄とびに入れない      饗庭風鈴

人 位

決断の時いつも風吹いて来る       漆澤サダ

地 位

すぐ飛べるように広げておく翼      羽城裕子

天 位

金曜日振り子打法になっている      伊藤豊志

~選後感~

佳作①の「鰹ちゃん」に泣けた。今回の選者も、僕と鰹のコトを知っている夕介君と、弘さんの仕掛けでしょう。僕がいまだに川柳を続けているのは、鰹が僕を尋ねて来てくれた、あの「タイミング」があってこそでした。

課 題 「タイミング」真島 美智子 

タイミングずれて断る術がない      恵利菊江

門番は居眠りまだ遠いヘブン     やまぐち珠美

シンバルがエクスタシーを逃さない    中前棋人

記念日はきのうでしたよ赤いバラ      句ノ一

ちょうど今お茶にしようとしてたのよ  住田勢津子

タイミング外す巧みなタイミング    青砥たかこ

顔出したとたんに軍手渡される     山本ますゑ

風が運んできたのです君のこと     新貝里々子

踏み切りが刑事ドラマを盛り上げる   山田こいし

並走で息の荒さにギアチェンジ      斉藤敏男

発光の時を待ってる恋蛍       高橋みっちょ

あしたがやってくる窓を開けていく   福多あられ

肉ジャガは炊けたしビール冷えてるし  平井美智子

立ち合いに駆け引きのある仕切り線    吉崎柳歩

杖の歩を始める父へ春帽子       宮崎三千代

ツアー募集受け取った日は年金日     鮎川弘子

過疎のバス時間通りで乗り遅れ     長谷川崇明

旅土産渡せぬうちに期限切れ      竹内はるえ

散骨は追い風の今春の海        小林信二郎

間が悪いチャイム聞いてる風呂の中    峰本邦子

タイミングぴったりでした風になる    熊谷岳朗

諦めたころに顔出す探し物        小暮風六

バンジージャンプ十七才に別れ告げ    鈴木敏幸

貸した手の引き上げ時がつかめない    田中恵子

歌い出しずれて遅れてサで合い     工藤エミ湖

いらいらのときに一升瓶と友      古谷龍太郎

後で言ういつか言うまでラッピング   提坂まさえ

うなぎ屋で借金取りに会うなんて    荒牧やむ茶

風呂上がりスーと出てくる缶ビール    藤田武人

叱られる前に謝ることにする       三浦幸子

プロポーズなさいと粉雪が舞った    居谷真理子

先生がふり向くたびに出るあくび     竹田禮治

いつだって妻のヒットに救われる     安西廣恭

寄り道へ誘う冬の通り雨         真理猫子

冬の朝止まったままの腕時計    須藤しんのすけ

タイミング外すと嘘になるジョーク    渡辺遊石

星屑のふりかけを出すタイミング      菊池京

宅配のおかげで切れた長電話       毛利由美

山海の旬を逃さず飲む新酒        山下和一

今だからただ今工事中の俺        阿部和己

五 客

タクシーが止まった雨が降り出した    油谷克己

スタートは完璧だった予選落ち      杉浦実子

母さんってタイミングよく現れる    澤崎ひらめ

滑り台いまかいまかと夕焼ける     真島久美子

スイッチが入る山野草のたより      永見心咲

人 位

すぐ飛べるように広げておく翼      羽城裕子

地 位

ワタクシハコノジダイニハアイマセン   髙瀨霜石

天 位

猫のヒゲ揺らすと菜の花も揺れる    赤松ますみ

~選後感~

たかね600号おめでとうございます。うーんとうなったり、クックッと笑ったり、楽しみながら選をさせてもらいました。
人 すぐ飛べるように広げておく翼
一読明解、少々齢を重ねてきた私には、うらやましいかぎりです。
地 ワタクシハコノジダイニハアイマセン
宇宙人の一人言。すべてカタカナで句のインパクトが強く最後まで手許に残った句でした。
天 猫のヒゲ揺らすと菜の花も揺れる
天には私の大好きな句をいただきました。御投句の皆様、ありがとうございました。

