「自 由 吟」              鹿野  太郎

厳冬に風呂を頂戴する五体            仙 台

一言で蕾が落ちる事もある

金のある莟ばっかり咲く準備

雛飾り両手がとても暖かい

 

 

 

「春の浜辺」               大塚  徳子

寄せ鍋に幸が溢れる多国籍            仙 台

堅物を避けて春風迂回する

週刊誌丸めて覗く過去未来

一枚の春の浜辺にある想い

 

 

 

「春が来た」                小林 ふく子

春の幕 夜桜お七開けに来る              袋 井

満開の桜に魔女がいるらしい

チューリップしあわせポーズよく似合う

菜の花にくらくらくらと酔いしれる

 

 

「春 の 風」             荒牧 やむ茶

雪解けて父子ふたりのカップ酒          小 山

春風が見てた別れの舞台裏

失恋の記録に終止符が打たれ

制服の胸も膨らむ春うらら

 

 

「春の恋人達へ」            松橋  帆波

春の恋人達へ未来を進ぜよう          東 京

義理堅いホワイトデーを嫌がられ

とりあえず泣いて明日の恋探す

紳士ですこんなに君が好きだから

 

 

「  春  」                    奥宮  恒代

いい名前だけど出しゃばり仏の座              森 町

春眠を貪る幸せに浸る

春だねェさよならしようババシャツと

採ろうかな笑ったような春キャベツ

 

 

「これで充分」             増田 久 子

ジャム用の苺をジャムでなく食べる       焼 津

ジパングの効かない距離の旅ばかり

ペンネーム吉永小百合でいいですか

増税で君死に給ふことなかれ

 

 

「花ごろも」             井口   薫

雪衣から列島は花ごろも                  袋 井

花びらにまぶされたくて京の旅

花の季の切符大事に使い切る

西行様拝借します「願わくは」

 

 

「春ですね」             新貝 里々子

江戸切子おとこ美学に酔っている        袋 井

身の内の時々「馬鹿」にけつまづく

春ですね作り話も度が過ぎる

失ったものの重さを甘く噛む

 

 

「自 由 吟」             内山  敏子

恐そうな犬でお愛想して通る           浜 松

迷いから抜けた笑顔が素晴らしい

似たようなビルでとまどう伝書鳩

うやむやな話へ耳は貸していず

 

 

「雑  詠」             岡村  廣司

雑魚だから手の鳴る方へすぐ走る             焼 津

誰にでも出来る仕事とまかされる

妻と子の無い物ねだり身が細る

学歴も品格も無くただ老いる

 

 

「自  分」               藤田  武人

初キッス二人で飲んだ缶ジュース         大 阪

地下鉄の窓に映した肖像画

いつまでも男は子供はしゃぎたい

何気ない妻からメール早帰り

 

 

「運動不足」              毛利  由美

ブレーキかアキセル迷う黄信号          つくば

車社会 田舎こそ運動不足

検査値は異常ないけど歯が痛い

敏感に春を感じる鼻粘膜

 

 

「ライバル」                 濱山  哲也

ライバルの手下だろうか信号機               つがる

京都には勝てない奈良の敵対視

ライバルが逝って涙が止まらない

ぼくなんか序二段であるサウナ風呂

 

 

「自 由 吟」              酒井  可福

ハイキング靴が鳴る鳴る膝も鳴る              北九州

花束を胸に抱くより札の束

胸騒ぎ大きくなった嘘一つ

不器用に生きて他人に頼られる

 

 

「雑  詠」               馬渕 よし子

くしゃみ一つ噂の渦にいるらしい         浜 松

新芽出て何やら主張仄めかす

親離れ子離れ鞭を用意する

春風の誘いに乗って切符買う

 

 

「自 由 吟」               宮浦 勝登志

オンとオフボタン一つのもたれあい        静 岡

腹減ればデパ地下試食一巡り

試供品塗って荒れ肌冬を越す

喫煙所人の煙で深呼吸

 

 

「自 由 吟」              提坂 まさえ

律義者しわ一本も隠せない            静 岡

着る前にむりむりむりと試着室

後出しをしても勝てずにあいこでしょ

チャンネルを変えると起きていると言う

 

