ミニエッセー「私の大好きな川柳作家」

袋井市 新貝里々子

もう、この世にはいないけど、今でも私の胸をキュンとさせてくれる川柳の数々を発表した静岡たかね川柳会の故・森青蘭さんの川柳をここに書き出しましょう。

☆酔えばまた花いちもんめ君が欲し

相聞歌追うコーヒーの熱いこと

壷の底ならばあなたに逢えそうな

託卵のチャンスへ神の目を盗む

是々非々で許しあなたを飼い慣らす

☆饒舌な花の中なる妻の椅子

皮膚うすし意地とは薄きものの内

後遺症みかんの味はこれならず

躁鬱に遠く落葉の往きもどり

☆の句は、特に私をうっとりと酔わせた大好きな句。

ただ、ひたすらに青蘭さんの句への片想いでしたが、ある句会で背中合わせに座っていたことに気づき、ご挨拶をしたら、とてもはにかんだ様子で「あー」とも「うー」ともわからない声で返事をされただけでした。

それからしばらくして、お身体の具合を悪くされ、私の目の前から永久に姿を消してしまったのです。

あとの三句はもう病状も悪くなられた時のものでしょうか。私のは、とてもつらいつらい句でした。

もうすこし、いえ、ずっとずっと長生きをして、出来れば親しくさせていただきたかった。もっと沢山の青蘭さんの佳句に酔いたかったのに、残念です。

夢の続きを消してしまったのは あなた  里々子