課題 「欠片」     藤田 武人 

血の跡は消せぬ天安門広場        髙瀨霜石
まだ残る欲の欠片が見せる夢       高浜広川
花びらの数を数えている独り       渡辺遊石
数式に過去の欠片を埋めていく     福多あられ
こだわりのかけらが挙手をさせたがる  宮崎三千代
落ちていた欠片もうまいメロンパン    松ちづ子
チャーハンで生きる野菜のかけらたち  澁谷さくら
大根に悪さしたのは唐辛子        栃尾奏子
イモケンピ欠片に深い味がある      新家完司
松茸の欠片を探す土瓶蒸し       大久保真澄
愛犬がパンくず拾うモーニング     小澤恵津子
雨音が聞こえる哀しみの欠片      真島久美子
真実はたった二ミリのガラス片      伊藤豊志
落ちたのは天狗の鼻の欠片だろ       中村恵
片言の英語(告白する今夜)    須藤しんのすけ
デカの目が這い蹲って追う欠片      山野寿之
ひからびた皮膚一片へ法医学      奥山五津夫
分度器の欠片で足りる狭い視野     佐佐木雀区
一瞬のキラリもあって老いの脳     居谷真理子
だんだんと欠片だらけになる海馬    米山明日歌
アリバイの証言台に立つ欠片       須藤雅秀
思い出の欠片がはまるマンホール     羽城裕子
非正規は豆腐カケラで首を切る      山本勝治
恋人未満夢の欠片が発芽する      山本ますゑ
思い出の欠片が恋の邪魔をする      小林牧代
風化した恋の欠片はセピア色       柳谷益弘
チケットの半券握り行く復路       鮎川弘子
子の仕草親の欠片がおもしろい     宇都満知子
能書きを語る割れ煎みたいだな      水品団石
捨て台詞語尾の欠片が引っかかり     瀧尻善英
良心が奥歯にいつも挟まって       真理猫子
吐き出したことばの欠片から火種   高橋みっちょ
涙って接着剤の欠片かも       北山まみどり
補聴器が声のカケラを拾い出す      松谷由夏
ドロップ缶夏の欠片が躍ってる      大畑文子
必要とされる欠片になっている      阿部和己
おくの奥青い欠片が疼いてる       藤田盛雄
夢のかけらとっちらかって四畳半     石川柳寿
まだ懺悔し切れぬ春の一頁       渥美さと子
ジェラシーもカケラの内は笑えてた    織田和子

五 客
ショッキングピンクの欠片から燃える  青砥たかこ
メロディーの欠片華麗なシンフォニー   土屋欣之
繋ぐ手の隙間で欠片とろけ出す       菊池京
靴底の小石が急所ついてくる      平井美智子
瘡蓋が「お疲れ様」とはがれ落ち     村井規子
 人 位
思い出をつなぎ合わせて生きている   中野三根子
 地 位
強化ガラスに断片を閉じ込める      永見心咲
 天 位
侍の骨を鰹に渡される          中前棋人

~選後感~

故加藤鰹と出逢ったのは、僕が川柳を始めた頃。素敵な笑顔で「よろしく」と。そのたかね川柳会の600号記念誌上大会、全国レベルでの初選者、光栄に思っています。与えられた兼題「欠片」大きい欠片、小さい欠片、様々な欠片を見出すよう選をしました。天の句「侍の骨を鰹に渡される」鰹ちゃんの欠片に逢えたような気がしました。
心の中で「鰹ちゃん、ありがとう」と呟いています。