 

「キ  ス」             戸田 美沙緒

西行の焔と眠る桜の木                  さいたま

唇を閉じて少女はキスをする

私の夜を耕す水の音

撃鉄を起こし男に逢いに行く

 

 

「きっかけ」              中矢  長仁

きっかけはスパッと自分を五七五         愛 媛

きっかけは見合いでしたが一目惚れ

とりあえず受けた会社で定年に

良い医者に会えて病気と仲が良い

 

 

「か  わ」                山本 野次馬

揚子江の川面に浮かぶエゴイズム            函 南

インダスの河で溺れている河童

辿り着く海は虚勢を許さない

蹴躓くたびに川面が蛇行する

 

 

「春 帽 子」                     真田  義子

チャンスかもピンチを換える青い空             仙 台

梅一輪咲いたら老母に手紙書く

新しい気持でかぶる春帽子

昨日とは違うリズムで生きてみる

 

 

「面  子」                    成島  静枝

金が要る男の面子立ててやる               千 葉

町会へオトコのメンツ売りに出す

花丸が嫁の面子につく介護

あるがまま楽し老後の絵の具箱

 

 

「実  直」              深澤 ひろむ

実直に生きたタスキを子につなぐ         甲 府

平手打ち生きる姿勢へ父無言

誠実に生きてきれいな酒を呑む

生き様を無学の母に諭される

 

 

「診 療 所」               鈴木 千代見

気休めの薬貰って足軽い             浜 松

ドクターと野菜の話して帰る

結果よし先生も好きランラララ

放言が飛び交っている診療所

 

 

「自 由 吟」               滝田  玲子

忘れたいことは忘れぬもの忘れ          浜 松

亡母の齢越えて痛みと綱渡り

一駅を歩きなじんだ万歩計

貧乏性もったいないで腐らせる

 

 

「悪い世だ」              野中  雅生

悪い世だ年寄りからも高い税           静 岡

改造も出てくる顔は青二才

信なくば立たぬ政治が今は立ち

信頼を裏切りまくる菅総理

 

 

「公  約」               瀧    進

選挙戦笛や太鼓に踊らされ            島 田

公約の独り善がりが闊歩する

マニフェスト所詮かなわぬ片想い

アジェンダも似たり寄ったり空元気

 

 

「  道  」               安田  豊子

七十路の足を労う陽が延びる           浜 松

無駄でない道草もある道の駅

でこぼこの道で行き着く駅探す

折り返す寿命を刻む道半ば

 

 

「自 由 吟」              川村 美智代

手術室医師の目颯と鬼になる           静 岡

看護師の千手菩薩の温み染む

紐一本犬と歩幅が合ってくる

球根が約束だよと芽を三つ

 

 

「片 想 い」                 石上  俊枝

小度胸に心臓に毛が生えていた             静 岡

最愛の人も時々アジサイに

舵取りに民は船酔い良薬は

指切りに友の信用宝だね

 

 

「ビックリ」              野中 とし子

お嬢さん電車の中で鏡出す           静 岡

朝一番雨戸開けたら雪景色

友達が大企業家に玉の輿

友達に信頼されてあわて出す

 

 

「雑  詠」              萩原 まさ子

草食の服の中身はマッチョです              静 岡

手鏡を合わせて見えた裏の顔

安売りへ女の意地とメンツかけ

就活へ寄らば大樹の本音みえ

 

 

「自 由 吟」              恩田 たかし

浮く気持ち抑え議員を臨むべし          静 岡

他人見てわが振り治すいい機会

蒲焼きのタレだけかけて飯五杯

ブランドは一回着たらもう着ない

 

 

「あ・し・た」              森 だがやん

浴びる程しこたま飲んで食べまくる       島 田

揚げ物が染み渡り腹弛ませる

餡蜜にシロップかけてたっぷりと

明日からは食事制限食べちゃ駄目

 

 

「夕  日」                   薗田  獏沓

逆上がり出来て夕日に照らされて            川根本町

ジュジュジュッと真っ赤な夕日海に入る

壮大なドラマ演じた日が落ちる

夕日背に走る子供の声弾む

 

