霜石コンフィデンシャル100   高 瀬 霜 石

「アナログ年代記―ワープロ編」

なんと!今回が100回目ですよ。ヤッホ~。

この駄文を連載し続ける世にも稀なる心の広さを持つ編集者と、我慢強い読者の皆様に、まずもってお礼を申し上げる。

僕がこの原稿を書いて(打って)いるのはワープロだ。ワープロはもはや前世紀の遺物で、みーんなパソコンに切り替わっている(らしい)。

数年前、愛用のワープロが壊れた。連載を十本ほど抱えている身だから、彼女(?)が側にいないとにっちもさっちもいかない。買った事務機屋を訪ねた。

「これはもう部品ないですよお。もうパソコンの時代ですから、この際パソコンにしましょうよ、高瀬さん」

そんな軽い乗りに―別な言い方をすると冷たい仕打ちに―僕はカチンときたのだった。

「部品がない?コレはおたくで買ったものだよ。部品がないでオシマイ?それでもプロ?」

僕の生業は自動車部品販売業。これ、フツーの人に説明するのはとても難しい職種。トヨタ車の部品が必要ならトヨタに行けばいいし、ホンダ車の部品ならホンダに行けばいいと、フツーの人は思うでしょ。

ところがどっこい。車は多種多様。トヨタにだって、日産やスバル、ダイハツやスズキ、三菱などが入ったりするでしょ。それら各メーカーの部品の供給を一手に引き受けて、整備工場や板金工場、中古車屋、ガソリンスタンド等にお届けするのが我が社の仕事だ。

「なんぼ古い車でも、たとえ外車でも、ウチなら一生懸命部品探すよ。オラはこのワープロがないと困るのさ。何とか直してよ、頼むよ~」と泣きも入れた。

ラジオ番組のパートナー、倉田和恵アナウンサーが、捨てようと思っていたけれど、これでよかったらどうぞとワープロ1台くれた。友人も1台持って来てくれた。これがまた偶然同じ機種。便利なことこのうえない。事務所と自宅に各1台。まるで一度に2人の愛人ができたような気分で、優雅に日々を過ごしていた。

ある日、事務機屋から直りましたとの電話。部品がみつかったのかと聞いたらば、そうではなくて、丁寧に掃除をしたら直ったというのである。全く予期していなかった本妻の帰宅である。驚きましたねえ。

以来、僕は本妻と2人の愛人の間を行き来するただれた生活を送っている。多分、死ぬまで続くだろう。

 

※大好評「霜石コンフィデンシャル」めでたく連載100回!こちらこそ毎月毎月楽しいエッセイ、本当にありがとうございます。これからもずーっとよろしくお願いします。編集部