課 題 「欠片」   鈴木 千代見 

太陽の欠片を胸に秘めている      居谷真理子

欠片だが元の丸さは持ち続け       吉田節分

夢のかけらとっちらかって四畳半     石川柳寿

遠い日の欠片の眠る玉手箱       住田勢津子

良心が奥歯にいつも挟まって       真理猫子

諦めた夢の欠片が胃をつつく     佐々木多美子

飲み込んだ言葉の欠片胸を刺す     鶴見美佐子

遺されて愛の欠片を抱き締める      織田順子

思い出の欠片並べて喪に浸る      渥美さと子

お骨揚げ母の欠片はまだ温い       谷口修平

雨音が聞こえる哀しみの欠片      真島久美子

星空よ指輪になれと手をかざす     小澤恵津子

青春の欠片が踊る万華鏡         川本信子

廃校の桜に初恋の欠片          石田孝純

忘却に愛の欠片が引っかかる       川瀬風子

だんだんと欠片だらけになる海馬    米山明日歌

デカの目が這い蹲って追う欠片      山野寿之

はやぶさの塵が宇宙を解き明かす     増田信一

隕石を星のかけらと言うロマン      杉浦実子

憐憫の情に溺れているかけら       井澤壽峰

ほだされて恋の欠片がはしゃぎだす    小暮風六

抽出しの奥の欠片は片思い         井口薫

情熱の欠片まだある手が温い       坂本加代

捨てられぬ愛の欠片にまだ未練      山本寿之

終章へ恋のひとつが落ちつかぬ     新貝里々子

空爆の破片の雨を許さない        渡邊幸子

プーチンを歴史はゴミで片付ける    古谷龍太郎

悪魔にもニンゲンだった日の欠片     永見心咲

恋の欠片ほど尖ったものはない      阿部治幸

城跡の欠片がしゃべる歴史秘話      八木益代

濁流を越えて欠片は丸くなる       鈴木敏幸

加速する少子化埋まらないピース    外側としみ

恥じらいの欠片を月に暴かれる     青砥たかこ

吐き出したことばの欠片から火種   高橋みっちょ

落ちたのは天狗の鼻の欠片だろ       中村恵

あの日のピリオドいちご飴の欠片      菊池京

あなたは枯れ葉わたしは落ち葉サラバです 髙瀨霜石

良心の欠片がうずくプラの海       恵利菊江

思い出の欠片つまんで独り酒       新家完司

幾山河青い欠片を抱いてきた       藤田盛雄

五 客

水割りの氷の中にある微熱        渡辺遊石

どこにいるのかビーナスの手の欠片   橋倉久美子

勾玉の欠片卑弥呼へ夢馳せる       油谷克己

胸底の恋の欠片を天日干し        関口行雲

涙って接着剤の欠片かも       北山まみどり

人 位

二度三度つぎはぎしたか夫婦碗     小笠原正花

地 位

必要とされる欠片になっている      阿部和己

天 位

徳用のこわれせんべいなんだよな     伊藤豊志

~選後感~

「欠片」という課題に一見地味に思われたが、皆さんの感性豊かな川柳眼より生まれた句は目を見張るものばかりでした。選句には大変苦労しました。上位の句は、素直でありながら思いが膨らむ句で心打たれました。