 

「じじいの詩Ⅱ」                 村越  精也

俺んちも縁側ほしい日向ぼこ            静 岡

寒風に耐える雀に餌をやる

孫愛し願望年数チョト増える

「大丈夫」だけど車庫入れ曲がってる

 

 

「自 由 吟」                  寺脇  龍狂

若いからとお世辞に負けてもう一期        浜 松

赤鼻緒春を呼び込む店がない

栄誉賞出せば人気が戻るかも

初春へ今年も歩くぞ万歩計

 

 

「  春  」                         畔柳  晴康

待ち兼ねた春一番に傘獲られ           浜 松

雛の日に爺と婆まで正装す

春の畑腰撫で伸ばす八十の爺

卒業の孫を祝いて貯金減る

 

 

「ブラックの一気飲み」         斉尾 くにこ

日暮れにはまだ早すぎるうさぎ歳         鳥 取

きみに似た雲拉致してる午後の椅子

きまずさが嫌で淋しいワンマンショー

こんな日はふとブラックの一気飲み

 

 

「成 行 き」                     鈴木 まつ子

急かされて衰えを知る加齢臭                島 田

成行きにまかせ信じて子の自立

場の流れ蝶よ花よと手がのびる

成行きへ罪となるのか夜の底

 

 

「無  題」               川口   亘

立て膝に次に来る手の意を覚る          藤 枝

意気込みにまだ先を読む余裕あり

生涯をかけて浮き世の鐘を撞く

どの手から話こぼれる世辞上手

 

 

「自 由 吟」              川口 のぶ子

少しずつ萎えたむこうに見える丘            藤 枝

体力は気付かぬ処に落し穴

途中下車した身に何で花が咲く

咲いて来る花に希望を託し見る

 

 

「自 由 吟」               南   天子

大変だ顔もだんだんお化けです          焼 津

あの世にも近くなったと風の声

来世は神と佛と空と海

あの世には持っていけない重い石

 

 

「雑  詠」                  飯塚 すみと

温もりの部屋で後期の体操す                静 岡

言いすぎた悪いペンだこ飛んでゆけ

風呂つかり白いタイルに未来見る

斉藤君何をそんなに持ってるの

 

 

「ロ マ ン」              栃尾  奏子

究極のロマンス語る夫婦岩              大 阪

星空はキャンバス二人だけの夜

ペガサスも変わらぬ愛も信じてる

風紋と遊ぶメソポタミアの石

 

 

「なんでも鑑定団」           尾崎  好子

まめでなきゃ物が人呼ぶそれも縁          藤 枝

惚れ込んで金に糸目も付けて買い

ご満悦いい物見てる見せている

焼けなけりゃ家にも有った慶喜の画

 

 

「違反累積の罰」            山口  兄六

見せられぬ顔繰り返す免許証                  足 利

安全運転亀の甲羅が逞しい

おいでやす多勢に無勢旗振られ

止まれない青春期とは違います

 

 

「この頃の私」             小野  修市

靴下が片足立ちではけなくて           静 岡

出た腹が邪魔して靴がさがせない

疲れてる寝ても今日が疲れてる

同じ事何度も聞いて叱られる

 

 

「  春  」                     林  二三子

プランター春のカラーで埋まってる              富士宮

愛情を注いだ花に癒される

今日は雨花粉も舞わずホッと出来

舞う準備杉がしている雨上がり

 

 

「あ く ま」                    中野 三根子

時々は自分の中にいるあくま                  静 岡

やさしさの中であくまがみえかくれ

あくまから囁かれてる甘い声

困ったら取り引きをするあくまとも

 

 

「オノマトペ」             川村  洋未

チョキチョキと別れたあいつ切る音よ       静 岡

カチカチと寂しい心凍りつく

パチパチと音がうるさい付け睫毛

サラサラと男を捨ててこざっぱり

 

 

「支 え る」              多田  幹江

妻というつっかい棒が軋む夜半                静 岡

コンビニの明かりを守るフリーター

元職の老いが支える町工場

友としてこの膝お貸ししたのです

 

