平成二十二年度 たかね年間賞受賞作品

 

正 賞

海原を一枚希望いたします      大塚 徳子

 

準 賞

食パンの耳が聞いてるひとりごと   真理 猫子

友が来る雪にビールを挿しておく   濱山 哲也

あと一歩届かぬものが欲しくなる   勝又 恭子

正直な影でそっぽを向いている    藤田 武人

 

平成二十二年度 年間賞選者プロフィール

 

川俣 秀夫(かわまた ひでお)

下野川柳会会長、宇都宮雀郎会会長

NHK学園川柳講座添削講師

読売新聞とちぎ時事川柳選者

 

 

 

 

雫石 隆子(しずくいし りゅうこ)

川柳宮城野社主幹、全日本川柳協会理事

第三十五回全日本川柳仙台大会実行委員長

句集「樹下のまつり」ほか。

 

 

 

 

 

浅利猪一郎(あさり いいちろう)

川柳きぬうらクラブ会長

作品集「はらわた」他

ごんぎつねの里全国誌上大会主催者

 

 

 

 

高瀬 霜石(たかせ そうせき)

弘前川柳社副主幹。日川協常任幹事

青森県川柳社、川柳塔社、川柳展望

北貌の会などに所属

 

 

 

 

平田 朝子(ひらた あさこ)

全日本川柳協会理事、川柳噴煙吟社主幹

NHK学園講師ほか

句集「飾らねば」「川柳作家全集」ほか多数

 

 

 

 

石田 一郎(いしだ いちろう)

川柳キマロキ吟社代表

信濃毎日新聞柳壇選者

長野県シニア大学講師ほか。

 

 

 

 

 

 

津田  暹(つだ すすむ)

全日本川柳協会理事、川柳研究社代表

千葉県川柳作家連盟会長ほか

句集「川柳三昧」「川柳三昧Ⅱ」ほか

 

 

 

 

新家 完司(しんけ かんじ)

川柳塔社副主幹

新家完司川柳集「平成元年」「平成五年」

「平成十年」「平成十五年」「平成二十年」

 

 

 

 

下野川柳会会長        栃木県   川俣 秀夫 選

特 選

友が来る雪にビールを挿しておく    濱山 哲也

佳 作

食パンの耳が聞いてるひとりごと    真理 猫子

帰り道だんだん腹が立ってくる     佐野由利子

正直な影でそっぽを向いている     藤田 武人

この間だったのにまた誕生日

 

▽たかね年間賞候補作品はどの句も十七音字で見事な作品ばかりでした。特選句は読んだあとにドラマの広がる句でした。

 

 

 

 

川柳宮城野社主幹      宮城県   雫石 隆子 選

特 選

くさむらに虹の根っこを植えておく   大塚 徳子

佳 作

ひと休み命が若くなりそうだ      加茂 和枝

海原を一枚希望いたします       大塚 徳子

熟したら柿はしずかに落ちていく    望月  弘

裏表紙悲しいことが多すぎる      芹沢穂々美

 

▽十七音字の世界は同想、類想だらけと言われるが、どうもどの作品にも既読感がつき纏う。鮮度が命とは思っている。しかし突拍子のないような虚仮威しでも困る。つらつらと吟味した上に選考を終えた

 

 

 

川柳きぬうらクラブ    愛知県   浅利猪一郎 選

特 選

海原を一枚希望いたします       大塚 徳子

佳 作

建前を粉々にして紙吹雪        山下 和一

耳打ちの言葉は一度濾過します     石田 竹水

あと一歩届かぬものが欲しくなる    勝又 恭子

ブラックコーヒー生きざまなんか入れないで 山本野次馬

 

▽軽さ、ユーモアの豊かな候補作品群を楽しませて頂きました。その中から特選に頂いた句には、他の作品と異質の詩性と作者のおおらかな欲望を感じました。

 

 

 

 

弘前川柳社副主幹     青森県    高瀬 霜石 選

特 選

食パンの耳が聞いてるひとりごと    真理 猫子

佳 作

それぞれの窓 それぞれの窓の中    川村美智代

握力が無くてお金が掴めない      長澤アキラ

S席で観たあなたにはわからない    谷口さとみ

めでたいと思うめでたい人になる    望月  弘

 

▽楽しかった。とりあえずの一次予選で十五句も残り、おおいに悩んだ。他の柳誌より、若さあふれる句が格段に多く、スリリングで面白かった。またやりたいなあ。やらして、やらして。

 

川柳噴煙吟社主幹      熊本県   平田 朝子 選

特 選

ブラックコーヒー生きざまなんか入れないで

山本野次馬

佳 作

S席で観たあなたにはわからない    谷口さとみ

二杯目のお茶に潜んでいる阿吽     長澤アキラ

角取れたねと言われてもまだ楕円    増田 信一

ひと休み命が若くなりそうだ      加茂 和枝

 