課 題 「ネット」   中前 棋人 

ネットカフェ唯一ボクの秘密基地    高橋くるみ

ありがとうを安全網にして生きる    住田勢津子

Enterを押して人間不信です    山本野次馬

ネットでもまだ検索はできぬ味      載けいこ

ハゼばかり大きいタモの出番なし     杉浦実子

よくかかる田舎道でのねずみ取り    古谷龍太郎

おばちゃんのネットは電波より速い     井口薫

姑よりネットに頼る若夫婦       横山かしこ

ネズミ取りパンダのパトが切符切る    山口忠一

行政の不正へ天網切ってある      奥林五津夫

『ごはんだよ』耳を素通りするネット 大黒谷サチエ

まるごとの君を受けよう地引網    やまぐち珠美

ネットインあなたの胸に入りこむ    米山明日歌

告白をバックネットで待っている     真理猫子

パソコンもヨッコラショッと立ち上がる   句ノ一

思春期になってネットを張って来た    川井ふみ

ウイルスが五類の網に引っ掛かる     阿部和己

デジ庁にアナログ脳が包囲され      瀧尻善英

天国も地獄も炙り出すネット       山野寿之

宝石のネットにかかる桜えび      鈴木千代見

日・米・韓防衛ネットめぐらして     遠藤そら

ネット網ロシアに届け反戦旗      菅野とみ子

戦闘員マリオネットの糸を切る     宇都満知子

向日葵を防護ネットで包み込む      澤田徳芳

霞網張ってミサイル捕獲する        望月弘

生足もメロンも網でプレミアム      栃尾奏子

フィンテックタンス預金が狼狽える   工藤エミ湖

つぶやいて世間動かす力もち       倉繁勝信

エンターを押すたび関節が軋む     真島久美子

ネットからのっぺら坊が湧いて出る    北出来朗

今年こそゴールネットをゆらせ恋     山田勝笑

ネット着てモデルのように来たメロン   渡辺遊石

網タイツの痕がほっぺについている   荒牧やむ茶

ネットでの仲良しごっこ鬼ごっこ     三浦幸子

SNSは鎧兜をつけてから       赤松ますみ

蜘蛛の巣にかかった蝶の無言劇      羽城裕子

告白がバックネットへ突き刺さる    佐佐木雀区

独居でも世界中にはお友達       小澤恵津子

キーボード叩いて地球ひと回り      柳谷益弘

太陽と交信中の老い二人        提坂まさえ

五 客

ワタクシの網にかかってくれた彼    遠藤まつゑ

向い風今日もいいねを押している     伊藤豊志

あなたには危険防止のネット張る    村野あかり

渾身の一蹴りネット揺れに揺れ     垣屋ひろみ

お財布も脳も覗きに来るネット     橋倉久美子

人 位

花びらを飾って蜘蛛が待っている    居谷真理子

地 位

二十四時間ネットに指を嚙まれてる    石田孝純

天 位

網タイツあれは男の誘蛾灯       小林信二郎

~選後感~

▲どんなに頑張っても規定数を越えては抜けない。
人 いろんな誘惑が待っているこの世。特に儲かる話に乗ってはならない。
地 見事に、ひと言でネット社会に迫って見せました。川柳に他言は不要。
天 これはもう降参するしかない。
「あれは」というところに物悲しい性を覚える。

課 題 「ネット」  佐野 由利子 

網タイツあれは男の誘蛾灯       小林信二郎

エゴサーチ私の闇の深さなど      真島久美子

花びらを飾って蜘蛛が待っている    居谷真理子

声援も視線も熱いネット裏       森下居久美

時々はネットを脱いで旅に出る     橋倉久美子

強盗も出来るネットの裏事情       水品団石

蕁麻疹インターネットと聞いただけ   真島美智子

心中の相手も吟味するネット       織田和子

ネットにはゴミも宝も満ち溢れ      平井正俊

網棚に愛を忘れていませんか      小林ふく子

ネットには私の秘密基地がある      山田恭正

テニスコートのネットが煽る老いの春   石田孝純

筆まめも時流に乗ってメール便     小澤恵津子

無口でもネットの中でよく喋る    八甲田さゆり

天網も大悪人はくぐり抜け        安西廣恭

何とでも言える試合のネット裏      勝田晶子

おばちゃんのネットは電波より速い     井口薫

ママ友の口コミネットより確か      毛利由美

高齢独居やがてネットで見張られる  佐佐木多美子

床暖の様だと猫がボンネット       木暮風六

じいさんもピンクの網に引っかかる    中前棋人

便利だがトリックもあるネット界    柴本ミチコ

露纏う軒の蜘蛛の巣から宇宙       栃尾奏子

ネット通じ世界と遊ぶ引きこもり     今田久帆

犯罪がネット社会を嘲笑う        増田信一

偏った考え正すのもネット       澤崎ひらめ

インターネット便利と恐さ併せ持つ   菅野とみ子

簡単に孫はネットで売って買う      浜井尚子

病名の不安ネットで調べ出す      竹内はるえ

フラメンコ カスタネットの指さばき  宇都満知子

打ち損じネットプレーで救われた    柴田昭三郎

メルカリで買えてしまった免罪符      菊池京

網引けばピチピチ躍る海の幸      垣屋ひろみ

一日に五回も届くネット買い        福部茂

向日葵を防護ネットで包み込む      澤田徳芳

分からない事は聞きなと言うネット    吉田節分

多すぎてネット用語に追いつけぬ     載けいこ

ネットよりページをめくる本が好き    中村鈴子

脱サラの行き着く先はネットカフェ    三上武彦

天国も地獄も炙り出すネット       新家完司

五 客

頂点をマスクメロンは譲らない       望月弘

鬣はネットに入れて洗ってる      米山明日歌

フィンテック タンス貯金が狼狽える  工藤エミ湖

三陸の底引き網で見た遺骨        谷口修平

戒名も授けていただけるネット      西山竹里

人 位

家出したじいちゃんがいたネットカフェ 平井美智子

地 位

ネットから届く立派な太郎です     沢田百合子

天 位

寝た切りへ笑顔とどけるオンライン    渡邊幸子

~選後感~
一口にネットと言っても「ネットワーク」「ネット裏」「ネットカフェ」「網」etc…色々なネットがあり、選句も幅広く頂きました。反面、同想句も多かったです。視点を変えた新鮮な句との出会いは楽しいものです。
天 寝た切りへ笑顔届けるオンライン
平凡な句だと言えばそれ迄ですが、何ともほんわか温かみが伝わってきて、心が解れてくる優しい句だと思いました。
全国あちらこちらからの応募、感謝申し上げます。入選句数の都合で選外にしてしまった句もありますが、ごめんなさい。