 

「極  細」               池田  茂瑠

好きだけど少し冷たい舌を持つ          静 岡

極細の便りを武器にする女

結論が甘い考え直してよ

淋しさを抱いて虚飾の町に向く

 

 

「小 悪 魔」                      谷口  さとみ

よくこんなとこに帰ると思う車庫         伊 豆

進化などしてないと知る露天風呂

妻の爪何のためだか伸びている

スイーツの中にジンジャーひとかけら

 

 

「温 か い」                森下 居久美

暖かい風だ歩幅を広くする             掛 川

近況を知らせる友の字が温い

温もりを確かめているマグカップ

暖かいことば反芻して眠る

 

 

「自 由 吟」                    稲森 ユタカ

ついでにと言われた事が大仕事                 静 岡

近くまで来たから寄るとついたウソ

ついでにとやっておいたがおせっかい

ゴミの日の出勤いつも手にはゴミ

 

 

「春だなぁ」               松田  夕介

目と鼻が一喜一憂罪な春              静 岡

春風がトンと背中を押した恋

いい天気あくびで歌も歌えちゃう

何色に染まるか君の白いシャツ

 

 

「希  望」               真理  猫子

このあたり腹筋だったはずなのに           岡 崎

子うさぎとちょっと月まで餅つきに

初夢に毎年見てる王子さま

その嘘が変身しますあと五分

 

 

「生 き る」                渥美 さと子

抜いた雑草へいやはや雨の救助隊            静 岡

外来の数珠一粒を小半日

元気ならプライド夢に置き替える

パハップス私長生きしそうです

 

 

「決  意」                  勝又  恭子

力抜くことを覚えて出る力                 三 島

この人に決める正直者だから

悔しさの涙は明日のバネにする

向かい風覚悟まっすぐ歩き出す

 

 

「再 就 職」               増田  信一

再就職がまん我慢と言い聞かせ          焼 津

再就職初心に戻る苦労知る

職変わり手足がぎこち無く動き

経験も職が変わればゼロとなる

 

 

「レモンティー」            佐野 由利子

争いの中に入らぬレモンティー          静 岡

のほほんと過ごしチャンスを取り逃がす

ブランド好き きっと淋しい人だろう

目を閉じて聞き耳立てて春の音

 

 

「人 の 輪」                石田  竹水

時々はヘマをするので人気者              静 岡

常識を守って人の輪丸くする

塵一つ無いポケットが風邪を引く

点滴のしたたる先に僕が居る

 

 

「壊 れ る」                  長澤 アキラ

人間を時給で釣った決算書                 静 岡

酔ったっていいよと落ちる二十五度

ただいまと帰るしかない一人者

悲しみの音を掻き消す人砂漠

 

 

「自 画 像」               薮崎 千恵子

自画像にたっぷり付けているメッキ        焼 津

持ち味の粘り強さが物を言う

大見得を切って出来ない後始末

矢印を辿って罠に引っ掛かる

 

 

「流  れ」               永田 のぶ男

温暖化 噴火 地震が交互くる           静 岡

流氷が地球を憂う温暖化

神は前 仏は後に酒を置く

乱世は揺られ地球は傷だらけ

 

 

「ジョーク」               望月   弘

冗談で家庭も国も瓦解する            静 岡

税金を使ってジョークののしられ

戦争と平和の中にいるジョーク

川柳のわかる議員を増やしたい

 

 

「カタストロフィー」          加藤   鰹

ビルが流される CGじゃないのか          静 岡

原発の神話脆くも崩れ去り

文明の機器嘲笑う震度七

神がいるならば貴方を許さない

 

 

  顧  問  吟 

「自 由 吟」                  高瀬  輝男

どの坂でわたしのハート奪られたか         焼 津

ヨサレヨサレと道化て踊る父見たか

変わる街昨日を遠い過去とする

コミカルに餡パンのへそ正座する

 

 

「自 由 吟」               柳沢 平四朗

道草へ後悔もなく生き急ぐ            静 岡

帯封に埋もれたままの蔵書印

丸投げの余生シナリオなど要らぬ

同情のアメ甘いとは限らない