▽たかね川柳会の年間賞決定の選をさせていただき、さすがに選り抜きの見事な作品揃いでした。中でも特選、秀1~4は斬新な表現を奥の深い組み立てに感動致しました。九州との作風の違いも感じ、ありがたい選考でした。

 

川柳キマロキ吟社代表    長野県  石田 一郎 選

特 選

あと一歩届かぬものが欲しくなる    勝又 恭子

佳 作

次の日も降ると困った雨になる     増田 久子

帰り道だんだん腹が立ってくる     佐野由利子

正直な影でそっぽを向いている     藤田 武人

焦ってもどうにもならぬ風の向き    薮﨑千恵子

 

▽特選の句。あと一歩の押しが足りなく、悔いることが多い。その一歩を怠ったのかも知れない。再度挑戦しようとする意欲が句の中にあふれている。秀1の句。実感がある。欲しい雨に欲しくない雨。

 

川柳研究社代表      千葉県    津田   暹 選

特 選

海原を一枚希望いたします       大塚 徳子

 

佳 作

ほんとうの事を言うため歩き出す    真理 猫子

裏表紙悲しいことが多すぎる      芹沢穂々美

正直な影でそっぽを向いている     藤田 武人

握力が無くてお金が掴めない      長澤アキラ

 

▽プラス指向で勇気を与えてくれる2作品と、ペーソス溢れる3作品の両極端5作品を頂きました。何れも今に生きている優れた作品です。

 

 

川柳塔社副主幹      鳥取県    新家 完司 選

特 選

白髪の恩師に頭下げられる       中田  尚

佳 作

春霞軽い恋わずらいの中        栃尾 奏子

ヤキモチに気付き気付いた恋心     森だがやん

友が来る雪にビールを挿しておく    濱山 哲也

すっぴんで出掛けられない寒いから   真理 猫子

 

▽一次選で10句残ったが、そこから5句に絞り込むのが苦しかった。選んだ結果を見ると、作者自身の実感を述べた句ばかりのようであった。

 

 

たかね年間賞過去の受賞作品

平成十一年

昭和史に忘れたままの傘がある     真田 義子

選者 飯尾麻佐子、石田一郎、川上富湖、柴崎昭雄、太田紀伊子、熊谷岳朗、奥田一星、平山虎竹堂

 

平成十二年

シアワセって退屈ですねお月さま    多田 幹江

選者 復本一郎、赤松ますみ、近江あきら、いとう岬、川上大輪、西恵美子、高瀬霜石、平山虎竹堂

 

平成十三年

好きだ好きだと男を騙す発泡酒     新貝里々子

選者 児玉ヒサト、中田たつお、遠藤みゆき、柳沢花王子、藤沢岳豊、酒井路也、斉藤由紀子、平山虎竹堂

 

平成十四年

抱きしめてやりたい真夜中のポスト   寺田 柳京

選者 辻 晩穂、真弓明子、鈴木柳太郎、江畑哲男、松岡恵美子、長谷川冬樹、筒井祥文、平山虎竹堂

 

平成十五年

風に逢うまだたてがみのあるうちに   新貝里々子

選者 浪越靖政、猿田寒坊、太田紀伊子、山倉洋子、成田孤舟、川上大輪、竹下勲二朗、森中惠美子

 

平成十六年

穴堀りをするには少し陽が高い     川路 泰山

選者 板垣孝志、宮村典子、門脇かずお、長谷川酔月、津田暹、雫石隆子、大木俊秀、大野風柳

 

平成十七年

傷一つ時効を過ぎてから痛む    高瀬 輝男

選者 佐藤美文、米島暁子、熊谷岳朗、菅原孝之助、小島蘭幸、浅野滋子、大橋政良、徳永政二

 

平成十八年

一冊の本一本の藁になる      池田 茂瑠

選者 佐藤岳俊、国吉司図子、川俣秀夫、久保田元紀、桜井閑山、木本朱夏、大木俊秀、新家完司

 

平成十九年

団塊のこれから角のない切符    柳沢平四朗

選者 千島鉄男、渡辺松風、山﨑蒼平、宮村典子、浅利猪一郎、板垣孝志、川上大輪、赤松ますみ

 

平成二十年

母さんが教えてくれた非常口    井口  薫

選者 熊谷岳朗、雫石隆子、佐藤美文、成田孤舟、酒井路也、渡辺梢、森中惠美子、新家完司

 

平成二十一年

前向きに生きよう鼻は低いけど   池田 茂瑠

選者 浪越靖政、雫石隆子、太田虚舟、大木俊秀、西來みわ、中田たつお、川上大輪、新家完司

 

平成二十年度月間推薦選者

一月 大石 一粋  二月 西 恵美子  三月 赤松ますみ

四月 石橋 芳山  五月 津田  暹  六月 柴崎 昭雄

七月 平尾 正人  八月 横田輪加造  九月 てじま晩秋

十月 熊谷 岳朗 十一月 風間なごみ 十二月 宮村 典子